鳥獣伎楽も四年ほどやっているのだが、最近どうも音がマンネリ化しているような気がする。何せギターとボーカルだけなのだ。無理もない。
ミスティアはどう思っているのだろうか。話を切り出してみて、それならもうバンドはやめにしようと言われたら寂しいなと私は思った。
それで一ヶ月くらいは我慢していたけど、あるライブの後、彼女の屋台で飲んでいる時に、今ちょっとそういう話出来るんじゃない、という感じになった。
「やっぱりもうちょっと音数増やした方が良くない」
「わかる」
わかられた。良かった。
「実は新メンバーを連れてきてる」
「マジで」
わかられるどころか話を勝手に進められていた。それはそれでちょっと傷つく。
「あっ、ちょっと傷ついてる」
「はい」
「ごめんって。とりあえず会ってみてよ」
「良いけど」
「よし。おーい」
ミスティアは振り返って屋台の裏の暗がりに声をかける。大柄な黒人が歩いてきた。
「はい、こちらがカニエ・ウェスト」
「カニエ・ウェスト」
「カニエです。よろしく」
今をときめくラッパーは流暢な日本語で自己紹介をした。
「カニエ」
「はい」
「カニエはどうしてここに」
「新譜が国内では配信されないので日本のカニエは幻想入りしてしまったの」とミスティアが早口で答えた。
「なるほど」
「してしまいました」とカニエはしゅんとして言った。
「なるほど」
「あともう一人連れてきたのよ。会ってくれる?」
「良いですよ」
「なんでちょっとよそよそしくなったの? まあ良いや。おーい」
ミスティアはまた振り返って屋台の裏の暗がりに声をかけた。人ほどの大きさの甲殻類が歩いてきた。
「はい、こちらが蟹」
「蟹」
「蟹です。よろしく」
蟹は右の大きなハサミを差し出してきた。私は丁重に断った。
「蟹は何を演奏するの?」
「ハサミを打ち鳴らしてリズムを作ります」
「リズム」
「はい。あと、時折泡も吹きます」
「泡」
「はい」
「そういうわけでね。これからはこの四人でやっていこうと思うの」
「なるほど」
私は頷いた。鳥獣伎楽はおしまいだと思った。
三日後にライブをした。
結構盛り上がった。
ミスティアはどう思っているのだろうか。話を切り出してみて、それならもうバンドはやめにしようと言われたら寂しいなと私は思った。
それで一ヶ月くらいは我慢していたけど、あるライブの後、彼女の屋台で飲んでいる時に、今ちょっとそういう話出来るんじゃない、という感じになった。
「やっぱりもうちょっと音数増やした方が良くない」
「わかる」
わかられた。良かった。
「実は新メンバーを連れてきてる」
「マジで」
わかられるどころか話を勝手に進められていた。それはそれでちょっと傷つく。
「あっ、ちょっと傷ついてる」
「はい」
「ごめんって。とりあえず会ってみてよ」
「良いけど」
「よし。おーい」
ミスティアは振り返って屋台の裏の暗がりに声をかける。大柄な黒人が歩いてきた。
「はい、こちらがカニエ・ウェスト」
「カニエ・ウェスト」
「カニエです。よろしく」
今をときめくラッパーは流暢な日本語で自己紹介をした。
「カニエ」
「はい」
「カニエはどうしてここに」
「新譜が国内では配信されないので日本のカニエは幻想入りしてしまったの」とミスティアが早口で答えた。
「なるほど」
「してしまいました」とカニエはしゅんとして言った。
「なるほど」
「あともう一人連れてきたのよ。会ってくれる?」
「良いですよ」
「なんでちょっとよそよそしくなったの? まあ良いや。おーい」
ミスティアはまた振り返って屋台の裏の暗がりに声をかけた。人ほどの大きさの甲殻類が歩いてきた。
「はい、こちらが蟹」
「蟹」
「蟹です。よろしく」
蟹は右の大きなハサミを差し出してきた。私は丁重に断った。
「蟹は何を演奏するの?」
「ハサミを打ち鳴らしてリズムを作ります」
「リズム」
「はい。あと、時折泡も吹きます」
「泡」
「はい」
「そういうわけでね。これからはこの四人でやっていこうと思うの」
「なるほど」
私は頷いた。鳥獣伎楽はおしまいだと思った。
三日後にライブをした。
結構盛り上がった。