昔話を、します。
といっても私は13歳なので、まだほんの少し前のことですけれど……
その時の私はまだ、鳥取県に住むちょっと運の悪いただの小学生でした。
両親と出かけている時にはぐれてしまい、
探しているうちに道と住宅が入り組んでいるエリアに入り込んでしまい……
あ、鳥取って何もないってよく言われますけども、
大きな駅の周辺は結構家が多くて、狭い道もたくさんあって、
見通しもあんまり、よくなかったりします。
同じところをぐるぐる回ってしまったり、
元いた場所にさえ戻れなくなってしまったり、
そうやって、歩き回って疲れたところで偶然、神社を見つけました。
ひとまず座れる場所がほしい。
そう思って入ってみたのですが、数少ないベンチは既に座っている人がいました。
「あー、疲れた。なんであんな辛気臭い会議に行かなきゃいけないんだか」
「関係ない人がほとんどだしね。天津や国津の皆さんとは違うよ」
「あの連中にとっては同窓会でもねぇ……」
「もう行くのやめようか。話はつまらない、酒はまずい、旅費もばかにならないし」
「えー。でも行かないと変なこと企んでないか怪しんでくるじゃない」
片方の人は茶髪でものすごく派手な服とバッグで、
もう片方の人は凄く長い青い髪で、服にはいろいろと何か貼ってあって、
とにかく存在感がある二人でした。
あ、すみません……。まだ私は本当に小さくて、
座っている人のことを考えず、じっと二人のことを見つめてしまってました。
姿や格好が奇抜でも、そういうことしちゃいけないですよね……。
その時も、ずっと見てしまっていたからか、
私と茶髪の方と目が合ってしまい、非常に驚かせてしまいました……。
「どわっ!」
「ひっ! す、すみません……」
「え、女苑、どうしたの」
「いやこの子がずっと見ていて」
驚いた声に驚いてしまいました……
隣にいた青い髪の人もとても驚いていて、
まるで浮き上がったかのように見えました。
何事かと思いましたが、瞬きをするとちゃんと地面に足がついていました。
「お嬢ちゃん、どうしたの?」
「あ、あの、道に迷ってしまって……」
「お母さんやお父さんは? 携帯電話は見た?」
「え、あ、そうだ……」
青い髪の人が話しかけてくるまで、携帯電話のことをすっかり忘れていました。
メッセージも着信もたくさん入っています。
慌てながら迷ったこと、神社にいることを伝えると、
5分くらいで迎えに来るから動かずにそのままいるように、と言われました。
青い髪の人にそのことを伝えると、私と同じくらい喜んでいました。
「へぇ」
それに対して、茶髪の方が私のことをじっと見て、話しかけてきました。
「あんた、アイドルに興味あるの」
「え、あ、はい……」
はぐれる前に買ってもらった、子供向けのアイドルグッズが目に留まったようです。
屈んで正面から私のことを見つめてきます。
「ねえ、アイドルなれると聞いたら、やってみたいと思う?」
「あ、あの……」
あまりに突然のことで、言葉が出てきません。
でも、首を縦に振って頷いていました。
「よし、決まった! なら一緒にアイドルを目指さない?」
「へ!? え、あ、その……」
「ほたる!」
その時、両親が神社につき、私を見つけてやってきました。
すると、茶髪の方はすっと立ち、表情も口調も変え、両親へ挨拶しました。
それは、これから何度も目にすることになる”大人の対応”だったのですが、
そのときの私にはとても怖く感じました。
両親曰く、この時に私の魅力やアイドルとしての可能性を強くアピールされたそうですが、
その大人の対応が怖かったからか、言葉が複雑だったからか、ほとんど覚えていません。
ただ、一つ覚えているのが、とても派手な名刺を私と両親に渡したあと、別れ際に言われたことです。
「私は依神女苑と申します。もしご興味があればご連絡ください。
各種手配をする準備はできています」
そしてこれが、私と依神さんとの、少し不思議で、すごく苦くて、
でも忘れられない数年間の始まりでした。
