OqqIlcn - 親主・束片割楚誥

Vtuber美々ノ兎慈の受難

2018/04/01 01:23:51
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「あらあら、早速お便りですのね」

>虚無太郎

>清香ニャン、 清香ニャン。
>愛娘が成長し、この春高校生になりました。次第に自分の世界を広げ、手の届かないところに行ってしまうようで少し寂しい気持ちがあります。いつもそばにいた我が子が自分の道を行き遠ざかってしまう寂しさに、いかに折り合いをつけていけばよいのでしょうか。それはそうと今日も塩と砂糖を取り違えました。どうにかしてください。

「ああ、ああ、虚無太郎様、分かりますわその気持ち。手塩にかけて育ててきた娘の成長、変化、どう止めようとも、どう抑えようとも変わっていく、育っていく身丈、乳房、ああ、少女のままこの姿を止めておければと私も幾度となく思いましたもの、そのお気持ち、よぉく分かりますわ」

 ……今更ながら、こいつを担当にしたのは間違いだったのではないかと思ったりもするのであるが、最早後の祭りとはこのことか。こいつの発言には注意をしておかないと。

「ですから虚無太郎様、どうか悩まないで。美しいものは皆、最も美しい時期というものがございますの。その瞬間を永遠とすることをどうか躊躇わないで。変化を断ち、命を絶ち、その御姿を死鑞と永久に保存なさいますことを迷ってはいけませんの。なぜならばそれは美の伝承、世界の姿をより美しく留める正当なる手段でございます――」

――ザーッ……

 Nice boat.

  ¶

「えー、はい、Vtuber清香ニャンの後輩的美少女美々ノ兎慈でっす! こんにちは! さきほどはうちの先輩が失礼してクソザコゲログロな内容を野放図に口にしてしまい申し訳ありませんでした! あの阿呆はきちんと調教――いやいや躾を済ませてから再び皆さんの前に引き回しますので、これにドン引きせずどしどしコメント頂ければ幸いです!」


  §


「はい、先ほどは後輩系指定暴力団竹美房に邪魔されてしまいましたがンンッ、この程度では清香ニャン、めげませんよ」

>むーと

>起立、気をつけ、こんにちは清香ニャン様。聞いてください
>私の彼氏が姉妹百合という言葉を聞いたことがないって言うんです。そんなのおかしいです。間違ってます。こんな狭い世界を変えるにはどうしたらいいですか?世界が変わればきっと百合は栄えてスカートは常にひるがえり体重は減って私にも彼氏が出来ると思うんです。

「注目、礼! こんにちはむーと様、貴方のお気持ち痛いほど分かりますわ。姉妹があればそこには既に百合がある。スカーレット、プリズムリバー、秋、古明地、九十九、依神、夢幻、ええ、ええ、綿月姉妹はあれ先輩が好きすぎてどうしようもない方達なので省きますが、ええ。これらの内に百合の花が咲かないはずがありましょうか? その通りでございます。そりゃあ東方は非R18などと謳われてはおりますが、それはカメラに納まる範囲内のことであって、コミックやSTGで描写されてない日常は最早語るまでもなき理想郷。その通りでございます。ですが残念なことにそれは幻想の世界の話であってゲフェ、ゴホッ」

 一気に喋りすぎだ、アホ。
 咳き込む青娥にエビアンを手渡すと、青娥はそれを真夏の野球男児宜しくグッと一気に呷って呼吸を整える。
 その傍らで、

「のう、屠自古よ」

 とんとんと布都に腕を叩かれ、一旦私の側のマイクをオフにする。

「なんだ?」
「正直我には分からぬのだが、その百合というものを許容してよいものなのかのぅ?」

 どこか納得いかない顔で小首をかしげる布都は――ああ、こいつの夫は私の父上だったわけだし、そういう意味ではこいつはノーマルなんだよな。

「逆に聞くが、何か問題でもあるのか?」
「同性同士の恋愛では子供が生まれぬ。少子高齢化は社会の衰退を招くではないか」

 ふむ。まぁ社会学的に考えれば同性同士の恋愛は損失とも取らえられるワケで、治世者としてはあまり喜ばしいものでもないということになる。
 そもそも統治する側からすれば、群衆は皆画一的かつ同一規格の方がやりやすくもあるわけで。

