「こうしてると昔を思い出すな」
結婚式場の待合室で、化粧を終えた魔理沙と咲夜が向かい合って紅茶を飲んでいた。
紅茶のカップを置いた魔理沙は向かいに座る咲夜に微笑んでみせる。
「私が紅魔館に侵入してさ、いつもお前が匿ってくれて」
「あったわね。大変だったわ」
咲夜が昔を思い出し、呆れた様子で溜息を吐く。
「その時はいつもこうして紅茶を出しくれて。美味しかったなぁ。あ、この紅茶も美味しいぜ」
「そりゃどうも。精精味を落とさない様に頑張るわよ」
咲夜も紅茶に口をつけ、それから懐かしそうな目で魔理沙を見つめた。
「そんな盗人のあなたが今や人に物を教えているんだから驚きね」
「反面教師って奴だな」
「自分で言う?」
魔理沙が笑い声を上げてからまた紅茶を飲む。
「それを言うならお前だってそうだぜ。まさかあの紅魔館の殺人メイドが花嫁にだなんてって誰もが思うだろうさ。可愛くなったもんだってな」
「からかわないで頂戴。私はいつまでもお嬢様のメイドよ」
咲夜が顔を赤くして紅茶をすする。すると魔理沙が大袈裟に肩を竦めた。
「あー、傷つくぜ。花嫁の前でそんな」
「花婿の間違いじゃなくて?」
咲夜が問うと、魔理沙は大笑いして椅子を後ろへ傾けた。
「しかし奇妙な縁だよな。ずっと会ってなかったのに」
「そうね」
「まさかこの前の早苗の結婚式で久しぶりに会って、それから一ヶ月後にこれだもんな」
「運命って奴なんじゃないの?」
その言葉に魔理沙が笑って、咲夜も自分の言葉に吹き出した。
その時、突然扉が開き、ウェディングドレスを手にしたアリスが二人を怒鳴りつけた。
「何してんの! メイクが終わったらさっさとこっちに来てよ! つーか、飲み物飲むんならストローで飲めや!」
二人が「へえへえ、すみません」と面倒そうに立ち上がり、アリスに連れられて隣の部屋に入り、着付けを行う。為すがままにさせていた魔理沙だが、物凄く強くコルセットを締められた時には流石に悲鳴を上げた。
「おい、待て。無理無理無理!」
「我慢しなさい」
「こんなに強く締める必要あんの、これ?」
「そうしないと綺麗に見えないのよ!」
暗に太っていると言われた気がしてショックを受けている内に、魔理沙の着付けが終わった。魔理沙が鏡の前に立つと、照明に煌めく金色の髪が真っ白なドレス全体を輝かせていて、「なかなかやるじゃん」と自分の心の中で呟いた。締めあげられたお腹の部分は苦しいけれど、確かに均整が取れていて、苦しいだけの甲斐がある。何となくポーズをきめていると、咲夜の着付けも終わった様で、アリスが「出来た」と声を上げた。
振り返って、咲夜のドレス姿を見て、
「おおー」
魔理沙は思わず声を上げる。咲夜の細やかな銀色の髪が純白のドレスに良く似合っていたし、細身で長身、姿勢の伸びた咲夜の立ち居はまさしく絵になっていた。
「メイドにも衣装だなぁ」
「それ褒めてるの? 貶してるの?」
咲夜の隣に立ったアリスが咲夜を見ながら満足そうに頷いている。
「やっぱり似合うわね。引き締まってて整ってるから、凄く映える。私の目に狂いは無かったわ」
「ああ、引き締まってるからなぁ」
魔理沙も同意しながら咲夜の胸を見ると、思いっきり睨まれた。
そこへ乱暴に扉を開けてカメラを持った文が入ってくる。
「どうですか? そろそろ準備は? おやおやおや」
二人を交互に見た文が目を丸くする。
「これは随分と、似合っていらっしゃいますね」
「わざとらしいぜ」
「いえ、本当。泥棒にも衣装」
「貶してるだろ、それ」
文が魔理沙に近づいていく。
「さて、それじゃあ花婿さん。今のお気持ちは?」
「ああ、やっぱり私が花婿なんだ」
「まあ、印象的に。どうです? 今のお気持ちは」
