「切り捨て御免ッ!」
「いひぃっ!?」
金髪少女の鼻先を刀剣が掠める。躊躇いなく横一文字に振られた斬撃を間一髪で避けた彼女はさらなる攻撃を避けるために刺客から距離を取る。
思いもよらぬ不意打ちからか、額から冷や汗を滝のように流し、懐の八卦炉を取り出すと抗戦準備に移る。
「いきなり何しやがんだこの通り魔ッ!もう少しで私の鼻が半分持っていかれるところだったッ」
「・・・・・・・・・・・・」
刺客は少女とその周辺を注視したまま微動だにしない。金髪少女の次の行動を窺っているのか、もしくは彼女の何処を斬ろうか模索しているのか。剣士は無表情のまま押し黙っている。
「おいこら!何とか云えってば!ドンパチやり合おうってのかそれともそのまま動かないで魔砲で消し炭になってくれるのか!?」
明確な敵意を剣士に向けると少女は息を整える。奴は素早い、一歩でも動きを見せれば容赦なくマスタースパークを叩き込む。
すると、ようやく半人の少女は動きを見せた。
「・・・・・・全滅じゃない」
「あ?」
動かしたのは口だ、手か足が動かなければ魔砲は叩き込めない。魔理沙は閉口する。
「ああもう、今は貴女とやり合う気はないです。そもそも、こんな所でそんなドデカイものを撃たれてしまっては此方がたまりませんからね」
云って少女は時計を一瞥すると剣を鞘に収納する。妖夢は内心焦っていた、一寸前に斬られかかった魔理沙よりもだ。それには彼女の面子と沽券が懸かっていたのだが、当然こそ泥は知る由もない。
「さっさと出て行ってくれないかしらね、私以外に見つかる前に。あんたが勝手に上がっているのは百歩譲ってお許しになられるとしてもね、ちょうどさっきあんたが手を着けたものに問題が大有りなのよ。」
彼女の眼は真剣そのものだ。一方魔理沙は予想外に邪険に扱われ、何故か怒り心頭に達していた。
「おいおい、そりゃないんじゃないか~?いきなり斬りかかってきたお前さんの口から出る台詞じゃないよな?」
「ともかく、私はこれの事後処理をしないといけないのよ、それも速やかに早急に。あんたに構ってる暇はないわ。時間までもはや猶予が幾ばくも残ってないんだから。不法侵入は許してあげるから早く出てって」
早く出てってと云われて尻尾を巻いて逃げるほど柔な霧雨魔理沙ではない。こうなったらトコトンこの通り魔を困らせてやろうと思い至った。
「やだよ、おう。私はな、確かにお前の家に勝手に上がったが大したことはしてないぜ、そう、探検遊びをしてただけだ。他人の家って珍しいって思うだろ?どんな構造になってるかとかさ、好奇心が疼くよな~?」
彼女は根っからの物見遊山なのだ。探検家気性の彼女は持ち前の性分には逆らえなかったというのが言い分だと云った。ただ妖夢を困らせてやりたいだけなのが本音なのだが。
しかし、妖夢は彼女の戯れ言を聞くか聞かずか、顔色一つ変える暇もなく慌ただしく、チラチラと時計をやたら気に掛けながら必死に作業をしている。部屋に作業音が木霊する。器と器がこ擦れ合う音、材料を吟味し調理するこの部屋特有の環境音は隠然と場を支配し始めた。
「一食勝手に拝借しておいてとんだ口の聞き方ですね、どっちみち貴女には謝罪など期待していないけど、私と彼女にとったら由々しき事態なのです。あ、私にとっては特に、ね」
まるで生命が懸かっているかのような彼女の台詞に魔理沙は辟易した。こいつ、こんな不思議キャラだっけ?と、首を傾げる。そこで、普通の魔法使いは普段と異なる妖夢の様子に一抹の好奇心を再度抱え、その場に居座ることに決定した。
「なんだよなんだよ、作ったもの放置してここを留守にするお前が悪いんだぜ?自業自得ってな。それにやたらさっきから時計を気にしてるよな?間もなくお昼だが、何かマズいことでもあんのかよ?あ、探検中に幽々子の姿が見えなかったけどどっかお出かけ中なの?・・・・・・ん、良いにおいだなー・・・・・・もしもーし?」
