Coolier - 新生・東方創想話

マリオネットの幸福

2013/04/22 01:36:07
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おはようございます。
私はご主人様……アリス・マーガトロイド様に創られた人形、上海と言います。
人形ですから、当然自分の力だけで動くことは出来ません。喋ることも苦手なので、誰かと会話をするということも難しいです。
けれどもこうして、色々なことを考えることは出来ます。それを表に出すことは出来ませんが。



朝、ご主人様が起きるのと同時に、私も目を覚まします。いえ、目を覚ますというのは変ですね。私は眠りませんから、眠らないのに目を覚ますというのはおかしいです。
でも私にとっての一日はご主人様が起きたその時から始まるので、やっぱり目を覚ます、という表現が一番合っているのですよね。

「……ん、おはよう、上海」
「シャンハーイ」

ご主人様は目を覚ますと、私を手元まで寄せて、頭を撫でてくれます。
私はそれに応えることは出来ませんが、こうしてもらうと一日が始まったという気分になります。

「それじゃあ着替えてくるから、ご飯の支度をお願いね」
「シャンハーイ」

そう言ってご主人様は、私をキッチンへと向かわせます。
傍から見たら、まるで私が意思を持って動いているように見えるでしょう。でも、私は意思こそ持ってはいますが、最初に言ったように自力では動けません。
ご主人様の魔法で操ってもらって初めて、私は動くことが出来るようになります。言わば私はご主人様の手足なのです。
キッチンは綺麗に片付いていて、人よりもよほど身体の小さい私が使うには広すぎるくらいの広さがあります。
まずはケトルに水を入れてお湯を沸かし、紅茶の準備。ご主人様は紅茶が好きなので、気合を入れて取り掛かります。
お湯が沸くまでの間にパンを用意して、ついでにサラダとして野菜を手早く切り分けます。ご主人様は1人暮らしで、私達人形は当然ご飯を食べることは出来ないので、準備の手間はそれほどかかりません。
そもそも、ご主人様は魔法使いなので、実際には食事も、睡眠だって必要は無いのだそうです。
でもご主人様は、

「『しなくていい』のと『したい』のとは、表裏一体というわけじゃないのよ」

と言って、人間がするのと同じように食事をし、睡眠をとっています。言葉の意味は私には良く分かりませんが、したいからしている、ということでしょうか?
そうこうしているうちに、お湯が沸きました。ティーカップとポットにお湯を注ぎ入れ、軽く温めてから、ポットのお湯を捨てて改めて茶葉を入れます。
長い間やっていることなので、ご主人様が好んでいる紅茶の淹れ方は分かっています。と言っても、私を操っているのはご主人様自身なので、当然と言えば当然なのですが。
ポットの中で紅茶を蒸している間に、朝食をダイニングへと運びます。
私が朝食を運んでいると、丁度ご主人様が身支度を終えて、ダイニングへと入ってきました。ご主人様に操ってもらっているからか、ご主人様のやって来るタイミングも何となく分かります。

「シャンハーイ」
「あら、丁度良かったみたいね。ありがとう、上海」
「シャンハーイ」

ご主人様は、ことあるごとに私を褒めたり、私にお礼を言ったりしてくれます。
魔理沙さんなんかは時々意地悪く、自作自演だ、と言ってご主人様をからかいますが、たとえそうであっても私は嬉しいです。
確かに私の力、とは言えませんが、それでも嬉しいものは嬉しいんです。
ティーカップに紅茶を注いで、一旦私の仕事は終了です。ご主人様も席に着きました。

「いただきます」

ご主人様は静かに手を合わせてから、紅茶に口をつけました。
魔理沙さんに教わった東洋の国の作法だそうです。『魔理沙と食事をする時にはこうしないとうるさいから、習慣づけたの』と不機嫌そう(表面上だけ、ですが)に話していました。

「ん、美味しいわ」
「シャンハーイ」

私は人形ですから、先ほども言ったように、食べたり飲んだりといったことは出来ません。だから、美味しいというのがどういうものなのかも良く分かりません。
けれども、こうして喜んでくれるのですから、きっと素敵なことなのでしょう。それに、そう言ってご主人様が笑いかけてくれるのは、私にとっても素敵なことです。
だから私は、この言葉が大好きです。





朝食の後からしばらくすると、ご主人様に呼ばれました。
部屋に入ると、ご主人様は鏡に向かって髪を整えているようです。どこかへ出かけるのでしょうか?