「幸せにするぜ!」
文が「きゃあ」と嬌声を上げながらメモを取る。
「私より咲夜に相応しい奴が居るならかかってこい、と」
「おい、天狗」
「それで花嫁さんの方は?」
魔理沙のツッコミを無視して、文の顔が咲夜へ向く。
「え? 私も?」
「そりゃあ、もう。どんな結婚生活を送りたいですか?」
咲夜はしばらく迷ってから面倒そうに答えた。
「じゃあ、毎日魔理沙の為に紅茶を淹れるわ」
文がまた「きゃあ」と嬌声を上げてメモを取った。
「毎日精の付く物を食べさせたい、と」
「おい、ブンヤ」
「さあ、それじゃあ式場をバックに写真を取りましょう!」
咲夜の睨みを無視して、文が部屋を出て行く。魔理沙と咲夜がその後に続く。
文の冗談に憤慨している咲夜に魔理沙が声を掛ける。
「咲夜、こういうのは楽しまなくちゃ損だぜ」
「はいはい、分かってるわよ」
「咲夜」
「何?」
「必ず幸せにするぜ」
魔理沙の唐突な言葉に、咲夜が吹き出して微笑んだ。
「なら絶対私より先に死なないでよ」
二人が外へ出ると、教会の前の階段で寄り添う様に指示されて、ブーケを持たされた。
二人が気恥ずかしい思いを感じながら寄り添い合っていると、次次にポーズの要求が来るのでそれに答えていく。
一頻り撮り終わった後に、満足気な顔をした文が一際晴れやかな笑顔で言った。
「じゃあ、最後にキスしているところを一枚!」
咲夜は一瞬その意味を考え、それから頭が真っ白になった。
「はあ?」
「だからちょっとキスをしてください」
「何で!」
「何でってだって」
「今日は写真を撮るだけでしょう!」
「ですからキスする写真を」
「嫌です!」
すると文が不満そうな顔をした。
「いやいやいや、結婚式の最後はやはりキスでしょう? 恥ずかしいならほっぺでも良いですから。ほらきーすきーすきーす」
文が手拍子を入れながらキスの要求をしてくる。。
「でも」
「その方が記事も盛り上が……じゃねえや、その方が、こう、なんていうか、幸せを感じられるんですよ、写真から。ね? きーすきーすきーす」
咲夜が魔理沙を見る。魔理沙も見つめ返してくる。
二人して恥ずかしそうに顔を赤らめ。
咲夜は目を瞑って。
「出来るか!」
ブーケを文へ投げつけた。
「先生! 広告みたよ! 綺麗だったよ!」
魔理沙が学校へ行くと、生徒達が駆け寄ってきて、口口に魔理沙のウェディングドレス姿を褒め称えた。魔理沙は気恥ずかしげにあしらいながら、職員室へと入ると霊夢が座っていた。
「おはよう。見たわよ、新聞の広告。ウェディングドレス姿、随分似合っているじゃない」
霊夢がチラシを持ち上げてひらひらと振る。
「馬子にも衣装ね」
「ほっとけ」
「守矢神社、今度はブライダルも始めるの? 本当早苗は手広く何でもやるわね」
魔理沙が苦笑しながら霊夢の隣に座った。
「お前もそうしたらどうだ?」
「遠慮するわ。ただでさえ、巫女と教師で二足のわらじなのに」
面倒そうに言ってから、霊夢がにやりと笑ってチラシを見る。
「で、あんたは魔法使いに教師に、それからモデルも始める訳?」
「やんないよ。ただ上手くアリスの口車に乗せられてさ」
「アリスはデザイナーでも始めるの?」
「さあ? 結構やる気を感じたけどな。熱心に口説かれて、ウェディングドレスは何度も着る訳じゃないんだからって言われたら、思わずそうかと思っちゃってさぁ。そんで承諾したら、相手役が居るって言われて、しかもそれが咲夜で」
魔理沙が恥ずかしそうに頭を掻くので、霊夢は苦笑して言った。
「ちなみに、結婚前にウェディングドレスを着ると結婚出来なくなるって迷信知ってる?」
「え? 嘘だろ?」
