珍しいことに、私は文の家に招かれた。朝起きて郵便物を確認していたらポストに簡素な見た目の便箋が入っていて、そこに一文、
『今日の夜、私の家まで来てください』
と書かれていた。
速さを競い合う仲でもあり、それなりにあいつとは関係も深かったから不思議なことではない。でも急なお呼ばれだもんだから少し勘繰ってしまう。
例えばその場で拉致監禁しネタを洗いざらい吐かされるとか、少々ロリコンの気があるあいつのことだ。ナニをされるかもしれない。
でもまあ大丈夫だろう。たまたま魔法薬の補充を済ませたばっかだし、幽香直伝のマスパもあるしいざとなったら逃げればいいだけだ。
それに、もしかしたら結構いい話を聞けるかもしれない。もちろんなんとなく指で円を作りたくなるようなそんな話だ。今までに何回も取引をしたことがあるし、その度にお互いいい思いをさせてもらってきた。
私は行くことに決めた。文の家はうろ覚えだがなんとかなるだろう。なんなら椛に聞いてもいい。こそこそとしているのは性に合わない。やるならドカンといこう。それが私の生きざまだ。
夜といってもどのぐらいの深さがいいのかわからなかったが、とりあえず夕飯を軽めにとっておいた。
招待をされている側として図書館に行くときみたいに時間を気にしないわけにもいかなかったが、そんなことを考えている内に結構いい時間帯になってしまった。
さすがにちょっと遅かったかと思ったが、文の家にはまだ電気がついていて少し安心する。半分ほど開いた窓のカーテン越しに文らしき人影が動いている様子も見えた。
お客様としてドアをノックすると、少しだけ静かな時間が流れ、そして文がいつものいい笑顔で私を出迎えてくれた。
私は遅くなって悪いな、と詫びをいれたが、文は気にしなくてもいいですよとそそくさと私を家に入れたがった。
それじゃあお構い無く、とお邪魔をさせてもらい、文の案内するままとある一室に入れられた。
文の寝室のようで、しかし殺風景な眺めだった。確かに二人っきりで話すのにごちゃごちゃとしてたら話しにくいだろう。
部屋の真ん中に置かれた折り畳み式のちゃぶ台を挟んで、文はベッドを背もたれに、私は胡座をかいて座り、文にどんな用で私を呼んだのかを聞いてみた。でも文は勿体ぶってなかなか話そうとしない。
何やらどうしても前置きから話したいらしく、そんなにそれが重要なら、と私は渋々承諾した。
曰く、一見普通の妖怪に比べて食人衝動が少ないと思われている天狗だがそうではない。むしろ普段抑えられている分そこらの下級妖怪よりももっと無惨に、獲物を家に持ち帰り例えば目玉を残して食い散らかしてしまうと、そんなことを言ってきた。
その話とまさに合致するこの状況下、妖怪の家で、人外どもの力の増す夜中にそんなことを言われたらさすがの私でも少し寒気を感じた。もしかしたら私はここで食われるのか。友人と思っていた天狗にまんまと騙されてここで果ててしまうのか。
私がそんな風に思い詰めていたからか、文が私の強ばった顔を見てとうとう吹き出した。一瞬何を笑っているのかわからなかったが、完全に遊ばれていたと気がつくとだんだんと腹が立ってきて文をとっちめてやろうかと思った。しかしお茶を持ってきますね、とあいつは言ってそそくさと逃げてしまった。
あいつの反応を見る限りあれは冗談だったのだろう。全くいい趣味をしてるな、やれやれと力無く首を振る。
カシャン、という音がどこからか聞こえてきた。窓の外や辺りを見回してみてもドアが閉まっているという点以外変わったところはなかった。恐らくは風でドアが閉まった音だろう。
そんなに時間が経たない内に文が戻ってきた。湯飲みは一つしかなかった。お前はいらないのか? と聞いてみるが文はただ笑うだけでなにも言わない。
またこいつはこうやって人の反応を見て楽しんでいるのだ。性格が悪いったらありゃしない。
そういえば私ご飯まだなんですよ、と文がベッドに寝転びながら言う。相変わらずマイペースなやつだ。なんてぼんやりとベッドを眺めていると、目があった。
『今日の夜、私の家まで来てください』
と書かれていた。
速さを競い合う仲でもあり、それなりにあいつとは関係も深かったから不思議なことではない。でも急なお呼ばれだもんだから少し勘繰ってしまう。
例えばその場で拉致監禁しネタを洗いざらい吐かされるとか、少々ロリコンの気があるあいつのことだ。ナニをされるかもしれない。
でもまあ大丈夫だろう。たまたま魔法薬の補充を済ませたばっかだし、幽香直伝のマスパもあるしいざとなったら逃げればいいだけだ。
それに、もしかしたら結構いい話を聞けるかもしれない。もちろんなんとなく指で円を作りたくなるようなそんな話だ。今までに何回も取引をしたことがあるし、その度にお互いいい思いをさせてもらってきた。
私は行くことに決めた。文の家はうろ覚えだがなんとかなるだろう。なんなら椛に聞いてもいい。こそこそとしているのは性に合わない。やるならドカンといこう。それが私の生きざまだ。
夜といってもどのぐらいの深さがいいのかわからなかったが、とりあえず夕飯を軽めにとっておいた。
