「ふんふふ~ん」
もうこれでもかっ! っていうほど晴れた昼下がり。
自慢の茄子色の傘が日傘代わりに役に立っちゃうくらい強い日差しの中。
諸々の事情で午前中だけになった子守の仕事が無事に終わって、ホクホクで人里から家路につく私こと多々良小傘。
人の通りなんて殆ど無い道を、機嫌良く歩く。
いや~、やっぱり子供はいいよね!
大人の人間に比べて、素直だし、大抵のことは驚いてくれるし、ちょっと生意気なことを言う時もあるけど、それも可愛いし。
それよりなにより、私の事を変質者とか言って追い回したりしないし。
う、やだ、ちょっと思い出しちゃった……あの時は怖かったなあ。
ホント、大人ってば失礼しちゃう。
大人の相手はしたくないもんねー。
あ、でも、子供はいつか大人になっちゃうのか……。
今日、キャッキャって喜んでくれた子も、昨日もう一回見せてって何度もせがんできたあの子も、一昨日子供だけの内緒の肝試しでいっぱい驚いてくれたあの子たちも。
みんなみんな、大人にになって、わたしを追いかけ回す様になるのかな…………。
それは、嫌だなあ。
あ~あ、 人間がいつまでも子供のままでいたらいいのになあ。
「あの、そこのアナタ、ちょっとよろしいですか?」
「あ、はい」
そんな事を考えていると、後ろから声がした。
いけないいけない。考え事してたから、つい、はいって言っちゃったよ。
怖い人だったらどうするつもりなんだ私!
恐る恐る声をかけられた方へ振り返ると、そこには優しそうな眼をしてる女の人。
キラキラとなびいている黄金色の髪がすごく綺麗。
なんだけど、飾り気のない真っ黒な服と首から下げてるやけに大きな六角形のペンダントが、なんだか不気味。
なんだろ、もしかして前の時みたいに火付け盗賊改め方の人だったりするのかな?
あわわ、別に私悪いことしてないのに……っ!
「ああ! やっぱりそうなのね! アナタ、前世で私と共に戦った戦士、ヴィクトアールですわね!?」
「……………………はい?」
「そのオッドアイが何よりの証! 良かった! 私です! 前世でアナタのパートナーだったシャルロットです!」
え? えええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?
なになになに!? 私ってう゛ぃくとあーるって名前だったの!?
い、いやいや、違うし、落ち着け私!
私は多々良小傘多々良小傘多々良小傘。
き、きっとこの人アレだ、人違いしてるんだ。
はっきり人違いだって言わないと!
「わ、わちきはう゛ぃくとあーるなんて名ではないぞよ?」
「――――――――――っ! そのやけに時代掛かった口調! ええ、もう疑う余地なんてありません、やはり二人の再会は約束されていたのですね!」
うがー! 失敗した! ついキャラ作っちゃったよー!
なんかこの女の人、頬が赤くて蒸気が凄いし、目もキラッキラッしてるしでなんか怖いよー。
「あ、あの、やっぱり人違いじゃないかなあ……私あなたの事なんて知らないし」
「ええ、ええ、そうでしょうとも。彼の幽界の第一人者が仕掛けた呪術はそう簡単に解けるものではないですもの。これからじっくりと時間を掛けて、二人であの頃の絆を取り戻しましょう」
彼の幽界の第一人者って誰!? 呪術って何!? ああもう話がわけわかんないよ~!
「……あ、ごめんなさい。あまりに突然の再会だったから、ついハシャいでしまって。困惑したでしょう?」
「え、えー今も絶賛困惑中なんだけど」
多分アレだ。この女の人、この暑さでちょっと頭がパーンってなっちゃってるんだ。
うん、関わらないでおこう。その方がお互いのためになるに違いない。
「わ、私これから用があるからこれで失礼し」
「これからじっくりと説明させて頂きます。さ、この少し先に静かで密談にはもってこいの人気のないカフェーがあります。そこで全てお話しますわ」
お願いだから、私の話を聞いてよ~!
