「紫さん、まずはこれを読んでみて下さい」
そう言って聖が差し出したのは所謂「薄い本」であった。
紫は本の表紙を見た瞬間、この本がどのような目的で書かれた物か理解し、慌てて聖に突き返した。
表紙の中央にはだらしなく肌を露出させた人物が一人、背後には複数の男性、場所は電車の中の様だった。
妖怪の賢者がこんなものを読むべきではないと、強く自分に言い聞かせた。
「意味が解りませんわ、こんなもの……」
「まぁまぁそう言わずに。ぬえが隠し持っていた物なのですが、これが中々面白くて……」
聖は紫の隣へと腰を下ろし、いかにも楽しげにページを捲っていく。
そして「ほら、ここ。ここを見て下さい!」と、どこぞの風祝の様に鼻息を荒くして、執拗に中を見せようとしてくるのだ。
紫はぎゅっと目を瞑ってそれに耐えようとしたが、長くは持たなかった。
聖は時に熱っぽく、時に囁く様にして本の内容を語って聞かせた。しかし、肝心な部分は全て曖昧にぼかすのだ。
流石は寺の住職、興味の引き方を心得ていた。
紫もいつの間にか聖の言葉に耳を傾け、昂る好奇心を抑えきれなくなっていた。
――ちょっとだけ、ちょっとだけ見てみよう……
「あっ……えっ? なにこれ、すごい……」
「ねっ、面白いでしょう? 次のページはこの道具を使って……」
「うわぁ……えっ、こんな風に出来るものなの?」
「だからそれを試してみたくて貴女を呼んだのよ」
「試す……。これを……?」
「興味、あるでしょう?」
聖人とは思えない蠱惑的な瞳だった。紫はコクンと小さく頷き、聖の黒目の虹彩を真っ直ぐに見つめ返した。
そのまま、美しく真黒な瞳に囚われたかの如く、視線を外す事が出来なくなってしまった。
最近は藍も橙も相手をしてくれず、紫は一人で『遊ぶ』事が増えていた。
如何に妖怪の賢者といえど、寂しかったのだろう。
久々に二人で、この本の様な事をしてみるのも面白いかもしれないと、そう思った。
「でも、寺の者とではいけませんの? 何故私を?」
「寺の者では少々貧弱過ぎまして……。それに人数も、場所も物足りなくて……。そんな時あなたの事を思い出したのです」
「……わかりました、電車は用意しましょう。しかし式なら数は揃えられますが、力はそれ程強くありませんよ?」
「それに関しては仕方ありませんね。代わりに多数に嬲られる雰囲気と言いますか、その、せめてそう言ったものが楽しめれば……」
強い力を持つが故の苦悩、特にこういった『遊び』において、それは致命的なものだった。
紫もその苦しみを知っていたからこそ、可能な限り聖の願いを聞き、その雰囲気だけでも楽しんでもらいたいと思い始めたのだ。
「雰囲気は大切ですからね。ちなみに私も参加しても宜しいかしら? あっ、ほら、本の中でも二人でしたから!」
「ふふっ、もちろんです」
それからはあっという間だった。
二人がスキマに入ると、そこは薄暗く汚い地下鉄のホームだった。
既に電車が止まっており、屈強な男達が二人の乗車を今か今かと待ち構えていた。
紫はこれから自身の身に起こるであろう暴力的な行為の数々を想像し、期待に胸を震わせた。
隣りに立つ聖も同じ気持ちだったのか、目が合うと自然と笑みが漏れた。
「紫さん、実は衣装だけ用意してあるんです。ちょっと着替えますね」
「ええ……って上半身殆ど隠れてないじゃない!」
「大丈夫です、隠すべきところは隠れてますから。あっ、紫さんの分もありますので、是非着てみて下さい」
「えっと、じゃあ私はこっちのTシャツを……」
着替えを終えると、まるで本当に本の中の二人に変身した様だった。
普段とは違う衣装が、紫と聖の興奮を更に加速させた。
「鉄パイプとナイフも持って行かないといけませんね。ナイフは紫さんの担当で」
「本当に使うのね……。でも、本の中でもこれを使ってるシーン、凄く気持ちよさそうだったものね」
「そうですとも!」
紫の手の中で鈍く輝く銀のナイフ、聖の持つ身の丈程の鉄パイプ。
電車の中には血走った眼の小汚い男達。
準備は、整った。
偶には自分を捨てて、本の中で戯れる彼等の様になろう。
「折角だしキャラクターの名前で行きませんか」
「それもそうね、では……」
「行くぞ、ハガー!」
「おうよ、コーディー!」
【紫と聖がファイナルファイトごっこをするようです】
そう言って聖が差し出したのは所謂「薄い本」であった。
紫は本の表紙を見た瞬間、この本がどのような目的で書かれた物か理解し、慌てて聖に突き返した。
