Coolier - 東方曹操話

騙し愛

2021/04/01 02:11:27
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「パルスィ、貴方なんてどうでもいいのよ」

 嘘なんて、つかないでほしい。どうせばれるのだから。
 誤魔化そうと泳ぐ目玉、欺こうとする思考、何なら鼻がひくひくと動いてる。嘘なんて、心を読まなくても、所作、あらゆる所から全てばれてしまうというのに。

「……それでも私は、貴方を友達だと思っているわ」

 ……また嘘をつかれた。もうこれで何回目だろうか。いい加減、その嘘にも飽きてきた。
 さとり妖怪だからか、嘘はたくさん知っている。純粋なものから、悪意溢れるものまで。純粋なものだと、お燐がするエイプリルフール。さとり様の髪の毛が緑色になった! とか、意味不明で、なんとも可愛らしいもの。悪意があるものと言えば、人間の嘘。一度か二度見ただけとはいえ、金髪の魔法使いは特にひどい。
 今回は悪意など無い嘘だった。だからこそ、私は失望している。

「だったら、その心の中にあるのは、何だと言うのです……!」

「……違うの、これはね――」

「違う? 何が。言ってみたらどうなのですか。……また、言えずに帰るのでしょうけどね」

 ほらみろ、とたんにたじたじになって、尻尾を巻いて家へと逃げ帰ろうとする。……もう目の前から消えた。
 心の中を偽ろうとすることは不可能ではない。うわべだけなら、心の中でも嘘をつける。私にはお見通しだけど。
 それでも友達なの、だって。……心の中でも嘘をつくのか。空虚な嘘だ。是非とも自身の胸に手を当ててもう一度考えてほしい。私を本当に友達だと思っているのか? 今さら私に嘘をついて、何の益があると思っているのか?

「はあっ……。嘆かわしい」

「あの、さとり様」

「……お燐? 手短に」

「その、パルスィがさとり様の気分を害しているなら、二度と地霊殿に入れないことをおすすめしたいのだけど、……どうですか」

 パルスィを追い出す。二度と地霊殿に来られないようにする。だけど私は地底の統治者。……できれば別の手段を取りたい。

「あれでも地底に住む者。出禁などできないのよ」

「……。(さとり様が、心配だよ……。パルスィなんかに精神をすり減らして、どうするのさ)」

「確かに、その事は無益とは思っています」

「だったら、どうして……!」

「落ち着きなさい。お燐。統治というのは、その妖怪を好き嫌いで、優遇したり、追い出したりしてはならないの。感情論で済む話ではないのよ」

 地底を統治するのに、私が好きか嫌いかなど、些細なことでそいつを優遇、冷遇などしない。そいつがどれだけ私を嫌おうが、好こうが、役職は能力で決める。

「さとり様……。(平等を大切にするさとり様、高潔すぎて、あたいには眩しいや。でもなぁ、パルスィがそんなに嫌いなら、その高潔さも捨ててしまえばいいのに。パルスィが優秀だとしても、あたいが補える程度なはず。パルスィに頼らなくても、地底は回るよね)」






 ……お燐にまで誤解されてしまった。
 パルスィ、もう嘘をつくのはやめてほしい。私だって参っているの。
 ……お燐にまで嘘をつかないといけない私に。
 高潔でも何でもない、えこひいきで平等さの欠片もない私に。
 貴方にどうでもいい、だなんて、悪意はなくても、失望されるような嘘をつく私に。
 たった一歩。そのたった一歩すら踏み出せない私に。

 ……友達だなんて言わないで、早く愛していると言って。
 私、自分からアプローチできなくて、突き放してしまって。もう嫌われたと思ったのに、まだ見捨てないでくれる。
 嘘なんか止めて。……両思いなんだから。私は貴方が私を愛してくれていることを知っている。だから、私の心を読んでよ。それで、好きと言って。そしたら、きっと私も好きと言えるから。
お互いに、騙しあい。

きれいなさとり様は皆様が書かれているので、作者、嘘つきで卑怯なお姫様を書きたかった。告白の難易度はどう考えてもさとりの方が低い。相手の心を知っているから。それなのに相手に告白を求める。

このサイトを知って一年未満だったので、東方曹操話、騙されました。
乗るしかない。このビッグウェーブに。と、あわてて一時間で仕上げました。
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コメント



0.3594000簡易評価
1.3594000奇声を発する程度の能力削除
良かったです
3.3594000げぇっ、コメント!削除
良い百合でした。誤解されやすいさとりさまいいですね