恐慌焦燥話

勝手に魔改造

2017/04/01 17:04:40
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20170401 株式会社MARUYAMA
会社設立記念あいさつ兼ネットコンテンツ制作MTG議事録
執筆者:新卒S@議事録とるの初めてなんで、変なこと書いてたらさーせん!

新卒Sメモ
 ここのオフィス、トタンで出来た廃材置き場みたいで最悪だし、資本金1980円で会社をぶったててるとかでまじやばい。
 社員、今のところ社長がかき集めた友だちばっかりだし。
 オフィス環境と人員補強、なんとかしたほうがよくないっすかね? つーか給料でるんすか?

会議 9:30スタート。
社長「売れるなんかがほしい。こう、ネットでイニシアチブをとるような」
おれ「なんかって……。何っすかね?」
社長「うむ。ゲームだかアニメだか実況だか、わしはよく分からんが、なんか、ネットでイニシアチブを取れればそれでいい」

 情報部門のKさん、眼鏡をくいっと上げる。

情報K「なるほど、さすがは社長。流行が流行を呼ぶ、昨今の潮流を分かっていらっしゃる」
社長「その通り。そして歴史から学べば、流行を産むコンテンツなんて、簡単に作れるだろう」

 社長、A4ぺら1に箇条書きされた資料を配布。ファイルの参照を貼るのも面倒なので、ここに転記する。

===
 これが時代の流れを産んだ! ネットでイニシアチブな作品10集
 ・Kanon
 ・CROSS†CHANNEL
 ・東方project
 ・涼宮ハルヒの憂鬱
 ・魔法少女まどか☆マギカ
 ・艦これ
 ・HikakinTV
 ・ガールズ&パンツァー
 ・PPAP
 ・けものフレンズ
===

社長「これを混ぜてなんか作れば、絶対に売れる!」
脚本T「これ微妙に古くありません? そもそもこのリスト、適切なのかなあ……。といっても、自分、名前だけ聞いたってのがちょっとあるぐらいですけど」
社長「そうか。どれか、知ってる人はいるかー?」

 挙手、ゼロ人。うちの会社はテレビもネット文化に全く触れていないやつの寄せ集めですよっと。

社長「うむ。実はわしも全部知らん!」
情報K「なるほど……。では、まずこれら全ての作品を視聴・プレイ・研究し、その性質を検討することからがスタートですね」
社長「そんな時間はない! 2か月後には、なんか屈強な黒服どもが来てわしを連れ去ってしまうんだよ。wikipediaでも見れば何をやっているか、全部分かるだろう!」
情報K「しかし、社長。中身が伴わなければ、流行も狙えず、売り上げにもつながらないのでは……!」
社長「大丈夫だ、情報K。うちには営業の奇策がある」

 MTG参加者を確認するが、うちの会社に営業がいない。
 議事録、参加者リストでも書いた方がいいですかね。

社長「ステマだよステマ。聞いたことがあるだろう。人気の出た作品は、大体これをやってるって、色んなとこが言っているんだよ」
おれ「すんません。ステマってなんですか?」
社長「ステルスだよ。ステルスなマーケティングだよ。見えないけど、どうにかやって営業するんだよ。なんか、中身がなくったってこれさえあれば売れるらしいんだよ。最悪これで何とかなるだろう」
情報K「社長。ネットの記事によりますと、ステマという単語を使うほど知能指数が低い傾向があるのではとか書いてますよ!」
社長「ははは、精神年齢が低いと言い換えてくれたまえ! わしはいつでも若いぞ!」

 そのまま笑いながら、社長、開発Qさんに肩を置いた。

社長「あとは頑張って商品を作ってくれ」
開発Q「いやちょっと待ってくださいよ、何を作るかもはっきりしてないじゃないですか!」
社長「そこは、開発が責任を取って仕事を取りまとめるものだ。とりあえずスケジュールを決めてくれ。5週間ぐらいでなんとかしてくれ」
開発Q「善処はしますが、どうなっても知りませんよ? まだ何も決まってないとこからのスタートですし」
編集T「何も決まってないのに、僕、何でいるんですかね」
開発Q「と、とりあえず社長の挙げたリストから、なんか共通項でも洗って、再度MTGですかね」


