「桜の樹の下には屍体が埋まっている」
縁側に座っていた幽々子様が振り返って笑った。そんな俗説を聞いた事はあったものの、どうして突然そんな事を言い出したのかは全く分からない。私が黙っていると幽々子様はつまらなそうに口をつぼんだ。
「梶井基次郎、知らない?」
全く分からなかった。分からない私に愛想を尽かしたのか、幽々子様は溜息を吐いて立ち上がり桜林へと歩いて行く。追った方が良いのか迷いながら、歩み続ける幽々子様を縁側の淵に立って見つめていると、幽々子様は縁側と桜の中間で足を止め振り返った。
「桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じて良い事なのよ、妖夢」
満開の桜林が広がっている。だが先頭に立つ巨大な西行妖だけは花を付けていない。咲かない大桜を背に幽々子様が腕を広げて笑っている。そんな幽々子様を見て私は初めて恐ろしいと思った。けれどどうして恐ろしいと思ったのかは良く分からなかった。
しとしとと雨が降り始めていた。
幽々子様が居なくなっていた。屋敷中を探しまわったが何処にも姿が見えない。行方を幽霊に尋ねようと思ったが幽霊達の姿も見えなかった。何か用事でもあっただろうかと考えを巡らせてみても思い当たらない。自分に内緒で白玉楼がそっくり引っ越してしまったとも思えない。何か異変でも起こったのだろうかとも考えるが、あの幽々子様が高高異変如きで姿を消すとも思えない。一向に理由の分からないまま白玉楼を探し回り、結局見つからずに疲れて縁側に座った。いずれひょっこりと出てくるだろうという楽観的な憶測があった。私をからかう為に姿を消した可能性もある。だとすれば苦労をした分だけ損だ。
最近段段と気温が上がってきていて、屋敷の中を歩き回っただけで少し汗を掻いていた。縁側に座っていると庭に吹く柔らかな風が汗をそよいでくれるから心地が良かった。幽々子様が居なくなった事だし少しのんびりするのも良いかもしれないと、茫洋とした心地で庭の桜達に目をやると、桜林の先頭に立った西行妖が狂った様に咲き誇っている。不思議に思ったが、それよりも眺めている内に覚えた眠気の方が強かった。瞼が下がって狭まる視野を彷徨わせていると半霊が居ない事に気が付いた。いけないと思ったが、何がいけないのかは良く分からなかった。
寒さに身を震わせると、すっかり夜になっていた。辺りは真っ暗闇で、咲き誇る桜も影しか見えない。薄っすらとした月明かりを頼りに部屋へ戻る。相変わらず屋敷の中は静寂に満ち満ちていて、誰の気配も感ぜられない。本当にみんな引っ越してしまって自分だけ置いて行かれたんじゃないかと不安になる。探しに行きたかったが、真っ暗な夜の中を手探りで探しまわるのは恐ろしい。一先ず朝になるまで待とうと私は眠る事にした。布団に入ると途端に空腹を感じたが、早く朝を迎えたかったので、そのままじっと目を瞑って寝入るのを待った。外の風が強くなっているのが音で分かる。さわさわと桜の鳴る音が耳障りだった。
いつの間にか朝になっていて、飛び起きて屋敷中を探し回ったが、誰の姿も存在しなかった。本当にこの白玉楼が打ち捨てられたのではないだろうかと、恐れが胸を締め付けてきた。何故自分に何も言わず皆が消えてしまったのか。その理由がまるで分からず、白玉楼と共に自分まで捨てられてしまった気がして、恐ろしさが募っていく。
支度を整えて外に出ると、強い日差しに肌が焼かれて痛かった。まるで夏の様な暑さが空から降り注いでくる。梅雨にも入っていないのだから、夏が来るには随分と遠い筈なのに。それどころかまだ桜が咲いている程なのに一体どうしてこんなにも暑いのだろう。西行妖を見ると枝の先まで真っ白な花を一杯につけて天へと手を伸ばしている。色が抜け落ちた様に真っ白な花は、他の桜達が白味掛かった赤色の花をつけている中で随分と浮いていた。まるで除け者にされている様なので、白玉楼に置いて行かれた孤独な自分に重なって、胸が締め付けられた様に苦しくなった。居ても立っても居られなくなって顔を背けて走り出す。走っている間は不安や寂しさが振り払わられた。だから地面を蹴る力がどんどん強くなっていくのが自分でも分かった。
何も考えずに走っていると、自分が博麗神社へ向かっている事に気が付いた。異変といえば博麗神社だ。巫女である霊夢ならば何か知っているかもしれない。
神社への階段を一段抜かしで登っていると、階段の途中を歩いている魔理沙を見つけた。久しぶりに人を見た。もうずっと人と話していない様な錯覚を起こして涙が零れそうになった。