「上海、今日は人里で人形劇を開くから、貴女も支度しましょう」
「シャンハーイ」

どうやらそのようです。
ご主人様は時おり人里へ赴いて、子ども達に人形劇を開いてあげています。開くのはご主人様の気まぐれによるので不定期ですが、それでも子ども達には大人気です。
ご主人様は私を抱きかかえるようにすると、鏡の前にある椅子に座り、私を鏡に向かわせました。
私たち人形を自分の手足のように操れるご主人様ですが、私たちの身支度や手入れは自らの手で行ってくれます。私たち自身にやらせた方が、一体ずつ手入れをする必要もないし楽だと思うのですが……
ご主人様は櫛を取り出すと、私の髪を優しい手つきでとかし始めました。
……そんなことを考えても、その柔らかい感覚に、いつもつい、まあ良いか、と甘えてしまいます。
私をいたわって、大切にしてくれているのが細かな仕草から伝わってきて、とても心地良い気分になります。このまま、いつまでもご主人様に身を委ねていられたら、なんて、半ば本気で考えてしまうくらいに幸せな時間です。

「髪はこれで大丈夫かしら? 後は……ああ、スカートの裾がほつれちゃってるわね。ちょっと待ってて」

ご主人様はそう呟くと、ソーイングセットから糸切りバサミを取り出しました。

「本当はきちんと直したいけれど、今はあまり時間が無いから。……そろそろ新調した方が良いかしらね」
「シャンハーイ」

そう言いながら、スカートからほつれた糸を目立たないように切り取ってくれます。
私たち人形の服は、全てご主人様の手作りです。私たちに合うようなサイズを作るとなると、かなり細かな作業になると思うのですが、ご主人様にとっては魔法の研究の合間にする気晴らしのようなものらしいです。
新調するのは手間ではないからいくら汚しても構わない、とは言われているのですが、それでもご主人様からいただいた大切なものですから、出来るだけ長持ちさせるように気を付けています。

「……よし、これで大丈夫」

ご主人様はそう言って、最後に軽く私の頭を撫でてくれました。
まるで自分の身支度を済ませたように、満足げに微笑みを浮かべるご主人様を鏡越しに見ていると、何だかとても暖かい気持ちになります。
ご主人様は感情を顔に出すことをあまりしないので、こうした素直な笑みは、魔理沙さんくらい親しい人にも中々見せません。その笑顔は、私の持っている大切な宝物の1つです。





人里には、陽が真上に昇る少し前くらいに着きました。
早めの昼食をとってから、ご主人様が軽く人里を回っていると、子ども達が集まってきます。
ご主人様は人里の子ども達の間ではちょっとした有名人です。寺子屋も休みの日ですし、ご主人様が劇を開くというのを聞きつけると、友達伝いに伝わっていって、ご主人様が劇を始めるころには、20人近くの子どもが集まっていました。中には親御さんと一緒に来ている子も見られるので、実際には20人以上の人が観客です。

「さらわれたお姫様は、私が助け出して見せる。騎士はそう高らかに告げると、剣を空高くつき上げました」
「シャンハーイ」

ご主人様の朗読に合わせて、小道具の剣を掲げます。
今回は私が主人公の騎士役です。私の姿で騎士というのもおかしいかも知れませんが、ご主人様は毎回演じる役を変えてくれるので、私がこうして男の人の役を演じられることも時おりあります。
私としても、こういう主人公の役を演じるのが一番楽しいです。それを分かってくれているのでしょうか?
ちなみに、個人的に主人公の次に楽しいと思えるのは悪役です。お姫様の役は女の子の憧れですし、決して嫌いでは無いのですが、さらわれる場面と助けられる場面くらいしか出番が無いというのは少しだけ退屈です。折角演じるなら、身体を目一杯動かせる役が良い、と思うのは欲張りでしょうか。
演技をしながら子ども達の様子を見てみると、中々好評のようです。みんな真剣な眼差しでこちらを見ています。
こうして注目されると、自然と演技にも熱が入ります。と言っても、そもそもはご主人様に操ってもらっているだけなので演技に違いは出ないのですが。まあ、気持ちの持ちようの問題ですね。



劇は無事に終了しました。
子ども達だけでなく、何人かいた親御さんにもかなり好評だったようです。ご主人様も、表情にはあまり出ていませんが満足げな様子です。
ご主人様が親御さん達の簡単な世間話に付き合っている間、私は子ども達の相手をします。

