遂にこの日がやってきた。
私達は、今日の為に血の滲むような特訓を続けてきた。
何度もやめようと思った、心が折れそうになった時もあった。だが、私達は負けなかった。
臥薪嘗胆。かつて私達が受けた屈辱。それを晴らすためだけにただただ耐えてきた。
今日こそその努力が報われる日。一年待った勝負の時だ。思わず拳にグッと力が入る。
「……遅いっ!」
そして、その拳を机に思いっきり叩き付ける。
衝撃で湯飲みが床に落っこちて割れた。やっべ、これ経費で落ちるかな。
「うぬぬ、この大事な日だというのに、小町は今日も遅刻ですか!」
約束の時間はとっくに過ぎているというのに、我が部下、小野塚小町は未だ姿を現さない。
重役出勤、定時帰宅の休憩の暇つぶしに仕事をするのが常である小町の遅刻なんて珍しいことではありませんが、まさか今日という日まで。
遺伝子に組み込まれてるんじゃないかってぐらいの筋金入りのサボリ魔。一体いつになれば改善してくれるのか、と溜息をついたその時。
「すいません! 遅刻しましたぁー!」
扉を蹴破らんばかりの勢いで小町が転がり込んでくる。約三十分の遅刻。これでも小町にしては早いほう。
「遅刻なのは見れば分かります! まったく、毎日毎日懲りもせず……」
「はは、四季様もよくそんな説教のネタが続くもんですね」
「……ふん。で、今回は何が原因なんですか? 理由を言いなさい理由を」
小町が部下になってから何百回、何千回と繰り返されたこのやりとり。
以前の小町ならばここで、『火事で道が通行止めだった』、『急にベビーシッターを頼まれた』、『チェーンソーでギターを彫っていた』等と、下手糞な言い訳をして私を激怒させていたもの。
だが、今の彼女は違う。私の問いに対し、小町は迷うことなくスラスラと言葉を紡ぎだした。
「いやぁ、目覚ましをいつの間にか止めちゃってたみたいでして、起きたときはもう時間ギリギリ。急げばまだ間に合うかなぁーって思ったんですけど、走るのメンド臭ぇし能力使うのもかったるいんで、途中コンビニでヤンガン立ち読みしつつゆったり歩いてきちゃいました! サーセン、反省はあんましてないっス!」
ヘラヘラと笑みを浮かべながら遅刻の理由を述べる小町。
全く悪びれる様子はなく、本人の言う通りちっとも反省していないのが見て取れます。
完全に仕事を舐め腐った発言。ここがセガならその場で隔離部屋送りにされるレベルです。
「……ふむ」
しかし、私は小町の言葉に怒りを感じませんでした。
むしろ、穢れのない瞳で真っ直ぐ私を見つめる小町に感心すら覚えていました。
「……その言葉。嘘はありませんね?」
「もっちろんですよー! 反省してたらこんな毎日遅刻しませんて!」
そのデカイ胸を張ってニカッと笑う小町。
やはりそこに嘘偽りの雰囲気はない。
それを聞いた私は目を瞑り、噛み締めるように何度も何度も頷く。
「……小町」
「はい、なんです?」
「よくぞ、よくぞここまで成長してくれました」
「……はい」
知らない者が見たら気が狂ったか、宇宙毒電波でも受信してるんじゃないかと思われそうな会話。
ですが、これでいいのです。嘘をつかず、たとえ心に醜い考えがあっても一切包み隠さず言葉にする。
一年前のあの日以来、私と小町はそれの特訓に明け暮れていました。
傷つくことを承知で本音と本音を全力でぶつけ合う。それは並大抵の苦労ではありませんでした。
「今でこそ笑っていられますけど、最初はきつかったですね。お互いに」
「そうですね。開始早々、小町が私の事をチビ助と呼びはじめた時は本気で殺意を覚えたものです」
「だって相手に思ってることを正直に言えって言ったから……。四季様だってあたいをこまちちだとか乳牛だとかチームラヴ●スだとか好き放題呼んでたじゃないっすか。四季様がおっぱいしか見てないって事がよく分かりましたよ」
だって小町と並んで立ったら、私の背丈じゃおっぱいしか見えないんですよ。
「まあ、そんなトラブルがあったのも今は昔……」
「そうですね。今や二人の間に壁はなく、何でもかんでも、言わなくても良いことまで言い合える仲になりました」
「体重やスリーサイズ、預金残高にオギノ式の周期まで、自分の次に自分を知っている間柄だと言えましょう」
「残高聞いたときは思わず噴出しちゃってごめんなさい」
嘘をつかず、ありのままに心を晒すといった制約の元での生活。
自分の欠点をズバズバと指摘され、思わず泣いちゃったこともありました。