「つまり、それを許容することにメリットがない、と」
「そうじゃ。何某かの利があるならばそれを制度として定めるもよかろう。しかし明らかに損失しか生まぬ主張を一々受け入れていては収拾がつかなくなるぞ」

 うーん、まあ布都の意見は尤もであるし、損益を引き合いに出されると此方としても反論はしにくくなる。
 同性愛は今でこそ少数である故に、それを許容したところで出生率に影響はない。
 だが未来において同性愛者の数が異性愛者の数を上回ったとき。つまりそれが常識となった世界などこない言い切れる筈も無いが。

「だがな、布都よ」

 実際私と皇子の間に子が生まれるはずもなく、父上にはその点において迷惑をかけたことは疑いもないが。

「我ら治世者は民草が暮らしやすい世を作らねばならぬ。今や国は一つではないのだ。他国へ渡るも今は命懸けでも何でも無いし、暮らしにくい国から民は減っていく。それも国を滅ぼす遠縁となろう」
「それは……そうかもしれんが」
「酒や麻薬なんかもそうだ。基本的にそれらは人を利するものではないし、犯罪の発生を助長する面もあるが、しかしそれらは一時の幸福をもたらす」
「人が生きるのには幸せが必要、ということか」

 そう。少なくともこの国に住みたいと思える国を作れないのなら、それは既に統治者として失格である。

「百合を許容することで、誰かが直接的に不幸になるわけじゃない。仮に百合を原因に人口が減り始めるとするならば、そうなってから対策するのでも遅くはないはずさ」
「で、あるな」
「ということでむーと氏には姉妹百合が社会性を得るまで啓蒙活動を頑張って頂きたい」
「世は一朝一夕には変わらぬ、地道な努力が必要というわけじゃ。しかし屠自古よ」

 一度コメント欄を見やった布都が、やや薄ら寒そうな顔で眉をひそめる。

「結局このむーと氏には『彼氏がいる』のかの? それとも『いない』のかの」

 うん、ま。私もそれがどうにも引っかかっていたんだけど。

「ま、『彼氏がいる』ことにしておいた方が幸せでいいんじゃないか?」
「……そうじゃな。それで誰が不幸になるわけでもないしな」

 さてさてそれじゃ、先ほどから卑猥な単語を連発している清香ニャンを止めるとするかね。


  §


「はい、ではコメントもなくて暇なので清香ニャン、クソゲー実況とかやっちゃってみようと思います」

「本日プレイするクソゲーは『FGOGOA』というゲームででしてね」

「これはあれです、今や世界的にも知名度を得た『Fate』というゲームのスピンオフ的なゲームでですね、Fateは平たく言っちゃうと歴史的な英雄たちを召喚してバトルロイヤルするとでもいうべきもので」

