OqqIlcn - 親主・束片割楚誥

西暦2078年 東方

2018/04/01 01:10:12
最終更新
サイズ
15.86KB
ページ数
1
閲覧数
608
評価数
3/3
POINT
280
Rate
15.25

分類タグ

「次のニュースです。総務省統計局の発表から、日本の人口に占める高齢者の割合が50%を超えたことが分かりました」

 風呂上がりの談話室。群れた老人たちが、これまた老人のニュースを眺めている。
 仲の良いばあさん連中が「二人に一人! 私らみたいなのばっかりじゃない!」と騒いでいる。
 うるさそうなので隅っこの方の席に座ろうかな。
 スマートグラス……眼鏡型デバイスのピントをテレビに合わせた頃に、見守り支援ロボがお茶を持ってきてくれた。

「このままでは年金制度が崩壊するのではないでしょうかねえ。ゆとりだか、さとり世代の高齢者の方って、田舎の老人ホームでのんびりされている人が多いって聞きますよ。そういった方も元気で働いてもらうべきだと思うのですが、いかがですか」
 
 司会のおっさんが声を荒くしている。
 ゆとりと言われて80年余。何だかテレビのニュースって、半世紀ぐらい同じことを言っている気がするなあ。いつになったら年金崩壊するんだよ。
 今のトレンドは、エコノミー老人ホーム。
 無欲なさとり世代にとって、やれ旅行だのクリスマス会だの地域の楽団の演奏だの、そういったイベントごとに巻き込まれたくない者が多いのだ。
 そんなことより格安志向。土地の安い田舎にあって、イベントや設備も最小限で、清掃・介護ロボの活用で従業員の少ない住宅型老人ホームが人気を博しているのだ。
 自分のところは月額10万弱。厚生年金加入者なら赤字になりづらい水準だ。
 こういうとこから、今の老人は金を落とさないとマスコミに叩かれているのでありました。叩かれっぱなし人生でございますよ。
 これでも入居一時金とやらで300万ほど貯金をふっとばされているんだし、勘弁してほしいところである。
 
「若者が余裕を持って子育てできる環境を作ることが急務ですね。現在、四人に一人が生涯独身、男性に至っては三人に一人ですよ」

 こういう解説も100万回ぐらい聞いた気がするなあ。
 それにしても三人に一人が生涯独身って。……ちょっと安心してしまった。
 
「さて、本日は2078年4月1日。エイプリルフールです。各企業や団体の面白い試みを紹介します……」

 あ、4月1日。誕生日だ。
 日付間隔の失われる監獄みたいな老人ホームの片隅で、またもやしれっと年を重ねてしまった。
 88歳。米寿になるのもあっという間ですこと。


 ===


 誰も誕生日を祝うことも無く、今の男性の平均寿命の87歳を超してしまった。
 センチメンタルな気分で談話室を眺めていると、頭に一つの仮説が浮かんだ。
 人間って全く成長しない生き物であると。
 例えば、談話室であるにも関わらず騒いでいたばあさん達。
 中高生の時にクラスにいた、人気があってちょっとうるさいタイプの女子グループがそのまま年を重ねたように見えてきたのだ。
 活発なじいさんは朝にウォーキング、昼に運動室でスポーツ、夜にトレーニング仲間と談笑しながらガッツリご飯と、体育会系の匂いを感じるし。
 そして、どのグループにも打ち解けることができず、部屋の隅の方でテレビを見ている自分と来たら。
 昼休み、教室で一人時間を潰すのに一生懸命だったあの頃と、全く同じなのだ。
 
「部屋に戻るか……」

 立ち上がると、見守りロボが湯呑みの回収にやってきて、こちらをキョトンと見つめてきた。
 『元気が無さそうですね。健康診断アプリを立ち上げますか?』と表示してきやがる。いらねえよ。無視だ無視。
 
 
 ===
 
 
 自室に戻る最中、ぎゃあぎゃあと盛り上がっている部屋があった。
 多目的室とあるが、普段はレトロゲームが自由に遊べるようになっている。
 置いてあるのはもちろん、ニンテンドークラシックWiiだ。
 「あの懐かしのWii」との触れ込みで、ゲームの他にWii Fitで健康管理もできるとのことで、老人ホームで導入が進んだのだとか。
 部屋をちらと覗いてみると、どうやらマリオカートをしているようだ。
 じいさんとばあさんがハンドル型のコントローラーを持って、体を左右に傾けながら和気あいあいとプレイしてやがる。
 