「すげー! どうやって動いてるんだろう?」
「私もこんな可愛いお人形が欲しいなぁ」
「ねえ、劇の最後のとこのかっこいい剣さばきもう一回見せてよ!」
「シャンハーイ」

みんな、私を囲むように集まって、眩しいくらいの瞳をこちらに向けてきます。
ご主人様は、親御さん達と話をしながらもこちらの様子を把握しているのか、子ども達が出してくるリクエストに応じた動きをするよう、私を操ってくれます。
私がリクエストに合わせて、跳んだり、踊ったり、剣を振るったりして見せると、子ども達は歓声を上げて笑顔になります。
劇の時とはまた違った注目のされ方なので、少し恥ずかしいですね。私が演じている役、ではなく私自身が見られているのだと思うと当然です。
でも、だからこそ、彼らから送られる褒め言葉も直接私に届いてくる感じがして、悪い気はしません。特に可愛い、という言葉は私にとって最高の褒め言葉です。私達は元々可愛がられるための存在ですから、そう言われるのは人形冥利に尽きるというものです。





結局日が暮れるギリギリの時間まで、私は子ども達の遊び相手になっていました。
子ども達と別れるのはちょっぴり名残惜しいですが、そんなことを言っても仕方がありません。ご主人様の気が向いた時に、また会えるのを楽しみにしておきます。
そうして人里からの帰り道。
辺りは薄暗くなってきていますが、通いなれた道ですし、万が一妖怪か何かが出てきたとしてもご主人様にかかれば撃退するのは訳もないことです。
特に急ぎの用事があるわけでもないので、涼しい風を感じながらのんびりと歩を進めていたのですが、

「おーい、アリスー」
「……ん?」

上空からご主人様を呼ぶ声が聞こえてきました。私にとっても聞き慣れた声です。
ご主人様はその声のする方へゆっくりと振り返ります。私もそれに倣ってそちらを向きました。
声の主はそれを見計らったかのように、私たちの前にふわりと着地しました。

「よぉ。こんな時間に会うなんて奇遇だな」
「あら、魔理沙。何か用かしら?」

声の主は魔理沙さんでした。
魔理沙さんは、ご主人様と同じく魔法の森に居を構えている魔法使いです。いつでも明るく行動的で、誰からも好かれているような人です。物の扱いが大雑把なのと、手癖の悪さが無ければ、なんて思ってしまうこともありますが、そんなところも、彼女らしいと感じてしまう不思議な魅力があります。

「おいおい、つれないな。用がなくちゃ話しかけちゃいけないのか?」
「そんなことないわよ? 貴女が用事を持ってやって来たときはロクなことが無いから、むしろ用無しで話しかけて来られた方がありがたいわ」
「そっか。なら今から用を考えるかな」
「ひねくれ者の発想ね」
「お前ほどじゃないぜ」

お互いに嫌味を言いあっていますが決して仲が悪いというわけではありません。ご主人様は認めませんが、魔理沙さんはご主人様の一番のお友達だと私は思います。
実際、今も呆れたような表情を浮かべてはいますが、ご主人様は楽しそうです。魔理沙さんもそのことは分かっているでしょう。そういった人の感情の機微には聡い人です。

「シャンハーイ」
「おう、上海。お前も元気そうだな」
「シャンハーイ」

魔理沙さんは私に気付くと、ご主人様にしたのと同じように挨拶を返してくれました。
ご主人様ほどではありませんが、何だかんだで魔理沙さんも私を人形としてではなく、人と同じように扱ってくれます。ご主人様に合わせている、という所が強いのかもしれませんが。

「んで、人里からの帰りってことは、また人形劇でもやってたのか?」
「ええ、そんなところよ。貴女は……本を持ってないってことは、今日は博麗神社からの帰りかしら?」
「おお。良く分かったな」
「向こうから来たなら、紅魔館か霊夢の所でしょ。紅魔館からの帰りなら、『借りて』きた本を持っているはずだもの」
「無駄な推理力だな。……まあ、その通りなんだが」

悪びれる様子もなく、魔理沙さんは屈託のない笑顔を浮かべます。
魔理沙さんの借りる、はその前に『死ぬまで』が付く上、許可も取らないので、借りられる側からすれば盗まれたのと実質変わりません。
この笑顔は素敵だと思いますが、でも少しだけ複雑な感じです。

