あたいは頭が良かった。でもそれはかんちがいだったみたいで、人間や他の妖怪からバカにされた。ある紅白の巫女からはこう言われたりした。
「井の中の蛙大海を知らず、って言葉があるのよ。いくら妖精の中で圧倒的な力を持っていたとしても、外から見れば『所詮は妖精』なのよ。」
くやしかった。妖精の中で新聞を読めるのはあたいや大ちゃんぐらいだったし、力だって一番強かった。けれど、やっぱり他の妖怪には相手にもされていなかった。妖精というだけでバカにされるなんてひどいじゃないか。あたいはそれをひっくり返すためにさいきょーを目指していた。
ある日、白黒の魔法使いからこんなことを言われた。
「お前には考えが足りないのさ。少し考えるだけでも随分強くなれるはずだぜ。まあ、妖精だからどうなるかは私にもわからないけどな!」
お前が言うかとも思ったけれど、このままくやしいままなのはいやだった。だからあたいは少し考えてみることにした。
敵はどこに弾をうとうとしているのか。
敵は次にどう動いてくるか。
敵は何を考えているのか。
そうやって考えていくうちに、何かかべのようなものに引っかかったような気がした。このままじゃだめだ。敵がどんなことを考えているのかを考えるには今までに知っていることだけじゃあ足りない。
あたしは『勉強する』ことにした。
慧音に頼んで寺子屋に入れてもらうことにした。慧音は少しとまどっていたけれど、最後には許してもらえた。いっしょに勉強していた人間の子供たちからは少し避けられていたけれども、少しずつ、少しずつ、時間をかけてみんなと同じぐらいの賢さになるように勉強をしていった。
その頃はそのことでいっぱいいっぱいだった。この頃から私は遊ぶことがなくなっていったように思う。きっと、もう『異常』は始まっていたのだろう。
寺小屋に通い始めて1年ほど経ったころ。あたしは紅魔館の大図書館に足を運ぶようになっていた。あたしが強くなるにはまだ知らなければいけないことがたくさんある。確かに弾幕ごっこは強くなっていたが、まだまだ足りなかった。巫女や魔法使いやらに度々挑んでは返り討ちにされていたから。
大図書館には様々な『知識』があった。少し前までのあたしなら見向きもしなかったものだった。いたずらの対象だったたくさんの『がらくた』がその時は『宝』に見えた。
最初のうちは追い返されていたが、大図書館の主はあたしに興味を持ったようで、追い返されることは無くなり、あたしは本を持ち出すことまで許されるようになった。その頃には、もう他の妖精にはほとんど会ってなかった。
ある日、あたしは吸血鬼に会った。彼女は言うのだ。
「貴女には数奇な運命が見える。今戻れば、きっと何事もない平和が待っている。進めば、きっと元のお前に戻ることは無い。すべてはお前の決断次第だ。」
あたしは答えた。
「運命なんて知らない。あたしが何かしようと思って行動したとき、運命なんてかわってしまうのさ。」
彼女はにたりと笑い牙を見せて言うのだ。
「ククク、精々面白い運命を見せてくれることだろうな。期待しているよ、『氷の賢者』さん。」
「・・・?」
彼女は笑みを浮かべるだけだった。
それからも私は学び続けた。長い間湖に戻ることは無かった。その時にはもう最強になるまで湖には戻らないという決意があったから。私が学んだのは戦い方だけじゃなかった。魔法の基礎は白黒から、機械の技術は河童から、結界の作り方、心理学なんてものも学んだ。それらもすべて最強になるため。自身の妖精という枠を超えるため。ただひたすらに強くなろうとした。
そして私は妖精という枷から外れた。いや、正確にいうと外れていたのに気づかされたのだ。
ある異変により、湖がなくなったことを知った。その周りの自然もなくなったのだという。
自然が無くなれば妖精は存在することはできない。それは幻想郷の摂理であり、また私もそのことについて知っていたから。現に大ちゃんやいつも遊んでいた妖精たちはいなくなってしまったのだから。そして、消えるはずの自分の体がまだここにあるのだから。
後に慧音に聞いた。妖精が学ぼうとすること自体がすでに妖精の域を超えていたのだと。私が妖精として目指した『最強』はそれを目指す時点で矛盾を生じていたのだ。その途中で『学ぶこと』によってすでに私は妖精という枠からはみ出していたのだから。