「レトロっていうならせめてマリオカート64じゃないのかねぇ……」

 こういうことをいうと、オタ老害などと言われてしまうかもしれない。
 ゲームを楽しそうにプレイしているのを見ると、燻った気持ちが心の奥から湧き上がってしまう。
 逃げ帰るように自室に向かう。

 法律上ぎりぎりサイズの13平米の自室に置いてあるのは、ベッドに机、収納棚にクローゼットと殺風景。ちょうど、ビジネスホテルと同じような作りになっている。
 人工筋肉入りの歩行補助ズボンが無ければ、狭くて身動きするのも辛かっただろう。
 いやあ、技術の進歩って最高。
 
 『10分以内の排尿が予測されました。お手洗いに行きましょう』
 
 スマートグラスの視界の隅っこにメッセージが映し出された。
 いや、ここまでされるとちょっと恥ずかしいのだけれども。いやはや、技術の進歩って最高でございますこと。
 
 
 ===
 
 
 スマートグラスの操作は至って簡単だ。外カメラが自分の手の動きを認識し、ジェスチャーによってアプリを立ち上げることができる。
 机に座ってキーボードアプリを立ち上げれば、机の上にキーボードがあるかのように眼鏡に映し出される。
 実際に机を叩けば、外カメラが指の動きを検知することで、キーボードを操作することができる。
 この他、時計やテレビ、リマインダ、道案内アプリを現実世界に重ねて描画できるのは便利だし、遠くを見たいときはズームした映像を映してくれるのは老眼に嬉しい。
 自室に3Dモデルの女の子を呼び出して云々なアプリには何度お世話になったことか。
 
「ブラウザ、全画面モードっと……」

 安静にしている時限定で、アプリを眼鏡の全面に表示することが可能だ。
 人付き合いを拒んで、結局はネットに逃げる、そんな一生でございますよ。
 
「……ん? Twitterが一日限定で復活!? エイプリルフールだかで!」

 ネットニュースのトップだ。
 広告やアカウント停止等で度々揉めて、別サービスの利用者増で経営が伸び悩んで30年前に消えた、あのTwitterが復活!?
 どうやらエイプリルフールと設立者の逝去に伴って復活されているんだとか。
 各国のサーバーの24:00までとのこと。
 日本版のTwitterなら……。時刻を見ると21:00。あと3時間しか楽しめないじゃないか!
 慌てて検索、ログイン画面に移行する。
 
「remi_remi_tarouっと……」
 
 ログイン、成功。
 ハンドルネーム、ひょっとこレミ太郎。レミリアクラスタだが、アイコンは訳あってTwitterのデフォルト画像。
 また一つ、心の古傷をえぐられてしまったような心地だ。
 タイムラインは設立者の追悼の気持ちなどとは全く無関係に、一つのタグで盛り上がっていた。
 #30年前の自分の絵と今を比べてみる とのことで、絵描きの成長記録がずらずらと流れている。
 絵描きってヤツはすげえや。30年も自分の趣味を続けられるなんてな。
 自分なんて、ずっと前に創想話に3話だけ投稿して、それで創作活動に終わりを告げている。
 1作目は叩かれ、2作目は微妙と言われ、3作目に至っては匿名点のみで心がポッキリ折れてしまったのだ。
 
「しかし、さすがに東方は少ないな……」

 自分にはよく分からない、恐らく今流行りのアニメキャラだかが流れていく。
 だが不意に、見覚えのある絵が目に入る。
 
「スーパーミルキー氏の魅魔様の絵だ! 絵柄変わってないなあ……。『手の震えと戦っているので劣化していると思う』って、全然いけるじゃないか」

 スーパーミルキー氏。東方を通じて知り合って魅魔様スキーの絵師で、イベントでも何度か顔を合わせている。
 フォロワーの中で最も絡んでいたといってもいいほどだ。
 
「むしろうまくなってない? あと、通話行ける?」

 つい、テンションが上がってリプライ。
 Twitterが迷走しだした頃に追加された通話機能を使ってみる。今もいけるのかな? これ。
 そう思っていると、すぐに着信音が鳴り出した。
 