その後、やけに強い腕力で腕をガッチリ絡め取られてズルズルと引っ張られていく私。
最近の人間の人間離れは深刻ダヨー。
「お待たせしました。妖怪毒殺アイスコーヒーと妖怪圧殺パフェとなります」
「………………………………どうも」
連れて来られた喫茶店で、注文したものが運ばれてくる。
いや、メニューには普通にコーヒーとかパフェとかって書いてあったと思うけど……。
「驚かれました? この店はいつもこうなんです。商品に物騒な言葉を付けたがるものだから、人気が出ないんですわ」
店の雰囲気は良いし、味も悪くないんですけれどね、と向かい側に座る女の人(しゃ、しゃるろっと?)が、妖怪毒殺コーヒーを飲みながら言う。
いや、気になるのはそこじゃなくて…………だ、大丈夫なのかな。
私妖怪なんだけど、パフェ食べたからって圧殺されたりしないよね……。
なんか、店長らしき人がこっち見て舌打ちしてるような気がするなあ。
怖いよー、アレは妖怪殺しの目だよー。
「っ、ええい、妖怪は度胸! 当たって砕けて、なんでも試してみよ!」
妖怪圧殺パフェを勢いのままパクリと一口。
あ、美味しい。美味しいんだけど、なんか本当に圧殺されそうな甘さだコレ。
うう、クリームが私を圧殺しにかかってくるよお。
「ふふ」
圧力などに負けるかとパフェ相手に奮戦していると、女の人が私に微笑んだ。
「あ、ごめんなさい。でも、こうやってアナタと向かい合わせで食事をしていると、つい前世を思い出してしまって」
そうして彼女は語り始めた。
二人の女戦士の、血に塗られた戦いを。
裏切りと猜疑心に彩られた絶望の中で、それでも夢と希望を諦めることなく戦い続けて。
戦いの中で芽生えた絆も愛も、確かにそこにあって。
けれど、それは決して叶えられることなく、結実することなく。
二人は、志半ばで悲情な最後を迎える。
――――――――――それは、太陽と月だけが見届けた、エメ・リストワール。
「……………そうして、幽界の第一人者によって未来永劫、天に召される事のない輪廻の地獄に落とされたのです」
「……っぅぅぅ」
涙が! 涙が止まらないっ!
そんな! 祖国を信じて何もかも投げ売って戦ったのに、全部裏切られて…………っ!
こんなのってないよ…………あんまりだよ…………!
「サービスです」
テーブルに紅茶が二つ差し出される。
見れば、それを持ってきた店長らしき人物も、わずかに目を潤ませて微笑んでいる。
うう、さっきは目が殺し屋とか言ってごめんなさい。
今のあなたの目は、純粋無垢な子供そのものだよ……っ!
「これで、わかって頂けましたか? 私とアナタのとても深い業に」
「…………が…………ぁ……す」
「え? 何です?」
「私がっ! 私が、う゛ぃくとあーるですっ!」
他に選択肢はないんです!
そんな話されたら、こう言うしかないよ……っ!
次の日。
ベビーシッターという仕事を始めてから幾月。私は初めて、その仕事を休んだ。
私の脅かしを待ってくれている子供たちには悪いけど、今日は記念すべき日になるのだ。
「ごめんなさい、お待たせしてしまったかしら」
「ううん、そんなことないよ、まだ約束してた時間より少し早い時間だし」
昨日と同じ飾り気の無い黒い洋服に身を包み、首から大きめの六角形のペンダントを下げたしゃるろっと。
歩く姿は、なんだか洗練されていて、どこぞのご令嬢かといった感じ。
昨日に続き、雲ひとつないまさに晴天の空。
けれど、昨日と違って、適度な風が吹いていて、不快にはならない暑さだ。
うん、前世の記憶を探すには絶好の日和だねっ!
…………んん? 何かおかしい様な?
「では、今日はまず二人の最後の再現をしてみましょう。さ、霧の湖まで行きますわよ」
「あ、う、うん、ちょっと待ってよー!」
霧の湖に到着したのは、ちょうど昼頃。
一番、湖の霧が濃い時間帯。
湖の中央に位置するはずの赤い館も、薄っすらとしか見えないほど、濃い霧に辺りは包まれている。
「本当は、夜にこのロケーションになってくれれば完璧なのですけど、まあ、言っても仕方ありませんわね」
「ホント、不思議だよねー。なんで決まって昼に霧が出るんだろ」
やっぱりアレかな、館に吸血鬼がいるのが原因なのかな。
うう、昼だから吸血鬼は出ないと思うけど、だ、大丈夫だよね?