招待をされている側として図書館に行くときみたいに時間を気にしないわけにもいかなかったが、そんなことを考えている内に結構いい時間帯になってしまった。
さすがにちょっと遅かったかと思ったが、文の家にはまだ電気がついていて少し安心する。半分ほど開いた窓のカーテン越しに文らしき人影が動いている様子も見えた。
お客様としてドアをノックすると、少しだけ静かな時間が流れ、そして文がいつものいい笑顔で私を出迎えてくれた。
私は遅くなって悪いな、と詫びをいれたが、文は気にしなくてもいいですよとそそくさと私を家に入れたがった。
それじゃあお構い無く、とお邪魔をさせてもらい、文の案内するままとある一室に入れられた。
文の寝室のようで、しかし殺風景な眺めだった。確かに二人っきりで話すのにごちゃごちゃとしてたら話しにくいだろう。
部屋の真ん中に置かれた折り畳み式のちゃぶ台を挟んで、文はベッドを背もたれに、私は胡座をかいて座り、文にどんな用で私を呼んだのかを聞いてみた。でも文は勿体ぶってなかなか話そうとしない。
何やらどうしても前置きから話したいらしく、そんなにそれが重要なら、と私は渋々承諾した。
曰く、一見普通の妖怪に比べて食人衝動が少ないと思われている天狗だがそうではない。むしろ普段抑えられている分そこらの下級妖怪よりももっと無惨に、獲物を家に持ち帰り例えば目玉を残して食い散らかしてしまうと、そんなことを言ってきた。
その話とまさに合致するこの状況下、妖怪の家で、人外どもの力の増す夜中にそんなことを言われたらさすがの私でも少し寒気を感じた。もしかしたら私はここで食われるのか。友人と思っていた天狗にまんまと騙されてここで果ててしまうのか。
私がそんな風に思い詰めていたからか、文が私の強ばった顔を見てとうとう吹き出した。一瞬何を笑っているのかわからなかったが、完全に遊ばれていたと気がつくとだんだんと腹が立ってきて文をとっちめてやろうかと思った。しかしお茶を持ってきますね、とあいつは言ってそそくさと逃げてしまった。
あいつの反応を見る限りあれは冗談だったのだろう。全くいい趣味をしてるな、やれやれと力無く首を振る。
カシャン、という音がどこからか聞こえてきた。窓の外や辺りを見回してみてもドアが閉まっているという点以外変わったところはなかった。恐らくは風でドアが閉まった音だろう。
そんなに時間が経たない内に文が戻ってきた。湯飲みは一つしかなかった。お前はいらないのか? と聞いてみるが文はただ笑うだけでなにも言わない。
またこいつはこうやって人の反応を見て楽しんでいるのだ。性格が悪いったらありゃしない。
そういえば私ご飯まだなんですよ、と文がベッドに寝転びながら言う。相変わらずマイペースなやつだ。なんてぼんやりとベッドを眺めていると、目があった。
終わりかたも釈然としないし、目があったあとにどうなったのか、その辺の行動とかを簡潔にでも書いてくれたら、まだまとまりがあるよう気がしますが。
総合して、もう少しホラーっぽさを感じさせて欲しかった。
ということです。
少々ありがちかな、と思うもののおもしろかったです
台詞をすべて地の文に入れ込んだお陰でホラーらしいスピード感が増していて上手いと思いました
呼んだのか、の間違い。
1つしかない湯のみ、食事がまだ、などという描写から匂わせる描写はどっちとも取れてちょっとした恐怖を感じさせていいですね。
あえてその後のことも書かない所も怪談っぽい。
「意味が分かると怖い系」はこういう後から来るゾクッと感があるからたまらない……!
すっきりと怖い作品でした。
なかなか良かったです
これは好みの問題ですが、もっと深読みさせたり解釈が別れたりするくらいの勢いでも良いかも
てっきり魔理沙が友人であっても頂いてしまう残酷な文かと思っちゃったよ!
ちゃんと選んでるんだね
文ちゃんはロリコン!
結末を読者に想像させる感じですね
日常の他愛ないジョークでこのあと本題に入るかも知れないし、百合的なことかも知れないしパックンと食べちゃう話かも知れませんしなんとも
まあ、タイトルとベッドで解釈は分かれそうですね 作者さんの後書きをみても
因みに僕ちんは、怪談よりもソッチの方が大好きです(ニッコリ)
そのテンプレから一歩踏み出せていない、「食われる側の」心理描写が今ひとつ適当である、等から辛めの点数を入れます。ご了承ください。
ところでオチに関して、やっぱりもう一声ほしい!
「人間の目玉って、対妖怪用の魔法薬の原料になるんだぜ。これが結構強力なんだ」
とか、例えばどうでしょう。
「指二本でも食べ足りないとか文は卑しんぼさんだぜ(ソーセージを突っ込みながら)」
「まりささん、おねがいだから、もっとやさしくたべさせヒウッあやのおくちこわれちゃぅぅ」
…どう読んでも怪談というよりこういう流れなんだよなぁ(中学生並みの感想)
ホラーとしては幕の下ろし方があっさりしすぎていてあまり怖くない。けれどこういう挑戦的な手法も面白いかもしれないですね。
「目があった」で切ってあるのが中々雰囲気出てます。