からあげにはレモンはつけないのか?ん、この味噌汁ちょいとしょっぱいな、砂糖入れるぞ?そうそう、茸持ってきたんだけど食うか?毒茸だけど。エプロン裏表逆だけどいいのか?刀は包丁代わりに使わないのな。
「五月蠅い」
怒られた。
「ん、そういえば未だ魔法使いは料理にしたことがなかったわね。・・・・・・どう?」
「どう?じゃねぇよ!怖い事云うなよ!」
「意外と口に合うかもしれないわよ?心配いらないわ、私がきちんと介錯してあげるから、苦しむのは一瞬」
こちらを振り向いた妖夢の満面の笑みにはどす黒い狂気と怒りが含有していた。彼女の額では浮き出た血管がピクピクと痙攣している。魔理沙が妖夢の気迫に気圧され後ずさりすると彼女も獲物に向かって足を踏み出してきた。
「大丈夫、貴女の血肉は幽々子様と一体となり、未来永劫彼女と添い遂げられるのよ?こんなに嬉しいことはないわ」
「いや嬉しくないし!むしろ、狂気乱舞してるのはお前だし!いいから、その包丁を下ろせ!それは料理するものであって魔法使いを調理するものじゃない!」
「え、卸せ?・・・・・・解りました。では遠慮なく」
「やめてぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「妖夢ただいま~。随分と遅くなっちゃってめんごめんご~。もうお腹がぺこちゃんでお腹と背中の皮がだるんだるんよ~。あら、お客人も来てるのね」
瞬間、妖夢は凍り付いた。魔理沙に荒らされ、全滅した昼飯は未だ復旧を遂げていないのだ。腹ぺこの幽々子が事を知れば怒髪天を衝くのは疑う余地もなく明らかだった。
「あ・・・・・・・お帰りなさいませ、幽々子様。えーと、ちょうど新鮮なお肉が手には入ったところなので、追加でお料理を拵えようとしていたところなのですよ・・・・・・ははは」
「お肉?そこで口から泡吹いて横たわってるアホウ使いのこと?うーん、残念だけどねぇ、妖夢。ご存じの通り、私はカニバリズム的な変態嗜好は持ち合わせていないのよ。それよりお腹が減ったからメシにしたいのよーメシー」
妖夢は満面の笑みの主人がとてつもなく恐ろしい存在に感じた。料理が完成していないのを知ってか知らずか、既に事を察し怒り心頭なのではないか。あらゆる思索を巡らせ、どう取り繕うか逡巡した。
「・・・・・・・ねぇ、妖夢」
「・・・・・・ハイ」
「出来てないのよね・・・・・・・?ご飯・・・・・・?」
「・・・・・・ハイ」
「・・・・・・やっぱり、気が変わったわ。時には変わったモノを食してみるのも冒険かもしれないわね?そこの泥棒猫なんか胃もたれしそうだけど、胃袋に収まらないこともないかもしれないわ」
「魔理沙を食べるなんてとんでもない!それには賛成しかねますぜ、幽々子様」
「なんで裏声なんですか?」
何時の間にやら魔理沙は起き上がり、戸口へと忍び歩きしていた。牽制のつもりか、八卦炉を幽々子達に向け、威嚇している。
「あらあら、まるでお互い国境を挟んでいるかのようねぇ。お互い膠着状態で身動きできないようだけど、はたして抑止力になっているのかしらね、あなたの玩具は?さてさて、先にほっぺたをぶん殴るのはどちらかしらね。危険な玩具を振りかざす盗人?我が忠実かつ下僕脳筋の妖夢?それとも・・・・・・」
妖夢は獲物を抜いた。五体満足では家に帰れないかもしれない。いや、もしくはこの白玉楼で散る運命やもしれぬ。一触即発の空気の中、魔理沙は腹を括った。そして、せめてベッドの上で死にたかったと思いを張り巡らせた。
そして火蓋は切って落とされた。
「ご飯にする?」
「「え?」」
数刻後。
「う~ん、やっぱり妖夢の作る夜雀の唐揚げは最高ね~。ゴツゴツしていて弾力溢れる舌触り、ジューシーかつスパイシーよ」
「いや、私は骨だらけでまともに食えないんだが・・・・・・つーか、お前骨ごと食ってるし」
バリバリボリボリ。食事に誘われたのは良いが、これほどまでに幽々子が食い意地が張っているとは予想だにしていなかった。料理の大半は彼女に食い荒らされ、蚊帳の外の二人は残り物をつつくしかない状況だ。危うく自分がこの料理の一品になったやもしれぬ事態を想像し、魔理沙はヒヤリとした。