「タイトルにゴアとかついていて不安になる部分もあるんですけど」

「清香ニャンは清楚系乙女なのでサツガイとかリョウジョクとかがあるゲームは苦手なんですが」

「このゲームはどうやらSTGゲームらしいので、ニャンニャンも安心してプレイできるわけですね」

「ええと、まずはプレイヤーの名前ですけれども」

「入力しやすさから『ほも』とでも入れておけばいいでしょう」

「キャラクターの性別は当然男を選びます。当然ですね」

「とりあえず、なるほど。こうやって画面に移ったキャラクターに石を当てるとポケ〇ンゲフンゲフン、サーヴァントをゲットできると。簡単ですね」

「与えるダメージは41で固定。パワーアップはどうやら無いようです」

「てかこんな投げるほど石あるんならもっとプレーヤーに寄越せよ。嘗めてんのか」

「ゴホン、失礼しました。清香ニャンは清楚系ですので嘗めてんのかとか言ったりしません。ニャン♪」

「えー清香ニャン、こう画面内の敵を探すべく部屋の中を一人でくるくる回っています。傍から見ると変態ですね」

「変態じゃありません。清香ニャンは清楚系美少女でした。ダメだぞクソザコエログロ邪仙とか言っちゃ。清香ニャンも傷つきます」

「えーとそんなこんなで第五特異点までクリア。元のストレスフルなゲームと違ってすごい快適ですね」

「石を湯水の如く放出することでサーヴァントが次々と溶けていきます。気持ちいい」

「てか石寄越せよクソ塩」

「ンン゛ッ、失礼しました。石、いっぱいあるって素敵ですね♪」

「そんなこんなで第六章、ちょっと嫌な予感がするんですけどね」

「なんで嫌な予感がするかというとこのステージにはゴリラ――」

「あっあっアーラシュ君、最初から死んでるw」

「ハサン先生可愛いですね。清香ニャン主に忠実で人格者な呪腕さんは大好きです。裏切り者とか最低ですもんね」

「物部大連がなんか此方を睨んでますけどンン゛ッ。ゲームに集中していきたいと思います」

「子安来ました。でもボイスのないゲームだと子安も静かでいいですね。はい子安撃破」

「ッアーーーー!!」

「出ましたゴリラ! 腹立つ顔してます。本当に腹立つゴリラです。視界に入るだけでウザい!」

「か た い !!」

「なんなのこいつ何だよ空気読めよそういうゲームじゃないだろこれまでの爽快感台無しじゃないか」

「死ね……今すぐ死ね……可及的速やかに死ね」

「クソザコギフトゴリラは死ね……」

「清香ニャンはイケメンもショタもロリも食いますがゴリラは許せません」

「ゴリラ死ねゴリラ死ねゴリラ死ね――やったーーーーー!」

「死んだ! ゴリラ死んだ!! QP少なっ!」

「アーーーーーーーッ!」

「ボスは相変わらす弱いですね。ゴリラに比べればクソザコナメクジです」

「はいそんなわけで第六特異点、心をなくしたゴリラクリアーしました」

「ゴリラは生きていてはいけない奴なんだってはっきり分かりましたね」

「もう二度とやりたくないです。皆さんは死ねとか安易に言っちゃダメだぞ♪」

「えーゴリラを倒したこれ以降は消化試合なので、ゲーム実況配信はここまでにします」

「ターミナルのキャラをフランちゃんに変更してゲーム終了」

「清香ニャンは人造人間大好きです。自分で作るのも大好きですよ勿論」

「はい、では清香ニャンのクソゲー実況第一回は終了です。第二回の予定はありません」


  §


「あら、新たなコメントですね」

>名前が無い程度の能力

>清香にゃんエロ可愛いです

「ありがとうございます。やれ最近はピンク髪だのピンク髪だのどこかのピンク髪だのが目立って羞花閉月天香国色なれど謙虚にして淑やかなわたくしの容姿は隠れがちですが、貴方のような慧眼をお持ちの方がいらっしゃるとあれば安心というもの。是非この機会にチャンネル登録を――」

 え、チャンネル登録? なんだそれ?
 布都に視線を向けるも、布都も布都で初耳だと言わんばかりにぽかんと口を開けて資料を漁り始める態で。
 仕方なしに腕を交差させてバッテンを作ると、青娥の奴が急角度に眉を跳ね上げた後、一度マイクを切ってチッと舌打ちをする。

「申し訳ありません。猿並の知恵しか持たない後輩系残虐鬼畜怨霊ちゃんの不手際のせいで、まだチャンネルが用意されていないようなんです。またの機会によろしくお願いしますね」