正直に金ないから家賃が払えないと言い、クソ大家からアパートを追い出された日もありました。
その他もろもろ、私達がこの一年で失ったものは多い。しかしそれも今日で報われるハズ。
「では小町。準備ができしだい出発しますよ」
「アイアイサー! あたい等の力で奴をきゃん言わせたりましょう!」
裁判所の入り口に『本日休業』の札をかけ、私達は意気揚々と歩き出しました。
目指すは地底の奥深く。旧地獄市街の中心にそびえる嫌味なくらいデカイ屋敷。
にっくきアイツの薄ら笑いを思い浮かべ、私は空に向かって吼えた。
「打倒、古明地さとりっ! あの日受けた屈辱、今日こそ晴らしてみせますっ!!!」
◇◆◇
今を遡ることちょうど一年前。
私と小町は上層部からの命を受け、旧地獄の視察へ赴いていました。
不要となって切り捨てた土地ですが、一応書類上はまだ是非曲直庁の所有になっているんです。
この辺がお役所仕事の適当さを感じさせますね。マスコミに知れたら大変です。
実際の管理は民間委託業者に丸投げ、それでも何かあったら責任問題に発展するって話で、年に一度視察に行く必要があるのとのことです。
昨年までは本部の方で専任チームが組まれていたのですが、今年になって蓮子だかテンコーだかいう国民の生活なんて微塵も考えて無さそうな議員の行なった事業仕分けにより、予算が削減されチームは解散。距離的に一番近い幻想郷支部勤務である我々に白羽の矢が立ちました。
「嫌われ妖怪達の住む場所って聞いてましたけど、わりと賑やかな場所ですね」
片道500円の釣瓶落としゴンドラで降りた先に広がる繁華街を、地図を片手に小町と一緒に歩く。
「あーいい匂い。この辺は飲食店が集中してるみたいっすね。帰りになんかここで食いましょうよ!」
「……」
「あの甘味処とか良さそうですねー。えっとなになに、黒谷あんみつ……白玉が蜘蛛の卵の如くたっぷりと入った大人気メニュー。うわ食べてー、ほら四季様見てくださいよー」
「……小町」
「星熊の鬼おろしで作った特製しもつかれ……? なんじゃありゃ、ゲロか? ……え? あ、何ですか四季様?」
落ち着きなくキョロキョロする小町が、ようやく私の方に顔を向ける。
「……私達が何の為にここに来たのか分かっているのですか?」
「え? いや、灼熱地獄跡を管理している地霊殿って場所に視察に……」
「分かっているのならっ! もっとシャンとなさい! 観光ではないんですよ、今日はっ!!!」
私の大声が周囲の視線を集める。ええい恥ずかしい。
全く小町ときたら。私達は是非曲直庁の代表として来ているのですよ。いわば看板を背負ってるのと同じです。
私達の一挙一動がそのまま全体の評価に繋がる事を自覚してほしいものです。
始めて来た土地で浮かれるのも分かります。
しかし、小町はあまりに仕事とプライベートとの区別が出来てなさ過ぎる。
普段の仕事ならともかく、今日みたいな誰かと会う日ぐらいは形だけでもキチンと振舞うべきでしょう。社会人の基本ですよ?
「四季様、ここじゃないですか? 地霊殿って」
繁華街を抜け、街の中心部に向かう私達の前に大きなお屋敷が現れました。
ステンドグラスのはめられた窓。庭をうろつく大量の犬猫。グリコポーズの謎の彫像。手元の資料と一致します。小町の言う通り、ここが地霊殿で間違い無いでしょう。
「こりゃまた立派なお屋敷で。大きさだけで見れば悪魔の館に匹敵しますね。四季様の部屋なら1024室ぐらい入りそうです」
「私の部屋を東京ドームみたいな単位で扱うのはやめなさい。……しかし、これは」
「……四季様も気づきましたか」
私と小町は思わず顔をしかめる。辺りに漂う臭い。これは死体が焼かれる臭いです。
妖怪の住処である以上、人間の死体があっても変ではありませんが、やはり気分がいいものではありません。なるべく口で呼吸するように意識しながら、私達は地霊殿の門をくぐりました。
「すいませーん、是非曲直庁の方から来た者ですけどー」
「方からではありません。是非曲直庁から来ました」
屋敷の中に灯りは最小限しかなく、ステンドグラスから差し込む鮮やかな光がぼんやりと床を照らしていました。幻想的、と言えば聞こえはいいですが、やはり不気味さは拭えません。
「……視察の方ですね。お待ちしておりました」
声と共に、暗がりの向こうから滲み出るように人影が浮き上がる。
現れたのは華奢、というよりは少々弱弱しすぎるラインの少女。彼女がここの責任者でしょうか?