「大体ね、ボリボリ妖夢がいけないのよ。作り終わったご飯を放置してモグモグその挙げ句には食い意地張ったこそ泥に食べられちゃうんだからゴクゴク。・・・・・・おめーらちゃんと聞いてんのか?」
「「はいそれはもう幽々子様の仰る通りでございますはい」」
「宜しい」
──かくて慌ただしい昼餐は過ぎて往き、お膳に出された奢侈な料理も彼女らの胃袋に召された。幽々子は食後のデザートのプリンをつまみながら
云う。
「このプリンを食せるのは私だけよ?貴女達への罰よ、罰。申し訳程度のお仕置きだとか思ってるでしょう?あ~、残念ねぇ、こんなに美味しいものが食べられなくて~。ほらほら、カラメルソースとプリンの相性は抜群よ?これが食べられないなんて、貴女達って人生の九割は損してるわね」
「お粗末様です」
「ん、まぁ私は反省してないけどな。私は過去を振り返るより現在を視る人間でな、今もいかなる手でそのプリンを盗もうかと画策している」
「・・・・・・妖夢」
「ハッ」
妖夢の抜刀した刀が光る。
「切り捨て御免ッ!!!」
「アイェェェェェ!?」
秋特有の気怠い昼下がり、栄枯盛衰など素知らぬ彼女。地に足着く亡霊の彼女はどんちゃん騒ぎの隣、ふと障子を開け庭を観覧すると銀杏が蝶のように舞っていた。
「栄枯盛衰、生者必滅・・・・・・。生命というのは斯くも儚いモノであり、また壮麗でもある」
幽々子は庭の木々が桜を咲かす光景を想像すると感慨に耽る。春は近からず遠からずといったところだ。亡霊娘は馳せた想いは枯れることはないと重々承知しているのだ。
グゥゥゥ。
「あら、私のお腹は直ぐに貯蓄が枯渇するみたいね」
彼女の胃袋もまた、季節の移り変わりと等しく正直なのであった。
「いひぃっ!?」
金髪少女の鼻先を刀剣が掠める。躊躇いなく横一文字に振られた斬撃を間一髪で避けた彼女はさらなる攻撃を避けるために刺客から距離を取る。
思いもよらぬ不意打ちからか、額から冷や汗を滝のように流し、懐の八卦炉を取り出すと抗戦準備に移る。
「いきなり何しやがんだこの通り魔ッ!もう少しで私の鼻が半分持っていかれるところだったッ」
「・・・・・・・・・・・・」
刺客は少女とその周辺を注視したまま微動だにしない。金髪少女の次の行動を窺っているのか、もしくは彼女の何処を斬ろうか模索しているのか。剣士は無表情のまま押し黙っている。
「おいこら!何とか云えってば!ドンパチやり合おうってのかそれともそのまま動かないで魔砲で消し炭になってくれるのか!?」
明確な敵意を剣士に向けると少女は息を整える。奴は素早い、一歩でも動きを見せれば容赦なくマスタースパークを叩き込む。
すると、ようやく半人の少女は動きを見せた。
「・・・・・・全滅じゃない」
「あ?」
動かしたのは口だ、手か足が動かなければ魔砲は叩き込めない。魔理沙は閉口する。
「ああもう、今は貴女とやり合う気はないです。そもそも、こんな所でそんなドデカイものを撃たれてしまっては此方がたまりませんからね」
云って少女は時計を一瞥すると剣を鞘に収納する。妖夢は内心焦っていた、一寸前に斬られかかった魔理沙よりもだ。それには彼女の面子と沽券が懸かっていたのだが、当然こそ泥は知る由もない。
「さっさと出て行ってくれないかしらね、私以外に見つかる前に。あんたが勝手に上がっているのは百歩譲ってお許しになられるとしてもね、ちょうどさっきあんたが手を着けたものに問題が大有りなのよ。」
彼女の眼は真剣そのものだ。一方魔理沙は予想外に邪険に扱われ、何故か怒り心頭に達していた。
「おいおい、そりゃないんじゃないか~?いきなり斬りかかってきたお前さんの口から出る台詞じゃないよな?」
「ともかく、私はこれの事後処理をしないといけないのよ、それも速やかに早急に。あんたに構ってる暇はないわ。時間までもはや猶予が幾ばくも残ってないんだから。不法侵入は許してあげるから早く出てって」
