Coolier - 新生・東方創想話

二人の巫女

2008/08/16 16:04:26
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※この作品は多少ですが百合成分を含んでいますので、
 そういうのが苦手な方はお気を付けください。
 霊夢×早苗です。



私は小さい頃から自分が特別だということを知っていた。
他の人には、両親にさえ見えない神様の姿を見ることができ、
他の人には扱うことの出来ない力を扱うことができる。
だから私は自分が特別だと思っていた。

でも・・・ここでは、幻想郷では全然そんなことは無かった。

「早苗・・・早苗!」

ボーっと箸を動かしていたら突然神奈子様に呼ばれた。

「あ・・・はい、何でしょうか?」

「何でしょうかって、もうとっくに食べ終わってるわよ?」

「へ?」

ふと食卓を見てみると、そこには空になった器だけが残っていた。

「あ・・・。す、すみません!」

どうやら私の箸は空の器と自分の口を往復していたらしい。
恥ずかしくて思わず俯いてしまう。

「どうしたのー?ボーっとしちゃって。」

じーっと様子を見てた諏訪子様にも心配そうに言われる。

「な、何でもないです!すぐに片付けますので!」

私は食器を持って台所に逃げるように駆け込んだ。

「あ、早苗!・・・全くどうしたんだろうねえ。」

「最近ちょっと様子がおかしいよねー。」


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朝食の片付けをしながら、溜息をつく。

「はあ、私どうしちゃったのかな。」

とは言ってみたものの、実は理由は分かっている。
最近、ある人のことを考える時間が多くなり、その人のことを考えていると
何をしていても手につかなくなってしまう。
ならば会いに行けばいいようなものなのだが、中々その勇気が出ない。

「霊夢・・・さん・・・。」


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あれは、今回の騒動が終結した後、山の妖怪達との親交を深める
という目的で行われた、博麗神社での宴会の時のこと。

元々お酒に強くない私は、少し酔いを醒まそうと一旦宴会の中心
から離れることにした。
そこで、あの人を見つけた。

「霊夢さん?」

「ん?ああ、何だあんたか。神様二人のおもりはいいの?」

私に気づいた霊夢さんは顔を上げるとそんなことを言ってきた。
思わず私は苦笑してしまう。

「神奈子様は天狗の方とずっと飲み比べをしていますし、
 諏訪子様も一緒になって盛り上がってるみたいなので・・・。
 一緒にいると巻き込まれそうなので逃げて来ちゃいました。」

「ふーん。」

それだけ言うと、霊夢さんは手に持ったお茶を一口飲む。
私はその横顔をじっと見つめる。


博麗霊夢。


私たちが来るまで、幻想郷唯一の神社だった博麗神社の巫女。
私が・・・初めて負けた人。

最初に会ったのは、幻想郷に来てすぐのことだった。
神奈子様の信仰を取り戻す為に、博麗神社に協力してもらうつもりだった。
でも実際に博麗神社を見てその考えはすぐに変わってしまった。

参拝客などほとんどいないことを物語っているお賽銭箱。
その現状をどうにもしようとせず、暢気にお茶を飲んでいる巫女。

(こんな人にこの神社を任せてちゃ、神奈子様の信仰は取り戻せない)

そう思った私は、神奈子様にこの神社を明け渡すように強く迫った。

(「あなたには巫女としての自覚がないんですか!?」)

(「あなたにはこの神社は任せられません!うちの神社の神様に譲渡してください!」)

今思えば、随分ひどいことを言ったものである。

その巫女は、私たちが神社を建てた天狗の山に乗り込んできた。
そして私は彼女と戦った。
現人神たる私が、務めを果たそうとしない巫女なんかに負ける訳がないと思っていた。

