「もしも私が不老不死になるって言ったら、どうする?」
「別に止めはしないわ」
「たまに思ったりしないか? 永遠に生きて、ありとあらゆる事を知りたいとかさ」
「魅魔なんか長生きした果てに、すっかり忘れっぽくなってたわよ」
「いや、あの方は悪霊だから別口だろ」
「同じ事でしょ。ま、適度に長生きして、ぽっくり逝くのがいいんじゃないの」
「もしもこのお屋敷に仕えてなかったら、とか考えた事あります?」
「ないわね。貴方はあるの?」
「門の前に立ちながら、たまに考えたりはしますよ」
「それで、どういう風になってるのかしら」
「そうですね、修行を兼ねて世界を転々として、いずれは幻想郷に流れ着いて、ここに辿り着いて、門番になっていそうです」
「結果は変わらないのね」
「もしも私はお暇を頂きたいと申し上げましたら、お引き留めになられますか?」
「やあねえ、引き留めるわけないじゃない」
「そんなにいい笑顔で仰られると、忸怩たるものがありますね」
「そういう意味ではないわよ。可愛い子には旅をさせろって言うじゃない? それに貴方のお祖父様の時も、私は引き留めなかったわ」
「ちなみに、祖父はどの様に出ていったのか、伺って宜しいでしょうか」
「そうねえ。刀の先に徳利をぶらさげて『それでは、おさらば』なんて、からりと笑って出ていったわ」
「もしもあんただけ外に帰れるって言ったら、どうする?」
「何ですか突然。ひょっとしてお供え物、古かったですか」
「食中たりになる神がいるか。ほら、お前はまだ若いからさ。その、恋愛とか、友達とか、色々やりたい事があったんじゃないかと思って」
「帰らないでしょうね、きっと」
「気を使って言ってるなら、止めとくれよ」
「未練がないって言ったら嘘になりますけど、それでも私はお二人のお側に居たいですから。それにこう見えて私、結構青春してるつもりなんですよ」
「もしも私が禁酒に成功したらどうする?」
「一杯奢ってやるよ」
「何だいそりゃ、それじゃ意味ないじゃないか」
「どうせ禁酒なんぞする気はないんだろう。それにこのやり取りはこれで七十二回目だよ」
「流石にそいつは大袈裟過ぎやしないか」
「いやいや、覚えてるよ。記念すべき第一回は大江山での負け戦の後だった」
「もしも喘息じゃなかったら、貴方は元気に外を飛び回っていたのかしらね」
「多分それでもここで本を読んでいると思うわ」
「他にやりたい事とかないの? 澄んだ夜空を見に散歩するのも結構いいものよ?」
「そう。でもきっと、ここで本を読んでいると思うわ」
「その口振りだと、世界滅亡の日もここで本を読んでいそうね」
「そうするでしょうね」
「もしも私が見えるようになったら、お姉ちゃんはどうする?」
「そうね、まず手始めに、私が持っている中で一番いい服を着せてあげて、貴方の顔が一番綺麗に見えるお化粧をしてあげる」
「うんうん。それでそれで?」
「それでその後、貴方の手を引いて地底から地上まで、二人でお出掛けするわ」
「何か恥ずかしいね、それ」
「私の自慢の妹を、みんなに見せびらかしたいのよ」
「もしも死ねるようになったとしたら、貴方は死ぬ?」
「それはどうでしょうね」
「あら、意外ね。充分長生きしているし、この身体の苦痛から解放されたがっていると思ったのだけれど」
「状況によりますよ」
「どういう事?」
「姫様を残して死ぬ訳にはいきませんからね」
「もしも私が死んだとしたら、お前もいつか、私の事を忘れるのだろうか」
「それはないよ」
「言い切れるか?」
「言い切れる。私はこう見えて、結構物覚えがいいからね」
「歴史は常に忘れ去られていくものだが、お前の中では違う物らしいな」
「歴史は常に語り継がれていくものだよ。見てきた私が言うんだから、間違いないさ」
「もしもサボらず仕事したら、給料あげてくれます?」
