「あなたにはこれをあげましょう。あなたが正しく力を使えるようにね」
まだ幼い宇佐見菫子は長い金髪に紫色を基調とした白いフリルが付いているドレスを着た女性があるものをもらった。それは深い菫色をした石が1つだけぶら下がっているネックレスだ。
彼女は女性にこの石は何かとたずねる。
女性が何かを話しているが、何か不快な音と重なって上手く聞き取ることができない。
「もう下校時間だ。寝てないで帰らないか、宇佐見」
夢の中で邪魔をしていた不快な音ををはっきりと耳にして彼女は目を覚ました。
彼女を起こした男性教員は続けて言う。
「もう、教室閉めるから早く出て行ってくれ」
彼女は適当な返事をして、教室を出て行った。
女性からもらったネックレスにはアイオライトという宝石の一種がぶら下がっていた。この石には「持つ力を正しく活かす」という意味がある。
窓の外は日が落ちたことですっかり暗くなっており、これから電車を使って帰ったら通勤ラッシュにぶつかってしまうだろう。そのことを考えると彼女は帰るのがおっくうになった。
母に帰りが遅くなることを伝えると校門を出た。校門を出るととりあえず駅のほうに歩き出した。いつもならバスを使う道のりだが、目的は時間を潰すことだからそんなことはどうでもよかった。
毎日のように繰り返される平凡な生活に辟易していた。自分は特別な力を持っているのに、送っている生活は何の変哲もないものだ。彼女はそれが嫌で仕方なかった。これを当然だと認めてしまっては彼女は並大抵の人と同じになってしまう。
彼女は大きなため息をついた。
何か面白いことはないかと探してはみるものの、大抵のことはインターネットで調べればわかってしまう。現代に残されたオカルトである都市伝説なんかもひとり歩きした結果、誇張や脚色が付いているだけで実際は大したことがないものばかり。この世には自分の力以外に不思議なものは残されていないのか。
彼女はいつも通りのくだらないことを考えていながら歩いていると目の前を黒猫が通った。いつもなら特に興味を示さないところだったが、今回は違った。黒猫の尻尾は2本あったのだ。
「あれは猫又!」
猫又に気づかれないように後を追いかけた。
猫又は通りを離れ、脇道へと入り人通りのないほうへと歩いている。そのあとをつけていると周囲の明かりは徐々に減っていき、通りを走っていた車の音などの喧騒も離れて行った。
夢中になって猫又を追いかけていると一瞬、視界が暗転した。次の瞬間、眼の前にいた猫又は消え失せ、彼女はどこかの山の中にいた。
彼女は現実を受け入れられずにしばらく呆然したのちにスマホを取り出して、位置情報を確認した。今いる場所は圏外で位置情報を取得することもできなかった。
現代文明に染まり切った彼女には今の状況を理解することができず、混乱するがそれと同時に自分が異常な現象に巻き込まれたのだという実感に高揚していた。
彼女は運よくある程度整備された道に出たらしく、とりあえず山を下れそうな方向に歩き出した。
街灯などない山の中の光源は空からもたらされる星々のものとスマホのライトという有限なだけに頼りのないものだった。
周囲を闇が支配する。現代人の彼女はこんな原始的な闇にさらされるのは初めての経験だったために原始的な恐怖を感じていた。それは人間が暗闇に幻想を抱くような本能的なもの。
彼女は考えていた。この異様な場所にまた来ることができれな。
彼女はそんなことを考えながら歩いていると先が明かることに気が付いた。そしてそれに近づくと彼女の視界は真っ白な光に埋め尽くされた。
気が付くと駅前を歩いていた。
あまりの光景の変わりように驚き、立ち止まって辺りを見るがどこをどう見ても先ほどの面影などはない。
あれは何だったのだろうか?
ついに厳格でも見てしまったのだろうか?