それでも私は学ぶことをやめることができなかった。このままでは、私のやってきたことが意味をなくしてしまう。ただそれだけのために最強を目指した。そう、何かを残すために。
妖精として目指したものを、確かめるために。
妖精という身を捨てても残したかった目標のために
「・・・だから私はこの異変を起こしたのよ。」
「・・・どうでもいいのよ。そんなこと。ていうか最近レミリアがにやにや笑ってたのはそういうことだったのね。あの性悪蝙蝠め。」
「・・・あなたはいつも道理ね霊夢。随分会ってなかったけど、全然変わってないわ。」
「あんたは随分変わったようだけれどね。口ぶりが偉そうになってるわ。それより、こんな大規模な異変を起こせば紫が飛んでくるのは分かっているでしょう?夏に溶けない雪を幻想郷中に降らすなんて。」
「・・・ええ。それが目的だから。」
「・・・そういうことか。あんたは相変わらず馬鹿だわ。」
「あら、今の私は『氷の賢者』っていう二つ名なの知ってる?」
「・・・やっぱ根は変わってないのよ。すぐにほんとのあんたをたたき起こしてやるわ。」
「やれるものなら。じゃあ始めようか。。私の集大成の一歩を・・・ね。」
私はスペルカードを出す。
「氷踊符『最果ての妖精たち』」
この異変は私の集大成。
この賢妖精の末路への挑戦だ。
「井の中の蛙大海を知らず、って言葉があるのよ。いくら妖精の中で圧倒的な力を持っていたとしても、外から見れば『所詮は妖精』なのよ。」
くやしかった。妖精の中で新聞を読めるのはあたいや大ちゃんぐらいだったし、力だって一番強かった。けれど、やっぱり他の妖怪には相手にもされていなかった。妖精というだけでバカにされるなんてひどいじゃないか。あたいはそれをひっくり返すためにさいきょーを目指していた。
ある日、白黒の魔法使いからこんなことを言われた。
「お前には考えが足りないのさ。少し考えるだけでも随分強くなれるはずだぜ。まあ、妖精だからどうなるかは私にもわからないけどな!」
お前が言うかとも思ったけれど、このままくやしいままなのはいやだった。だからあたいは少し考えてみることにした。
敵はどこに弾をうとうとしているのか。
敵は次にどう動いてくるか。
敵は何を考えているのか。
そうやって考えていくうちに、何かかべのようなものに引っかかったような気がした。このままじゃだめだ。敵がどんなことを考えているのかを考えるには今までに知っていることだけじゃあ足りない。
あたしは『勉強する』ことにした。
慧音に頼んで寺子屋に入れてもらうことにした。慧音は少しとまどっていたけれど、最後には許してもらえた。いっしょに勉強していた人間の子供たちからは少し避けられていたけれども、少しずつ、少しずつ、時間をかけてみんなと同じぐらいの賢さになるように勉強をしていった。
その頃はそのことでいっぱいいっぱいだった。この頃から私は遊ぶことがなくなっていったように思う。きっと、もう『異常』は始まっていたのだろう。
寺小屋に通い始めて1年ほど経ったころ。あたしは紅魔館の大図書館に足を運ぶようになっていた。あたしが強くなるにはまだ知らなければいけないことがたくさんある。確かに弾幕ごっこは強くなっていたが、まだまだ足りなかった。巫女や魔法使いやらに度々挑んでは返り討ちにされていたから。
大図書館には様々な『知識』があった。少し前までのあたしなら見向きもしなかったものだった。いたずらの対象だったたくさんの『がらくた』がその時は『宝』に見えた。
最初のうちは追い返されていたが、大図書館の主はあたしに興味を持ったようで、追い返されることは無くなり、あたしは本を持ち出すことまで許されるようになった。その頃には、もう他の妖精にはほとんど会ってなかった。
ある日、あたしは吸血鬼に会った。彼女は言うのだ。
「貴女には数奇な運命が見える。今戻れば、きっと何事もない平和が待っている。進めば、きっと元のお前に戻ることは無い。すべてはお前の決断次第だ。」
あたしは答えた。
「運命なんて知らない。あたしが何かしようと思って行動したとき、運命なんてかわってしまうのさ。」
彼女はにたりと笑い牙を見せて言うのだ。