表紙の中央にはだらしなく肌を露出させた人物が一人、背後には複数の男性、場所は電車の中の様だった。
妖怪の賢者がこんなものを読むべきではないと、強く自分に言い聞かせた。
「意味が解りませんわ、こんなもの……」
「まぁまぁそう言わずに。ぬえが隠し持っていた物なのですが、これが中々面白くて……」
聖は紫の隣へと腰を下ろし、いかにも楽しげにページを捲っていく。
そして「ほら、ここ。ここを見て下さい!」と、どこぞの風祝の様に鼻息を荒くして、執拗に中を見せようとしてくるのだ。
紫はぎゅっと目を瞑ってそれに耐えようとしたが、長くは持たなかった。
聖は時に熱っぽく、時に囁く様にして本の内容を語って聞かせた。しかし、肝心な部分は全て曖昧にぼかすのだ。
流石は寺の住職、興味の引き方を心得ていた。
紫もいつの間にか聖の言葉に耳を傾け、昂る好奇心を抑えきれなくなっていた。
――ちょっとだけ、ちょっとだけ見てみよう……
「あっ……えっ? なにこれ、すごい……」
「ねっ、面白いでしょう? 次のページはこの道具を使って……」
「うわぁ……えっ、こんな風に出来るものなの?」
「だからそれを試してみたくて貴女を呼んだのよ」
「試す……。これを……?」
「興味、あるでしょう?」
聖人とは思えない蠱惑的な瞳だった。紫はコクンと小さく頷き、聖の黒目の虹彩を真っ直ぐに見つめ返した。
そのまま、美しく真黒な瞳に囚われたかの如く、視線を外す事が出来なくなってしまった。
最近は藍も橙も相手をしてくれず、紫は一人で『遊ぶ』事が増えていた。
如何に妖怪の賢者といえど、寂しかったのだろう。
久々に二人で、この本の様な事をしてみるのも面白いかもしれないと、そう思った。
「でも、寺の者とではいけませんの? 何故私を?」
「寺の者では少々貧弱過ぎまして……。それに人数も、場所も物足りなくて……。そんな時あなたの事を思い出したのです」
「……わかりました、電車は用意しましょう。しかし式なら数は揃えられますが、力はそれ程強くありませんよ?」
「それに関しては仕方ありませんね。代わりに多数に嬲られる雰囲気と言いますか、その、せめてそう言ったものが楽しめれば……」
強い力を持つが故の苦悩、特にこういった『遊び』において、それは致命的なものだった。
紫もその苦しみを知っていたからこそ、可能な限り聖の願いを聞き、その雰囲気だけでも楽しんでもらいたいと思い始めたのだ。
「雰囲気は大切ですからね。ちなみに私も参加しても宜しいかしら? あっ、ほら、本の中でも二人でしたから!」
「ふふっ、もちろんです」
それからはあっという間だった。
二人がスキマに入ると、そこは薄暗く汚い地下鉄のホームだった。
既に電車が止まっており、屈強な男達が二人の乗車を今か今かと待ち構えていた。
紫はこれから自身の身に起こるであろう暴力的な行為の数々を想像し、期待に胸を震わせた。
隣りに立つ聖も同じ気持ちだったのか、目が合うと自然と笑みが漏れた。
「紫さん、実は衣装だけ用意してあるんです。ちょっと着替えますね」
「ええ……って上半身殆ど隠れてないじゃない!」
「大丈夫です、隠すべきところは隠れてますから。あっ、紫さんの分もありますので、是非着てみて下さい」
「えっと、じゃあ私はこっちのTシャツを……」
着替えを終えると、まるで本当に本の中の二人に変身した様だった。
普段とは違う衣装が、紫と聖の興奮を更に加速させた。
「鉄パイプとナイフも持って行かないといけませんね。ナイフは紫さんの担当で」
「本当に使うのね……。でも、本の中でもこれを使ってるシーン、凄く気持ちよさそうだったものね」
「そうですとも!」
紫の手の中で鈍く輝く銀のナイフ、聖の持つ身の丈程の鉄パイプ。
電車の中には血走った眼の小汚い男達。
準備は、整った。
偶には自分を捨てて、本の中で戯れる彼等の様になろう。
「折角だしキャラクターの名前で行きませんか」
「それもそうね、では……」
「行くぞ、ハガー!」
「おうよ、コーディー!」
【紫と聖がファイナルファイトごっこをするようです】
蓮メリで痴漢同人誌とか極◯色かよと思った
なんか安心した
ウワアア!!
(訳:キレッキレのギャグを楽しませていただきました)
しかしこの展開は読めなかったwww
つまり、 蓮メリちゅっちゅとは白蓮と紫のカップリングのことだったんだよ!
自分でも驚くくらい綺麗にね
ああ、電車の中で小汚ないおっさん達とくんずほぐれつってそういう……