「儲かってるか?」
「ぼちぼちですね」
掛行燈の僅かな光が灯る薄暗い店内に、穏やかなレコードの音色に交わるように二人の会話が幽かに響く。
暖簾を掻き分け来店した少女は、白いリボンであしらった真っ黒な帽子のつばを、くい、と指であげると、
癖のある金髪の間から覗く幼さの残る相貌を綻ばせ、愉しそうに言った。
「良い回答だ。どこぞの古道具屋よりは商才があると見える」
「どこぞの誰かは存じませんが、よほどノリが悪いと見える」
くつくつと笑い合う二人の少女。
一頻り笑った後、店の番をしていた少女が、読んでいた本と、掛けていた眼鏡を勘定台の上に置き、
来店されたお客様を迎えるべく、商人然とした振る舞いで応対する。
「それで、魔理沙さん。今日はどういった用向きでしょう」
「ん……、ああ、ちょっと本を探しててな」
普段の明け透けな物言いはどこへやら、随分と歯切れの悪い回答に小首を傾げる。
ここは貸本屋の鈴奈庵。
小規模ながら印刷や製本も手掛けてはいるが、ここに訪れる者のほとんどが、本の借覧を目的としていた。
ゆえに、魔理沙の目的も何らおかしなことではないのだが、一体、何を言いよどむ必要があるのだろう。
「とりあえず、小鈴。本、見せて貰ってもいいか?」
「ええ、それは構わないけど」
「さんきゅ」
やはり様子が変だ。短い謝礼を述べて本棚と向き合う魔理沙の背中を眺めながら、小鈴は怪訝に思う。
まさか本を盗もうだなんて思ってはいないだろうが、明らかに普段と違う様子が気になって仕方がない。
ただ、その様子に、挙動不審と言うよりは、どことなく慎ましやかな雰囲気が感じられるのは何故だろう。
しおらしいと言うか、女の子然としていると言うか。自身にも覚えのある姿と言うか。さて。
考えたところで詮無きことか。いつまでも、忙しなく右往左往する背中を監視していたって仕様がない。
小さく肩を竦めて呼吸をひとつ。眼鏡と本を手に取って、小鈴もまた自分の世界に没頭するのだった。
「お」
「?」
ややして、店内に響く明るい声。
目当ての本でも見つかったのだろうか、振り向けば、魔理沙が嬉しそうに手にした本を捲っていた。
随分とお気に召しているようだが、先程までのおかしな様子と何か関係があるのだろうか。
席を立ち、魔理沙の背後に歩み寄ると、その背中越しに手にしている本を覗き見た。
「おや、お目が高い」
「うわっ!? 急に声をかけるなよ」
びっくりするだろ、と魔理沙は口を尖らせる。
しかし、当の加害者はまるで悪びれた様子もなく、嬉々として話を続けた。
「それは最近入荷したばかりなんですよ。偶然外の世界から流れ着いたものみたいで。
ほら、全部の頁が色つきでしょう。紙質もすごく上等で、他にはない逸品ですよ」
どこか誇らしげなのは何故だろう。本を自分のことのように称賛する小鈴に、魔理沙も苦笑を隠せない。
そう言えば、どこぞの古道具屋も、道具のこととなれば普段の無愛想はどこへやら、弁舌に熱が入るおかしなやつだったのを思い出す。
商人と言うやつは、得てしてみんな、こういうやつらばかりなのかもしれない。
「じゃあ、この本、借りてくぜ」
「はい、まいど。こんなものになりますけど」
「んん!?」
差し出された算盤を目にした途端、思わず変な声が出た。
それも当然だろう。小鈴が手にした算盤には、想定していた実に十倍もの値段が弾き出されていたのだから。
例えるなら、適当な古書を数冊まとめ買いしてもまだお釣りが来そうな値段だ。目を疑うより他にない。
元より、安定した収入を得られない魔理沙にとって、この出費は懐に大打撃どころか、致命傷であった。
「ちょ……、それは高すぎないか」
「そうは言われましても、希少な外来本ですし。
幻想郷では作れない唯一無二の書籍ともなれば、こんなものかと」
「ぐぬ……、あ、そう言えば前に本代を割引してくれるって――」
「そのお値段がこちらになります」
「割引済みでこの価格かよ!?」
でもなきゃ算盤なんて弾きませんって、としたり顔の小鈴に対し、魔理沙は苦虫を噛み潰したように顔をしかめた。
当然だ。この冬場に貯蓄を使い込むなど、即ち、死活問題以外の何者でもないのだから。