焦る魔理沙を見て、霊夢がくすくすと笑っていると、職員室に生徒達がやって来て、来客が居ると言って廊下を指さした。
見ると咲夜が立っている。
「なんだ?」
魔理沙が不思議そうに呟いた。
霊夢が可笑しそうに笑う。
「夫の忘れ物を届けに来たんじゃないの?」
「んな訳あるか」
魔理沙が立ち上がって咲夜の下へ向かおうとすると、傍の子供達が「ちゅーするの? ちゅーするの?」と言ってまとわりつきだした。「しねーよ」と言ってそれを振り払い、魔理沙が咲夜の下へ向かっていく。
それを眺めながら、霊夢は昔を思い出していた。大人になる前の事を。幻想郷中を駆け回って暴れていた時の事を。大人になってから人付き合いが怖くなって、交流を閉ざして内に篭っていたけれど。最近、また少しずつ外に目が向き始めて、何だか子供の頃に戻った様で。
そこで霊夢は首を横に振る。
戻ったんじゃない。
いつだって変わっていなかったんだ。
「おーい、霊夢!」
唐突に魔理沙に呼ばれて顔を上げると、廊下で話していた魔理沙と咲夜がこちらを手招いていた。
何だろうと思って向かおうとすると、周りの子供達がひっついてきた。
「魔理沙先生を取り返すの?」
「三角関係?」
「ちゅーするの?」
「ちゅーするの?」
霊夢は「違うわよ」と言ってひっついてきた子達を引き剥がし、魔理沙達の下へ向かう。
背後から届く、三角関係だと盛り上がる子供達の声に、霊夢は何だか顔が火照るのを感じた。
自分と魔理沙と咲夜の三角関係が噂に立つだなんて。
霊夢は苦笑する。
変化はある。周囲の環境は目まぐるしく変わっていく。
でもきっと、中身のところではみんな変わらない。
きっといつまでも。
だからまた仲良くなれる。
きっといつだって。
結婚式場の待合室で、化粧を終えた魔理沙と咲夜が向かい合って紅茶を飲んでいた。
紅茶のカップを置いた魔理沙は向かいに座る咲夜に微笑んでみせる。
「私が紅魔館に侵入してさ、いつもお前が匿ってくれて」
「あったわね。大変だったわ」
咲夜が昔を思い出し、呆れた様子で溜息を吐く。
「その時はいつもこうして紅茶を出しくれて。美味しかったなぁ。あ、この紅茶も美味しいぜ」
「そりゃどうも。精精味を落とさない様に頑張るわよ」
咲夜も紅茶に口をつけ、それから懐かしそうな目で魔理沙を見つめた。
「そんな盗人のあなたが今や人に物を教えているんだから驚きね」
「反面教師って奴だな」
「自分で言う?」
魔理沙が笑い声を上げてからまた紅茶を飲む。
「それを言うならお前だってそうだぜ。まさかあの紅魔館の殺人メイドが花嫁にだなんてって誰もが思うだろうさ。可愛くなったもんだってな」
「からかわないで頂戴。私はいつまでもお嬢様のメイドよ」
咲夜が顔を赤くして紅茶をすする。すると魔理沙が大袈裟に肩を竦めた。
「あー、傷つくぜ。花嫁の前でそんな」
「花婿の間違いじゃなくて?」
咲夜が問うと、魔理沙は大笑いして椅子を後ろへ傾けた。
「しかし奇妙な縁だよな。ずっと会ってなかったのに」
「そうね」
「まさかこの前の早苗の結婚式で久しぶりに会って、それから一ヶ月後にこれだもんな」
「運命って奴なんじゃないの?」
その言葉に魔理沙が笑って、咲夜も自分の言葉に吹き出した。
その時、突然扉が開き、ウェディングドレスを手にしたアリスが二人を怒鳴りつけた。
「何してんの! メイクが終わったらさっさとこっちに来てよ! つーか、飲み物飲むんならストローで飲めや!」
二人が「へえへえ、すみません」と面倒そうに立ち上がり、アリスに連れられて隣の部屋に入り、着付けを行う。為すがままにさせていた魔理沙だが、物凄く強くコルセットを締められた時には流石に悲鳴を上げた。
「おい、待て。無理無理無理!」