魔理沙は私に気が付くと大丈夫かと驚いた顔をする。私は不安な思いを吐き出したくて、一緒に居た幽々子様や他のみんなが白玉楼から消えてしまい、自分だけが取り残されてしまった事を一気呵成に伝えた。魔理沙が心配する様な顔になってくれたので、私は何だか励まされた。魔理沙は幽々子様の行方こそ知らなかったが、幻想郷はそこまで広くない、だから何処かに行ってしまったにせよ、すぐに見つかるだろうと言ってくれた。
階段を登りきると、霊夢が石畳を掃き清めていた。私達に気が付いて酷く喜んだ顔で、ようやく立ち直れたのねと歩んでくる。霊夢を見た途端、私は安堵を覚えて足の力が抜けそうになった。博麗神社の巫女であればこの異変を解決してくれる。何処かに行ってしまった幽々子様の行方はすぐに分かって、また一緒に暮らせる。
私は挨拶もそこそこに急いで霊夢に説明した。幽々子様を見つけてくれるという期待で胸が一杯だった。その所為で説明しようとする言葉が何度も詰まってもどかしかった。一頻り説明し終えた私は霊夢が幽々子様の居場所を教えてくれる事を待った。
早く幽々子様が消えてしまった原因を教えて欲しい。
幽々子様を戻して欲しい。
だが、あろう事か、霊夢が残念そうに首を横に振った。
「流石に誰かの行方までは分からない。でも幻想郷はそこまで広くないから、いずれ分かるでしょう」
魔理沙と同じ事を言う。
あまりに失望しすぎて、目の前が赤く染まり、前頭部に痛みが走る。
だったら紫様を呼んで欲しいと霊夢に頼んだ。幽々子様の友人である紫様なら幽々子様の居場所も分かるだろう。だが霊夢は再び首を横に振った。
思わず激昂して霊夢に掴みかかろうとしたところを魔理沙に止められた。
私もはっと気が付いて自分のしようとした事を戒めたが、それでも紫様を呼んでくれない霊夢に対する苛立ちは収まらなかった。霊夢なら簡単な筈だ。それなのにどうして呼んでくれないのか。
「残念だけど、その人が何処に居るのかも分からないわよ。不安になるのは分かるけど、大丈夫だって。すぐに見つかるから」
すぐに見つかるのなら、今すぐに連れてきて欲しい。こちらはずっと不安な思いに苛まれているのだ。一刻でも早く会いたいのに、霊夢のさして気にした風も無い態度が益益苛立ちを増長させた。
私が何とか自分の怒りを堪えながら霊夢に詰め寄ると、霊夢は困った様子で私の肩を掴み顔を寄せてくる。
「そう、怖い顔しないで。大丈夫よ。外から来た人達なんて嫌でも噂になるんだから。多分その人達は役所に行って手続きでもしているんじゃない?」
何を言っているのか分からない。
とにかく早く見つけて欲しいとしばらく頼み込んでいると、ようやく霊夢が承諾してくれた。
「じゃあ、一応里の人達に探すよう言っておくから。それで良い?」
私が勢い込んで頷くと、霊夢は溜息を吐いてから隣の魔理沙に目をやった。
「何か、書く物ある?」
「何で?」
「人相書でも書こうかと」
魔理沙は何も持っていない事を示す。霊夢が仕方無さそうに私へと顔を戻した。
「で、その幽々子って人はどんな人なの?」
何故突然そんな事を聞くのか分からない。霊夢は幽々子様の事を知っている筈だ。
私が理由を尋ねると、霊夢が不思議そうな顔をする。
「だってどんな人か分からないと探し様が無いでしょ? それともそんな特徴的な人なの?」
何でそんな事を言うのか分からない。特徴も何も、白玉楼の主である幽々子様を知らない人なんて居ない。霊夢の口振りは、まるで誰一人として幽々子様の事を知らない様な言い草だ。私の中で、皆に置いて行かれたという喪失感とは別の、喩え様もない不安が急速に育っていく。
魔理沙を見る。不安そうな顔をしている。幽々子様を知らないのか問うと、魔理沙が頭を掻いた。
「そりゃ知らないよ。会った事無いし」
一瞬、視野が狭窄した。
霊夢に顔を向けると、呆れた様な顔をしている。
「分かったでしょ? 幾らあなたが知っていて、その人と親しくても、他の人達は知らないの。だからその特徴を教えてよ」
だってあり得ない事だ。
白玉楼の主を知らないなんて。
「主って。あれか? 西行寺って奴? 何だよ、幽霊でも見たのか?」
言ってから魔理沙がしまったという様な顔をした。私はほっとして、その通りだと頷く。どうやら魔理沙達は私の事をからかっていただけらしい。
やっぱりちゃんと分かっていたのだ。
からかわれた事に抗議しようと魔理沙を睨んだ私は言葉に詰まった。
魔理沙が気味の悪そうな顔をしていた。
