「みなさん、こんばんは!
早いもので、“社会人弾幕ごっこエクストリーム選手権大会”も決勝戦を残すのみとなりました。
試合の模様をお伝えしますのは、皆さまおなじみ射命丸でございます。
解説担当の八雲 紫さんといっしょに、この一戦を皆さんとしっかり見届けたいと思います!
紫さん、宜しくお願いしますね。」
「はい、宜しくお願いします!」
「では早速、本日出場する選手の紹介に入りたいと思います。赤のコーナー、山田ジェルミナル選手」
「近年めきめきと頭角を現している、若手のホープ的存在ね。得意とするのは“へにょりレーザーからの側転蹴り”」
「“へにょりのジェル”として、2年前の沖縄大会で一躍有名になりましたねー。実家は豆腐屋さんということです!
続きまして、青のコーナー。“匿名希望”選手です!」
「匿名希望なのに堂々と顔出ししている……という挑発的なスタイルで、
スポーツ番組を阿鼻叫喚の渦に巻き込んだ事件が記憶に新しい選手ね。十八番は“3WAY弾による退路塞ぎからの目潰し”」
「なぜ匿名希望なのか? という点に関しては諸説ありますが、この件に関してしつこく嗅ぎ回っていた記者が
サハラ砂漠で全裸の遺体となって発見されてからは“何となくスルーしといた方が良いかな”という空気になってますよね」
「ファイトスタイルも含めて、ダーティーなイメージが底知れぬ恐ろしさを与える選手ね。今日も油断できないでしょうね」
「先日の試合でも死者が出ましたからねー。おっと、両者リングに上がったようですね。試合前のテーマソング斉唱です!」
~~~♪ デザイアドライブ ♪~~~
「山田選手、決然とした表情で虚空を睨んでおります。
一方、匿名希望選手は足の指の爪を切り忘れてきたことが気になる様子です」
「この時点からもう試合は始まっていると言っても過言では無いですからね……
これは足の爪が長いということを暗にアピールして、心理的な動揺を誘おうとしているのかも知れないわね」
「匿名希望選手、抜け目ない心理作戦です。では本日の試合を裁定するレフェリーをご紹介しましょう。
四季映姫・ヤマザナドゥさんです!」
「公平な仕事ぶりに定評があるわね。ヤマさんがついていれば問題ないと思いたいですが……」
「両者、リング中央に歩み寄ってがっちりと握手。スポーツマンシップに則った戦いを約束します!」
「まあ、こういう約束が守られた例はこれまでに一度も無いんですけどね。あくまでポーズですね、ポーズ」
「さあ、いよいよ決戦のゴングが鳴り響きます。リング中央に1頭のカンガルーが放たれました!」
~~~♪ カーン! ♪~~~
「決勝戦ではカンガルーデスマッチ形式、というのがこの競技の王道ね。テクニカルな展開になりそうね」
「さあいよいよ最後の戦いが始まりました。山田選手、軽快なフットワークで距離をつめてから……おおっと、ここで早くも寝そべりの姿勢に入った!」
「これは短期決戦を仕掛ける流れかしら? 匿名希望選手の切り替えしによっては大変なことになるわね……」
「山田選手、リングに寝そべってブルブル震えながらカンガルーににじり寄ります! これには匿名希望選手も動揺を隠せません」
~~~ ゴロゴロ……バタタッ! バタバタ!(寝そべりからのローリングでカンガルーに組み付く山田選手) ~~~
「観客席からは悲鳴が上がっております! さあ、匿名希望選手はどう出るか!?」
「あら、リングから下りちゃったわね。何をするつもりかしら」
「半笑いでリングから下りた匿名希望選手、いったい何を……ああーっと、これはいけません! パイプ椅子を手に取った!
紫さん、これはもう凶器攻撃がほぼ確定の流れと思いますが」
「リングの下にあらかじめ隠していたのでしょうね。流石にこれは反則でしょう」
「しかし……ヤマさんはノーリアクションです。試合続行ということでしょうか?
