レミリアは沈痛な面持ちってわけじゃないのですが、紅魔館の主要メンバーを事が有ったその場所に一堂もしくは一同を集めました。
「この中に、フランに3秒ルールを教えた奴が居る」
レミリアとフランがクッキーという小麦と砂糖等を混ぜ焼いた西洋のお菓子を食べている時の事でした。
フランが持っていたそのクッキーが地球もしくは幻想郷から引力の影響を受けて手から離れて床面もしくはテーブルに落ちてしまったのです。
その様子をまのあたりしたレミリアは、しまったと戦慄し逡巡しました。
そのクッキーは本日その時、フランの割り当ての最後の1枚だったのです。レミリアの割り当て分が後2枚残っています。姉としてこれは、1枚分けてあげなくてはいけないのかなと運命を呪ったのです。
自分の分が減ってしまうのは悲しいことだけど、たった1人の血の繋がった妹の為に仕方のないことなのです。
そんなときでした。そんな運命を呪い、それでも姉として1枚差し出そうとレミリアが動き出す前にフランが動いたのです。
そうなのです。『3秒ルール、3秒ルール』と言いながらフランはクッキーを拾い上げ、そのまま食べちゃったのです。
フランの為にお菓子を渡そうとしたレミリアの気持ちは、宙に浮いてしまったのでした。
こうして、この浮いた気持ちのままじゃ、納得できないレミリアは主要メンバーを一堂に集めたのでした。
「お嬢様! 私じゃありません!」
即座に、レミリアが雇っている人間でもすごく強くて瀟洒なのでメイド長をしている十六夜咲夜は否定しました。なんと、この十六夜咲夜って名前はレミリアがつけたのだそうです。
「じゃあ、パチェが犯人なの?」
この、パチェと言われた……以下略です。
「ねぇ、レミィ。私その3秒ルールっていうのがわからないわ」
沢山の知識をため込んでいるパチュリーなので本当は知って居るのかもしれませんでした。
でも、最近第一の親友レミリアが霊夢の所ばかりに行って遊んでくれないのでちょっと意地悪な気持だったのかもしれませんね。
「パチュリーさん、3秒ルールっていうのは食べ物が主に床面や遥かなる大地に落ちてしまった後の緊急手段の事を言います。3秒以内に拾い上げ何もなかったことにして食すのです」
そんな、深謀遠慮より結構浅い事をパチュリーが考えて居るなんて思ってもいなかった美鈴がパチュリーに答えました。
美鈴は姓を紅、名を美鈴そして、字があるのでしょうか?
「へえぇ、なるほど3秒ルールってそういう事なのね。美鈴は3秒ルールというのに精通してるのね」
3秒ルールの秘密を暴露した美鈴をパチュリーは尊敬もしくは畏怖の眼で見ました。
いつも元気な美鈴に憧れちゃう気持ちもあったんだなって思います。
「つまり3秒ルールの感染源は美鈴だったのね」
今回のように3秒ルールを、フランに吹聴して3秒ルールを感染させたに違いありません。
きっと美鈴の事ですから、フランが寝付くまで頭をなでながら子守歌のように優しく語り掛けたのでしょう。
495年地下室暮らしのフランなので、こういうことに免疫がないのでした。
予防接種でどうにかなったかもしれませんが、注射が怖いレミリアです。
だから、妹のフランも同じだろうと予防接種を受けさせていなかったのでした。
「そんな、お嬢様。3秒ルールなんて現場ではよくあることなんですよ。現場の人間なら誰でも知っています」
現場がどこなのかは知る術はありません。ただ、誰もがもうすでに感染してしまっていることが容易に想像できました。
「よくあることなんて、感染拡大、パンデミックじゃない」
「お嬢様、気を確かに」
事態の重さに気が付いたレミリアは眩暈を覚え、フラフラと近くのテーブルに手をつこうとしました。
しかし、その手がテーブルに乗ってたお皿にあたりました。
「あ」
幸い、お皿は大丈夫でした。しかし、その上に乗っていたクッキーはダメでした。
引力に従い、クッキーは床面に落ちてしまったのです。
そうです。レミリアは後で食べようと思ってまだクッキーを残していたのです。
「……うぅ、どうやら3秒ルール、私も感染しちゃったみたい」
レミリアは何事もなかったようにクッキーという焼き菓子を拾い上げて食べちゃったのでした。甘くて、美味しかったのでした。
間というか空気というか
基礎的な部分もしっかりしてて面白いです
結局誰だったのかは闇の中でしたか