 へぇへぇ、私が悪ぅございましたよ先輩系腹黒外道屑仙人様。


  §


「あらコメントが立て続けに。忙しくなってまいりましたわ」

>名前が無い程度の能力

>清香ニャン様。
>自分はキョンシーが大好きです。
>子供のころ映画「幽玄道士」・「霊幻道士」を見てから病的なまでに好きです。
>ですが、この国の小説やマンガにはキョンシーが出てくる作品が少なすぎて悲しい。
>もっとキョンシーキョンシーな社会にするためにはどうすればいいでしょうか。
>どうすれば、死体が動き人間としての知性を失い傀儡となるキョンシーの素敵なエロさ加減を世界に伝えられるでしょうか。
>世界で流行っているゾンビと違い、キョンシーは肉体記憶(「魂魄」の「魄」)が残っていることで、その死体の個性が出てくる所が魅力だと思うのですが。
>清香ニャン様のような、上級のキョンシー使い様に是非教えを請いたいです。
>無茶を言っていたらごめんなさい。
>無視してくださいませ。

「ご相談ありがとうございます。ええ、ええ。キョンシー、腐っていて可愛いですよね。貴方のような情熱をお持ちの方があと百人、二百人といればこの世をキョンシーの大軍団で埋め尽くすことも――」
「駄目に決まってんだろ」
「はい後輩系首おいてけちゃんからの駄目出し入りましたーッ! 厄介ですねこの後輩系、何が厄介ってこの後輩系、弱点の死体をロストしているのに何故か平然と生存しているってあたりほんと厄介です。ついでに実体もないからコンクリ詰めにして東京湾に沈めることもできな――
ンン゛ッ、嘘ですよ。清香ニャンは可憐で非力な女子高生ですから、そんな野蛮な真似は致しません♪」

 ぶっちゃけもうメッキはとっくに剥がれ落ちていると思うのだが、この意地でも清楚系の演技を続けようという執念はすごいよな、こいつ。
 素直に感動したので、濡れタオルを手渡してやると、顔を一撫でして一息ついて直ぐに営業スマイルへ逆戻り。
 ほんと、千年生きてる邪仙は伊達じゃないな。

「で、肝心のキョンシーなんですけれど、これは先ほどの百合の話と同様で、どうあってもマイノリティというものは社会から爪弾きにされてしまうものです。こういう場合に如何にキョンシーが魅力的か、というのを言葉を重ねて力説すると、それだけで相手はドン引きしてしまうものなのですね。ですのでまずは専門的な言葉は敢えて封じ、一般人がキョンシーを嫌悪する点、例えば『噛み付かれると同類にされてしまう恐怖』ですとか、また香しい腐臭ですとか、そういったものを抑えて壁を壊すところから始めなくてはいけないと私は思っております。ですので私としても芳香には『お札を貼って命令以外のことをさせなく』したり、また血色をよくして人の肌色に近づけたり、肌ケアに努めさせて腐臭を消したり、そういった地道な歩み寄りをさせていっておりますの。専門からは随分と外れてしまいましたが、このような答えでよろしいでしょうか」

 なんだよ、やればできるじゃないか。

「はい、ではこれを以て回答とさせて頂きます。名前が無い程度の能力さんも今後ともキョンシーをよろしくお願いしますね」


  §


「続いてのコメントですね」

>名前が無い程度の能力

>清香ニャンさん、こんにちは。
>私は書籍などについてくる特典が好きなのですが、特典が好きすぎて最近は特典のために本を買っているまであります。このままではいけないとは思うのですが、特典がついていないと勿体なく感じられてしまうのです。これは一体どうしたらいいのでしょうか?

「……? ええと」

 コメントに目を通した青娥がきょとんとした顔で、此方に向かってハンドジェスチャーをしてくる。
 ええと、要するに質問の意図が分からない、ってことなんだろうが……参ったな。

「すみません、ちょっと助力が必要なようなので後輩系一切鏖殺戦国風呂ちゃんを呼びますね。兎慈ちゃーん、ちょっと」
「はーい何でしょうか先輩系淫乱混浴警察エバラさん」
「脳筋クソザコゴリラは黙って――ンン゛ッ。清香ニャンは極めて清楚ですから、この程度では怒りませんよ♪ この質問の意味を教えて下さいな」
「えーと、スマンが私にも分かりません。多分アレじゃないですか、買いすぎて本の置き場がなくなる、とか」
「え? 置き場がなくなれば書庫を新たに建てればいいだけの話でしょう?」
「それもそうか……あれ、じゃあ何が問題なんだ?」