山田選手は不服そうな表情ですがホイッスルは鳴らない! 試合続行です!」
~~~ カンガルーの涎まみれになりながら匍匐前進をする山田選手 ~~~
(観客席からヤジが飛ぶ)
(涙ぐんでリングを見つめる山田選手の妻)
「匿名希望選手がパイプ椅子を手にリングに戻りました。いっぽう山田選手は匍匐前進からの……自機狙い! 自機狙い弾です!」
「山田選手の腰のキレは自機狙い弾にぴったりね。出だしでは変則的な軌道を描いているのもテクニカルで良いわね!」
「これは予想外だったのでしょうか? 匿名希望選手、一瞬目が泳ぎました! パイプ椅子を手にチョン避けの姿勢に入ります」
「これはかなり避けにくいんじゃないかしら。弾の速さが列によってバラバラなのも地味に嫌らしいわね」
「チョン避けを続ける匿名希望選手、なかなかパイプ椅子での殴打に踏み込めない。苛立っていますねー」
~~~ 腹いせにカンガルーの尾を踏みつける匿名希望選手 ~~~
(スポーツ記者のカメラが次々とフラッシュをたく)
(喉が渇いたのか、お茶を飲む山田選手の妻)
「おっと、ここでヤマさんが動きました。イエローカードのようですね」
「流石は熟練レフェリーと言ったところでしょう。いま匿名希望選手がカンガルーをいぢめたのを見逃しませんでしたね」
「これには匿名希望選手も従うほかありません。ペナルティとしてZUN帽を目深に被らされました。
いっぽう山田選手は立ち上がってスクワットをしていますね。次の攻撃への起点にするつもりでしょうか?」
「スクワットからのフグ刺し弾が日本でも見直されつつありますからね。繋ぎとして撃っておいて損はないという判断じゃないかしら」
~~~ 赤コーナーのポストに顔をこすりつけるカンガルー ~~~
(あまりに凄惨な光景に息を呑む取材陣)
「匿名希望選手はZUN帽で視界を塞がれていますが、迷いの無い足取りです。紫さん、この落ち着きぶりは只者ではありませんね」
「イエローカードを喰らってしまったぶん、決着を急ぎたい気持ちはあるでしょうけどね。いつパイプ椅子が来てもおかしくないわ」
「ここで山田選手、勇ましく雄叫びを上げながら反復横とびに入った! 場内もどよめいております!」
「……むっ、これは!?」
「どうしました、紫さん?」
「いえ、どうも匿名希望選手の動きが妙なのが気になって……」
~~~ 殴打するのに使うかと思われたパイプ椅子を組み立て、どっかりと腰を下ろす匿名希望選手 ~~~
(駆け出しの若手スポーツ記者、あまりの恐怖で失神)
「座った!? 何という事でしょう、ここで匿名希望選手が座った!!」
「これは前代未聞の展開ね。全弾連(ぜんだんれん:全国弾幕ごっこエクストリーム連合会)も黙ってはいないでしょう」
「これには山田選手も雄叫びを止め思わず落涙! 両手で顔を覆って崩れ落ちた!! 試合は続けられるのでしょうか!?」
~~~ 余裕の表情で懐からメモを取り出し、山田選手に突きつける匿名希望選手 ~~~
「何か渡しましたね。あれは一体……? カメラさん、ズームできますか?」
~~~ ズームするカメラ。メモには「脚を切って低くした机を再び高机にする方法を教えて!」と書かれている ~~~
「うわあ……紫さん、これはトドメ刺しに来ましたね」
「たぶん、このメモからのコンボでクナイ弾大量ばら撒きが来るわ。うまく対処できないと山田選手はここで詰んじゃうわね」
「さあ山田選手、ここが正念場です! 絶体絶命の状況をどう切り抜けるか!?」
~~~ 山田選手、すっくと立ち上がり匿名希望選手に歩み寄る ~~~
(固唾を呑んで見守る観客席と取材陣)
「山田選手が動きました! 決然とした足取りで匿名希望選手に歩み寄ります!」
「今まで積み上げてきた競技人生の真価が問われるシーンですね。私も緊張するわ」
「山田選手、なにやら匿名希望選手に耳打ちしています。接近戦で白黒つけようということでしょうか」
~~~ 山田選手に何かを囁かれた匿名希望選手、なぜか顔面蒼白に ~~~
「あら? 様子がおかしいわね」
~~~ 椅子から転げ落ち、ビクビク痙攣しながら泡を噴く匿名希望選手 ~~~
(静まり返る場内)
「匿名希望選手の様子が尋常ではありません! 何があったのでしょうか? ……医務室から八意永琳先生が飛び出してきました」
~~~ 痙攣し続ける匿名希望選手に駆け寄る永琳。彼のもとに屈み込んで脈を測っているようだ ~~~
「これは? ……これは何という事でしょう、ドクターストップです! これ以上の試合続行は危険と判断されたということで……」
~~~ 首を横に振りながら立ち上がり、両手で×マークを作る永琳 ~~~
(永琳の足元に転がる匿名希望選手の顔がアップになる。息をしていないようだ)
「ただいま会場から速報が入りました。匿名希望選手の死亡が確認されたとのことです」
「なんてこと……」
「紫さん、これは大変なことになりましたね」
「お茶の間のテレビに死に顔のドアップが映ってると思うんだけど、これ放送していいのかしら?」
「あっ」
☆☆☆ しばらくお待ち下さい ☆☆☆
(のどかな花畑の画像)
※21:00から予定されていた「衣玖のほそ道 日本俳句紀行」は放送予定を変更して明日お送りします※
早いもので、“社会人弾幕ごっこエクストリーム選手権大会”も決勝戦を残すのみとなりました。
試合の模様をお伝えしますのは、皆さまおなじみ射命丸でございます。
解説担当の八雲 紫さんといっしょに、この一戦を皆さんとしっかり見届けたいと思います!