「さ、まずは入水から始めましょう」
「わかった! って、待って! 入水したら死んじゃうよ!」
「当然、わかっていますわ。ですから、死なないギリギリのラインを見極めるのです」
「いや~、それは無理があるんじゃないかなあ」
女は度胸! なんでもやってみるもんですわ! と息巻く女の人をどうにも抑えきれない。
「これは、私とアナタの前世の再現。それも最後の光景ですわよ。状況を再現すれば、きっと記憶も蘇りますわ」
その言葉に負けて、湖に入水する私達。
しっかりと手を繋いで、身を寄り添って。
う゛ぃくとあーるとしゃるろっとは、一体どんな気持ちで入水なんてしたんだろうか。
今の私じゃ、よくわからない。
まあ、結局、生と死のギリギリのラインなんて見極められるはずもなく、ガボガボと溺死しかけたところを、湖在住の人魚さんに助けてもらいました。
「ゲホッゲホッ! き、貴重な体験でしたわ」
「二度としたくない経験だね…………苦しいったらなかったよ」
結果は、死にかけただけで前世の記憶は戻らず、今世でのトラウマが芽生えただけだった。
う~ん、前世の記憶って一度死にかけただけじゃ戻らないんだね~。
翌日。
「昨日は、残念な結果になりましたが、一度の失敗でめげていては成るものも成りません。次の策です」
「おおー、前向きだね」
「このくらいでないとやってられません。さ、今日は炎に巻かれてみますわよ!」
「それはさすがにギリギリのラインとかじゃダメだよねー!?」
その翌日。
「昨日は危ないところでしたわね」
「いくら、前世で火炙りの刑から命からがら逃げ出した事があるっていっても、私達がそれを忠実に真似する必要って……」
「けれど、未だ記憶は戻らず……。くっ、彼の第一人者の呪術がこうも強固だとは……!」
「人里の人間からは放火魔って誤解されそうになったし、次はもう少し穏便に、ね!」
「かくなる上は、あのエピソードを試してみるしか……」
「……え? それオニスズメバチの巣だよ? 危ないよ? そ、そんなハチを刺激するような事をしちゃ…………キャーッ!」
「暴れ牛の代わりですが、危険度で言えば然して変わり無し、やってやりますわよ!」
またその翌日。
「やはり、質量の大きい物に突撃される恐怖と、毒に対しての恐怖では質が違いましたか……」
「う~、怖いよ~、ハチ怖いよ~、羽音があちこちから聞こえるよ~」
「それは幻聴ですわ。こんな高所にハチなどが生息出来るはずもありません」
「え? え? ここどこ? どこなの?」
「吸血鬼の住まう紅の館の最も高い場所、ええ、教会代わりとしては不適格ではありますが、舞台としては相応しいですわ」
「え? ここから飛び降りるの? 飛ぶよ? 私普通に飛んじゃうよ?」
「さあ、ここより飛び降り、如何な勢いで地面に叩きつけられようとも、果敢に立ち上がろうではありませんか!」
「ちょちょちょちょちょ――――――――――っ!」
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。いざ――――――!」
三日後。
灰色をした雲が、青空を覆い隠す。
この分だと夕方から夜に掛けて、雨が降るだろう。
風も湿気を多く含んでいて、なんだかちょっと不吉な感じ。
今日の待ち合わせ場所はいつもとは違って、うら寂しい無縁塚。
なんでわざわざ無縁塚なのかは、わからないけど。
私、ここは嫌だな……。
「ふう、流石に前回は死ぬかと思いましたわね」
「ねえ、ホントに人間なんだよね? それとも前世を思い出した人間って、みんなこんなゾンビみたいに頑丈になるの?」
あの怪我を三日で完治ってどういうことなんだろう……。
足の骨が飛び出してた気がするのは、私の気のせいなのかな……。
「それで、記憶の方は……どうですか?」
「う、ううん、走馬灯で私が生まれてからの記憶は何度も蘇ってるんだけど」
結局、色々試したけど、私の前世の記憶は戻らなかった。
いや、ホントにそんなものあるのかって話だけど。
女の人が目を伏せる。
「…………それで……そのどうし……ますか……?」
「え? 今日の活動の事?」
いえ、そうでは無くと、女の人は続けた。
「今日まで、前世の記憶を取り戻すだなんて言って、相当危ない事をしてきました。私もつい調子に乗ってしまって……」
「まあ、走馬灯も見慣れてきたって感じだしねー」