幽霊を見たと言った私を本気で恐れている様な顔だった。
会話が噛み合っていなかった事にようやく気が付いた。
「冗談だよな?」
もう何が何だか分からなかった。
私が必死で首を横に振ると、魔理沙は気味悪そうな顔に口だけ笑みを浮かべて霊夢へと顔を向けた。
「こりゃ、巫女さんの出番じゃないか?」
そうだ、と私も顔を向けた。
良く分からないが、何か異変が起こっているのは分かる。だとすれば、それを解決するのは巫女の役目である筈だ。
だが霊夢も魔理沙と同じ様な顔をしていた。恐れる様な困った様な顔。異変を前にしたというのに、霊夢がそんな顔をするので、私は恐怖で息が詰まり、呼吸が出来無くなった。
「巫女って言ったってそういうお祓いとかの訓練とかしている訳じゃないし」
そう言う霊夢の姿が私の涙でぼやけていく。もう全てが信じられなかった。
霊夢が恐ろしげな顔に無理矢理笑みを浮かべながら言った。
「ね、冗談でしょ? もう十分怖かったからさ。もう止めてよ。辛かったのは分かるけど、幾ら何でも冗談が過ぎる」
嘘じゃない。
何で、そんな事を言うんだろう。
白玉楼には確かに。
「もう止めようぜ。ちょっと妖夢の様子が洒落になってないっていうか。あの屋敷には妖夢一人しか住んでいないだろ?」
確かにその通りだけど違うのだ。
白玉楼には私しか住んでいないけれど。
ふと私は自分の思考がおかしな事に気が付いた。
今の白玉楼に持ち主なんて居ない。ずっと昔に西行寺という持ち主が居たものの、一家揃って亡くなってしまい、それからは私の先祖が亡き主達に誓いを立てて白玉楼を守り続けてきた。だから今の白玉楼に本当の主は居ない。
そして現在の白玉楼には私一人しか住んでいない。二週間前に私の両親が亡くなってしまった時からそうなった。私は両親が居なくなってしまった事が悲しくて、今日まで一人閉じこもっていた。
でもだとすれば、あの姿は?
今もはっきりと思い出せる、あの亡霊の姿は一体何だ?
「その幽々子様っていうのは、あなたを引き取りに来た親戚とかじゃないんだよね? もう一度確認するけど、その……冗談でしょ?」
霊夢が心配そうにそう言った。
ああ、そうだ。霊夢は優しい性格だから皆に頼られている。けれど、あくまで私と同い年の子供で、当然異変を解決したり妖怪を倒したりなんて出来る訳が無い。博麗神社の巫女だからと言ってそんなのは名ばかりで。そもそも、今時妖怪だなんてそんな迷信を不安に思う様な時代じゃないんだから。
「ご両親の事が悲しいのは分かるけどさ。なんつーか、閉じこもってるなんて不健康じゃん? だからそういう……とにかく! 私も霊夢も、他のみんなも呼んで、お前の家で遊ぼうぜ。みんな門前払いにされてたから、妖夢の事凄い心配してたし。確かに私達じゃなんも出来無いけど、一緒に居る事位は出来るし」
魔理沙は明るくてみんなの事を引っ張る、グループの中心ではあるけれど、やっぱり不思議な事とはまるで無縁で、空を飛んだり、魔法を使ったりなんて出来無い。幽霊なんて聞いたら怖がるに決まっている。
私だってそうだ。亡霊の主なんて居ない、ただの中学生で、半霊なんていう気味の悪いのも憑いていないし、庭を整える事も出来無いし、剣だって振った事が無い。
それなのに、どうしてこんなにも鮮明に、白玉楼で亡霊と暮らしていた様子を思い浮かべる事が出来るのだろう。
自分がおかしくなっているのだと思うけれど、何がおかしくなっているのか分からない。頭の中を去来する亡霊との思い出が理解出来ない。亡霊に仕え、笑い、泣き、良き従者であろうと努力し、あの方を守ろうと剣を振り続けた日日が理解出来ない。心配そうに覗きこんでくる魔理沙と霊夢の顔が理解出来無い。溶け崩れて人の顔に見えない。薄っすらと白味掛かった赤に視界が染まっていく。さらさらと耳の奥に不可思議な音が聞こえている。頭が痛い。嫌な予感がする。額に汗を感じて拭う。頭が痛い。割れる様に痛い。
目を覚ますと、私は布団の中に居た。部屋の中は暗いが淡い月の光で微かに物の輪郭が見えた。辺りを見回すと大勢の人が倒れていた。一瞬驚いたが、良く見ればいつものみんなで、そこいらに寝転がっているだけだった。皆の寝息が空気に混じって聞こえてきた。
私の掛布団の上に顔から突っ伏している魔理沙を見て、苦笑しながらその髪を撫でる。辺りで眠る友達を見て、申し訳無くなる。多分私は倒れたのだろう。それで私は白玉楼に運び込まれ、みんながずっと看病してくれていたのだろう。ずっと白玉楼の中で一人暗く塞ぎ込み、心配して来てくれた友達を邪険に追い払って、今こうしてまた迷惑を掛けた私なんかを、夜になって疲れて眠るまでずっと。
