シンプル創想話

永遠亭で超か◯や姫上映会をするようです

2026/04/01 04:59:46
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『竹取物語を元にした新作アニメ、一緒に見ましょう』

 いきなりやってきて何かと思えば、このお誘い。正気かこいつは、と思った。そしてすぐにこの女……蓬莱山輝夜はそういう奴だと思い直す。端から見ると狂っているような言動を、正気のまましれっとかましてくる。それも軽い暇つぶし感覚で。あーほんと迷惑だわ。
 そういや以前も同じように、竹取物語を元にした映画を無理やり視聴させてきたっけ。やたら顎の長い帝と、いきなり十二単脱ぎ捨てながら走り出した主役の姫ぐらいしか印象に残ってないけど。

「なんとなく、そんな予感はしてたけど。やっぱり慧音もいるのね」
「暇があるならどうぞと誘われたからね。歴史好きなら楽しめる内容だとも言われたし」

 私の隣に座る慧音はわかりやすくうきうき笑顔だ。以前の時も同じようにお呼ばれされて、私とは違い結構満足げな様子だったし今回もきっと二つ返事で来たのだろう。そしてここまで楽しみにしている慧音の手前、私も今更帰りたいとは言い出しづらい。まったく手回しの良い事で。
 ちらっと冷めた視線を向けるとすぐ気づいたのか、輝夜はこちらへ振り向いてニヤリ。そしてさむずあっぷ?してきた。うわぁ、今すぐ殴りてぇ燃やしてぇ。

「はい、映像再生装置の準備終わり。皆席についてついてー」
『はーい』

 手伝っていた兎達の着席を確認し終えた輝夜は、私の隣に何の気兼ねもなく座ってきた。慧音と二人で私を挟む位置取りだ。あーもう、勘弁してよほんとにさぁ。

「なんでそこに座るのよ。落ち着いて視聴できないじゃない」
「だって、私にとってはここが一番楽しめる席だもの。いわば私の特等席。誰にも譲りませんわ」
「あんたねー……」

 ギロリと睨んでやると、おほほ、と口元を隠し高笑いで返された。ほんっと殴りたい、いや燃やしたいあーでも今やると慧音も巻き添えになるしなぁ。どうしよっかなー。

「それじゃ、上映開始といきましょう。優曇華、お願い」
「はーい」

 人の逡巡を知ってか知らずか、輝夜は待機していた優曇華に合図した。それを受けた優曇華が細長い変な物の突起物を軽く押し込むと、一気に室内が暗くなっていく。と、同時に眼の前の大きな箱が光り始めた。箱の一面で複数の色に発光するこの光こそ、外の世界で映像と呼ばれているものらしい。未だにあにめ?とかいうのはよくわからないけど、外の世界ではこうやって鑑賞する娯楽の一つだそうだ。幻想郷住民にも詳しい奴はいるようだが、生憎私はとんと縁が無い。ぶっちゃけ興味も無いし。
 ふと周りを見てみると慧音は勿論、優曇華やてゐまで期待に目を輝かせている。正直思う所はまだあるが、ここまで来てうだうだ言っても仕方ない。私は小さくため息をつくと、皆にならい映し出されている映像へと意識を向けた。




 少女達視聴中………





 箱の光が消えると同時に部屋の明かりがついた。これで上映会終了だ。で、感想なんだけど。
 まぁ、その、なんていうか凄かった。最初から最後まで凄い勢いで話が進んで、終盤凄い情報が飛んできて。でも最終的には、よくわからないけど登場人物達が幸せそうでなんだか良し!……って感じ。ぶっちゃけ外の世界の専門用語や概念はよくわからんのよ。まぁなんにせよ、だ。輝夜と同じ名前の子が不幸な結末迎えずに済んだのは……うん。素直に良かったと思う、かな。あれだけ過酷な運命に翻弄されてもなお、心の中にある大切な想いをけして見失わなかったのは実に凄い。報われて本当に良かったと心から思える。いやほんと、輝夜とは似ても似つかぬ女の子だわ。どこが同じかぐや姫なんだか。

「あー楽しかった。じゃあ妹紅、あなたの感想を聞かせてくださいな」
「やだ」

 そっけなく即答してやると輝夜はぶーたれた表情へ早変わり。よしよし、ちょっとしてやったりな気分になれたかも。

「ちょっとちょっとぉ。私、妹紅の感想聞くのが楽しみだったのよ?」
「だからよ。あんたを喜ばせる事なんてしたくないわ」
「むー」

 暫くむくれる輝夜。仮にも希代の美女がする顔かそれが。だがここで終わらないのがこの女だ。すぐ何か思いついたらしく、急にしおらしい表情へ切り替えてきた。そのまま少し屈んで私を見上げる姿勢を取り、私に向かって上目遣い。胸元で手まで組んでいる。あぁ、成る程。あにめ?に出てたあの子の真似ってわけね。

