花見の季節に花火が上がる。
どかんどかんと景気良し。
弾幕ごっこが栄えるようになって、幻想郷の花火事情は右肩下がりになると予想したアナリストは多かったが、どっこい寧ろ業者が増えている有様だ。魑魅魍魎が跋扈する幻想郷、やむなく暮らす者もいるけれど、その多くは過酷な環境を屁とも思わず、人間でございと生きている。
弾幕ばかりにいい顔させるか、夜空の華は火薬に在りと、花火職人は燃え立った。
安全のために里から離れた場所に工房を立てた花火師は、やがて一人増え、二人増え、今では花火町という集落になっている。夏の世の風物詩、スターマインは派手さを増して、切磋琢磨でどんどん技術は向上したし、何より打ちあがる数が増えた。一晩のうちには打ち切れず、夜も昼のような明るさだった。
これじゃあいかん。分散して冬にも打つべし、春にも打つべしと、花火大会はどんどん増えていったとさ。
雪見だ、酒だ、花火を上げろ。
花見だ、酒だ、花火を上げろ。
どいつもこいつも飲んで騒ぎたいばかりである。
桜が見頃の今夜もまた、皆が夜空を見上げていた。
「『新入生入学おめでとう』上白沢歴史塾同窓会!」
ひゅー、どかん
真っ白で大輪の花が咲く。
\今の花火は立花煙火の新作だった/\いいやもう古い/
わいわい、がやがや。
「『よろず刃物承ります』テンモク工房!」
ひゅー、どかん
\小さいが綺麗な円だったな/\スポンサーの性格が出るのさ/
やんや、やんや。
提供花火というやつだ。
商店街の興行や寺社仏閣の祭りの人集めだけでは大勢の花火師は食っていけない経済状況。そこで彼らは、花火一発一発を”売りに出した”。金額が安ければ小さなもの、出す額を増やすごとに二尺玉、三尺玉と大きくなるし、人気の花火師は予約待ちである。打ち上げる前に提供者の書いた原稿と、提供者名が読み上げられるから、誰かへのメッセージや、業者の宣伝に使われることが多かった。
派手な花火を打ち上げるのは儲かっているというアピールだ。里一番の轟煙火に三尺玉を打たせるのと、小さな家を一軒建てるのが比較されるような値段である。金持ちは競って花火を打ち、また庶民の間にもリーズナブルなサイズを打ち上げるのが流行った。
「『レコードプレーヤー新春モデル入荷』霧雨道具店!」
ひゅひゅー、どかどか、どっかん
\てーしたもんだ/\今ので我が家が半年暮らせるぞ/
「『いつもありがとう、もっと頑張れ』薬缶坂有志一同!」
しゅるしゅる、どん
\随分小せえ/\デカいのばかりじゃ飽きるってもんだ/\そうだそうだ/
「『新連載企画進行中、続報待て』花果子念報編集部!」
ひゅー……、ずどん
\うるせえ/\うちのガキが起きたじゃねえか/\いいぞもっとやれ/
「『紀野屋文左衛門四十九日法要』故人得意先!」
ひゅひゅひゅひゅ、しゅるしゅる……どどどどどどどどどどーん
\ぶはっ/\なんだ今のは/\戦争か/\法要で花火ってどういう神経だ/
とどろく爆音が空気を震わせ、桜の花びらがひらり散る。
宴はいよいよ盛り上がり、鮮やかな色が飛び交った。
誰かが誰かに何か届けている。
それは打ちあがって、幻想郷上空でどかんと爆発した。
爆発音に振り返る、郷のどこかのその人は、輝く火花に何想う。
どかんどかんと景気良し。
弾幕ごっこが栄えるようになって、幻想郷の花火事情は右肩下がりになると予想したアナリストは多かったが、どっこい寧ろ業者が増えている有様だ。魑魅魍魎が跋扈する幻想郷、やむなく暮らす者もいるけれど、その多くは過酷な環境を屁とも思わず、人間でございと生きている。
弾幕ばかりにいい顔させるか、夜空の華は火薬に在りと、花火職人は燃え立った。
安全のために里から離れた場所に工房を立てた花火師は、やがて一人増え、二人増え、今では花火町という集落になっている。夏の世の風物詩、スターマインは派手さを増して、切磋琢磨でどんどん技術は向上したし、何より打ちあがる数が増えた。一晩のうちには打ち切れず、夜も昼のような明るさだった。
これじゃあいかん。分散して冬にも打つべし、春にも打つべしと、花火大会はどんどん増えていったとさ。
雪見だ、酒だ、花火を上げろ。
花見だ、酒だ、花火を上げろ。
どいつもこいつも飲んで騒ぎたいばかりである。
桜が見頃の今夜もまた、皆が夜空を見上げていた。
「『新入生入学おめでとう』上白沢歴史塾同窓会!」
ひゅー、どかん
真っ白で大輪の花が咲く。
\今の花火は立花煙火の新作だった/\いいやもう古い/
わいわい、がやがや。
「『よろず刃物承ります』テンモク工房!」
ひゅー、どかん
\小さいが綺麗な円だったな/\スポンサーの性格が出るのさ/
やんや、やんや。
提供花火というやつだ。
商店街の興行や寺社仏閣の祭りの人集めだけでは大勢の花火師は食っていけない経済状況。そこで彼らは、花火一発一発を”売りに出した”。金額が安ければ小さなもの、出す額を増やすごとに二尺玉、三尺玉と大きくなるし、人気の花火師は予約待ちである。打ち上げる前に提供者の書いた原稿と、提供者名が読み上げられるから、誰かへのメッセージや、業者の宣伝に使われることが多かった。
派手な花火を打ち上げるのは儲かっているというアピールだ。里一番の轟煙火に三尺玉を打たせるのと、小さな家を一軒建てるのが比較されるような値段である。金持ちは競って花火を打ち、また庶民の間にもリーズナブルなサイズを打ち上げるのが流行った。
「『レコードプレーヤー新春モデル入荷』霧雨道具店!」
ひゅひゅー、どかどか、どっかん
\てーしたもんだ/\今ので我が家が半年暮らせるぞ/
「『いつもありがとう、もっと頑張れ』薬缶坂有志一同!」
しゅるしゅる、どん
\随分小せえ/\デカいのばかりじゃ飽きるってもんだ/\そうだそうだ/
「『新連載企画進行中、続報待て』花果子念報編集部!」
ひゅー……、ずどん
\うるせえ/\うちのガキが起きたじゃねえか/\いいぞもっとやれ/
「『紀野屋文左衛門四十九日法要』故人得意先!」
ひゅひゅひゅひゅ、しゅるしゅる……どどどどどどどどどどーん
\ぶはっ/\なんだ今のは/\戦争か/\法要で花火ってどういう神経だ/
とどろく爆音が空気を震わせ、桜の花びらがひらり散る。
宴はいよいよ盛り上がり、鮮やかな色が飛び交った。
誰かが誰かに何か届けている。
それは打ちあがって、幻想郷上空でどかんと爆発した。
爆発音に振り返る、郷のどこかのその人は、輝く火花に何想う。
ぜひ他の作者さんもやって欲しいですな欲しいですな
これが見たかったんだという感情で今めちゃくちゃになってます。ありがとうございます。