20170402 株式会社MARUYAMA
ネットでイニシアチブ戦略MTG議事録
執筆者:新卒S@議事録、だれも読まないから、こんな感じで全然いいって言われた。

開発Q「とりあえずwikipediaを参考にして、共通項を洗ってみたわ」

===
 ・エロ:Kanon
 ・グロ:CROSS†CHANNEL
 ・グロ:東方project
 ・エロ:涼宮ハルヒの憂鬱
 ・グロ:魔法少女まどか☆マギカ
 ・グロ:艦これ
 ・ナンセンス:HikakinTV
 ・グロ:ガールズ&パンツァー
 ・ナンセンス:PPAP
 ・エロ:けものフレンズ
===

開発Q「多分、エログロナンセンスで大体が説明できると思うの」
脚本T「えー、なんか乱暴……。というか、こんなにグロって多いもんなんですか」
開発Q「え、なんか、弾幕とか軍艦とか戦車とか、物騒じゃないですか」
脚本T「そっかー……。そうだよね……。よし、今のうちに退職願提出してこよう」
開発Q「ちょっと待ってください! まだ大丈夫です! もうちょっとまじめに特徴を書いてみたの、あるんですから」

A4ぺら1の紙が配布される。
社長より細かく色々書いてあるが、ようやくして議事録にも記録する。

===
見た目が幼い女の子が超高確率でいます!
 - ロリコンは病気です
考察しがいがあるって言われてるものが、かなり多いです!
 - とりあえず意味深なものを置いておくみたいです!
何も考えなくても楽しめるって言われてるものも多いです!
- HikakinTV、PPAP、けもフレなんかは、子どもをターゲットにしてもおかしくないとか言われてます!
セカイ系(?)が多いかもです!
 - 閉鎖的な場所や時間が巻き戻る世界で、女の子が頑張るのが多いかもです!
ミリタリーがちょくちょくあるかもです!
 - やっぱり男の子は好きなんですかね!
===

おれ「あ、この会社に来て初めて建設的なものがでてきたっすね」
脚本T「とりあえずは10個の作品の特徴を網羅してることに……。なるのかなあ……」
情報K「いや、ちょっと待てい。2つ目と3つ目ってまず矛盾していないかい?」
開発Q「いえ、何も考えなくても楽しめるし、考察しがいもある、そんな両立してるパターンもあるわ。黒須ちゃん、東方、艦これ、けもフレあたりがそうだって、私のSiriがささやいている」

 脚本T、握り拳を顎にあてて、ぶつぶつ語る。

脚本T「素の文章や映像、ゲーム自体のエンタメ性が高く、読んだり見たりするだけでも楽しめる一方で、伏線や設定について考察する楽しみ方もある……。ってところですかね」
開発Q「Tさん、そういうエンタメ性に溢れて読み進めるだけで面白く、なおかつ考察したくなる設定をうまく盛り込んでライトにもディープにも楽しめる文章、書けますか?」
脚本T「そんなことできたらこんな会社にいねーよ!」

 脚本T、激昂。

開発Q「となると、ノベル系は無理。ここからゲーム制作は時間的にまず無理だし、アニメとか? 適当に伏線をばら撒いて回収とか一切しないシナリオにして、アニメーションでごまかせないかな」
情報K「自分、趣味でMMDと3Dモデリングできるんで、何とかなんないすかね……。しかし時間が無い」
脚本T「いやもうこれなんかもう……。絶対無理じゃない!? 名作に対する冒とくでしかなくなると思うんだけど!」
開発Q「そこを頑張るのがお仕事じゃないの! じゃあとりあえず、2か月で納品するためのスケジュールを引こうと思うんだけど」

とりあえず物を作り始めることになった。
納期最優先である。



20170403 株式会社MARUYAMA
ステマMTG議事録
執筆者:新卒S@脚本Tは目が死んできているのでMTG欠席。

おれ「そもそもステマってなんなんですかね」
開発Q「誰か知ってる人ー」

 やはり誰一人手を挙げず。
 誰も知らないのか、仕事を振られるのが怖いのか。

情報K「社長いわく、ステルスなマーケティングだと言っていた。ステルスというのは隠れたり、レーダーに引っかかりにくいことらしい」
開発Q「なぞなぞかしら? 見えていないのに宣伝できるものなーんだ? っていう感じの」
おれ「少なくとも、普通のCMとかチラシとか、コラボ企画とか、そういうのとは違うんですよね」