「何を馬鹿な事を言っているのですか。真面目に仕事をするのが当然の事なのです」
「冗談で言ってるんですから、そんな顔しないでくださいよ。おっかないなあ、もう」
「面白くもない冗談を言っている暇があるのでしたら、早く持ち場に戻りなさい」
「解りましたよ。ところで、先日の決済書類がガタガタに字が歪んでる上に、涎で張り付いているんですけど」
「……たまには飲みに行きませんか?勿論、私が奢ります」
「もしも異変の時の大きさに戻れたらどうする?」
「そうね、まずはご飯を食べるわ」
「他にやるべき事があるだろう」
「そう? 前みたいに貴方と一緒に卓を囲んでご飯を食べるの。きっと楽しいわよ」
「私と一緒に食事をしてどうするんだ。騙されても懲りない奴なのか、姫は」
「そうね。だからその後、貴方の下克上にもう一回付き合ってあげる」
「もしも幻想郷をお作りになっていなかったら、という事を考えた事はおありでしょうか」
「あるわけないでしょう」
「一度もございませんか?」
「ないわね、ただの一度も」
「その様なものでしょうか。私から見ると、随分と不自由なお暮らしをなされているように感じられまして」
「縛り付けられようと、多少くたびれようと、母親というものはそういう事を考えないものよ」
「もしも私が一人ぼっちだったら、どうなっていたのかしら」
「シャンハーイ」
「そうね、そうよね。そんな事ないわよね」
「シャンハーイ」
「有り難う。私達の友情は一生物ね」
「シャンハーイ」
「別に止めはしないわ」
「たまに思ったりしないか? 永遠に生きて、ありとあらゆる事を知りたいとかさ」
「魅魔なんか長生きした果てに、すっかり忘れっぽくなってたわよ」
「いや、あの方は悪霊だから別口だろ」
「同じ事でしょ。ま、適度に長生きして、ぽっくり逝くのがいいんじゃないの」
「もしもこのお屋敷に仕えてなかったら、とか考えた事あります?」
「ないわね。貴方はあるの?」
「門の前に立ちながら、たまに考えたりはしますよ」
「それで、どういう風になってるのかしら」
「そうですね、修行を兼ねて世界を転々として、いずれは幻想郷に流れ着いて、ここに辿り着いて、門番になっていそうです」
「結果は変わらないのね」
「もしも私はお暇を頂きたいと申し上げましたら、お引き留めになられますか?」
「やあねえ、引き留めるわけないじゃない」
「そんなにいい笑顔で仰られると、忸怩たるものがありますね」
「そういう意味ではないわよ。可愛い子には旅をさせろって言うじゃない? それに貴方のお祖父様の時も、私は引き留めなかったわ」
「ちなみに、祖父はどの様に出ていったのか、伺って宜しいでしょうか」
「そうねえ。刀の先に徳利をぶらさげて『それでは、おさらば』なんて、からりと笑って出ていったわ」
「もしもあんただけ外に帰れるって言ったら、どうする?」
「何ですか突然。ひょっとしてお供え物、古かったですか」
「食中たりになる神がいるか。ほら、お前はまだ若いからさ。その、恋愛とか、友達とか、色々やりたい事があったんじゃないかと思って」
「帰らないでしょうね、きっと」
「気を使って言ってるなら、止めとくれよ」
「未練がないって言ったら嘘になりますけど、それでも私はお二人のお側に居たいですから。それにこう見えて私、結構青春してるつもりなんですよ」
「もしも私が禁酒に成功したらどうする?」
「一杯奢ってやるよ」
「何だいそりゃ、それじゃ意味ないじゃないか」
「どうせ禁酒なんぞする気はないんだろう。それにこのやり取りはこれで七十二回目だよ」
「流石にそいつは大袈裟過ぎやしないか」
「いやいや、覚えてるよ。記念すべき第一回は大江山での負け戦の後だった」
「もしも喘息じゃなかったら、貴方は元気に外を飛び回っていたのかしらね」
「多分それでもここで本を読んでいると思うわ」