「初めまして。私がここ地霊殿の主、古明地さとりです」
さとり、と名乗った少女が静かに微笑む。
「遠いところからわざわざご苦労様です。どうぞこちらへ」
導かれるがままに私達は客間に通されました。
薄暗さは相変わらず。目を凝らすと、テーブルの上に紅茶ポットとクッキーが置かれているのが見えました。
「お口に合うか分かりませんが……」
「あ、いえ、どうぞお構いなく」
クッキーは色とりどりでどれも美味しそうです。普段食べてる百均のそれとは大違い。
しかし、どうにも食指が伸びない。訪問先でガッつきたくないというのもありますが……。
「……『死臭が強すぎて食欲が湧かない』ですか。すいませんね、私のペットに死体集めが好きな子がいるもので」
「ッ!?」
その言葉を聞いた瞬間、全身から血の気が失せるような感覚に襲われる。
自分の思い浮かべた言葉が、目の前の相手の口から放たれた。まるで私の心を覗いたみたいに。馬鹿な、それじゃまるで……。
「驚かせてしまいましたか? 私はさとり。その名の通り、心を読むことが出来るのですよ」
私は我が耳を疑った。
妖怪サトリ。人の心を読みとる能力を持つ、一度対処法を考え出したら夜も眠れない恐ろしい妖怪です。その悪名高きサトリが、この少女だって!?
くそ、どうなっている! 本庁からの資料にはそんなこと少しも書いてなかったですよ!? もちっと真面目に作れよぉ!
「大丈夫ですよ。別に取って食べたりしませんから。……多少、失礼な言動はしてしまうかもしれませんが」
見ると、先ほどまで飄々としていた小町も額に冷や汗を浮かべている。
流石の小町も、自分の心を覗かれることには恐怖を感じている様です。
……どうしましょう。こういう場合は心を無にすればいいのでしょうか。ところで無ってどうやるんですか? ……無、無、夢、霧、むむむ。何がむむむだ!。
ええい、何を取り乱している四季映姫!
何も古明地さんと戦うわけじゃあるまいし、そこまで警戒する必要ないじゃないですか!
そうです! 今日はお仕事、ビジネスで来てるんです! 普段通りにしていれば何も問題ないでしょう!
呼吸を整え、相手をしっかりと見つめる。さあ、余計な事は考えずに早いとこ終わらせるとしましょう。
「……ではさとりさん。早速視察に移りたいのですが」
「ええ、よろしいですよ。して、今回は一体何を?」
「はい。まずは市街環境について、それに灼熱地獄の管理状況、それから……」
「市街環境ですか。四季さん、ここに来るまで街を見てきたと思いますが……どうでした?」
言葉を遮り、そんなことを聞いてくるさとり。どうでした、と聞かれても。
……正直、地底の雰囲気って陰気であまり好きじゃないんですが、それをそのまま言うわけにはいかないですよね。
ここは個人的な意見よりも客観的な感想を述べましょう。報告書にも書かなきゃいけませんし。
「……そうですね。街全体に活気が溢れています。見たところ交通等のインフラも整備されているようですし、非常にレベルの高い都市ではないかと」
「『住人達の私達を見る目が気色悪い。まるでジャングル奥地の集落か、秋田県北秋田郡上小阿仁村にでも来たようだ』、ですか。すいませんね、地底住人の大半は地上を追われた妖怪なので。上の世界にあまりいい感情を持ってないんですよ」
「っ!!?」
まただ、また読まれた!
ええ、なんでわざわざ言うまいと思ってた事を公開しちゃうの!?