紫さん、宜しくお願いしますね。」
「はい、宜しくお願いします!」
「では早速、本日出場する選手の紹介に入りたいと思います。赤のコーナー、山田ジェルミナル選手」
「近年めきめきと頭角を現している、若手のホープ的存在ね。得意とするのは“へにょりレーザーからの側転蹴り”」
「“へにょりのジェル”として、2年前の沖縄大会で一躍有名になりましたねー。実家は豆腐屋さんということです!
続きまして、青のコーナー。“匿名希望”選手です!」
「匿名希望なのに堂々と顔出ししている……という挑発的なスタイルで、
スポーツ番組を阿鼻叫喚の渦に巻き込んだ事件が記憶に新しい選手ね。十八番は“3WAY弾による退路塞ぎからの目潰し”」
「なぜ匿名希望なのか? という点に関しては諸説ありますが、この件に関してしつこく嗅ぎ回っていた記者が
サハラ砂漠で全裸の遺体となって発見されてからは“何となくスルーしといた方が良いかな”という空気になってますよね」
「ファイトスタイルも含めて、ダーティーなイメージが底知れぬ恐ろしさを与える選手ね。今日も油断できないでしょうね」
「先日の試合でも死者が出ましたからねー。おっと、両者リングに上がったようですね。試合前のテーマソング斉唱です!」
~~~♪ デザイアドライブ ♪~~~
「山田選手、決然とした表情で虚空を睨んでおります。
一方、匿名希望選手は足の指の爪を切り忘れてきたことが気になる様子です」
「この時点からもう試合は始まっていると言っても過言では無いですからね……
これは足の爪が長いということを暗にアピールして、心理的な動揺を誘おうとしているのかも知れないわね」
「匿名希望選手、抜け目ない心理作戦です。では本日の試合を裁定するレフェリーをご紹介しましょう。
四季映姫・ヤマザナドゥさんです!」
「公平な仕事ぶりに定評があるわね。ヤマさんがついていれば問題ないと思いたいですが……」
「両者、リング中央に歩み寄ってがっちりと握手。スポーツマンシップに則った戦いを約束します!」
「まあ、こういう約束が守られた例はこれまでに一度も無いんですけどね。あくまでポーズですね、ポーズ」
「さあ、いよいよ決戦のゴングが鳴り響きます。リング中央に1頭のカンガルーが放たれました!」
~~~♪ カーン! ♪~~~
「決勝戦ではカンガルーデスマッチ形式、というのがこの競技の王道ね。テクニカルな展開になりそうね」
「さあいよいよ最後の戦いが始まりました。山田選手、軽快なフットワークで距離をつめてから……おおっと、ここで早くも寝そべりの姿勢に入った!」
「これは短期決戦を仕掛ける流れかしら? 匿名希望選手の切り替えしによっては大変なことになるわね……」
「山田選手、リングに寝そべってブルブル震えながらカンガルーににじり寄ります! これには匿名希望選手も動揺を隠せません」
~~~ ゴロゴロ……バタタッ! バタバタ!(寝そべりからのローリングでカンガルーに組み付く山田選手) ~~~
「観客席からは悲鳴が上がっております! さあ、匿名希望選手はどう出るか!?」
「あら、リングから下りちゃったわね。何をするつもりかしら」
「半笑いでリングから下りた匿名希望選手、いったい何を……ああーっと、これはいけません! パイプ椅子を手に取った!
紫さん、これはもう凶器攻撃がほぼ確定の流れと思いますが」
「リングの下にあらかじめ隠していたのでしょうね。流石にこれは反則でしょう」
「しかし……ヤマさんはノーリアクションです。試合続行ということでしょうか?