早く出てってと云われて尻尾を巻いて逃げるほど柔な霧雨魔理沙ではない。こうなったらトコトンこの通り魔を困らせてやろうと思い至った。
「やだよ、おう。私はな、確かにお前の家に勝手に上がったが大したことはしてないぜ、そう、探検遊びをしてただけだ。他人の家って珍しいって思うだろ?どんな構造になってるかとかさ、好奇心が疼くよな~?」
彼女は根っからの物見遊山なのだ。探検家気性の彼女は持ち前の性分には逆らえなかったというのが言い分だと云った。ただ妖夢を困らせてやりたいだけなのが本音なのだが。
しかし、妖夢は彼女の戯れ言を聞くか聞かずか、顔色一つ変える暇もなく慌ただしく、チラチラと時計をやたら気に掛けながら必死に作業をしている。部屋に作業音が木霊する。器と器がこ擦れ合う音、材料を吟味し調理するこの部屋特有の環境音は隠然と場を支配し始めた。
「一食勝手に拝借しておいてとんだ口の聞き方ですね、どっちみち貴女には謝罪など期待していないけど、私と彼女にとったら由々しき事態なのです。あ、私にとっては特に、ね」
まるで生命が懸かっているかのような彼女の台詞に魔理沙は辟易した。こいつ、こんな不思議キャラだっけ?と、首を傾げる。そこで、普通の魔法使いは普段と異なる妖夢の様子に一抹の好奇心を再度抱え、その場に居座ることに決定した。
「なんだよなんだよ、作ったもの放置してここを留守にするお前が悪いんだぜ?自業自得ってな。それにやたらさっきから時計を気にしてるよな?間もなくお昼だが、何かマズいことでもあんのかよ?あ、探検中に幽々子の姿が見えなかったけどどっかお出かけ中なの?・・・・・・ん、良いにおいだなー・・・・・・もしもーし?」
からあげにはレモンはつけないのか?ん、この味噌汁ちょいとしょっぱいな、砂糖入れるぞ?そうそう、茸持ってきたんだけど食うか?毒茸だけど。エプロン裏表逆だけどいいのか?刀は包丁代わりに使わないのな。
「五月蠅い」
怒られた。
「ん、そういえば未だ魔法使いは料理にしたことがなかったわね。・・・・・・どう?」
「どう?じゃねぇよ!怖い事云うなよ!」
「意外と口に合うかもしれないわよ?心配いらないわ、私がきちんと介錯してあげるから、苦しむのは一瞬」
こちらを振り向いた妖夢の満面の笑みにはどす黒い狂気と怒りが含有していた。彼女の額では浮き出た血管がピクピクと痙攣している。魔理沙が妖夢の気迫に気圧され後ずさりすると彼女も獲物に向かって足を踏み出してきた。
「大丈夫、貴女の血肉は幽々子様と一体となり、未来永劫彼女と添い遂げられるのよ?こんなに嬉しいことはないわ」
「いや嬉しくないし!むしろ、狂気乱舞してるのはお前だし!いいから、その包丁を下ろせ!それは料理するものであって魔法使いを調理するものじゃない!」
「え、卸せ?・・・・・・解りました。では遠慮なく」
「やめてぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「妖夢ただいま~。随分と遅くなっちゃってめんごめんご~。もうお腹がぺこちゃんでお腹と背中の皮がだるんだるんよ~。あら、お客人も来てるのね」
瞬間、妖夢は凍り付いた。魔理沙に荒らされ、全滅した昼飯は未だ復旧を遂げていないのだ。腹ぺこの幽々子が事を知れば怒髪天を衝くのは疑う余地もなく明らかだった。
「あ・・・・・・・お帰りなさいませ、幽々子様。えーと、ちょうど新鮮なお肉が手には入ったところなので、追加でお料理を拵えようとしていたところなのですよ・・・・・・ははは」
「お肉?そこで口から泡吹いて横たわってるアホウ使いのこと?うーん、残念だけどねぇ、妖夢。ご存じの通り、私はカニバリズム的な変態嗜好は持ち合わせていないのよ。それよりお腹が減ったからメシにしたいのよーメシー」
妖夢は満面の笑みの主人がとてつもなく恐ろしい存在に感じた。料理が完成していないのを知ってか知らずか、既に事を察し怒り心頭なのではないか。あらゆる思索を巡らせ、どう取り繕うか逡巡した。