辺りに散らばるお菓子とビールが気になるけれど、それでも涙が溢れてきた。皆の優しさに、それを邪険にしていた自分に、そして今更ながらにまた両親の死を思い出して。
私は酒気の充満する中、寝起きの頭を振りつつ緩慢に起き上がって、皆を起こさない様にそっと歩き出した。
未だ頭の中にはあの亡霊との日日が残っているけれど、もう随分と薄れていた。夢だったのだろう。両親を失った自分を慰める為に見た夢。あるいは憔悴しきった自分が見た悪夢だったのかもしれない。亡霊と住み、妖怪が出てきたんだから、悪夢と言って差し支えない。
でも幸せな夢だった。楽しい夢だった。夢の中で自分はずっと笑っていた気がする。あの亡霊との日日が本当に楽しいものだったから。勿論、こうして心配してくれる友達に囲まれた今だって、きっと幸せなんだろうけれど。
障子を開けて外を見ると、満開の桜が広がっていた。闇の中で真っ白な桜の花が良く映えていた。ふと、どうして西行妖が咲いているのだろうと疑問に思った。この桜は咲かない桜ではなかっただろうか。
桜の根元には亡霊が立っていた。扇子を手に、いつもと同じ優しそうな笑顔を浮かべている。
亡霊が立っていても不思議には思わない。薄明かりに桜林の広がる圧倒的な夜の光景は、今この場で何が起こっても不思議では無いと思わせるだけの迫力があった。
「桜の樹の下には屍体が埋まっている」
そう言って、亡霊は自分の頭上を指さした。
「ねえ、妖夢。こんなにも見事に西行妖は花を咲かせている。こんなにも美しく怪しい姿、この世にだってあの世にだって他に存在はしないわ。あり得ない光景なの。この桜が満開になるなんて。いいえ、西行妖だけじゃない。桜という異形が夜空に咲き誇る事自体があり得ない事。そんな異常が現出しているのだとすれば、それを可能にするだけの犠牲が払われていてしかるべきよね」
亡霊の言う事は一一もっともだった。きっと亡霊の言う通り、桜は花を咲かせる為にその下に死体を埋めているのだろう。そう思わせるだけの異形。咲き誇る桜を前にして、私は夢の中に居る様な心地になった。
「勿論これは夢よ。こんなにも桜が怪しく咲き乱れるなんて、夢でなければなんだというの?」
分からない。が、分からないと言ったら怒られてしまう。だから黙っていたのだけれど、亡霊は私の心を見透かして言った。
「分からない? 考えて分からないのならどうすれば良いのか、それ位なら分かるでしょう?」
ふと冷たい感触を覚えて空を仰ぐ。闇で見えないが、雨が振り始めた様だ。
私はいつの間にかスコップを持っていた。古びて錆びきったスコップが雨に濡れている。私もまた濡れている。濡れた私は濡れたスコップを持って桜の木の下へと歩んでいく。
桜の樹の下には屍体が埋まっている。
私は雨の中で土を掘りながら、やっぱりこれは夢なんだと分かった。
目を覚ますと私は布団の中に居た。辺りを見回したが誰の姿も無い。夜が明けた様で、部屋には障子越しの麗らかな光が満ちている。私は自分の頭の中がぐちゃぐちゃとして片付いていない事を自覚しつつ身を起こした。嫌な感触があって額に触れると痛みが走った。触れた手には血が付いていた。不思議に思いつつ、庭の外に出ると西行妖が咲いていた。その後ろの桜達は、昨夜の豪雨によってか、全ての花を散らしているのに、西行妖だけは狂い咲いている。何も不思議がる事は無い。桜が咲くには咲くだけの理由がある。
やはり幽々子様の言った通り夢であった。酷い悪夢であった。あるいはこれも夢なのかもしれない。いや、桜が咲いているのだから疑うまでもない。これも醜い悪夢であるに違いない。どちらも大切な人を無くしているが、今見ている夢の方が遥かに酷い。
私は裸足のまま地面を踏みしめ桜の木の下へと歩いて行く。雨に濡れた地面は粘ついていて気持ち悪かった。落ちていたスコップに躓いて倒れると、西行妖の根本に掘られた穴の中を覗き込む形になった。木の根に絡めとられた髑髏がいつもと同じ優しげな笑顔を浮かべていた。
私は笑い返して穴の中に入る。身を屈めて横たわり髑髏に頬をつける。そうしてゆっくりと目を閉じる。
何だか幸せな夢が見られそう。
それは信じて良い事だ。
縁側に座っていた幽々子様が振り返って笑った。そんな俗説を聞いた事はあったものの、どうして突然そんな事を言い出したのかは全く分からない。私が黙っていると幽々子様はつまらなそうに口をつぼんだ。
「梶井基次郎、知らない?」