「もしもし、レミ太さん?」
「あ、ミルキーさん? お久しぶり! ちょっとちょっと、声、老けてるじゃん!」
「いやそっちこそだよ! 何歳だよ? 自分85だけど」
「……今日で88になっちゃった」
「今日!? え、しかも米寿!? うっそ、おめでとうございます!」
「あ、ありがとうございます……。いや、全然嬉しくなくてね。平均寿命を超しちゃったからね。ただのヨボヨボじいさんだし」
 
 嘘。割と嬉しい。
 Twitterが無くなってから、これといったコミュニティを作らなかった自分にとって、話せる相手がいるだけで変にテンションが上ってしまっている。

「いやでもすごいね。30年後経ってもまだ魅魔様描いているなんて尊敬する」
「いやいや、単に好きってだけで続けているだけですから」
「そっか。好きなら続けられる。うん、そうだよね……」
「あ、いや、すみません。気にさせるようなこと言っちゃって」
「いや、そんなことは! ごめんなさい、自分こそ、つい変な空気にしちゃって!」

 ミルキー氏、深夜まで仕事をしていながらも精力的に同人活動を続けていたツワモノだ。
 つい、仕事を言い訳にしていた自分とは比べ物にならない。
 ……せっかくの通話なのに、ネガティブになるとよくないな。話を切り替えよう。
 
「そうだ、最近の東方、どうなっているか教えてもらってもいいかな?」
「え、いい? 自分こそすっごい話したかった。ネタバレあってもいい?」
「もう遠慮なくどうぞどうぞ」
「えーっと、それじゃあ……」

 少し間をおいて、抑えたトーンで返される。
 
「神主、去年亡くなったのは知ってるよね?」
「あ、それはさすがに。見たよ、まとめサイト。『【悲報】東方、ついにオワコンへwww』とか見出しにつけて」

 まとめサイトは今も元気に存続中。
 大手まとめサイトとやらは親子三世代に渡って管理人をやっているんだとか。世も末にもほどがあるわ。
 
「その辺も含めて、色々と東方らしい終わり方で自分としては嬉しかったかな……」
「というと?」
「神主、去年でちょうど100歳だったみたいで。しかもその時に出した新作がth60!」
「……は? th60?」
「そう! th60! 花映塚でもあったし、東方的にはすごい区切りのいいナンバリングで、もう奇跡としか!」
「60作って。いや、小数含めるともっとだけど。いやはや精力的というか神主、元気に生きすぎ……」

 自分の愛する紅魔郷がth06でしょ? どんだけ作ってるんだ……。

「しかもあとがきもストーリーも、全然終わる感じがしなくって。ずっとそのまま続いていくような感じで」
「終わらせないという終わらせ方を取ったと」
「そんな感じ。絵描きコミュニティも、そりゃ追悼イラストとかはあったけど、悲観的にもならずに東方描く人はそのまま描いてて……」
「そっか」

 自分が死んだとしても、この世界は当たり前のように続いていく。
 憂鬱になってしまう話題だけれど、東方に関しては何故か希望を感じさせられるのは何故だろう。

「というか、まだコミケ参加してるの?」
「今はバーチャル即売会も多いけど、やっぱり対面が好きだからねえ……。あ、神主も夏は参加してたみたい」
「100歳で!?」
「いや、そんな驚くことでも。なんせ二人に一人が高齢者。対面式を好む人なんて若い人にいないし、三人に二人ぐらいは高齢者なんじゃないかな……」
「地獄絵図だ……」
「ちなみにレイヤーさんも二人に一人が高齢者」
「阿鼻地獄絵図だ……」

 始発組とか、徘徊老人の大群にしか見えないだろうて。
 体力よく持つなあ、日本の老人どもめ。スタッフさんとか大変でしょうて。
 
「で! で! その夏コミで頒布されたth60! これがまたすごくって!」

 ミルキー氏の鼻息音をマイクががっちり拾っている。興奮しているようだ。

「モブ系のキャラを除くと、今作でちょうど500人になるみたいで!」
「……いやわからん。もっかい言って?」
「うん。500人」
「ポケモンか!? 最近のポケモンの話をしとるんか!?」
「やだなあ、ポケモンなら最新作で3000匹超えたってCMやってるじゃないかぁ」
「やーだー。おじいちゃんボケてるから言ってることわかんなーい」