といっても私は13歳なので、まだほんの少し前のことですけれど……
その時の私はまだ、鳥取県に住むちょっと運の悪いただの小学生でした。
両親と出かけている時にはぐれてしまい、
探しているうちに道と住宅が入り組んでいるエリアに入り込んでしまい……
あ、鳥取って何もないってよく言われますけども、
大きな駅の周辺は結構家が多くて、狭い道もたくさんあって、
見通しもあんまり、よくなかったりします。
同じところをぐるぐる回ってしまったり、
元いた場所にさえ戻れなくなってしまったり、
そうやって、歩き回って疲れたところで偶然、神社を見つけました。
ひとまず座れる場所がほしい。
そう思って入ってみたのですが、数少ないベンチは既に座っている人がいました。
「あー、疲れた。なんであんな辛気臭い会議に行かなきゃいけないんだか」
「関係ない人がほとんどだしね。天津や国津の皆さんとは違うよ」
「あの連中にとっては同窓会でもねぇ……」
「もう行くのやめようか。話はつまらない、酒はまずい、旅費もばかにならないし」
「えー。でも行かないと変なこと企んでないか怪しんでくるじゃない」
片方の人は茶髪でものすごく派手な服とバッグで、
もう片方の人は凄く長い青い髪で、服にはいろいろと何か貼ってあって、
とにかく存在感がある二人でした。
あ、すみません……。まだ私は本当に小さくて、
座っている人のことを考えず、じっと二人のことを見つめてしまってました。
姿や格好が奇抜でも、そういうことしちゃいけないですよね……。
その時も、ずっと見てしまっていたからか、
私と茶髪の方と目が合ってしまい、非常に驚かせてしまいました……。
「どわっ!」
「ひっ! す、すみません……」
「え、女苑、どうしたの」
「いやこの子がずっと見ていて」
驚いた声に驚いてしまいました……
隣にいた青い髪の人もとても驚いていて、
まるで浮き上がったかのように見えました。
何事かと思いましたが、瞬きをするとちゃんと地面に足がついていました。
「お嬢ちゃん、どうしたの?」
「あ、あの、道に迷ってしまって……」
「お母さんやお父さんは? 携帯電話は見た?」
「え、あ、そうだ……」
青い髪の人が話しかけてくるまで、携帯電話のことをすっかり忘れていました。
メッセージも着信もたくさん入っています。
慌てながら迷ったこと、神社にいることを伝えると、
5分くらいで迎えに来るから動かずにそのままいるように、と言われました。
青い髪の人にそのことを伝えると、私と同じくらい喜んでいました。
「へぇ」
それに対して、茶髪の方が私のことをじっと見て、話しかけてきました。
「あんた、アイドルに興味あるの」
「え、あ、はい……」
はぐれる前に買ってもらった、子供向けのアイドルグッズが目に留まったようです。
屈んで正面から私のことを見つめてきます。
「ねえ、アイドルなれると聞いたら、やってみたいと思う?」
「あ、あの……」
あまりに突然のことで、言葉が出てきません。
でも、首を縦に振って頷いていました。
「よし、決まった! なら一緒にアイドルを目指さない?」
「へ!? え、あ、その……」
「ほたる!」
その時、両親が神社につき、私を見つけてやってきました。
すると、茶髪の方はすっと立ち、表情も口調も変え、両親へ挨拶しました。
それは、これから何度も目にすることになる”大人の対応”だったのですが、
そのときの私にはとても怖く感じました。
両親曰く、この時に私の魅力やアイドルとしての可能性を強くアピールされたそうですが、
その大人の対応が怖かったからか、言葉が複雑だったからか、ほとんど覚えていません。
ただ、一つ覚えているのが、とても派手な名刺を私と両親に渡したあと、別れ際に言われたことです。
「私は依神女苑と申します。もしご興味があればご連絡ください。
各種手配をする準備はできています」
そしてこれが、私と依神さんとの、少し不思議で、すごく苦くて、
でも忘れられない数年間の始まりでした。
出来る女な雰囲気の女苑も魅力的で良いですね。