全く分からなかった。分からない私に愛想を尽かしたのか、幽々子様は溜息を吐いて立ち上がり桜林へと歩いて行く。追った方が良いのか迷いながら、歩み続ける幽々子様を縁側の淵に立って見つめていると、幽々子様は縁側と桜の中間で足を止め振り返った。
「桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じて良い事なのよ、妖夢」
満開の桜林が広がっている。だが先頭に立つ巨大な西行妖だけは花を付けていない。咲かない大桜を背に幽々子様が腕を広げて笑っている。そんな幽々子様を見て私は初めて恐ろしいと思った。けれどどうして恐ろしいと思ったのかは良く分からなかった。
しとしとと雨が降り始めていた。
幽々子様が居なくなっていた。屋敷中を探しまわったが何処にも姿が見えない。行方を幽霊に尋ねようと思ったが幽霊達の姿も見えなかった。何か用事でもあっただろうかと考えを巡らせてみても思い当たらない。自分に内緒で白玉楼がそっくり引っ越してしまったとも思えない。何か異変でも起こったのだろうかとも考えるが、あの幽々子様が高高異変如きで姿を消すとも思えない。一向に理由の分からないまま白玉楼を探し回り、結局見つからずに疲れて縁側に座った。いずれひょっこりと出てくるだろうという楽観的な憶測があった。私をからかう為に姿を消した可能性もある。だとすれば苦労をした分だけ損だ。
最近段段と気温が上がってきていて、屋敷の中を歩き回っただけで少し汗を掻いていた。縁側に座っていると庭に吹く柔らかな風が汗をそよいでくれるから心地が良かった。幽々子様が居なくなった事だし少しのんびりするのも良いかもしれないと、茫洋とした心地で庭の桜達に目をやると、桜林の先頭に立った西行妖が狂った様に咲き誇っている。不思議に思ったが、それよりも眺めている内に覚えた眠気の方が強かった。瞼が下がって狭まる視野を彷徨わせていると半霊が居ない事に気が付いた。いけないと思ったが、何がいけないのかは良く分からなかった。
寒さに身を震わせると、すっかり夜になっていた。辺りは真っ暗闇で、咲き誇る桜も影しか見えない。薄っすらとした月明かりを頼りに部屋へ戻る。相変わらず屋敷の中は静寂に満ち満ちていて、誰の気配も感ぜられない。本当にみんな引っ越してしまって自分だけ置いて行かれたんじゃないかと不安になる。探しに行きたかったが、真っ暗な夜の中を手探りで探しまわるのは恐ろしい。一先ず朝になるまで待とうと私は眠る事にした。布団に入ると途端に空腹を感じたが、早く朝を迎えたかったので、そのままじっと目を瞑って寝入るのを待った。外の風が強くなっているのが音で分かる。さわさわと桜の鳴る音が耳障りだった。
いつの間にか朝になっていて、飛び起きて屋敷中を探し回ったが、誰の姿も存在しなかった。本当にこの白玉楼が打ち捨てられたのではないだろうかと、恐れが胸を締め付けてきた。何故自分に何も言わず皆が消えてしまったのか。その理由がまるで分からず、白玉楼と共に自分まで捨てられてしまった気がして、恐ろしさが募っていく。
支度を整えて外に出ると、強い日差しに肌が焼かれて痛かった。まるで夏の様な暑さが空から降り注いでくる。梅雨にも入っていないのだから、夏が来るには随分と遠い筈なのに。それどころかまだ桜が咲いている程なのに一体どうしてこんなにも暑いのだろう。西行妖を見ると枝の先まで真っ白な花を一杯につけて天へと手を伸ばしている。色が抜け落ちた様に真っ白な花は、他の桜達が白味掛かった赤色の花をつけている中で随分と浮いていた。まるで除け者にされている様なので、白玉楼に置いて行かれた孤独な自分に重なって、胸が締め付けられた様に苦しくなった。居ても立っても居られなくなって顔を背けて走り出す。走っている間は不安や寂しさが振り払わられた。だから地面を蹴る力がどんどん強くなっていくのが自分でも分かった。
何も考えずに走っていると、自分が博麗神社へ向かっている事に気が付いた。異変といえば博麗神社だ。巫女である霊夢ならば何か知っているかもしれない。
神社への階段を一段抜かしで登っていると、階段の途中を歩いている魔理沙を見つけた。久しぶりに人を見た。もうずっと人と話していない様な錯覚を起こして涙が零れそうになった。
魔理沙は私に気が付くと大丈夫かと驚いた顔をする。私は不安な思いを吐き出したくて、一緒に居た幽々子様や他のみんなが白玉楼から消えてしまい、自分だけが取り残されてしまった事を一気呵成に伝えた。魔理沙が心配する様な顔になってくれたので、私は何だか励まされた。魔理沙は幽々子様の行方こそ知らなかったが、幻想郷はそこまで広くない、だから何処かに行ってしまったにせよ、すぐに見つかるだろうと言ってくれた。