「でっ、ですからっ! これからも、私に、その、付き合ってくださいますか……?」
別に、そんなに不安そうにしなくてもいいのに。
「決まってるよ! 怖かったけど、結構楽しかったしね。あ、でも今度からは、もうちょっと別の角度から攻めてみてもいいんじゃないかな~って思ったり……?」
正直、毎回毎回、生死を掛けたくないし。
「……ふふ、ええ、そうですね。今度は、もっと落ち着いた事をしましょうか」
それなら安心。いや~、正直今日は遺書を懐に忍ばせてるくらいだからね、ホント。
「じゃあ、今日はこれから……?」
希望としては、甘味処でお茶とお団子食べたい。
「いえ、今日は少しここで気を晴らそうかな、と」
? 変なことを言うなー。
こんな寂しい場所じゃ、気なんて晴れないだろうに。
「無縁塚、縁者の居ない人が埋められる場所。なんて言うんでしょうね、それが世界から捨てられた様に感じてしまって」
酷く辛くなると同時に、安心を得てしまうんです、と少し自虐めいた顔で、女の人はそう言った。
それは、おかしい。
だって、それは、本当に捨てられたものが抱くはずの感情の筈で。
「廃棄物って、酷い言葉だと思いませんか? 不要となったから捨てる。幻想郷で、そんな風に捨てられたモノ達の終着点。それがここなんです」
だから、ここに来ると安心すると、女の人は言った。
いつか、自分が来るはずの場所だから、と。
自分の終の棲家となる筈だから、末期が一人ではないという事を知れるそこを見ると気が晴れる、と。
「それ――――――は」
二の句が継げない。
だって、そんなのおかしい。
そんな、いつかの私みたいな事を言うなんて、絶対におかしい。
待てど待てども、捨てられた事を嫌でも思い知らされて続けた、そんなことを――――――――――――
「ここにいたのか、お前は」
そんな時、急に背後から若い男の声がした。
「っ?! 何……よ……?」
女の人が、バツが悪そうに俯く。
その様子が、あまりに痛々しくて、私も思わず顔を背けてしまった。
「色々と聞いたぞ、また他人様に迷惑をかけているようだな」
とても冷たい眼光で、若い男は女の人を射る。
「あんたにっ」
「残念だが、関係ある。いつまでも夢見がちな行動をしている妹を持つ兄だ。そろそろ心労を減らさせてくれてもいいんじゃないか」
「うるさい、うるさい、うるさい!」
女の人が顔を真っ赤にして、叫び散らす。
端正な顔を酷く歪ませて。
「いつまでも、子供じみた事をするのはやめてくれ。とうに二十を過ぎた大人が情けない」
若い男の口から発せられる言葉は、どれも冷たくて、まるで抉るためにある刃のようで。
「前世などと嘯くのは、恥ずかしいからやめろ。しっかりと現実と向き合え。そんな見えもしない虚構にいつまで縋っているつもりだ」
「…………っ! うるさいっっっっ!」
女の人が駆け出す。一方的に浴びせられる言葉に、何一つ言い返すことも出来ずに。
「やれやれ、あの様子では更生ももはや望めずか。なら、父母を見習って、もう何も考えず適当に捨て置くのが妥当だな」
否定された。
女の人の視た前世は、ただの虚構でしかなくて。
それは、取るに足らないものだと、捨てられた。
「………………………………………」
「さて、妖怪とはいえ、子供じみたごっこ遊びに付きあわせてしまって迷惑をかけた様だね。この件、謝らさせてもらおう」
子供。
ああ、そうか。確かに子供だ。
大人は、しっかりと地に足をつけて生きるものらしい。
大人は、日々何かのために、前を見据えて、目の前のことを一つずつ解決していくらしい。
大人は、責任があるらしい。とてもとても重い責任があるらしい。いくら重くて辛かろうが、それからは決して逃げられないらしい。
でも、あの女の人にはそれがない。
だから、子供なんだ。子供のままなんだ。
「とりあえず、今日はお引取り願えないかな。この謝礼はまた日を改めて――――」
――――――――――ああ、やっぱり、大人なんて相手にするもんじゃない。
走る。追いかけて、走り出す。
鉛色をした空からは、ポツポツと水が流れ落ち始めていた。
雨が降る。
シトシトシトと、まるで何かを伝うようにして空から流れ落ちてくる。
そのくせ、地面に落ちる時には決まって大きな音を出す。
まるで、誰かが泣いてるみたいだなと思った。
きっとこういうのを慟哭って言うんだろう。
人里から少し離れた、大きな木の下で。