・・・結果は完敗だった。

その後に神奈子様まで負けてしまったということである。

結果的には、山の妖怪達とも和解することが出来、
博麗神社に神奈子様の分社を立てることも約束してもらえた。

しかし、私はどうしても気になってしまった。
悔しい、という気持ちももちろんあったが、
それ以上に別のことが気になっていた。


―――彼女は・・・霊夢さんはどうしてあんなに強いんだろうか―――


「隣、いいですか?」

返事はないが否定の意思も伝わってこない。
私は彼女の隣に腰を下ろす。

「霊夢さん。」

「何?」

霊夢さんは特に興味がない素振りで聞き返してくる。

「あの時はごめんなさい。散々ひどい事を言ってしまって。」

そう言って頭を下げる。
霊夢さんはさして気にしていない素振りだったが、
これはちゃんと言っておきたかった。

霊夢さんはしばらくぽかんとした顔をしていたが、
突然噴き出したように笑い始めた。

「えーと、その・・・。」

「ふふ、ふふふっ・・・。あんたって本当に真面目なのね。
 異変を起こした相手に謝られるなんて始めてだわ。」

突然笑い出した霊夢さんにどう反応を返していいのか分からない。
すると、突然人差し指で額をトンッとつつかれた。

「そういうのは嫌いじゃないけど、あんたは少し気負いすぎなのよ。
 もうちょっとくらい肩の力を抜いたってバチは当たらないわ。
 ―――幻想郷はそういうところよ。」

柔らかい微笑みを浮かべたまま、霊夢さんが言う。
その顔はすごく綺麗で・・・私は思わず見とれてしまった。
すると、突然手を引かれた。

「え・・・?」

「ほらほら、今回の宴会の主役はあんたなのよ。
 こんな所にいちゃ、あんた達の言う『親交』は得られないわよ。」

そのまま、私の手を引いて宴会の喧騒に戻っていく。

「おお、霊夢。どこ行ってたんだ?今や宴会の盛り上がりは最高潮だぜ!」

「魔理沙、あのね・・・。盛り上がるのは結構だけど、
 誰が片付けするのかも考えてよね・・・。」

「まあまあ、宴会の席くらい固いこと言いっこなしでいいじゃないか。」

「あんたはいつもそうでしょ。」

「厳しいなあ。んで、そこの緑巫女はなんでずっとうつむいてるんだ?」

「ん?」

霊夢さんと魔理沙さんが何かを話しているのが聞こえる。
でも私は顔をあげることは出来そうにない。


―――繋がれたままの手がとても熱くて、私の顔も同じくらいに火照っているだろうから―――


私はあの時少しだけ理解出来た気がする。

なぜ彼女が私よりも強いのか。
なぜ博麗神社には信仰が集まらないのか。

あの後宴会の中でずっと見ていて分かったことだが、彼女は
妖怪にも人間にも神様に対してもわけ隔てなく接している。
そして誰からも好かれている。

それは信仰とは違うものかもしれない。
でも・・・それが彼女の強さなのだろうと私は思った。


-----------------------------------------------------------------------

「はあ・・・。」

あの時以来、博麗神社には行っていない。
理由もなく会いに行って良いのだろうか、という
気持ちが私の足を止めていた。

「早苗、ちょっといいかしら?」

「神奈子様?はい、何でしょうか?」

「突然で悪いんだけど、これから博麗神社に行ってきてもらえないかしら?」

「はい?」

私が博麗神社に行く?今から?

「分社を建てる話があるでしょ?あの巫女と詳しいことを
 決めてきて欲しいの。」

「私が・・・ですか?」

「ええ、お願い出来るかしら?」

「は、はい!」

これは大事な仕事である。神奈子様の分社を建てることは、
信仰を回復させる上で最も重要なことだからだ。

・・・それなのに私は頬が緩んでしまうのを抑えられなかった。

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「これで少しは上手くいくといいんだけどねえ・・・。」

「か~な~こ!」

ひょこっと突然下から諏訪子が出てきた。

「うわっ!ど、どうしたんだい、諏訪子」

「ふふふ~。」

「な、なんだい。ニヤニヤして。」

「いやいや、神奈子もお母さんしてるなーと思ってね。」

「な!」

「分社のことなんてもう大体決まってるのに、わざとああ言ったんでしょ?」

「う・・・。」

そう。分社のことなんて場所も時期もほとんどもう決まっていた。
そもそもそんなに大掛かりなものを建てる訳ではないのだから、
わざわざ「詳しいこと」なんて決める必要はない。

「早苗に一歩を踏み出させてあげたんだよね?」

「そうね・・・。あの子は私たちに少し近すぎた。
 自分のことを特別だと思うあまり、普通の友達を作る
 ことが出来なかった。」

「でも幻想郷なら、早苗は普通の女の子とそんなに変わらない。」

「幸い、早苗もあの巫女のことは気に入っているみたいだし・・・。
 良い友達になってくれればいいんだけどね。」

「うーん・・・。」

「なんだい?」

「気に入ってるだけなのかなーって。」

「?」

「まあ、その内分かると思うよ。」

諏訪子は相変わらず笑ったままそう言った。


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博麗神社に着くと、すぐ霊夢さんを発見することが出来た。
どう声を掛けて良いか分からずに悩んでいると、霊夢さんの
方から話しかけてきてくれた。

「全く、なんだか知らないけど用があるなら上がってきなさいよ。」

「あ、ありがとうございます。」

居間の方にあがらせてもらった。
そこでたくさんお話をした。

分社についての話はもうある程度決まっていたらしく、
すぐに終わってしまった。
でもこのまま帰るのは勿体ないと思ってしまったので、
たわいもない世間話に付き合ってもらった。

霊夢さんも私もあまり口数が多い方ではないので、
盛り上がるという感じではなかったが、それでもすごく楽しかった。
霊夢さんが言葉を返してくれる度、嬉しくなってしまった。


ああ、もう認めざるを得ない。


―――私は霊夢さんに惹かれてしまったんだ、と―――


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そろそろ夕日が出る時間になってきたので、名残惜しいが
お暇させて頂くことにした。