 電卓アプリを起動して計算。
 どうやら、東方キャラは2ヶ月で1人、ポケモンは10日で1匹追加されるペースらしい。
 すげえ。老人の脳みそから言語野が吹き飛ぶぐらいすげえ。
 
「ともかく。今年でちょうど500人になるんだけど。th60のExボスが最後のキャラってことになる」
「そういうことだね」
「そう。そしてレミ太郎さん。あなたがリプライしたあの絵のキャラ……。実は新作のキャラでもあるんですよ」

 うん? 別にいつもどおりの絵だったような……。
 ……いや、ちょっとまさか!?
 
「待って、魅魔様、th60にして復活したの!? Exボスとして!?!?!?!?」
「……そう!!!!」
「まじで!!!!!! やばい!!!! てか、おめでとう!!!!!」
「ありがとう!!!!」

 まじかよどんだけ待たせたんだよ! 50数年ぶりに復活とかやばいって!

「いや、愛があれば報われるもんなんだねぇ……」

 ぽろっと漏らしたその一言に、ミルキー氏から穏やかに返された。
 
「……レミ太さんはそういう愛というか、情熱みたいなのは、もう……?」
「持ってない、といえば嘘にはなる」
「そっか。そりゃそうですよね。レミ太さんほど原作愛がある人、中々いないと思うし」
「……ストレートに愛してる、とも言えなくなってしまったのも事実だよ」

 原作を愛しているのか、愛していたのか。どちらの表現がいいのか分からないが、ともかく自分は原作勢だった。
 レミリアが好きなのも、原作で彼女の弾幕を避けて、楽しいと思えたからだったんだ。
 弾幕力はメキメキと伸び、ルナティックノーミスノーボム達成は当たり前。紅魔郷のスコアボードなら5本の指に入るほどだった。
 
「でも、マイスタくらいならもう一回避けたいな……。あれ、楽しくてさ」
「そう言える人、レミ太さんぐらいだってば」
「口だけなら何とでも言えるよ。でも、まあ……」

 原作を楽しいと思えなくなった言い訳なんて、いくらでも思いつく。
 40を過ぎた頃から、避けたはずの弾に当っていると思うことが妙に増えてきたとか。
 私生活で人を動かす側の立場で忙しくなってくれば、「弾幕STGなんかに努力するより、プロジェクトを成功させねば」と思うようになってしまったとか。
 そうやって鈍った腕ではノーミスノーボムをどうしても達成できない作品が現れて、自分の中で焦りのような感情がどんどん高くなっていったとか。
 弾幕力の衰え。原作が上手い人、原作愛に溢れた人というコミュニティにいた自分にとって、それは致命的だったんだ。
 弾幕を避けて楽しいと思えなくなったその時、原作を愛しているとはいえないなんて思いつめてしまった。
 東方から逃げ出すような贖罪のような、そんな気持ちで、レミリアのアイコンを消してしまったのだ。
 後は転げ落ちる一方。努力なんて必要ない、ノベルゲで癒やされるだけの日々だ。
 自分は東方でチャレンジスピリットを知り、東方でチャレンジスピリットを失ってしまったのだ。
 
「今の目と腕では弾幕なんてとても……」
「それはもう、年が年だから仕方ないとして。でも、レミリア好きなのは変わらないんでしょう?」
「何を言うか! この88年、彼女のことを想わない日など一度も……!」

 勢いでレミリアを自室に呼び出して会話するアプリを作ったりしてしまったくらいだ。
 人並みにはレミィを愛しておるわ!
 