階段を登りきると、霊夢が石畳を掃き清めていた。私達に気が付いて酷く喜んだ顔で、ようやく立ち直れたのねと歩んでくる。霊夢を見た途端、私は安堵を覚えて足の力が抜けそうになった。博麗神社の巫女であればこの異変を解決してくれる。何処かに行ってしまった幽々子様の行方はすぐに分かって、また一緒に暮らせる。
私は挨拶もそこそこに急いで霊夢に説明した。幽々子様を見つけてくれるという期待で胸が一杯だった。その所為で説明しようとする言葉が何度も詰まってもどかしかった。一頻り説明し終えた私は霊夢が幽々子様の居場所を教えてくれる事を待った。
早く幽々子様が消えてしまった原因を教えて欲しい。
幽々子様を戻して欲しい。
だが、あろう事か、霊夢が残念そうに首を横に振った。
「流石に誰かの行方までは分からない。でも幻想郷はそこまで広くないから、いずれ分かるでしょう」
魔理沙と同じ事を言う。
あまりに失望しすぎて、目の前が赤く染まり、前頭部に痛みが走る。
だったら紫様を呼んで欲しいと霊夢に頼んだ。幽々子様の友人である紫様なら幽々子様の居場所も分かるだろう。だが霊夢は再び首を横に振った。
思わず激昂して霊夢に掴みかかろうとしたところを魔理沙に止められた。
私もはっと気が付いて自分のしようとした事を戒めたが、それでも紫様を呼んでくれない霊夢に対する苛立ちは収まらなかった。霊夢なら簡単な筈だ。それなのにどうして呼んでくれないのか。
「残念だけど、その人が何処に居るのかも分からないわよ。不安になるのは分かるけど、大丈夫だって。すぐに見つかるから」
すぐに見つかるのなら、今すぐに連れてきて欲しい。こちらはずっと不安な思いに苛まれているのだ。一刻でも早く会いたいのに、霊夢のさして気にした風も無い態度が益益苛立ちを増長させた。
私が何とか自分の怒りを堪えながら霊夢に詰め寄ると、霊夢は困った様子で私の肩を掴み顔を寄せてくる。
「そう、怖い顔しないで。大丈夫よ。外から来た人達なんて嫌でも噂になるんだから。多分その人達は役所に行って手続きでもしているんじゃない?」
何を言っているのか分からない。
とにかく早く見つけて欲しいとしばらく頼み込んでいると、ようやく霊夢が承諾してくれた。
「じゃあ、一応里の人達に探すよう言っておくから。それで良い?」
私が勢い込んで頷くと、霊夢は溜息を吐いてから隣の魔理沙に目をやった。
「何か、書く物ある?」
「何で?」
「人相書でも書こうかと」
魔理沙は何も持っていない事を示す。霊夢が仕方無さそうに私へと顔を戻した。
「で、その幽々子って人はどんな人なの?」
何故突然そんな事を聞くのか分からない。霊夢は幽々子様の事を知っている筈だ。
私が理由を尋ねると、霊夢が不思議そうな顔をする。
「だってどんな人か分からないと探し様が無いでしょ? それともそんな特徴的な人なの?」
何でそんな事を言うのか分からない。特徴も何も、白玉楼の主である幽々子様を知らない人なんて居ない。霊夢の口振りは、まるで誰一人として幽々子様の事を知らない様な言い草だ。私の中で、皆に置いて行かれたという喪失感とは別の、喩え様もない不安が急速に育っていく。
魔理沙を見る。不安そうな顔をしている。幽々子様を知らないのか問うと、魔理沙が頭を掻いた。
「そりゃ知らないよ。会った事無いし」
一瞬、視野が狭窄した。
霊夢に顔を向けると、呆れた様な顔をしている。
「分かったでしょ? 幾らあなたが知っていて、その人と親しくても、他の人達は知らないの。だからその特徴を教えてよ」
だってあり得ない事だ。
白玉楼の主を知らないなんて。
「主って。あれか? 西行寺って奴? 何だよ、幽霊でも見たのか?」
言ってから魔理沙がしまったという様な顔をした。私はほっとして、その通りだと頷く。どうやら魔理沙達は私の事をからかっていただけらしい。
やっぱりちゃんと分かっていたのだ。
からかわれた事に抗議しようと魔理沙を睨んだ私は言葉に詰まった。
魔理沙が気味の悪そうな顔をしていた。
幽霊を見たと言った私を本気で恐れている様な顔だった。
会話が噛み合っていなかった事にようやく気が付いた。
「冗談だよな?」
もう何が何だか分からなかった。
私が必死で首を横に振ると、魔理沙は気味悪そうな顔に口だけ笑みを浮かべて霊夢へと顔を向けた。
「こりゃ、巫女さんの出番じゃないか?」
そうだ、と私も顔を向けた。