「それと、あとは灼熱地獄の管理についてでしたね」
「え? え、ええ……」
動揺している私を意に介さず、平然とした顔で話を続けるさとり。
……どういうつもりなんでしょう? わざわざ私の心を公開する理由が見当たりません。
サトリってのは、読んだ心をそのまま口に出してしまうものなのでしょうか。
「燃料調達には火車の火焔猫 燐。温度調節には地獄鴉の霊烏路 空という二匹のペットに任せてあります」
「ペット? あんたは動物を使っているのかい?」
「ええ、ここ地霊殿には人の言葉が扱えない動物が、私の能力に惹かれて大勢集まっているのですよ」
「んで、仕事はペットに任せて、その世話はあんたがやるってことかい。大変そうだね、ここって随分多くの動物がいるみたいだしさ」
ふーん、と何か納得したように呟く小町。
次の瞬間、私は見た。さとりの体に巻きつく瞳が小町を見てキラリと光るのを。
「『動物を使役してるなんて、まるでどこぞのスキマだな。コイツもあれみたいにグータラなんじゃねーの?』、ですか」
「! きゃん!?」
「……貴方達からすれば楽そうに見えるかもしれませんね。これでも割と忙しく過ごしているつもりなんですが」
小町は丘に上げられたヘラブナのように口をパクパクとさせる。
次は小町がやられました! 何故ですか、こんなことしたら、まともに仕事にならないでしょう!
「……宜しければ、実際に現場をお見せしましょうか?」
度重なる目的の分からない読心攻撃で心はもうグラグラ。
それでも私は、持ち前の気合と根性でなんとか正気を保ちさとりの問いかけに応える。
「え、ええ、お願いします。 ……ほ、ほら、行きますよ小町!」
「わ、分かりました!」
「『行きたくないな、もう帰りたい……』、『んだよ四季様断れよ! もう家帰って幻少やりてえよ!』、ですか。では、現場は止めにしましょうか」
「……っ!!」
心を無に、普段通りに、なんて心がけは何処へやら。
次々と暴かれる私の心。もはや何が本音で何が建前なのか分からなくなってきました。
「……私のこと、嫌な奴だなって思いました?」
「いっ、いえ! まさかそんな事は……!」
「『ぶん殴ってやりたい』、ですか。いけませんね。すぐに暴力に訴えるのは、まともな社会人のする事ではありませんよ」
「ぐう……」
「ちょっとあんた! いい加減にしないか! 口が悪すぎるぞ!」
「『この●●●●女、これ以上言ったらてめえの●●●を●●●●……』、ですか。あらあら、口が悪いのはどっちかしらね、お里が知れるわ。いえ、心が悪いと言ったほうがいいかしら?」
「くっ……!」
「『おしっこ漏れそう』。トイレならそこの突き当りを右に行った所ですよ」
「い、言ってない! 思ってないっ! こ、小町っ!?」
「あ、あたいじゃないですよ!!」
怒り、羞恥、恐怖。様々な感情が私の中で入り混じる。
そんな極限状態の私達にトドメを刺すかのように、さとりは静かに口を開く。
「やれやれ。あなた達は言葉と心がまるで違いますね……」
「い、いやだって……」
「四季さん、小野塚さん。……あなた達は、嘘つきですね」
「う、うそつきっ!?」
その一言で、私の体に電流が走る。
嘘つき。それは是非曲直庁に勤める者に対しての最大の侮辱。
死者を裁く公平な立場でありながら、その中身は地獄に堕ちた魂と変わらないという、閻魔としての全人格を否定する言葉。それが『嘘つき』。
ただでさえギリギリだった私の精神は、その一言を喰らい遂に限界を迎えた。
意識が朦朧とし、全身から力が抜け、糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちる。
「四季様っ!? くそ、ちょっと席を外すよ!」
「あら、我慢しすぎで気絶しちゃいましたか? ほうら、やっぱり漏れそうだったんですね」
「……何とでも言え! あんた、いつか覚えておけよ! ほら四季様、あたいが運びますからしっかり!」
「お疲れ様でした、ふふ」
最後に私の目に映ったもの。
それは笑みを浮かべるさとりの顔。
来客用の作られた笑顔ではなく、私達の失態を心底嬉しそうに思う歪んだ笑い。
……ああ、そうか。こいつは最初からそれが目的で……。
そこまで考えた所で、小町に抱かれたまま私は意識を失った……。
◇◆◇
「ああ、もうっ! 思い出すだけでイライラしますっ!」
片道650円の釣瓶落としゴンドラ(値上げしやがった)を降りた先に広がる繁華街。
そこにある甘味処で、山盛りの黒谷あんみつを頬張りながら叫ぶ。
「四季様、感情が高ぶりすぎてプッツンしちゃいましたもんね。憤死ってやつですか? 歴史小説でよく出てきますけど、実際に見たのは初めてですよ」
「死、言うな! 死んでないでしょうが!」
小町が口の周りに餡子を付けながら笑う。
一年前の私なら、仕事中にこんな場所に寄るなんて決してしなかったでしょう。
ですが、今の私は最も自分に正直に生きる者。別に業務に支障も出ないし、遠慮なく食べちゃいます。
実は前々から食べたかったですしね。んん~、甘い。脳に糖分が駆け巡る!