「我慢しなさい」
「こんなに強く締める必要あんの、これ?」
「そうしないと綺麗に見えないのよ!」
暗に太っていると言われた気がしてショックを受けている内に、魔理沙の着付けが終わった。魔理沙が鏡の前に立つと、照明に煌めく金色の髪が真っ白なドレス全体を輝かせていて、「なかなかやるじゃん」と自分の心の中で呟いた。締めあげられたお腹の部分は苦しいけれど、確かに均整が取れていて、苦しいだけの甲斐がある。何となくポーズをきめていると、咲夜の着付けも終わった様で、アリスが「出来た」と声を上げた。
振り返って、咲夜のドレス姿を見て、
「おおー」
魔理沙は思わず声を上げる。咲夜の細やかな銀色の髪が純白のドレスに良く似合っていたし、細身で長身、姿勢の伸びた咲夜の立ち居はまさしく絵になっていた。
「メイドにも衣装だなぁ」
「それ褒めてるの? 貶してるの?」
咲夜の隣に立ったアリスが咲夜を見ながら満足そうに頷いている。
「やっぱり似合うわね。引き締まってて整ってるから、凄く映える。私の目に狂いは無かったわ」
「ああ、引き締まってるからなぁ」
魔理沙も同意しながら咲夜の胸を見ると、思いっきり睨まれた。
そこへ乱暴に扉を開けてカメラを持った文が入ってくる。
「どうですか? そろそろ準備は? おやおやおや」
二人を交互に見た文が目を丸くする。
「これは随分と、似合っていらっしゃいますね」
「わざとらしいぜ」
「いえ、本当。泥棒にも衣装」
「貶してるだろ、それ」
文が魔理沙に近づいていく。
「さて、それじゃあ花婿さん。今のお気持ちは?」
「ああ、やっぱり私が花婿なんだ」
「まあ、印象的に。どうです? 今のお気持ちは」
「幸せにするぜ!」
文が「きゃあ」と嬌声を上げながらメモを取る。
「私より咲夜に相応しい奴が居るならかかってこい、と」
「おい、天狗」
「それで花嫁さんの方は?」
魔理沙のツッコミを無視して、文の顔が咲夜へ向く。
「え? 私も?」
「そりゃあ、もう。どんな結婚生活を送りたいですか?」
咲夜はしばらく迷ってから面倒そうに答えた。
「じゃあ、毎日魔理沙の為に紅茶を淹れるわ」
文がまた「きゃあ」と嬌声を上げてメモを取った。
「毎日精の付く物を食べさせたい、と」
「おい、ブンヤ」
「さあ、それじゃあ式場をバックに写真を取りましょう!」
咲夜の睨みを無視して、文が部屋を出て行く。魔理沙と咲夜がその後に続く。
文の冗談に憤慨している咲夜に魔理沙が声を掛ける。
「咲夜、こういうのは楽しまなくちゃ損だぜ」
「はいはい、分かってるわよ」
「咲夜」
「何?」
「必ず幸せにするぜ」
魔理沙の唐突な言葉に、咲夜が吹き出して微笑んだ。
「なら絶対私より先に死なないでよ」
二人が外へ出ると、教会の前の階段で寄り添う様に指示されて、ブーケを持たされた。
二人が気恥ずかしい思いを感じながら寄り添い合っていると、次次にポーズの要求が来るのでそれに答えていく。
一頻り撮り終わった後に、満足気な顔をした文が一際晴れやかな笑顔で言った。
「じゃあ、最後にキスしているところを一枚!」
咲夜は一瞬その意味を考え、それから頭が真っ白になった。
「はあ?」
「だからちょっとキスをしてください」
「何で!」
「何でってだって」
「今日は写真を撮るだけでしょう!」
「ですからキスする写真を」
「嫌です!」
すると文が不満そうな顔をした。
「いやいやいや、結婚式の最後はやはりキスでしょう? 恥ずかしいならほっぺでも良いですから。ほらきーすきーすきーす」
文が手拍子を入れながらキスの要求をしてくる。。
「でも」
「その方が記事も盛り上が……じゃねえや、その方が、こう、なんていうか、幸せを感じられるんですよ、写真から。ね? きーすきーすきーす」