 二人で顔を突き合わせていると、とんとんと二の腕を叩かれる。
 そうだな、三人寄れば文殊の知恵。さくっとPCのメモリを操作して、三つ目のアバターを作成、画面上に表示する。
 うーむ、元々一人用のウィンドウだから三体表示させると流石に狭いな……

「はい、新たなバーチャルユーチューバー、被拉致監禁対象系美幼女、太ノ桃さんです。太さんよろしくね」
「微妙に悪意のある名前よな。桃さんと呼べぃ」
「おい桃さん。この質問の意図が分かるか」
「うむ。恐らくであるが、コメ主はお金が勿体ないと言っているのではないだろうか?」
「お金が」「勿体ない?」

 思わず青娥と顔を見合わせてしまう。お金が勿体ないってどういう意味だ?
 流石に的外れなことを言いすぎだろうと布都に目配せをすると、布都の奴は何故か大仰に溜息をついて首を横に振ってみせる。

「その、のじゃ系ロリババア桃さん。どうしてお金など勿体なく感じるのです?」
「いいか。霍家も蘇我氏も大富豪だから分からぬであろうがな、民草にとって金子は無限にあるものではないのだ」
「またまたご冗談を――」

 ホホホ、と口を押さえて笑っていた青娥ではあったが、極めて真剣な面持ちの布都を前にして次第に笑い声が枯れていき、終いには真顔になって、

「マジで?」
「マジで」

 そんな馬鹿なといった風に、眉をひそめて考え込んでしまう。
 あーまあ、なんてーかさ、うん。私も財が尽きるとかよく分かんない。富がないってどういう状態なんだ?
 つか、今の書籍っていったいいくらぐらいするんだ?
 ……うーん、全然分かんない。

「なあロリビッチ桃さん、庶民ってどれくらい金がないんだ?」
「カップラーメンが400円だと思ってると殺意すら覚え、一国の首相や天才棋士がカツカレーを食べた程度で怒髪天を突くぐらいじゃな」
「すまんその例えじゃさっぱりピンとこない」

 一度肩を落とした布都が、お前たちは黙っていろ、とばかりに指で口に×を作ってからマイクを握りしめる。

「ええと、僭越ながらこの美幼女が名前が無い程度の能力様にお答えしよう。そうだな……まずはその趣味に投じる金額が食費を削るほどであるか。またその書籍の流通量が少なく、それを買い漁る行為が『買い占め』に当たるかどうかで話は変わってこよう。このどちらにも当てはまらない場合、其方の行為は何も問題ない範囲におさまっていると言える」

 けほ、と乾いた咳をエビアンで湿らせた布都が、再びマイクへと向き直る。

「消費とは社会経済を回す最善の行為であり、そして同時にモノを作成する者への投資でもある。名前が無い程度の能力様がそれを行うことで自身ないしは他者が不利益を被る場合を除いて、消費行動は総じて推奨されるものである。趣味とは、大小の差はあれどお金がかかるものであるからな。よいか、金を使うことは悪ではなく善、消費行動は褒められど批判されるものではないということは肝に銘じておかれよ」
「使えば使っただけ、作成者に金が入るもんな」
「左様。それを元手に作成者は次の何かを作成したり育てたりする。恥じることは何一つない。生活が苦しくないのであれば、恣に求めるがよい。それで誰も不幸になりはせぬ」
「でもその結果『使わない書籍』ができちゃうわけでしょう? そこんとここの国的にどうなの? 付喪神とかになっちゃったりしない?」
「あとさ、やっぱり過剰な消費って批判を集めるじゃん? そこんとこどうなんだ。一揆とか反乱とか起こる原因になるんじゃないのか」
「無論その可能性もある」