「全く、私が一体何をしたって言うんですか! いくら地上の者が嫌いだからと言っても、社会人としてのマナーすら無いんですか、地底には!」
「嘘つき呼ばわりは心外でしたね。あの程度の建前、社交辞令の範囲だと思うんですが。あ、社交辞令ってなんかアニメの登場人物みたいですよね。紗侯寺 麗みたいな」
「普通だったら没にするレベルのギャグをそんな堂々と。調子は上々ですね、小町」
思ったことをすぐ口に出す、バカが付くほどの正直っぷり。完璧すぎます。
「実はあたい、あの後、色々と調べたんですよ。なんであそこまでさとりが私達を嫌っていたのか」
「ほう、珍しい。普段もそのぐらい働けばいいんですが」
「はは、コケにされて黙ってるほど大人しい性格じゃないんで。で、ですね。実はさとりも、視察が始まった当初は第三の目での嫌がらせもせずに、ごく普通に対応していたらしいんですよ」
「ふむ……」
「しかしまあ、税金でメシを食ってる人種のサガと言いますか……。ほら、以前の視察チームって、本庁勤務のエリート様じゃないですか。特権意識があるんでしょうね。民間のさとり相手に、段々と横柄な態度を取るようになったってみたいでして」
「それで、耐えかねたさとりがあんな嫌がらせをするようになったと?」
「みたいです。それからずっとあの『嘘つき』攻撃は続いていたみたいで、本庁でも視察チームは貧乏クジ扱いだったとか」
「ふん、それで、予算削減を機に体良く貧乏クジを私達に押し付けたって訳ですか」
「まーさとりの気持ちは分からんでもないですがね。現場の事をなんも知らんお上の連中が、偉っそうに口出ししてくる事ほどウザいのはないですし」
「ああ、仕事が終わって定時帰宅する私より、遅刻と昼寝が原因で残業する小町の方が評価されたりとかですね」
……理由は分かりました。
ですが、だからといってさとりを許せるか、と聞かれれば答えはノーです。
事情があったところで私達の受けた屈辱が消える訳ではありません。
罪には罰を。目には目を。歯には二羽鶏がいる。しっかりと、その報いを受けてもらいますよ!
「さて、そろそろ行きますか」
「うっしゃあ! みなぎってきましたよぉー!」
「すいませーん、お会計お願いしまーす。あ、領収書下さい。はい、是非曲直庁で」
やる気充分、勇気凛々。鼻息荒く私達は地霊殿に向かって歩き出しました。
前置きが長かったですね。そう、今日は待ちに待った年に一度の旧地獄視察の日。
今こそさとりに目に物見せるとき! 地霊殿よ、私は帰ってきたぁ!