「・・・・・・・ねぇ、妖夢」
「・・・・・・ハイ」
「出来てないのよね・・・・・・・?ご飯・・・・・・?」
「・・・・・・ハイ」
「・・・・・・やっぱり、気が変わったわ。時には変わったモノを食してみるのも冒険かもしれないわね?そこの泥棒猫なんか胃もたれしそうだけど、胃袋に収まらないこともないかもしれないわ」
「魔理沙を食べるなんてとんでもない!それには賛成しかねますぜ、幽々子様」
「なんで裏声なんですか?」
何時の間にやら魔理沙は起き上がり、戸口へと忍び歩きしていた。牽制のつもりか、八卦炉を幽々子達に向け、威嚇している。
「あらあら、まるでお互い国境を挟んでいるかのようねぇ。お互い膠着状態で身動きできないようだけど、はたして抑止力になっているのかしらね、あなたの玩具は?さてさて、先にほっぺたをぶん殴るのはどちらかしらね。危険な玩具を振りかざす盗人?我が忠実かつ下僕脳筋の妖夢?それとも・・・・・・」
妖夢は獲物を抜いた。五体満足では家に帰れないかもしれない。いや、もしくはこの白玉楼で散る運命やもしれぬ。一触即発の空気の中、魔理沙は腹を括った。そして、せめてベッドの上で死にたかったと思いを張り巡らせた。
そして火蓋は切って落とされた。
「ご飯にする?」
「「え?」」
数刻後。
「う~ん、やっぱり妖夢の作る夜雀の唐揚げは最高ね~。ゴツゴツしていて弾力溢れる舌触り、ジューシーかつスパイシーよ」
「いや、私は骨だらけでまともに食えないんだが・・・・・・つーか、お前骨ごと食ってるし」
バリバリボリボリ。食事に誘われたのは良いが、これほどまでに幽々子が食い意地が張っているとは予想だにしていなかった。料理の大半は彼女に食い荒らされ、蚊帳の外の二人は残り物をつつくしかない状況だ。危うく自分がこの料理の一品になったやもしれぬ事態を想像し、魔理沙はヒヤリとした。
「大体ね、ボリボリ妖夢がいけないのよ。作り終わったご飯を放置してモグモグその挙げ句には食い意地張ったこそ泥に食べられちゃうんだからゴクゴク。・・・・・・おめーらちゃんと聞いてんのか?」
「「はいそれはもう幽々子様の仰る通りでございますはい」」
「宜しい」
──かくて慌ただしい昼餐は過ぎて往き、お膳に出された奢侈な料理も彼女らの胃袋に召された。幽々子は食後のデザートのプリンをつまみながら
云う。
「このプリンを食せるのは私だけよ?貴女達への罰よ、罰。申し訳程度のお仕置きだとか思ってるでしょう?あ~、残念ねぇ、こんなに美味しいものが食べられなくて~。ほらほら、カラメルソースとプリンの相性は抜群よ?これが食べられないなんて、貴女達って人生の九割は損してるわね」
「お粗末様です」
「ん、まぁ私は反省してないけどな。私は過去を振り返るより現在を視る人間でな、今もいかなる手でそのプリンを盗もうかと画策している」
「・・・・・・妖夢」
「ハッ」
妖夢の抜刀した刀が光る。
「切り捨て御免ッ!!!」
「アイェェェェェ!?」
秋特有の気怠い昼下がり、栄枯盛衰など素知らぬ彼女。地に足着く亡霊の彼女はどんちゃん騒ぎの隣、ふと障子を開け庭を観覧すると銀杏が蝶のように舞っていた。
「栄枯盛衰、生者必滅・・・・・・。生命というのは斯くも儚いモノであり、また壮麗でもある」
幽々子は庭の木々が桜を咲かす光景を想像すると感慨に耽る。春は近からず遠からずといったところだ。亡霊娘は馳せた想いは枯れることはないと重々承知しているのだ。
グゥゥゥ。
「あら、私のお腹は直ぐに貯蓄が枯渇するみたいね」
彼女の胃袋もまた、季節の移り変わりと等しく正直なのであった。
どんだけ強い歯をしてんですかww
そしてさりげなく犠牲になる夜雀であった。
図々しく注文する形で恐縮ですが、小説としての作法を整えて頂けると嬉しいなあと思いました。
食欲の秋はまさしくゆゆさまのためのお言葉ですね。
ならば是非栗をオススメいたします。