良く分からないが、何か異変が起こっているのは分かる。だとすれば、それを解決するのは巫女の役目である筈だ。
だが霊夢も魔理沙と同じ様な顔をしていた。恐れる様な困った様な顔。異変を前にしたというのに、霊夢がそんな顔をするので、私は恐怖で息が詰まり、呼吸が出来無くなった。
「巫女って言ったってそういうお祓いとかの訓練とかしている訳じゃないし」
そう言う霊夢の姿が私の涙でぼやけていく。もう全てが信じられなかった。
霊夢が恐ろしげな顔に無理矢理笑みを浮かべながら言った。
「ね、冗談でしょ? もう十分怖かったからさ。もう止めてよ。辛かったのは分かるけど、幾ら何でも冗談が過ぎる」
嘘じゃない。
何で、そんな事を言うんだろう。
白玉楼には確かに。
「もう止めようぜ。ちょっと妖夢の様子が洒落になってないっていうか。あの屋敷には妖夢一人しか住んでいないだろ?」
確かにその通りだけど違うのだ。
白玉楼には私しか住んでいないけれど。
ふと私は自分の思考がおかしな事に気が付いた。
今の白玉楼に持ち主なんて居ない。ずっと昔に西行寺という持ち主が居たものの、一家揃って亡くなってしまい、それからは私の先祖が亡き主達に誓いを立てて白玉楼を守り続けてきた。だから今の白玉楼に本当の主は居ない。
そして現在の白玉楼には私一人しか住んでいない。二週間前に私の両親が亡くなってしまった時からそうなった。私は両親が居なくなってしまった事が悲しくて、今日まで一人閉じこもっていた。
でもだとすれば、あの姿は?
今もはっきりと思い出せる、あの亡霊の姿は一体何だ?
「その幽々子様っていうのは、あなたを引き取りに来た親戚とかじゃないんだよね? もう一度確認するけど、その……冗談でしょ?」
霊夢が心配そうにそう言った。
ああ、そうだ。霊夢は優しい性格だから皆に頼られている。けれど、あくまで私と同い年の子供で、当然異変を解決したり妖怪を倒したりなんて出来る訳が無い。博麗神社の巫女だからと言ってそんなのは名ばかりで。そもそも、今時妖怪だなんてそんな迷信を不安に思う様な時代じゃないんだから。
「ご両親の事が悲しいのは分かるけどさ。なんつーか、閉じこもってるなんて不健康じゃん? だからそういう……とにかく! 私も霊夢も、他のみんなも呼んで、お前の家で遊ぼうぜ。みんな門前払いにされてたから、妖夢の事凄い心配してたし。確かに私達じゃなんも出来無いけど、一緒に居る事位は出来るし」
魔理沙は明るくてみんなの事を引っ張る、グループの中心ではあるけれど、やっぱり不思議な事とはまるで無縁で、空を飛んだり、魔法を使ったりなんて出来無い。幽霊なんて聞いたら怖がるに決まっている。
私だってそうだ。亡霊の主なんて居ない、ただの中学生で、半霊なんていう気味の悪いのも憑いていないし、庭を整える事も出来無いし、剣だって振った事が無い。
それなのに、どうしてこんなにも鮮明に、白玉楼で亡霊と暮らしていた様子を思い浮かべる事が出来るのだろう。
自分がおかしくなっているのだと思うけれど、何がおかしくなっているのか分からない。頭の中を去来する亡霊との思い出が理解出来ない。亡霊に仕え、笑い、泣き、良き従者であろうと努力し、あの方を守ろうと剣を振り続けた日日が理解出来ない。心配そうに覗きこんでくる魔理沙と霊夢の顔が理解出来無い。溶け崩れて人の顔に見えない。薄っすらと白味掛かった赤に視界が染まっていく。さらさらと耳の奥に不可思議な音が聞こえている。頭が痛い。嫌な予感がする。額に汗を感じて拭う。頭が痛い。割れる様に痛い。
目を覚ますと、私は布団の中に居た。部屋の中は暗いが淡い月の光で微かに物の輪郭が見えた。辺りを見回すと大勢の人が倒れていた。一瞬驚いたが、良く見ればいつものみんなで、そこいらに寝転がっているだけだった。皆の寝息が空気に混じって聞こえてきた。
私の掛布団の上に顔から突っ伏している魔理沙を見て、苦笑しながらその髪を撫でる。辺りで眠る友達を見て、申し訳無くなる。多分私は倒れたのだろう。それで私は白玉楼に運び込まれ、みんながずっと看病してくれていたのだろう。ずっと白玉楼の中で一人暗く塞ぎ込み、心配して来てくれた友達を邪険に追い払って、今こうしてまた迷惑を掛けた私なんかを、夜になって疲れて眠るまでずっと。
辺りに散らばるお菓子とビールが気になるけれど、それでも涙が溢れてきた。皆の優しさに、それを邪険にしていた自分に、そして今更ながらにまた両親の死を思い出して。
私は酒気の充満する中、寝起きの頭を振りつつ緩慢に起き上がって、皆を起こさない様にそっと歩き出した。