「もうこんな時間ですし、私はそろそろ帰ります。
 長居してごめんなさい。」

「そう。じゃあね。」

「・・・」

「何?」

どうしようか、と思っていたが、覚悟を決めて霊夢さんと向かい合う。

「あ、あの・・・私まだ幻想郷に来たばっかりで、全然分からない
 こととか多くて・・・。」

上手くしゃべれない。顔が赤くなっているのが自分でも分かる。

「同じ巫女同士ですし・・・その・・色々教えてもらいたい
 こととかあって・・・。」

色々言葉を並べ立てても結局言いたいことはひとつで・・・
でも今までこんなことは言ったことがなくて・・・

「また・・・ここに遊びに来てもいいでしょうか・・・?」

―――なんとか言うことが出来た。

おそるおそる顔を上げて霊夢さんの顔を見る。
彼女は苦笑した顔を貼り付けて、

「こんなところに来たって、お茶くらいしか出せないわよ?」

と言ってくれた。

―――それは素直ではないけれど、確かな肯定の言葉。

「・・・はい!」

その言葉を聞いた時の私は多分笑顔を浮かべていたんだろうと思う。


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「全く・・・本当に素直な子ね。」

早苗が去っていった方向を見つめる霊夢の顔は少し緩んでいる。

会うなりいきなり喧嘩をふっかけられた。
あなたには本当に巫女としての自覚があるんですか、とまで言われた。
でもそんなに気分が悪くはなかった。

「普通の巫女として見てもらったのなんて久し振りだったからかしら?」

霊夢とて、巫女として信仰を集めることに全く頓着がない訳ではない。
巫女としての自分に誇りを持っていない訳ではない。
だが、自分は普通の巫女ではなく。博麗の巫女である。
人間にも妖怪にも平等に接しなければいけない。

そんな状況で信仰を集めるのはそう簡単なことではない。
妖怪がいついるかも分からない神社に、誰が参拝に来るだろうか。

「少し羨ましかったのかもしれないわね・・・。」

まっすぐに、巫女としての勤めを果たそうとしている早苗の姿が。

「さてと、久しぶりに掃除でもしようかしら。」

霊夢は箒を持って境内の方に向かう。
その顔には笑顔が浮かんでいた。
お初にお目にかかります。renifiruと言うものです。
いつも読むだけだったのですが、ここの作品を読んでいる内にどうしても書いて
みたくなってしまい、投稿させていただきました。

霊夢と早苗さんが好きなので、このカップリング?を書いてみました。
初めて小説というものを書いたので、キャラの特徴や言葉遣い、文法など
突っ込みどころが非常に多いと思います。
特に霊夢のキャラがすごい難しい・・・。

こんな拙い文章を読んで下さって、どうもありがとうございました。
renifiru
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コメント



0.1240簡易評価
5.70名前が無い程度の能力削除
諏訪子様はさといなあ
6.60名前が無い程度の能力削除
霊×早はジャスティス。

>「あ・・・///。す、すみません!」
こういう表現は小説というかSSではあんまりやっちゃならんかなぁ…。
できれば文章で表現して貰いたいところ。
7.60からなくらな削除
・・・おおっと、危ない
早苗さんに惹かれそうになってしまいました
百合ってほどではないかと思います
10.60名前が無い程度の能力削除
レイサナこそジャスティス。

単純な構成だったように感じられたのでもっと色々あったほうが楽しめたと思います。あくまでも個人的には、ですが。
あと私は特に気にしないのですが・・・(中点)では無く…(三点リーダー)を使ったほうがよいとどこかで読んだ気がします。

こちらこそ拙い読者ですが読ませて頂いてありがとうございます。
11.70名前が無い程度の能力削除
レイサナはまさにジャスティス。
もっと広まれレイサナの輪。
12.無評価renifiru削除
このような小説を読んでいただいただけでなく、コメントまでして頂きありがとうございます。

>>5さん
自分の中では諏訪子様はこんなイメージなんです。
どちらかというと、神奈子様の方が子離れ出来てない、という感じで。

>>6さん
ご指摘ありがとうございます。確かに小説で使うには良くない表現でした。
今後はちゃんと文章で表現出来るようにがんばりたいと思います。

>>からなくらなさん
早苗さんは出来るだけ可愛く書きたいと思っているので、
惹かれそうになっていただけたなら嬉しいです。

>>10さん
ご指摘ありがとうございます。頭の中ではこの二人の絡みを色々考えて
いたのですが、それを表現できるほどの文章力がまだ私にはないみたいです…。
三点リーダに関しては、今後そちらを使用していこうと思います。

>>11さん
レイサナって良いですよね!
15.80カブトムシ削除
レイサナはええなぁ……(*´∀`)

早苗ちゃんは良い子ですよねホントに
19.70名前が無い程度の能力削除
こんな霊夢と早苗さんのお話もいいですね。
面白かったです。
百合ってほどじゃなかったような?
続きの気になる作品でした。

三点リーダーは……と2つセットで使うのが良いかもです。
32.80名前が無い程度の能力削除
これからの二人が楽しみな作品ですね
36.100名前が無い程度の能力削除
うん