「妹紅……お願い?」
「おねだりやめろ気持ち悪いあっちいけ」

 しっしと追い払う仕草で返してやる。私は頼まれたら断れない、あの善人すぎるあにめ?主人公とは違うのだ。そもそも何が悲しくて、仇敵たる輝夜なんかのお願いを聞いてやらなきゃならんのかと―――

「うおおおおおおお八千年! 八千年間の日本史! それも見聞きしただけではない正確な記録っっ! 知りたい知りたい知りたい私にもその八千年分の情報を流し込んでくれっくぎゅうううううううううーっ!!!!!」
「はい?」
「あー……」

 突如発狂した慧音の叫びに全てが遮られた。『歴史万歳日本史万歳』と喚き続ける慧音の狂態を、私も輝夜も周りの兎達も唖然と眺める他ない。いや確かに、さっきのあにめ?で慧音の琴線触れる所があったとしたら多分歴史要素だろうなとは思ってたけどここまでおかしくなるか普通? いやなるわ。上白沢慧音とはそういう奴だわ。

「え、えーっと……そうだ! お師匠様、今のアニメでどこが一番気になりましたか?」

 横から出てきた優曇華が慌てて永琳に話を振った。どうにか場をとりなそうと必死なのが実に健気でわかりやすい。永遠亭随一の苦労性が板についているともいうけど、指摘するのも可哀想なのでやめておこう。これもまた一つの優しさってね。

「そうね、一番気になったのは……あの筍ロケットかしら」
「へぇ、あれですか。やっぱり技術的に色々気になったとか?」
「あら意外。永琳ならもっと他に気にしそうな所、あったと思うけど」

 優曇華は勿論、輝夜も少々意外そうな顔だ。この薬師とはあまり関わっていないけど、まだまともよりな印象ではある。尤も輝夜に言わせると、『永琳がまともに見えるのは、今の私が安全な立場だからよ』らしいけど。まぁどうでもいい話だわ。

「あの筍ロケット、備わっている機能は悪くないけれど設計が甘すぎる。宇宙空間移動中に何かしらの障害物と衝突するなど、真っ先に想定して然るべき不確定要素でしょう。だのにあの程度の隕石とぶつかったぐらいで時間移動設定の誤作動を起こすなど……私が作ったなら絶対そうはならない。いやそもそも目標とする座標及び年代が明確であるなら、わざわざ宇宙空間移動を挟む理由すらないかあの作中だと電子空間を介した長距離空間移動も可能なのだし、なら予め月側でワームホール概念を電子情報の応用で擬似再現しそこへ時間跳躍を組み込む方が余計な危険を排除しつつ制作費用面でも大幅な削減が期待でき」
「はいはい、永琳がこのアニメをすごーく楽しんでくれたのはよく理解できたわ。だから後は一人で存分に耽ってね。てゐ、永琳を適当な場所にでも運んで頂戴」
「あいあいさー」

 完全に一人の世界へ入り込んでしまった永琳を手押し車に載せると、てゐ含む他数羽の兎はそのまま部屋の外へ出ていった。揃って面倒な顔だったのが心中察しある。私が言うのもなんだけど、永遠亭の実質頂点な存在があんな扱いでいいのかしら。まぁ輝夜の慣れた様子を見る限り、ここでは割とよくある事なのかもしれない。あまり深く考えないでおこうそうしよう。

「全く永琳殿も困ったものですね。周りが置いてけぼりになっていましたよ」
「さっきまで発狂してた慧音が言っても説得力ないよ」
「いやはや面目ない。ついつい熱くなってしまってね」
「毎回言ってるけどさ、歴史狂いも程々にしないと里人からもいつかキモがられるよ」
「き、きも……っ……!?」

 流石に手痛かったのか、ずーんと沈み込む慧音。うーんちょっと言い過ぎたか? 慧音が歴史の事となると自分を忘れるほど熱中するのはいつもの事だし、慣れてるっちゃ慣れてるんだけど、ね。その度に面食らってるんだから、たまにはこのくらい言っても許されるでしょ。

「んもー、ぐっだぐだねぇ。妹紅がさっさと感想言ってくれないからこうなるのよ」
「なんで私のせいになるのよ。因果関係一切ないでしょうが」
「おおいにあるわ絶対あるわ。あぁ……せめて私がおねだりした時、ちゃんと答えてくれればこんな事には……よよよ」
「わざとらしく嘘泣きすんな。まったく……冗談じゃないっての」

 ぐいと椅子に背もたれ、天井を見上げながらため息を吐く。こいつと会話してたらいつもこうだ。こっちの都合なんて全然考えないし気にしない。いつも自分の調子優先で話を続けてくる。私が雑な返しをしても怒るどころか、むしろ更にノリノリで煽ってくるときた。何百回、何千回と殺し殺されあった間柄だけど、こればっかりは慣れる気が一切しないし慣れたいとも思わない。
 ……と、ここまで考えて、ふと一つ思いついた。

「そういうあんたの感想はどうなのよ。人の感想聞きたいなら、まずそっちから話すのが筋じゃないの?」
「最初に言ったじゃない。楽しかったって」
「いやもっとこう、あるでしょ。仮にも同じ……かぐや姫、なんだし」
「……ふーん」