未だ頭の中にはあの亡霊との日日が残っているけれど、もう随分と薄れていた。夢だったのだろう。両親を失った自分を慰める為に見た夢。あるいは憔悴しきった自分が見た悪夢だったのかもしれない。亡霊と住み、妖怪が出てきたんだから、悪夢と言って差し支えない。
でも幸せな夢だった。楽しい夢だった。夢の中で自分はずっと笑っていた気がする。あの亡霊との日日が本当に楽しいものだったから。勿論、こうして心配してくれる友達に囲まれた今だって、きっと幸せなんだろうけれど。
障子を開けて外を見ると、満開の桜が広がっていた。闇の中で真っ白な桜の花が良く映えていた。ふと、どうして西行妖が咲いているのだろうと疑問に思った。この桜は咲かない桜ではなかっただろうか。
桜の根元には亡霊が立っていた。扇子を手に、いつもと同じ優しそうな笑顔を浮かべている。
亡霊が立っていても不思議には思わない。薄明かりに桜林の広がる圧倒的な夜の光景は、今この場で何が起こっても不思議では無いと思わせるだけの迫力があった。
「桜の樹の下には屍体が埋まっている」
そう言って、亡霊は自分の頭上を指さした。
「ねえ、妖夢。こんなにも見事に西行妖は花を咲かせている。こんなにも美しく怪しい姿、この世にだってあの世にだって他に存在はしないわ。あり得ない光景なの。この桜が満開になるなんて。いいえ、西行妖だけじゃない。桜という異形が夜空に咲き誇る事自体があり得ない事。そんな異常が現出しているのだとすれば、それを可能にするだけの犠牲が払われていてしかるべきよね」
亡霊の言う事は一一もっともだった。きっと亡霊の言う通り、桜は花を咲かせる為にその下に死体を埋めているのだろう。そう思わせるだけの異形。咲き誇る桜を前にして、私は夢の中に居る様な心地になった。
「勿論これは夢よ。こんなにも桜が怪しく咲き乱れるなんて、夢でなければなんだというの?」
分からない。が、分からないと言ったら怒られてしまう。だから黙っていたのだけれど、亡霊は私の心を見透かして言った。
「分からない? 考えて分からないのならどうすれば良いのか、それ位なら分かるでしょう?」
ふと冷たい感触を覚えて空を仰ぐ。闇で見えないが、雨が振り始めた様だ。
私はいつの間にかスコップを持っていた。古びて錆びきったスコップが雨に濡れている。私もまた濡れている。濡れた私は濡れたスコップを持って桜の木の下へと歩んでいく。
桜の樹の下には屍体が埋まっている。
私は雨の中で土を掘りながら、やっぱりこれは夢なんだと分かった。
目を覚ますと私は布団の中に居た。辺りを見回したが誰の姿も無い。夜が明けた様で、部屋には障子越しの麗らかな光が満ちている。私は自分の頭の中がぐちゃぐちゃとして片付いていない事を自覚しつつ身を起こした。嫌な感触があって額に触れると痛みが走った。触れた手には血が付いていた。不思議に思いつつ、庭の外に出ると西行妖が咲いていた。その後ろの桜達は、昨夜の豪雨によってか、全ての花を散らしているのに、西行妖だけは狂い咲いている。何も不思議がる事は無い。桜が咲くには咲くだけの理由がある。
やはり幽々子様の言った通り夢であった。酷い悪夢であった。あるいはこれも夢なのかもしれない。いや、桜が咲いているのだから疑うまでもない。これも醜い悪夢であるに違いない。どちらも大切な人を無くしているが、今見ている夢の方が遥かに酷い。
私は裸足のまま地面を踏みしめ桜の木の下へと歩いて行く。雨に濡れた地面は粘ついていて気持ち悪かった。落ちていたスコップに躓いて倒れると、西行妖の根本に掘られた穴の中を覗き込む形になった。木の根に絡めとられた髑髏がいつもと同じ優しげな笑顔を浮かべていた。
私は笑い返して穴の中に入る。身を屈めて横たわり髑髏に頬をつける。そうしてゆっくりと目を閉じる。
何だか幸せな夢が見られそう。
それは信じて良い事だ。
違っていたらごめんなさい。
今回は妖夢ですが、幽々子がいない世界が真なのか皆凡人なのが真なのか
しかし両方真じゃなさそうな感じがします だって現実世界じゃ魔理沙やら霊夢やらという名前は珍しいし(キラキラネームが増えてきたとはいえ)原作通りという感じでもないし
最後は好色的な悪意をこめて見たらスコップで霊夢達を殺して血の雨を降らしたようにも見えるし、そうでもないようにも見える
邪推ですけど烏口さんのは夢をテーマにしているんですかね?
夢だけど夢か現かわからない夢
夢が夢と区別つかなくなれば夢と果たして言い切れるでしょうかみたいな