咲夜が魔理沙を見る。魔理沙も見つめ返してくる。
二人して恥ずかしそうに顔を赤らめ。
咲夜は目を瞑って。
「出来るか!」
ブーケを文へ投げつけた。
「先生! 広告みたよ! 綺麗だったよ!」
魔理沙が学校へ行くと、生徒達が駆け寄ってきて、口口に魔理沙のウェディングドレス姿を褒め称えた。魔理沙は気恥ずかしげにあしらいながら、職員室へと入ると霊夢が座っていた。
「おはよう。見たわよ、新聞の広告。ウェディングドレス姿、随分似合っているじゃない」
霊夢がチラシを持ち上げてひらひらと振る。
「馬子にも衣装ね」
「ほっとけ」
「守矢神社、今度はブライダルも始めるの? 本当早苗は手広く何でもやるわね」
魔理沙が苦笑しながら霊夢の隣に座った。
「お前もそうしたらどうだ?」
「遠慮するわ。ただでさえ、巫女と教師で二足のわらじなのに」
面倒そうに言ってから、霊夢がにやりと笑ってチラシを見る。
「で、あんたは魔法使いに教師に、それからモデルも始める訳?」
「やんないよ。ただ上手くアリスの口車に乗せられてさ」
「アリスはデザイナーでも始めるの?」
「さあ? 結構やる気を感じたけどな。熱心に口説かれて、ウェディングドレスは何度も着る訳じゃないんだからって言われたら、思わずそうかと思っちゃってさぁ。そんで承諾したら、相手役が居るって言われて、しかもそれが咲夜で」
魔理沙が恥ずかしそうに頭を掻くので、霊夢は苦笑して言った。
「ちなみに、結婚前にウェディングドレスを着ると結婚出来なくなるって迷信知ってる?」
「え? 嘘だろ?」
焦る魔理沙を見て、霊夢がくすくすと笑っていると、職員室に生徒達がやって来て、来客が居ると言って廊下を指さした。
見ると咲夜が立っている。
「なんだ?」
魔理沙が不思議そうに呟いた。
霊夢が可笑しそうに笑う。
「夫の忘れ物を届けに来たんじゃないの?」
「んな訳あるか」
魔理沙が立ち上がって咲夜の下へ向かおうとすると、傍の子供達が「ちゅーするの? ちゅーするの?」と言ってまとわりつきだした。「しねーよ」と言ってそれを振り払い、魔理沙が咲夜の下へ向かっていく。
それを眺めながら、霊夢は昔を思い出していた。大人になる前の事を。幻想郷中を駆け回って暴れていた時の事を。大人になってから人付き合いが怖くなって、交流を閉ざして内に篭っていたけれど。最近、また少しずつ外に目が向き始めて、何だか子供の頃に戻った様で。
そこで霊夢は首を横に振る。
戻ったんじゃない。
いつだって変わっていなかったんだ。
「おーい、霊夢!」
唐突に魔理沙に呼ばれて顔を上げると、廊下で話していた魔理沙と咲夜がこちらを手招いていた。
何だろうと思って向かおうとすると、周りの子供達がひっついてきた。
「魔理沙先生を取り返すの?」
「三角関係?」
「ちゅーするの?」
「ちゅーするの?」
霊夢は「違うわよ」と言ってひっついてきた子達を引き剥がし、魔理沙達の下へ向かう。
背後から届く、三角関係だと盛り上がる子供達の声に、霊夢は何だか顔が火照るのを感じた。
自分と魔理沙と咲夜の三角関係が噂に立つだなんて。
霊夢は苦笑する。
変化はある。周囲の環境は目まぐるしく変わっていく。
でもきっと、中身のところではみんな変わらない。
きっといつまでも。
だからまた仲良くなれる。
きっといつだって。
似た者同士で仲が良い…割れ鍋に綴じ蓋はちょっと違うかな。
いつもみたいに不可思議で理不尽な目に合うかとビクビクしていましたけど、そんなことなくて良かったです
不可思議なことが起きない烏口さんの作品も新鮮ですね
ひょっとしたら私が気づいてないだけかも知れませんが