しかし彼女はあのリアルな幻想的な恐怖をしっかりと覚えていた。
あの場所にたどり着くことこそが特別な力の正しい使い方なのだ、あの場所にたどり着くことで私が並大抵の人とは違うことを証明することができる。
彼女はこの日、幻想を見て、幻想に取りつかれた。
長い金髪に紫色を基調とした白いフリルが付いているドレスを着た女性は宇佐見菫子が幻想郷に迷い込んだことを察知していた。
「ようやくあの石が機能したのね」
女性は幼い彼女に与えた石を思い出した。それは菫青石を模した幻想郷への片道切符。彼女が十分な力をつけた時に機能するように細工したものだ。
「菫青石の意味は『進むべき道をただす』。幻想郷にたどり着くのも時間の問題ね」
女性は1人で怪しく、愉快そうに笑った。
まだ幼い宇佐見菫子は長い金髪に紫色を基調とした白いフリルが付いているドレスを着た女性があるものをもらった。それは深い菫色をした石が1つだけぶら下がっているネックレスだ。
彼女は女性にこの石は何かとたずねる。
女性が何かを話しているが、何か不快な音と重なって上手く聞き取ることができない。
「もう下校時間だ。寝てないで帰らないか、宇佐見」
夢の中で邪魔をしていた不快な音ををはっきりと耳にして彼女は目を覚ました。
彼女を起こした男性教員は続けて言う。
「もう、教室閉めるから早く出て行ってくれ」
彼女は適当な返事をして、教室を出て行った。
女性からもらったネックレスにはアイオライトという宝石の一種がぶら下がっていた。この石には「持つ力を正しく活かす」という意味がある。
窓の外は日が落ちたことですっかり暗くなっており、これから電車を使って帰ったら通勤ラッシュにぶつかってしまうだろう。そのことを考えると彼女は帰るのがおっくうになった。
母に帰りが遅くなることを伝えると校門を出た。校門を出るととりあえず駅のほうに歩き出した。いつもならバスを使う道のりだが、目的は時間を潰すことだからそんなことはどうでもよかった。
毎日のように繰り返される平凡な生活に辟易していた。自分は特別な力を持っているのに、送っている生活は何の変哲もないものだ。彼女はそれが嫌で仕方なかった。これを当然だと認めてしまっては彼女は並大抵の人と同じになってしまう。
彼女は大きなため息をついた。
何か面白いことはないかと探してはみるものの、大抵のことはインターネットで調べればわかってしまう。現代に残されたオカルトである都市伝説なんかもひとり歩きした結果、誇張や脚色が付いているだけで実際は大したことがないものばかり。この世には自分の力以外に不思議なものは残されていないのか。
彼女はいつも通りのくだらないことを考えていながら歩いていると目の前を黒猫が通った。いつもなら特に興味を示さないところだったが、今回は違った。黒猫の尻尾は2本あったのだ。
「あれは猫又!」
猫又に気づかれないように後を追いかけた。
猫又は通りを離れ、脇道へと入り人通りのないほうへと歩いている。そのあとをつけていると周囲の明かりは徐々に減っていき、通りを走っていた車の音などの喧騒も離れて行った。
夢中になって猫又を追いかけていると一瞬、視界が暗転した。次の瞬間、眼の前にいた猫又は消え失せ、彼女はどこかの山の中にいた。
彼女は現実を受け入れられずにしばらく呆然したのちにスマホを取り出して、位置情報を確認した。今いる場所は圏外で位置情報を取得することもできなかった。
現代文明に染まり切った彼女には今の状況を理解することができず、混乱するがそれと同時に自分が異常な現象に巻き込まれたのだという実感に高揚していた。
彼女は運よくある程度整備された道に出たらしく、とりあえず山を下れそうな方向に歩き出した。
街灯などない山の中の光源は空からもたらされる星々のものとスマホのライトという有限なだけに頼りのないものだった。
周囲を闇が支配する。現代人の彼女はこんな原始的な闇にさらされるのは初めての経験だったために原始的な恐怖を感じていた。それは人間が暗闇に幻想を抱くような本能的なもの。
彼女は考えていた。この異様な場所にまた来ることができれな。
彼女はそんなことを考えながら歩いていると先が明かることに気が付いた。そしてそれに近づくと彼女の視界は真っ白な光に埋め尽くされた。
気が付くと駅前を歩いていた。
あまりの光景の変わりように驚き、立ち止まって辺りを見るがどこをどう見ても先ほどの面影などはない。
あれは何だったのだろうか?
ついに厳格でも見てしまったのだろうか?
しかし彼女はあのリアルな幻想的な恐怖をしっかりと覚えていた。
あの場所にたどり着くことこそが特別な力の正しい使い方なのだ、あの場所にたどり着くことで私が並大抵の人とは違うことを証明することができる。
彼女はこの日、幻想を見て、幻想に取りつかれた。
長い金髪に紫色を基調とした白いフリルが付いているドレスを着た女性は宇佐見菫子が幻想郷に迷い込んだことを察知していた。
「ようやくあの石が機能したのね」
女性は幼い彼女に与えた石を思い出した。それは菫青石を模した幻想郷への片道切符。彼女が十分な力をつけた時に機能するように細工したものだ。
「菫青石の意味は『進むべき道をただす』。幻想郷にたどり着くのも時間の問題ね」
女性は1人で怪しく、愉快そうに笑った。