嗜好品を切り捨て、生活費に全てを充てて然るべき状況に、どうして一冊の本に高い費用を捻出できようものか。
しかし魔理沙はどうしてもその本を欲した。この本でなければ駄目なのだ、否、ここの本でなければ駄目なのだ。
「それで、どうします?」
「……今は、持ち合わせが、ない」
「あら、残念。それではまたの機会に――」
「……担保だ」
「え?」
「これを担保に、貸してくれ!」
悲鳴にも似た嘆願とともに、机の上に叩き付けんばかりの勢いで置かれたそれは、八角形をした箱のような何か。
金色とも緋色ともつかない不思議な輝きを放つ道具を不思議そうに眺める小鈴は、視線だけで魔理沙に問う。
「これはミニ八卦炉って言ってな、緋々色金で作られたマジックアイテムだ」
「緋々色金!? まさか、そんなの、伝承の中でしか存在しない金属じゃない……、本当に?」
「本当だ。疑わしいなら石でも金槌でもぶつけてみるといい。傷ひとつ付きやしないぜ」
「へえ……、これが……、あ、冷たい」
既に原料も加工方法も失われて久しい伝説の金属、緋々色金。
レアリティだけを見れば、いかな外来本と言えど及ぶべくもない、希少極まるレアアイテムである。
書物からは決して得ることは出来ぬ、触感と言う知識を満たすべく、小鈴は恐る恐るミニ八卦炉に手を触れた。
ひやりとした感覚が指先に走る。懐から取り出されたのだから、魔理沙の体温で温まっていて然るべきそれだが、
まるで、この世の始まりからそうであったように、その金属はただただその冷ややかな温度を保っていた。
確実に食い付いている。魔理沙は口元に小さく笑みを浮かべると、捲くし立てるように話し出した。
「このミニ八卦炉はな、希少な金属を使っているだけでなく、その機能も非常に充実しているんだ」
「ほうほう」
「まず注目すべきは火力だ。サイズこそこんなもんだが、その出力たるや山をも軽く吹き飛ばせるだろうな」
「ひえっ!?」
まるで爆弾にでも触れてしまったかのような勢いで、小鈴は瞬時に身を引いた。
あの説明ではそうなっても仕方がないが、使い方さえ誤らなければそうそう危険なことはない。
小鈴の反応に苦笑を漏らしながら、魔理沙は再び解説を始めた。
「それだけじゃない。ここからは空気を送り出す機能が備わってて、夏は涼むことが出来る」
「今は寒いだけね」
「そう言うな。他にも空気を浄化する機能まであるんだぞ。さらに魔除けと開運の効果つき」
「最後で壮絶に胡散臭くなったんだけど」
霊感商法とか雑誌の裏のお守り的な。
しかし、そうは言うものの、実際に緋々色金製のマジックアイテムであることは間違いなさそうである。
確かに、これほどの希少品であれば担保としては申し分ない。むしろおつりがくる。
だからこそ疑問だった。これほどまでに貴重なものを担保にしてまで、その本に求めるものは何なのか。
客のプライバシーを詮索するなど以ての外ではあったが、最初の魔理沙の様子も相俟って、どうにも気になる。
元より、商売人であり女の子でもある小鈴だ。好奇心は人並み以上に持ち合わせている。
特に、大好きな書物に関係することともなれば、尚のこと。
魔理沙もなんとかして借りてやろうと躍起になっている様子を見れば、これ以上はない好条件が揃っている。
相手の弱みに付け込むような真似は少し卑怯かな、などと思いつつも、小鈴は嘆息を一つ、仕方がないという体を装いながら言った。
「そこまで仰るのでしたら、本来ならお断りさせて頂くところだけど、以前の恩もありますし、お貸ししましょう」
「本当か!?」
「ただし」
破顔して喜ぶ魔理沙の鼻先に、ずいと人差し指を立ててつきつけ、その逸る気持ちを制す。
きょとんとした魔理沙の表情がおかしくて思わず軽く吹き出しそうになりつつも、
そこは商売人としての毅然とした態度を崩すことなく、交渉に乗り出した。
「貴重な道具を担保にしてまでこの本にこだわるその理由を、教えて貰います」
「なっ……、べ、別に、いいだろ、そんなこと」
態度が今日最初に見たものに戻っている。明らかに誤魔化しにかかっている様子が実に怪しい限りだ。