「他にやりたい事とかないの? 澄んだ夜空を見に散歩するのも結構いいものよ?」
「そう。でもきっと、ここで本を読んでいると思うわ」
「その口振りだと、世界滅亡の日もここで本を読んでいそうね」
「そうするでしょうね」
「もしも私が見えるようになったら、お姉ちゃんはどうする?」
「そうね、まず手始めに、私が持っている中で一番いい服を着せてあげて、貴方の顔が一番綺麗に見えるお化粧をしてあげる」
「うんうん。それでそれで?」
「それでその後、貴方の手を引いて地底から地上まで、二人でお出掛けするわ」
「何か恥ずかしいね、それ」
「私の自慢の妹を、みんなに見せびらかしたいのよ」
「もしも死ねるようになったとしたら、貴方は死ぬ?」
「それはどうでしょうね」
「あら、意外ね。充分長生きしているし、この身体の苦痛から解放されたがっていると思ったのだけれど」
「状況によりますよ」
「どういう事?」
「姫様を残して死ぬ訳にはいきませんからね」
「もしも私が死んだとしたら、お前もいつか、私の事を忘れるのだろうか」
「それはないよ」
「言い切れるか?」
「言い切れる。私はこう見えて、結構物覚えがいいからね」
「歴史は常に忘れ去られていくものだが、お前の中では違う物らしいな」
「歴史は常に語り継がれていくものだよ。見てきた私が言うんだから、間違いないさ」
「もしもサボらず仕事したら、給料あげてくれます?」
「何を馬鹿な事を言っているのですか。真面目に仕事をするのが当然の事なのです」
「冗談で言ってるんですから、そんな顔しないでくださいよ。おっかないなあ、もう」
「面白くもない冗談を言っている暇があるのでしたら、早く持ち場に戻りなさい」
「解りましたよ。ところで、先日の決済書類がガタガタに字が歪んでる上に、涎で張り付いているんですけど」
「……たまには飲みに行きませんか?勿論、私が奢ります」
「もしも異変の時の大きさに戻れたらどうする?」
「そうね、まずはご飯を食べるわ」
「他にやるべき事があるだろう」
「そう? 前みたいに貴方と一緒に卓を囲んでご飯を食べるの。きっと楽しいわよ」
「私と一緒に食事をしてどうするんだ。騙されても懲りない奴なのか、姫は」
「そうね。だからその後、貴方の下克上にもう一回付き合ってあげる」
「もしも幻想郷をお作りになっていなかったら、という事を考えた事はおありでしょうか」
「あるわけないでしょう」
「一度もございませんか?」
「ないわね、ただの一度も」
「その様なものでしょうか。私から見ると、随分と不自由なお暮らしをなされているように感じられまして」
「縛り付けられようと、多少くたびれようと、母親というものはそういう事を考えないものよ」
「もしも私が一人ぼっちだったら、どうなっていたのかしら」
「シャンハーイ」
「そうね、そうよね。そんな事ないわよね」
「シャンハーイ」
「有り難う。私達の友情は一生物ね」
「シャンハーイ」
これだけ大勢出しておきながら、セリフだけで全キャラクターわかるのが魅力的です。
それまでは味があったが最後で一気に白けるね
面白い作品でした。
古明地姉妹かわいい!
なんかむなしい。
あと白蓮と神子が出ないのは何故だ。
あとすくなちゃんイケメン過ぎてマジ鬼殺しの英雄の子孫。
そこまではよかったと思います
私はこれはこれで懐かしくていい気がしました
二次創作というジャンルの強みをすごくよく活かしていて、勉強になった。
唸らされました。
切れ味鋭く終わっていて好きです
映姫様大好きです
ただ特定のキャラを貶めて話を作ってる感が否めないな。
まあそれまでの作品なんだろうけど
まあいや、ぼっち気にするなら誰も来ない魔法の森に住むなよと。
単に自分自身に言い聞かせるような冗談とかねw
会話のみで誰が誰だか分かってすごいなーと思っていたらやられましたw