 うむ、と重々しげに頷いた布都が上を差した指を下へとスッと落としてみせる。

「だが人一人が買い控えたとて、栄えている国であればモノはどうせ余剰に作られ、廃棄される。ならば重複など気にせず買えばよいのだ。ましてや金持ちが金を貯えている限り、その金はどこにも出て行かぬ。誰かが金を手にする為には誰かが金を使わなければいけない以上、財は放出されねばならぬであろう」
「んーまあ、それもそうよね」
「どんな生活してたって上には上がいて、下には下がいるもんだしな。消費を下に下にと合わせていくと、世の中から金が動かなくなるワケか」
「左様。然るに名前が無い程度の能力様は気にせず社会の為に消費を続けてくれい。無論、自分が貧することのない範囲でな」


  §


「と、どうやら時間的にここまでのようですね」

「それでは丸一日完走した感想ですが」

「やはりユーチューバーの皆さんの苦悩が忍ばれるというか、生放送で人を不快にさせず愉快にさせることがどれだけたいへんかを痛感した次第でございます」

「邪仙などと呼ばれて幾星霜、自身の享楽を生み出すことは容易いものの、他者を満足させることがどれだけ大変か、それを改めて思い知らされた所存」

「なのでこの清香ニャン、太子様の顔を立てて本日は極めて清楚に振る舞って参りましたが、明日からは唯の邪仙に戻らせていただきます」

「ほんの1日ばかりではございましたが、お付き合い頂きありがとうございました」

「今後とも神霊廟並びに豪族組をよろしくお願いしますという言葉を以て、清香ニャン、美々ノ兎慈、太ノ桃、三者を代表しての結びと代えさせていただきます」

「それでは皆様、お疲れさまでした。新年度、強く生きて下さいね?」
この番組では皆の、リクエストをお待ちしておりました。
百衣
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コメント



0.簡易評価なし
1.100虚無太郎削除
清香ニャン、 清香ニャン。
愛娘が成長し、この春高校生になりました。次第に自分の世界を広げ、手の届かないところに行ってしまうようで少し寂しい気持ちがあります。いつもそばにいた我が子が自分の道を行き遠ざかってしまう寂しさに、いかに折り合いをつけていけばよいのでしょうか。それはそうと今日も塩と砂糖を取り違えました。どうにかしてください。
2.100むーと削除
起立、気をつけ、こんにちは清香ニャン様。聞いてください
私の彼氏が姉妹百合という言葉を聞いたことがないって言うんです。そんなのおかしいです。間違ってます。こんな狭い世界を変えるにはどうしたらいいですか?世界が変わればきっと百合は栄えてスカートは常にひるがえり体重は減って私にも彼氏が出来ると思うんです。
3.無評価名前が無い程度の能力削除
清香にゃんエロ可愛いです
4.100名前が無い程度の能力削除
清香ニャン様。
自分はキョンシーが大好きです。
子供のころ映画「幽玄道士」・「霊幻道士」を見てから病的なまでに好きです。
ですが、この国の小説やマンガにはキョンシーが出てくる作品が少なすぎて悲しい。
もっとキョンシーキョンシーな社会にするためにはどうすればいいでしょうか。
どうすれば、死体が動き人間としての知性を失い傀儡となるキョンシーの素敵なエロさ加減を世界に伝えられるでしょうか。
世界で流行っているゾンビと違い、キョンシーは肉体記憶(「魂魄」の「魄」)が残っていることで、その死体の個性が出てくる所が魅力だと思うのですが。
清香ニャン様のような、上級のキョンシー使い様に是非教えを請いたいです。
無茶を言っていたらごめんなさい。
無視してくださいませ。
5.100名前が無い程度の能力削除
清香ニャンさん、こんにちは。
私は書籍などについてくる特典が好きなのですが、特典が好きすぎて最近は特典のために本を買っているまであります。このままではいけないとは思うのですが、特典がついていないと勿体なく感じられてしまうのです。これは一体どうしたらいいのでしょうか?