「霊夢の奴、薄いお茶と軽く湿気てる煎餅しか出してくれなかったぜ。あの感じはもっと良い茶葉もお茶菓子も隠し持ってた感じだった」
「そりゃあ、貴女に大層なもの出したって、感謝もせずに飲み食いするだけだもの。なら安物を出したって一緒でしょうに」
「酷い言われようだ……人並みの感謝は持ち合わせてるつもりなんだが。まあいいや。そんなわけで、少しばかり口寂しくてな。折角会ったんだし、一緒に夕食でも食べようぜ」
「どんなわけよ。……嫌な予感しかしないけど、どこで食べるつもり?」
「アリスの家に決まってるだろ。今から人里に戻るのも面倒だろうし、私のあの家に人を招くほど、私は悪い人間じゃない」

魔理沙さんの家には、ご主人様と一緒に何度かお邪魔したことがありますが、足の踏み場もない、という表現がぴったしな有様でした。
魔理沙さんに言わせれば、どこに何があるかが把握できてるからこの上なく快適、だそうですが、掃除も日課の1つである私にとってみると、綺麗に片づけたくてうずうずしてきてしまう、そんな状況です。

「分かってるなら片づけなさいっていつも言ってるじゃないの。……まったく、仕方がないわね」
「お、それじゃあオッケーってことでいいんだな?」
「嫌だって言っても押しかけてくるでしょ? ただし。魔理沙も何か食材を持ってくること。場所も食べ物も私が提供する、なんて割に合わないわ」
「ちぇっ、ケチは霊夢だけで十分なんだが。じゃあ、ひとっとびして取ってくるか。適当なキノコを見繕ってくれば良いだろ?」
「ええ。食べられるものだけ選んで持ってきなさいよ」
「私も食べるんだから、それは当然だぜ。んじゃ、行ってくるんだぜ!」

魔理沙さんはそう告げると、箒に跨って森の方へ向かって凄い速さで飛んで行ってしまいました。
ご主人様はため息を1つ吐いて、呆れたような表情を私に向けます。

「さて、強欲な魔法使いが来ちゃうから、急いで戻って準備をしましょう」
「シャンハーイ」

そう言うとご主人様は足早に家路に着きます。その姿は、やはりどこか嬉しそうに見えるのでした。



夕食は、魔理沙さんの持ち寄ってくれたキノコと、家にあった材料との組み合わせから、シチューになりました。
ご主人様は魔理沙さんの話し相手をしていたので、私が作ったのですが、私を操るご主人様の魔法にも、いつも以上に力が入っているのが感じられます。

「うん、美味い! やっぱアリスに作ってもらって正解だったぜ」
「はいはい、お粗末様。作ったのは上海だけれど」
「おっとそうだったな。美味いぞ、上海」
「シャンハーイ」

魔理沙さんはご主人様に合わせて、嬉しそうな笑顔をこちらへ向けてきます。自分が褒められたことを素直に受け取らないご主人様へのからかいと、単純に私への感謝が半分半分という感じです。
ご主人様にも言えることですが、魔理沙さんの私に対するこの距離感が、私はとても気に入っています。
私を完全に人と同じように扱うでもなく、だからといって物として扱うでもない距離感。
ご主人様の技術もあって、私はよく、本物の人間のようだと言われますし、操ってもらえば、人間とほとんど同じような動きをすることも出来ますが、それでも私は人形です。
そんな私を必要以上に人間と同じように扱うというのは、やはりどこかチグハグな感じがします。
でも、そうはいっても、私は私が思っている以上に我儘なようで、いつでも心の片隅に、人と同じように扱われたいという思いを抱いてしまいます。
だから、このどちらとも言えない中途半端な距離感は、私にとってはとても心地の良いものなのです。





魔理沙さんが帰ってさらに数時間後。
夜も深まってきた時間に、ご主人様は就寝の支度を始めます。
今日は人形劇を開いて、魔理沙さんと夕食を食べて、つい先ほどまで私の服を新調してくれていたので、疲れも溜まってしまっているでしょう。
ベッドの皺を直しながら、小さく欠伸を噛み殺しているのが窺えます。

「……これでよし、と。それじゃあ寝ましょうか」
「シャンハーイ」

ご主人様は私を抱きかかえると、ベッドのそばにあるタンスの上に、私をそっと座らせてくれました。ベッドの方を眺めていられる、私の定位置です。
そうしてからご主人様はゆっくりとベッドに入り込み、スッと手を振るいます。それで、ご主人様の魔法で灯っていた部屋の明かりは消えます。
一瞬にして辺りは闇に包まれますが、しばらく待っていると、目が慣れて、僅かにですが部屋の様子も見てとれるようになりました。