何かよからぬことでも企んでいるのか、それとも、この本に自分の知らない何らかの秘密でもあるのか。
いずれにしたって、興味がある。もうひと押し、と小鈴は胸中で舌を舐め擦り、追い打ちをかけた。
「でしたら、今回は縁がなかったと言うことで」
「だァ! わァーった! 判ったよ! 教えりゃいいンだろ! 教えりゃあ!」
「はい、教えて下さい」
にっこり。
実に可愛らしい笑顔だが、その裏に悪魔の面が見えやがる、とは魔理沙の談。
どうしても貸して欲しい以上、断ることが出来ないのを良いことに……、思った以上に腹黒い。
思わず胸中で毒づくのも無理からぬ話だ。しかし、他に良い方法がないことも事実。
渋々といった様子で嘆息しながら目線を反らし、独り言つように魔理沙は言った。
「別に、その本にこだわってるわけじゃあないんだよ。似たような本の心当たりは、あるからな」
「あら、だったら、そっちで借りようとしないのはどうして?」
本に秘密があるわけではなかったのは少し残念ではあるが、それとはまた別の疑問が興味を掻き立てる。
聞く話によると、湖の向こうの悪魔の館には、それこそ無尽蔵とも言える書物を有した図書館があるとか。
他にも、懇意にしている森の魔法使いも、珍しい本を沢山持っている、と当の魔理沙から聞いたことがあった。
おそらく、心当たりと言うのはそれらだろう。だとして、頼らない理由はいかなものか。
「あいつらは勘が良いからな。こんな本借りて行こうものなら、どうからかわれるか、判ったもんじゃない」
「む、誰と比べてるのかは知らないけれど、まるで私は勘が鈍いって言ってるように聞こえるわ」
「違うのか?」
「ぐぬぬ……」
以前、人里での付喪神の大量発生に際して、その原因がすぐ手元にあったにも関わらず、
指摘されるまで全く気付けなかった事実を鑑みるに、まるで否定出来ない小鈴は、口惜しそうに小さく唸る。
実際、魔理沙が何を言わんとしているのかも理解出来ていないのが現状だ。
鈍いと言われても仕方がないのかもしれない。尤も、素直に受け入れられるかどうかはまた別の話だが。
「それ以上の理由はないぜ。現に、お前は私がこの本を借りてったって、からかったりはしないだろう?」
「まぁ、確かにそうだけど。特にからかう理由なんて思い浮かばないし」
「結構。じゃあ、借りてくぜ。三日もすれば返せると思う」
言うなり、大事そうに本を鞄の中にしまうと、魔理沙はさっさと踵を返して出入り口へ向かい、箒に跨った。
はぐらかされてしまったようで、なんとも気持ちの悪い感を残しつつも、言うことは言っておかねばと、その背中に見送りと言う名の釘を刺す。
「返却の際は対価をお忘れなく、ね」
「ああ、判ってるよ。万が一のことがあれば担保は魔法の森の入り口にある古道具屋にでも持ってってくれ。
そこなら十分な補償が手に入るはずだ」
「その万が一がないのが一番良いんだけどね。家の人の目もあるんだから」
「肝に銘じておくよ。それじゃあ、ありがとな」
振り向かず、小さく手を挙げるだけで挨拶を済ませ、魔理沙は早々に帰路へと就いた。
来るときも去るときも忙しない様子が、相も変わらず嵐のような人だ、と嘆息するより他にない。
尤も、あの自由気儘な気質をほんの少しだけ羨ましく思わないでもないが。
「それにしても」
魔理沙の背中を見送った後、ふと独り言つ。
あの本を借りて、一体どうしようと言うのか。いや、やることと言えばひとつしかないのだが。
ただ、それがどうしてからかわれることへと繋がるのか、それがどうしても判らない。
希少であることを除けば、本当に普通のただの本。魔理沙が読んだところで、なんらおかしなことはないのだ。
なんともすっきりしない話である。胸につっかえたもやもやを吐き出すように、小さくひとつ、溜め息を零す。
後日、魔理沙が本の返却に来たとき、そのときこそ、全てを根掘り葉掘り尋ねてやろう。
胸の奥に静かな決心を抱きつつ、小鈴は眼鏡と本を手に取って、再び自分の世界に没頭するのであった。
二月も丁度折り返し、約束の三日目が訪れる。