山田選手は不服そうな表情ですがホイッスルは鳴らない! 試合続行です!」
~~~ カンガルーの涎まみれになりながら匍匐前進をする山田選手 ~~~
(観客席からヤジが飛ぶ)
(涙ぐんでリングを見つめる山田選手の妻)
「匿名希望選手がパイプ椅子を手にリングに戻りました。いっぽう山田選手は匍匐前進からの……自機狙い! 自機狙い弾です!」
「山田選手の腰のキレは自機狙い弾にぴったりね。出だしでは変則的な軌道を描いているのもテクニカルで良いわね!」
「これは予想外だったのでしょうか? 匿名希望選手、一瞬目が泳ぎました! パイプ椅子を手にチョン避けの姿勢に入ります」
「これはかなり避けにくいんじゃないかしら。弾の速さが列によってバラバラなのも地味に嫌らしいわね」
「チョン避けを続ける匿名希望選手、なかなかパイプ椅子での殴打に踏み込めない。苛立っていますねー」
~~~ 腹いせにカンガルーの尾を踏みつける匿名希望選手 ~~~
(スポーツ記者のカメラが次々とフラッシュをたく)
(喉が渇いたのか、お茶を飲む山田選手の妻)
「おっと、ここでヤマさんが動きました。イエローカードのようですね」
「流石は熟練レフェリーと言ったところでしょう。いま匿名希望選手がカンガルーをいぢめたのを見逃しませんでしたね」
「これには匿名希望選手も従うほかありません。ペナルティとしてZUN帽を目深に被らされました。
いっぽう山田選手は立ち上がってスクワットをしていますね。次の攻撃への起点にするつもりでしょうか?」
「スクワットからのフグ刺し弾が日本でも見直されつつありますからね。繋ぎとして撃っておいて損はないという判断じゃないかしら」
~~~ 赤コーナーのポストに顔をこすりつけるカンガルー ~~~
(あまりに凄惨な光景に息を呑む取材陣)
「匿名希望選手はZUN帽で視界を塞がれていますが、迷いの無い足取りです。紫さん、この落ち着きぶりは只者ではありませんね」
「イエローカードを喰らってしまったぶん、決着を急ぎたい気持ちはあるでしょうけどね。いつパイプ椅子が来てもおかしくないわ」
「ここで山田選手、勇ましく雄叫びを上げながら反復横とびに入った! 場内もどよめいております!」
「……むっ、これは!?」
「どうしました、紫さん?」
「いえ、どうも匿名希望選手の動きが妙なのが気になって……」
~~~ 殴打するのに使うかと思われたパイプ椅子を組み立て、どっかりと腰を下ろす匿名希望選手 ~~~
(駆け出しの若手スポーツ記者、あまりの恐怖で失神)
「座った!? 何という事でしょう、ここで匿名希望選手が座った!!」
「これは前代未聞の展開ね。全弾連(ぜんだんれん:全国弾幕ごっこエクストリーム連合会)も黙ってはいないでしょう」
「これには山田選手も雄叫びを止め思わず落涙! 両手で顔を覆って崩れ落ちた!! 試合は続けられるのでしょうか!?」
~~~ 余裕の表情で懐からメモを取り出し、山田選手に突きつける匿名希望選手 ~~~
「何か渡しましたね。あれは一体……? カメラさん、ズームできますか?」
~~~ ズームするカメラ。メモには「脚を切って低くした机を再び高机にする方法を教えて!」と書かれている ~~~
「うわあ……紫さん、これはトドメ刺しに来ましたね」
「たぶん、このメモからのコンボでクナイ弾大量ばら撒きが来るわ。うまく対処できないと山田選手はここで詰んじゃうわね」
「さあ山田選手、ここが正念場です! 絶体絶命の状況をどう切り抜けるか!?」
~~~ 山田選手、すっくと立ち上がり匿名希望選手に歩み寄る ~~~
(固唾を呑んで見守る観客席と取材陣)
「山田選手が動きました! 決然とした足取りで匿名希望選手に歩み寄ります!」
「今まで積み上げてきた競技人生の真価が問われるシーンですね。私も緊張するわ」
「山田選手、なにやら匿名希望選手に耳打ちしています。接近戦で白黒つけようということでしょうか」
~~~ 山田選手に何かを囁かれた匿名希望選手、なぜか顔面蒼白に ~~~
「あら? 様子がおかしいわね」
~~~ 椅子から転げ落ち、ビクビク痙攣しながら泡を噴く匿名希望選手 ~~~
(静まり返る場内)
「匿名希望選手の様子が尋常ではありません! 何があったのでしょうか? ……医務室から八意永琳先生が飛び出してきました」
~~~ 痙攣し続ける匿名希望選手に駆け寄る永琳。彼のもとに屈み込んで脈を測っているようだ ~~~
「これは? ……これは何という事でしょう、ドクターストップです! これ以上の試合続行は危険と判断されたということで……」
~~~ 首を横に振りながら立ち上がり、両手で×マークを作る永琳 ~~~
(永琳の足元に転がる匿名希望選手の顔がアップになる。息をしていないようだ)
「ただいま会場から速報が入りました。匿名希望選手の死亡が確認されたとのことです」
「なんてこと……」
「紫さん、これは大変なことになりましたね」
「お茶の間のテレビに死に顔のドアップが映ってると思うんだけど、これ放送していいのかしら?」
「あっ」
☆☆☆ しばらくお待ち下さい ☆☆☆
(のどかな花畑の画像)
※21:00から予定されていた「衣玖のほそ道 日本俳句紀行」は放送予定を変更して明日お送りします※