ずぶ濡れになりながら。
まるで置き忘れ去られた傘みたいにして、私の前世の片割れはそこに居た。
唐傘を差して、もうそれ以上濡れないようにする。
「……ぁ………………っ」
私がすぐ側にいることに気付いて、でも、すぐに私から顔を背ける。
そういえば、彼女から聞いた前世でも、こんなしちゅえーしょんがあったっけ。
「ごめんなさい」
「うん」
「全部作り話でした」
「うん」
「何もかもでっち上げで、周りの人達にも迷惑を掛けてました」
「うん」
「そう、全部全部、あの人の言うことが正しいわ。結局私は……」
――――――――幻想しか見られない、廃棄物でした。
捨てられたみたいな顔をして、その女の人はそう言った。
ああ、本当にダメだなあ。
この人は、わかってないんだ。
「人を驚かせるのってね、すごく大変なんだよ」
「…………?」
「それが、感動させるって事になると物凄い大変なんだよ」
私は、あの時、確かに涙したんだ。
最後の最後まで、夢と希望を捨てなかった二人の女戦士の姿に、感情を揺り動かされたんだ。
「ここは幻想郷だよ? なら、夢見た幻想を形にするなんて簡単だよ」
「形に……する……?」
女の人が顔を上げる。
その表情は、驚きに満ちていて。
「そう。だって私は泣いちゃったもん。私、驚かせるのが本職なのに、泣かされちゃったもん。うん、絶対に、他の誰かも泣かしちゃえるよ」
そう、そのために――――――――
「だから、見返しちゃおう。捨てられても、幻想しか見られなくても、誰かの心を動かせられるんだって、そんな凄い事が出来るんだってこと、証明しちゃえばいいんだよ」
――――――――私は、今、ここにいるんだから。
未だ雨は降り続けている。しばらくは止みそうにない。
でも、雨だからって、そんなのは傘を差せばいいだけだ。
雨が止むまで、ヴィクトアールとシャルロットは共に居た。
手と手を取り合って。
二人で身を寄せ合って。
また来世でも、共に在れたらと、願いを込めて。
数カ月後。
しゃるろっとは、前世の話を本に纏めたらしい。
そして、なんと祭りの時に人里によく来る人形遣いに演目として売り込んで周囲の人間の度肝を抜いたって話。
今はその脚本としての調整で忙しくしているみたい。
伝え聞くところによると、何度も死に直面する二人の女戦士の描写が真に迫っていて、思わず手に汗握るんだとか。
記憶探しの時の経験が生きているんだとしたら、それに付き合った身としては、まあ、報われるのかな?
結局、しゃるろっとの本当の名前は聞かず仕舞い。
だって、必要ないのだ。
二人で会う時は、彼女はしゃるろっとで、私はかつてのう゛ぃくとあーるの記憶をなくした多々良小傘なんだから。
まあ、それは置いといて、今回のことを振り返って、私はとても重要なことを発見してしまった。
しゃるろっとに初めて超えを掛けられた時、私はとても驚いた。
そう、思わず自分の存在を再確認してしまうくらい、驚いたのだ。
ふ、ふふふ、ふふふふふふふふふふ。
そんなわけで、今日は手に入れた新しい脅かしネタを胸に、あの憎っくき緑巫女を絶賛待ち伏せ中。
いつかのボコボコにされた恨みを晴らすは、今日!
外の世界から流れてきた本で前世についても勉強したし、これで勝てる!
っと、そんなことを言ってる間に、目標が近づいてきた。
後、五歩、四歩、三、二、一。
「あ! そこのあなた! そうあなた! あなた、前世で私と共に月基地で地球を観測していた、木蓮ですねっ!?」
「――――――――――――――――――――――――っっっっ! (満面の笑顔)」
この日、私は、人によって脅かすネタは変えていかなきゃいけないという事を学びました。
だって、まさか、あんなに食いつくなんて…………前世怖い前世怖い前世怖いよお…………っ!
題名と導入にインパクトがあるだけに、落着が現実的で生々しくて、なんだか残念。
でも女剣士二人の冒険活劇とか、確かにアリスが好きそうだw
ただ、前世のつながりを持ち出して声をかけるというお話は東方以外の創作物にもよくみられますから、今ひとつオリジナリティが欲しかったのでこの点を
だが、何で「僕の地球を守って」を言っちまったんだw
でもなんで小傘っていつもこんなキャラで描かれてるんでしょうね?「~だよ?」とか「〇〇だし!?」とか。。
本編しか知らないから不思議です。
ええ話でした。
小傘がんばれ、いいことあるよ。