店を開けた頃合いを見計らったかのように、約束通り、魔理沙が本の返却にやってきた。
ある程度の遅延は覚悟の上だっただけに、大変に予想外だったと言うのが正直なところである。
「よう、小鈴。担保は無事か?」
「ええ、勿論丁重に保管してあるわよ」
挨拶もそこそこに預けた物を心配する魔理沙に、とりあえず現物を取り出して見せ、安心させる。
ほっ、と胸を撫で下ろす魔理沙。その様子を見るだけで、よほど大事な物なのだと理解出来る。
希少価値は勿論、それを差し引いても、魔理沙にはなくてはならない物であるに違いない。
約束の期日通りに返却に現れたのが、そのなによりの証拠だ。
「本は返す。ありがとな。と言うわけで、ミニ八卦炉、返してくれ」
借りていた本を勘定台の上に置き、ミニ八卦炉を受け取ろうとする魔理沙。
しかし、その手を制して、小鈴が言う。
「何か忘れてませんか?」
「ん?」
「貸出料金。その代わりの担保だったんだから、払って貰わないと返せないでしょう」
「う……、それは、その、今は用意出来なくて……」
「じゃあお返し出来ません。ツケもなしですよ。踏み倒されたらかなわないし」
「なっ! それは困る! そいつがない生活なんて考えられないぜ!」
「三日間は生活出来てたじゃない」
「アリスの家に転がり込んでたからな」
「お気の毒に……」
どなたかは存じないが、件の森の魔法使いのことだろうか。なんにせよ、実に迷惑極まりない話だ。
頭の中で顔も知らない魔法使いに同情の意を表していたところ、勘定台の上に本とは別の何かが置かれたことに気付き、現実に引き戻される。
突然のことではあったが、先のミニ八卦炉のときとは違い、今度は一目で判る外観。
それは、細い植物の弦で丁寧に編み上げられた、お洒落なバスケットであった。
「これは?」
「対価だ」
「冗談でしょう。バスケットひとつでチャラにしようなんて、そうは問屋が卸しませんよ」
「そうだろうな、問屋なら。だが、ここは貸本屋だ。それにバスケットじゃない、ちょっと待ってろ」
「?」
いくらなんでも貸出料を物々交換で賄われたって困る。対価に見合わない品物であればなおのこと。
しかし、早とちりと言うか、説明不足と言うか、いずれにせよ魔理沙の意図は別にあるらしい。
バスケットの蓋を開け、中に入れてあったものを取り出すと、小鈴の目の前に差し出すように置いて見せた。
純白の皿の上に載った、柔らかく滑らかな印象を抱かせる、黒に近い茶色のブロック塊。
一見するとそうとしか言い表せない異質な様相だが、小鈴はその正体を知っていた。否、見たことがあった。
「これ……、チョコレートケーキ?」
「なんだ、知ってたのか」
「見たことあるだけ。店にある本は大体読んでるから」
それは即ち、魔理沙に貸し出した本も目を通したと言うこと。
目の前に置かれたチョコレートケーキも、その本に載っていたものと何ら変わらず、一目でそれと判る外見をしていた。
そう、魔理沙に貸した本は、洋菓子のレシピブックだったのである。
魔理沙も一応女の子であるし、お菓子を作りたくてこの本を借りて行くことについては、何もおかしなことはない。
ただ、そのくせ妙に言動が不審だったので、当時はなんとはなしに不思議に思っていた。
終ぞその理由は思い当たらなかったが、今、それを聞こうとは思わない。
今は何より、目の前のチョコレートケーキにこそ、全ての興味が惹かれているのだから。
「他では味わえない、特製のケーキだ。幻想郷で唯一無二。同じものは二つとない。
どうだ、幻想郷で唯一無二の書籍の対価としては申し分ないと太鼓判を押すぜ」
「自分で押してどうするのよ。それに、現物で立て替えられても困る、って……」
「だったら、食べてから決めてくれ」
「え?」
「もしも気に入ったのなら、満足いくまで作ってやる。チョコレートケーキだけじゃない。
ありとあらゆるケーキをだ。まぁ、材料さえ手に入れば、と言う制約はつくが」
「むう……、でも、いや、まぁ、そうまで、言うなら……」
渋々、と言う面持ではあるが、内心そのケーキが気になって気になって仕方がなかった。