「それじゃあ、おやすみ。上海」
「シャンハーイ」

ベッドの方からご主人様の声が聞こえてきます。その声を皮切りに、フッと身体の力が抜けるのが感じられました。
ご主人様からの魔力の供給が途切れたということです。こうなっては、動くことはもちろん、返事をすることも出来ません。
でも、私の思考は途切れません。あまり意識していませんでしたが、これは素敵なことです。嬉しいと思ったり、楽しいと思ったり、時には怒ったり、悲しんだり、そんな色々な思いが、魔法によるものではなく、私の、上海の紛れもない感情なのだと、そう実感できるのですから。



ご主人様の夢は、自立人形を作ることだそうです。
私のようにご主人様に操ってもらって動くのではなく、自分の意志で自由に動く、それこそ人間と変わらないような、そんな人形。
ご主人様の能力ならば、きっと、いえ、間違いなくいつの日か実現させることが出来るでしょう。
自立人形が出来たら、きっとご主人様のことですからそれを応用して、私もまた自立できるようにしてくれることと思います。
そうなったらどうしようか、何をしようか、時々、そんなことを夢想します。でも、いつも決まって同じ結論に至ってしまいます。
きっと、特に今までと変わらない。
今までと同じように、朝起きて、ご主人様のために朝食を作って、時おりご主人様に甘えて手入れをしてもらって、人里へ行って劇を開いて、魔理沙さんやご主人様達の会話を聞いて。
そんな、いつも通りの日々が続いていくだけだと思います。ただそれが、自分の意志で行えるというだけで。
だって、それこそが、私の望む最高の日々なのですから。



……ああ、でも、1つだけ待ち遠しいことがあります。
それは言葉です。今の私は、自分の名前を発するくらいしか出来ません。頑張ればもう少し何とかなるかもしれませんが、少なくとも会話ができるレベルには到底及びません。
だから、私の言葉は、自分の存在を伝えるためか、相槌くらいにしか使えません。
いつか自由に言葉を発せられるようになったら、色々な人とたくさん会話をしてみたいです。ご主人様と、魔理沙さんと、人里の子ども達と。
私の感じたこと、思ったこと、それらを色々な人に伝えたいです。魔理沙さんとご主人様のように、嫌味を言い合ったり、笑い合ったりをしてみたいです。
何より、ご主人様の言葉に、きちんと答えたいです。おはようと言われたらおはようございますと返したいです。用事を頼まれたら、分かりましたと答えたいです。たくさんのことに、ありがとうございますと言いたいです。
いつかきっと、そんな日が来ると信じています。
そのことを夢に見ながら、微かな寝息を立てるご主人様へ、今はそっと、心の内だけで返事を返します。
おやすみなさい。
ふと、上海って可愛いなー、と思って書き始めた。
動かなくても良いから一家に一体、欲を言えば三体くらい欲しい。

上海はきっと凄く良い子だと思います。何と言ってもアリスの作った人形ですからね
あっき~
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コメント



0.1000簡易評価
4.100名前が無い程度の能力削除
上海はかわいいな
5.100名前が無い程度の能力削除
癒される。上海可愛いです
6.100名前が無い程度の能力削除
上海もかわいいがアリスもかわいい。
7.100名前が無い程度の能力削除
上海いい子すぎる
10.80名前が無い程度の能力削除
久しぶりの上海でした。ほのぼの。家にいてくれたら、共感です。
11.100名前が無い程度の能力削除
癒されました。
13.100名前が無い程度の能力削除
上海。人形の騎士。ということは人形劇の内容は、死の呪いをかける魔女と戦って樫の木になる英雄譚、ですねわかります。
15.100名前が無い程度の能力削除
これはいい上海
18.80名前が無い程度の能力削除
ほのぼのした気分になりました
19.100名前が無い程度の能力削除
読んで良かったです
20.100名前が無い程度の能力削除
好きよこういうの
21.100名前が無い程度の能力削除
この何とも言えない視点と距離感が良いですね。意思を持った人形はやはり素敵で可愛いものです。
27.100名前が無い程度の能力削除
癒されました。
32.90奇声を発する程度の能力削除
上海可愛い
33.903削除
ああ、もう、可愛らしいなあ。
あまりにもほのぼのと進むのでとんでもないどんでん返しが待ってやしないかとヒヤヒヤしましたが
そんな心配は無用でしたね。
37.100nop削除
素敵やん^-^