 情報K、膝を叩いて突然立ち上がった。

情報K「分かったぞ。サブリミナル・エフェクトを使っているんだ! CMの中に0.1秒だけうちのアニメを混ぜて、うまく洗脳するんだ!」
おれ「あ、それ似非科学らしいっすよ? 実験した当人がでっち上げたって認めてます」
開発Q「しかも、ろくな予算が無いから、そんな特殊なCMなんてまず無理じゃない?」

 情報K、しゅーんと座り込んだ。

おれ「あ、ひょっとして、カメレオンみたいな話なんじゃないっすか?」
情報K「カメレオン……だと……!?」
おれ「そう、実際は見えているのに、周囲の環境に溶け込んだ宣伝。擬態宣伝なんです!」
開発Q「具体的には?」
おれ「ぼく、テレビを見たことあるんですけど。時々、番組そのものなのか、CMなのか区別し辛いのあるんですよ」
情報K「なるほど。しかしそれでは、結局CMを打つことになる。金もかかるぞ」

 今度はおれが黙り込む番になった。
 会議、行き詰った頃に開発Qが手を打った。

開発Q「アニメなのかCMなのか、区別をつかなくすればいい……。それよ、新卒Sくん!」
おれ「おっと、俺、お役に立ちました?」
開発Q「つまり、私たちはアニメで宣伝を作ればいいのよ! まずアニメで何かの宣伝を作る。それを売り込んで、使ってもらう。それなら、宣伝自体がわが社の宣伝にも繋がる! 売り込みつつ宣伝することになるわ!」
おれ「なるほど……。で、今、何のアニメ作ってるんでしたっけ?」
情報K「たい焼きちゃん vs. たこ焼きちゃん」

 かくして、商品の方針が定まった。
 最後に、議事録らしく、このアニメの企画をまとめる。

1. たい焼き・たこ焼きの宣伝を兼ねたアニメを作り、売り込む(ステマ)。
2. エロ・グロ・ナンセンスを軸にする
3. 幼い女の子を入れる
4. 考察要素を盛り込みつつ、見てるだけで面白い作品にする
5. 閉鎖したりループしたりする世界
6. ミリタリー要素

 うーん、思ったよりもいい方向性になったような?

===

 デパートの軽食コーナーに行くと、奇妙な宣伝ソングが流れていた。

『タイヤキンキン♪ タコヤキンキン♪ 餡子ふわふわタコはぷりーぷり♪』

 店舗の隣にモニターが映っており、宣伝ソングとともにアニメのオープニングが流れている。
 何を意識したのか、伴奏は全てボイスパーカッションだ。予算との兼ね合いもあるかもしれない。

『第1話 テンチョーキング、襲来。むかーしむかし、あるところに、たい焼きちゃんとたこ焼きちゃんがおったそうな』

 セーラー服を着た金髪ツインテールで顔面がたい焼きのロリっ子が、たい焼きちゃん。
 赤くて癖っ気のある長髪でタコっぽい頭をしていて、体がたこ焼きになっててそこから手足が生えてるロリっ子が、たこ焼きちゃん。
 二人とも何故か海底にいる。

『はい、今日は海底の様子をですね、実況していこうと思います! この海底郷では……。きゃー! 海流が強くて、スカートがめくれて、私のあんこが見えちゃうわー!』
『うるせえ、死ねー!』
『いやぁぁああああ!』
 
 たこ焼きちゃんの髪からAPS水中銃が飛び出し、フルオート連射! 蜂の巣になったたい焼きちゃんから餡子が海中に漏れ出し、広がる。
 背景には意味深に、真っ二つに折れた軍艦とか食い倒れ人形とかUFOが沈んでいる。

『こうするしかなかったんだ……。こうするしか! たい焼きの体は溶接が甘く、こんな深海じゃ生きていけないんだ! 海中では私のように、全方向から圧力がかかってもいいような体になっていないと、いけないのに!』