ほのかな甘い香りは、今まで口にしたどんなお菓子とも違う、ふわふわとした不思議な感慨を抱かせる。
添えられていた銀のフォークを手に取って、角を小さく切り取り、口へと運んだ。
刹那、小鈴のどことなく緊張していた表情が、まるで内側から解きほぐされるように穏やかになった。
それもそのはず、彼女の口の中は、今までに味わったことのない上品な甘さで満たされていたのだから。
ケーキのしっとりとした食感と、濃厚でコクのある甘味が絶妙な調和を奏で、少女に至福の瞬間を垣間見せる。
美味しい。
ただひたすらに脳裏に浮かび上がるのはその言葉だけ。
夢中になってケーキを頬張るその姿は、年相応の女の子らしい愛らしさがあって、見ている魔理沙も口元を緩めた。
気付けば、皿の上はすっかり空になり、未知なる甘味を堪能した小鈴は、目を輝かせて魔理沙を見る。
「すごく美味しかったわ! これは、これはそう、まさに、現世における至宝だわ!」
「お、おう。そこまで喜ばれるとは思わなんだが、気に入ってくれたのなら良かったよ」
「気に入ったなんてもんじゃないわ! あの、その、も、もうないの?」
「悪いな、今回作った分はそれで看板だ」
「じゃあ、御代はもうこれでいいから、また作って下さい! お願い! ね!?」
その言葉を皮切りに、小鈴は眼鏡がずれ落ちるのも構わない勢いで立ち上がり、魔理沙の袖を掴んで肉迫する。
まさに、鬼気迫る勢いだ。さしもの魔理沙も気圧されるより他にない。
燦爛と輝かせた瞳で魔理沙の丸くなった目を覗き込みながら、小鈴は縋りつくように懇願した。
形の上では上目使いではあるものの、可愛いと言うよりは、ちょっと怖い。
「わ、判った、判ったからちょっと落ち付け。でも、いいのか? 言い出したのは私だが」
「良いのよそんな、些末なことだわ。私が店の売り上げちょろまかして妖魔本買い集めてるのは知ってるでしょう?
あ、今回の件も家の人には勿論内緒ね」
本当に悪びれない子だ、と逆に感心してしまう。少なくとも、長所とは言えはすまいが。
しかし、そうまでしてでも食べたいと思ってくれるのであれば、作り手冥利に尽きると言ったものだ。
追加のケーキの注文を承り、ミニ八卦炉を受け取ると、ふと思いついたように魔理沙が零す。
「そうだ、もし暇があれば、どうだ、今度一緒に作ってみるか?」
「えっ? 一緒に?」
「ああ。自分で作れるようになれば、いつでも食べられるだろ。授業料は、安くしとくぜ」
「それは面白そう。是非」
「決まりだな。さて、いつがいいかなぁ」
二人は笑顔で語り合う。女の子特有の甘味の話題。未だ見ぬお菓子に夢膨らませ、高鳴る胸が思いを馳せる。
舌で愉しむだけでなく、誰かと一緒に作ること、それもお菓子の愉しみ方。それがまさしく醍醐味だ。
薄暗い店内の一角で、しかし、談笑する二人の雰囲気はとても愉しげで、とても明るかった。
終わり
百合の世界へ
魔理沙を手玉に取るとは、小鈴ちゃんは天然小悪魔っ子ですねえ・・・
純粋にかわいいと思う
以下誤字
>そうれも当然だろう。小鈴が手にした算盤には、想定していた実に十倍もの値段が弾き出されていたのだから。
2人とも可愛かったです
しかし楽しめたけれど勘が悪いから、概要がなんのことなのかわからなかったぜ……。
魔理沙もこういった趣向には興味を持ったりするんですね。
今度は霊夢と小鈴のお話を書いてほしいですね。
それにしても小鈴は本当に可愛らしいです。
なんとも甘い娘達だことで。
今一小鈴のキャラが把握しきれてない某には、これでキャラが固定されてしまいそうなぐらいかわいい。
というアリスの弁は物理的な意味なのか、精神的な意味なのかどっちだろう
2月ということで甘い甘い
しかし、渡す相手は小鈴ちゃん並に鈍い気がするので、
果たして分かってもらえたのだろうか?
気が付いてもらえず、落ち込む魔理沙を戸惑いながらも元気づける小鈴まで幻視した
しかし、魔理沙はどうやってチョコレートを手に入れたんだろう……?
キャラがいい! 二人とも非常にキャラが立っていますね。
解答を拝見しました。文中から推理できるレベルで、なるほどと思いました。