「ククク、精々面白い運命を見せてくれることだろうな。期待しているよ、『氷の賢者』さん。」
「・・・?」
彼女は笑みを浮かべるだけだった。
それからも私は学び続けた。長い間湖に戻ることは無かった。その時にはもう最強になるまで湖には戻らないという決意があったから。私が学んだのは戦い方だけじゃなかった。魔法の基礎は白黒から、機械の技術は河童から、結界の作り方、心理学なんてものも学んだ。それらもすべて最強になるため。自身の妖精という枠を超えるため。ただひたすらに強くなろうとした。
そして私は妖精という枷から外れた。いや、正確にいうと外れていたのに気づかされたのだ。
ある異変により、湖がなくなったことを知った。その周りの自然もなくなったのだという。
自然が無くなれば妖精は存在することはできない。それは幻想郷の摂理であり、また私もそのことについて知っていたから。現に大ちゃんやいつも遊んでいた妖精たちはいなくなってしまったのだから。そして、消えるはずの自分の体がまだここにあるのだから。
後に慧音に聞いた。妖精が学ぼうとすること自体がすでに妖精の域を超えていたのだと。私が妖精として目指した『最強』はそれを目指す時点で矛盾を生じていたのだ。その途中で『学ぶこと』によってすでに私は妖精という枠からはみ出していたのだから。
それでも私は学ぶことをやめることができなかった。このままでは、私のやってきたことが意味をなくしてしまう。ただそれだけのために最強を目指した。そう、何かを残すために。
妖精として目指したものを、確かめるために。
妖精という身を捨てても残したかった目標のために
「・・・だから私はこの異変を起こしたのよ。」
「・・・どうでもいいのよ。そんなこと。ていうか最近レミリアがにやにや笑ってたのはそういうことだったのね。あの性悪蝙蝠め。」
「・・・あなたはいつも道理ね霊夢。随分会ってなかったけど、全然変わってないわ。」
「あんたは随分変わったようだけれどね。口ぶりが偉そうになってるわ。それより、こんな大規模な異変を起こせば紫が飛んでくるのは分かっているでしょう?夏に溶けない雪を幻想郷中に降らすなんて。」
「・・・ええ。それが目的だから。」
「・・・そういうことか。あんたは相変わらず馬鹿だわ。」
「あら、今の私は『氷の賢者』っていう二つ名なの知ってる?」
「・・・やっぱ根は変わってないのよ。すぐにほんとのあんたをたたき起こしてやるわ。」
「やれるものなら。じゃあ始めようか。。私の集大成の一歩を・・・ね。」
私はスペルカードを出す。
「氷踊符『最果ての妖精たち』」
この異変は私の集大成。
この賢妖精の末路への挑戦だ。
というのが第一印象ですね。発想や雰囲気は素直にいい感じと思います。
次回作も楽しみにしています。
面白かったです。続きが気になりますね。ただチルノが変化したからといって、妖精がいなくなるというのはちょっとん?となりました。
次回を楽しみにしてます。
比較で申し訳ないが、そっちのが面白かった。
と言うのも、導入部に始まり、勉強を始める経緯、挫折を経て賢くなっていく展開、その末路まで、骨子も肉付けも申し分なかった、ように記憶しているので。
これは色々雑な上に投げっぱ。
似た話は比較されるものだと思うので、首を傾げられても仕方ないかと。私意ですが。
展開部分はもう少し丁寧に書いた方が良いのでは。私見ですが。
沢山の死の中で何を見出すのかがあなたのテーマですかね
死をコストに成果としてテーマがあるみたいな
今回の話は分不相応の力を手に入れるなということですかね
いや分不相応の力を手にしたら新しい世界が手に入るがそんなにいいことでもないみたいな
まあ好色的なお前ら妖精は身分相応にしとけ!俺らとお前らは違う!俺ら偉い!感もそこにありそうですけど
死んだりする経緯が適当なのはまず何らかの死ありきでそこから始まっている感じですかね
つまり死に様が大事じゃなくて他人の死をコストに何を見出すかが大事だと考えられているように思われます
紫と正邪の話でもありましたが死を悼むより次に向かうべしみたいな感じですし、今回のはチルノが妖精仲間に対して冷淡なように見受けられました
冷酷なのか逞しいのか、いや冷酷なことが逞しいのか
でも面白かったです