 一瞬言い淀んでしまったが、こればかりはどうしようもない。こいつを姫扱いするのが嫌というわけではなく、単に色々頭に浮かんでしまいかねないからだ。一歩間違えると、血が上ってそのまま発火まで行く自信すらある。幻想郷に来た頃よりは落ち着いてきた自覚あるんだけど、ね。
 そんな私の様子を察したのか、輝夜もちょっとだけ真顔になって考える素振りを見せた。悔しいけど、こういう表情してるこいつは冗談抜きで綺麗過ぎる。父上を始めとした男達が熱中するのも頷けるというものだ。……認めたくないけど。

「―――八千年って、長いわよねぇ」
「うん? 何を当たり前な事……」
「妹紅。私とあなたが、仮に八千年を過ごしたとして。今と同じように自分を保てる自信、あるかしら?」
「―――っ―――」

 静かな口調で微笑みながら、私の目の奥を見据えるように。輝夜が見つめてきた。思わず一瞬息を呑む。
 八千年。劇中のかぐや姫……が、数奇な運命の巡り合わせで過ごす羽目になった時間。あの薬を飲んだ私が過ごした時間など、まるで比較にならない長さだ。劇中のかぐや姫はその膨大な時間を得て、変容してしまった。いや、それだけの情報量で変容しない方がおかしい。私だって薬を飲む前の自分とは、かなり変わってしまった自覚があるのだから。
 なら、この女は? 輝夜もそうなのだろうか。
 私とは違う、月の住民。永琳と共に永遠を生き、歩み続ける存在。こいつも、今と昔で違うのだろうか。父上を含む求婚者達に恥をかかせ、帝を袖にし、月へ帰った時の輝夜と今の輝夜は、もう別物なのだろうか。もし、そうなのだとしたら……私は、とうの昔に―――

「なーんて、ね」
「……っ」

 つん、と指先で、額を軽く押された。はっとするとさっきまでの真顔はどこへやら、いたずらっぽい表情の輝夜が見つめている。

「森羅万象有為転変。変わりゆくのが当たり前。永遠と須臾を扱う私や永琳、あなただって例外ではないわ。そんなわかりきった事で、今更真面目に思い悩むなんて。妹紅ってば本当に面白いわねぇ」
「あ……あんた、ねぇ………っ!」

 こいつ……私がこういう反応すると踏んだ上で、からかってやがった。それに気づいた途端、頭の中でぷっつんと切れる音がした。堪忍袋の緒が切れる音だ。うん、もう我慢の限界。

「もーあったま来た! 竹林に出なさい、久々に骨の髄まで燃やし尽くしてやる!」
「そうよ、それでいいのよ妹紅! 生きるは永遠、されどこの瞬間は不変にあらず! それを享受してこそ自由ってものなのよ!」
「人怒らせておいて嬉しそうにしてんじゃないわよ、この……バ輝夜っ!」

 がしっと輝夜の腕を掴み、私はそのまま力いっぱい窓の外目掛けてぶん投げてやった。あーれーとか言いながら楽しそうに飛んでいった輝夜は窓をぶち破り、そのまま外の竹林に直行。当然私も後を追う。後ろで優曇華達があわあわしてるけど、もう知らない。悪いのは散々人の神経逆撫でしてきたあんた達の御主人様なんだから、文句はそっちに言って頂戴。

「さぁ妹紅、この一瞬を、私達のパーティを、楽しみましょう!」
「輝夜ァァァァァ―――ッ!!」

 飛び交うお互いの弾幕に火炎。たまに舞い散る真っ赤な肉片。ただの弾幕ごっこじゃない、私達だからこその殺し合い。何千年経ったって、何万年経ったって。お互いが存在する限りきっとこの一秒一瞬は永遠に続いていくのだろう。心の底から認めたくないが、どうもこの見解に関しては私と輝夜、どっちも共通しているみたい。
 それから半日後。我に返った慧音と永琳が慌てて止めに来るまで私達はぶっ通しで戦い続けましたとさ。わかっちゃいたけど、やっぱり私達にあのあにめ?みたいなはっぴぃえんどとか、無理だわ。絶対。










「ところで師匠。月の使者が姫を迎えに来る場面の感想とか無いんですか?」
「いやー防衛面子も頑張ってたよね。てゐさんああいうの好きですよ」
「あぁ、あの場面? ふっ、ただのカカシ同然ね。私なら瞬きする合間に全滅させられるぐらいにしか感じなかったわ」
「あのーそれって、どっちの陣営に対する意味で……いえやっぱりいいです」
今は昔、誰もが知る東方二次SS投稿サイト
かの有名……でもない、橙華(仮)はこう言った
「やっぱりハッピーエンドなんだよなぁ」

今は仮も取れて、橙華とっつぁんとして存在しております。多分覚えておられる方いないと思いますが、久しぶりの四月馬鹿、賑やかしの一助になれば嬉しい限りです
橙華とっつぁん
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コメント



0.簡易評価なし
1.1000500奇声削除
良かったです