 唐突にアニメ画面がワイプされ、調理場のお兄さんが現れる。
 SEがいちいち、「ブーンブーン」とかいうボイパだ。

『はい。たい焼きの生地が合わさったところ、あれは羽根といってですね、パリパリサクサクしてるんですよ。餡子の入ったとこはもっちりしてて美味しいですよー。
 たこ焼きはですね。くるんって丸くなってますよね。こんな感じに、くるんくるんってまわして、余った生地も入れ込んで、綺麗な見た目にするんです。うちのたこ焼きは、外カリ中ふわのオーソドックスなタイプなんです』

 もう一回「ブーンブーン」とかいってワイプし、アニメ画面に戻る。

『私は未来からの使者、クロワッサン生地たい焼きちゃんよ! 生地を何層にも分けて、丈夫でサクサク食感に生まれ変わったの!』
『未来からの使者だって……! くそ、前にもこんなことが、あったような! 具体的には1週間前の世界からループしてるような……!』
『私たちは毎日毎日、鉄板の上で、焼かれていて嫌んなっていた。そうして飛び出したんだけど……。む、この反応は! 時間が無いわ。たこ焼きちゃん』

 突如、周囲が高温の鉄板フィールドへと変わっていく。
 広がる湯気の先には、白髪の店長だ。

『今度こそお前たちを売り物にしてくれるわー!』
『落ち着いてたこ焼きちゃん。人間は私たちを食べる。でも、私たちは人間を食べるのよ!』
『で、でもどうすれば!』
『あなたの中にあるタコ=ソウルに語りかけて。そうすれば焼き物モンスターになれるわ!』
『はい!』

 クロワッサン生地たい焼きちゃんの服が全て吹き飛び、靴下から下着までがぽんぽん入れ替わり、魔法少女の体をしたたい焼きに変身!
 たこ焼きちゃんにもソース、青のり、鰹節が振りかけられていき、ドレスアップ完了!

『さらに、合体よ!』

 暑苦しいアメコミテーマソングがガンガンに鳴り響く。

『I aaaaam Tai-Yakiiiiii ! I aaaaaam Octopaaaaas ! mmmmmmm!!!! We are now, Taictopaaaaas!!!!!』

 顔は鯛、体はタコのモンスターと化したタイクトパスが店長に襲い掛かる。
 店長は懐から錐を何本も取り出し、宙に展開する。

『これがワシの切り札。メニュー:一千万の錐でついたフワフワたこ焼き!』
『I'm the champ of all over the sea. the menu: Tentacle Kushi-yaki man』

 無数の錐は波紋のように円を描き、幾重にも重なる。触手は正確な狙いでレーザーのように店長を狙い、両者が幾何学模様を描く。
 途中で面倒くさくなったのか、タイクトパスは自分の触手で錐を薙ぎ払い、店長を触手でひっつかまえ、丸呑みにしてしまった。

『Yeaaaahhh, I am the champ of all over the woooorld!!!』

 鉄板世界が海底世界へと切り替わり、いつの間にやら元のたい焼きちゃんとたこ焼きちゃんが立っている。
 その後ろに、観光客の金髪お姉さんが立っていた。

『こ、これが……。ニッポンの……。Shokushu - Dou……!』
『第二話、お好み焼きちゃん、死す! こうご期待!』

 アナウンスの後、タイヤキンキン、タコヤキンキンといつも通りの宣伝に戻っていった。
 気になってスマホで検索したところ、Yahoo知恵袋で「あれ何ですか? うるさいです」という質問が1件あるのみだった。
日本のどこかにこれに近いことって絶対あると思うんですよね。
こわいわー。現代社会怖いわー。
クソ作品になるのを狙って書いたものの、実際にこんなの流れてたら全話見ちゃいそうですわ。
飛び入り魚
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コメント



0.2890簡易評価
1.2890一本の蝋燭削除
胃が痛い話だ
2.891月宮 あゆ削除
まあ、しかし今の作品って 過去の2番煎じや微妙なアレンジ物が多いのは事実

何がはやるかわからない 世の中やし 
それはそうと Kanonでたい焼きネタをぶち込んでくるとは
クロスチャンネルとかも懐かしい
4.2890奇声を発する程度の能力削除
流れてたら見てしまう