「まあ、原作も無くなった今、ミルキーさんのように報われるってことはもうないだろうけども」
「そんなこと言わずに……。そうだ、いいこと教えよう。レミ太郎さんの三作目、私あれ、結構好きで」
「えー、いまそんな事言われると機嫌とられたような気になるー」
「そんなこと、言わずに! でもほんと。身内だしコメントつけるのもいけない気がして、ちょっと言いそびれてたところはあって、言っておきたくて」
「ふ、ふーん……。それならいいけど……」
「むしろ、ちゃんと話が作れて羨ましいくらい。自分、絵は描けても、ストーリーや言動でキャラクタを表現するの、全然出来なくて。本当に原作好きなのかって何度も叩かれたぐらい」

 うん十年も魅魔様描いているミルキー氏にそんなこと言うやつがいるとは、聞き捨てならないぞ。
 ただ、確かにミルキー氏はイラスト専門だ。漫画なんかは一度も見たことがない。
 
「レミ太さんのレミリア・魅魔様バトル物。win版と世界をまたいでいるのに、変な説得力があって、ちゃんと二人に見せ場が合って、魅力的で……。あと、やっぱり弾幕の描写が臨場感あったなあ。自分、原作あんまりうまくないから、そういうの中々無理で」
「そんな、そこまで褒めなくても……」
「いえいえ。せっかくの機会なので、伝えておかねばと」

 なんともむず痒い空気になってしまい、沈黙。
 時計を見ると、23:00を回っていた。そろそろ、消灯したほうがいい頃合いだ。
 ミルキー氏がふうと一息ついた。

「じゃあ、今日はこんなところかな」

 心が不意にざわついた。
 このまま、通話を切ってどうなる?
 Twitterが無くなって孤立した時に戻るんじゃないか?
 教室の隅でうずくまって一日をやり過ごすような中学生と変わらない日々を、また送ることになるんじゃないか?
 平均寿命を過ぎた身だ。このままただの老人として終わってしまうんじゃないか?
 本能的に、心が嫌だと叫んでいた。
 
「……よかったら、なんですが」
「急に改まって、どした?」
「合作、しません? 話は自分が作って、絵はミルキー氏に描いてもらって、それで、レミ魅魔の漫画を」
「ちょっとちょっと、自分、漫画のコマ割りとかそういうの、全然ダメで……」
「そこを、チャレンジスピリットで乗り越えるのだよ! 自分だって話なんて書くの、サビつき過ぎているぐらいで!」

 つい熱くなってしまったせいか、息が上がってしまう。
 それを聞いたか聞かずか、ミルキー氏、ふふっと笑い声を漏らした。

「言ったな。よし。それじゃあ、C212。出よう」
「いいの!? こんな老いぼれ作者がコミケに!?」
「いや、変な熱があったから圧倒されちゃって。それに、自分も初の漫画作品。この年で新たなチャレンジができるって、それもいいかなと」
「同感、同感だよ! おっと、もうTwitterが終わってしまう。じゃあ、早いうちに連絡先を……」

 後はトントン拍子に話が進む。スケジュールの目安だのを話して、詳しいことは明日にでも、ということで一旦通話終了。
 88にして人生を後悔するだの新しいこと始めるだの、中々馬鹿げているかもしれないな。
 だけれど、そんなチャレンジスピリットを育んでくれたのは、STGに他ならない。

「ああ、またTwitterが消えてしまう。ろくにツイートできなかったな」
 
 TLには、別れの挨拶が次々に流れていく。
 せめて、やり残したことはないようにしないと。

「さて、どこにやったもんかねえ」

 色んな画像が大量に眠る、フォルダの奥地を漁る。
 きっと、自分の他に誰も見ることはないかもしれない。
 だけどやはり、最後くらいは彼女を好きな自分でいたいものだ。

「よしっと」

 自分の生涯を狂わせた、その作品。
 プロフィール画面には、彼女の笑顔が咲いていた。
エイプリルフールの割に、大体は無理のない未来像を描いた感じ。
排泄予測デバイスすら既にあるらしいですよ奥さん。悪用しないでね。
さあ、60年後にこのSSを読み返すと2度楽しめるぞ!
飛び入り魚
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.簡易評価なし
1.100虚無太郎削除
数字で攻め立てられてどんどん高齢化社会を意識していって、わーおこれは。
C212とかtoho60thとか神主100歳とかパワーワード連発つよい
2.80奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
3.100名前が無い程度の能力削除
東方はどこまで行くのだろうか?