小町が辺りを威嚇しながら歩いているせいか、住人達の冷たい目線も今日は控えめです。
うっかり調子に乗りすぎてDQNにガン飛ばしてしまい危うく絡まれるところでしたが、そこは小町の能力で距離をとり華麗にスルー。
何あの女、超怖い。小町より背がデカイし、角生えてるし。
そんなこんなで繁華街を抜け、遂に私達は忌まわしき記憶と共にある地霊殿の前にまでやってきました。
不気味に輝くステンドグラス。高所から私達を観察する動物達。グリコ。相変わらずサイケデリックな建物です。
「準備は良いですか? 小町」
「いつでも構いませんよ」
お互いに顔を見合わせ静かに頷く。そして、二人で勢いよく玄関の扉を開け放つ。
「是非曲直庁の者です! 先日連絡した通り、視察に参りました! 責任者の方をお願いします!」
玄関扉が開く音と、それに続くホール全体に響く挨拶。驚いた犬や猫がチョロチョロと暗闇の奥に消えていく。
それらとすれ違うかの様に、ゆっくりと闇から浮き上がる小さな人影。
「……お待ちしておりました。四季さん、小野塚さん」
さっき起きたかのような無造作ヘア。地底の流行を疑いたくなる園児の様な服。
地霊殿の主、古明地さとりは、一年前のあの日あの時と全く同じ姿で私達の前に現れました。
一見、物腰の柔らかそうに見える態度まであの時のまま。まるでリプレイファイルでも再生してるかのよう。
だが、ここから先はそうは行かない。二度と敗北は繰り返さない。
屈辱の記憶を勝利で塗り替えてみせる。私達はその為に来たのだから。
「お久しぶりです、古明地さん」
最低限の言葉に留めた私の挨拶。
言い終わった直後、さとりの第三の目が私を睨みつけた。
それを察した私、考えるよりも先に口から言葉が出ます。
「貴女は次に "『出たな、この薄紫モヤシめ』、ですか" と言うっ!!!」
「……『出たな、この薄紫モヤシめ』、ですか……はっ!?」
さとりを指差し、ビシッと言い放つ。
自らの台詞を私に取られ、唖然とした表情を浮かべるさとり。何が起きたのか理解できていないようです。
まずは先制パンチが決まりました、イニシアチブは取りましたね。
「……面白い冗談ですね。貴女はもっと堅物なイメージがあったのですが」
さとりはすぐに元の眠たそうな表情に戻ります。ふん、そのスカした面がいつまで続くか楽しみですよ。
「立ち話もなんですから、こちらへどうぞ。お疲れでしょう、視察の前にゆっくりと寛いでくださいな」
前と同じように、私達はさとりに客間へ通されました。
さとりに心を読まれ気を失ったあの部屋です。嫌な記憶です。
これも嫌がらせの一貫かもしれません。単に客間がここしか無いだけかもしれませんが。
「お疲れでしょう。何か飲み物をお持ちしましょうか? お菓子もありますよ」
柔らかいソファーに座った私達を、さとりがぐるりと見回す。
ここでお菓子の話とは……大恥かいた過去のトラウマを穿り返す気ですね。ですが、その程度で怯む私達ではありませんよ!
「いやぁー、遠慮しとくよ。もうさっき街であんみつ食べてきちゃったし、何よりここって死体と動物の臭いが酷くて食べる気しないんスよねぇー! ……ファブリーズぶち撒けていい?」
「……!?」
小町がソファーを揺らしながら応える。
その言葉に、再びさとりが驚きの表情を浮かべる。
彼女は今まさに、第三の目で心を読もうとしていた所の様です。
ここでようやく何かおかしいと感じたのか、さとりが私達に警戒心を持った目を向ける。
ふふん、私達が一年かけて特訓した古明地さとりの攻略法。今のところは上手くいっているようです。
よく分からない方の為に説明しますと、そもそもさとりの読心術は何が恐ろしかったのか、という話になります。
人も妖怪も誰しも、心の中に知られたくない思いというものがあります。
それは、過去の過ちだったり、怒りや憎しみといった感情だったり様々です。
さとりはそれを読み公開してしまう。トラウマを穿られる精神的ダメージ、言うまでもありませんね。それが周りに聞かれたりでもしたら更に傷口は広がります。
そこで私達は考えました。
どうせ読まれるのなら、初めから公開してしまおう、と。全てを正直に言ってしまおうと。
閻魔といえど聖人ではありません。時には嘘も付きます。醜い感情を覚える時もあります。仕方のない事なんです。
それらを普段隠しているから、いざ心が読まれた時に恥に感じてしまうのです。
だったら、それらを恥と思わなくすればいい。普段から包み隠さず言ってしまえばいい。
その考えにたどり着いた私達は、一年に及ぶ特訓により、本音をさらけ出しても恥と感じないまでに自らを鍛え上げました。
さあ、いくらでも心を読むがいいです! 最早、私達の心に恥も弱みも何も無い! 正直に全てを見せ付ける、心のM字開脚で相手になりましょう!
「……しばらく見ない間に、随分と乱暴なキャラになりましたね」
「気分を害したらすいません。何しろ、態度が大きいのは公務員の職業病みたいなものですので」
「! さては、色々と調べてきましたね?」
「ああ調べたよ、あんたが過去にやってきた事をな。お行儀よく振舞ってたらあんたの相手は出来ないって事をよーっく理解したさ」
さとりの質問に正直に答えます。
失礼極まりない言動ですが、下手に言葉を濁したり迷ったりしたら、その心の隙を突かれるのです。容赦しません。
ちなみに、一応ここには仕事で来てるので、弾幕勝負はご法度ってことになってます。暗黙で。OK?
「……なるほど、そういう事ですか。私に心を読まれても平気な様に、と」
どうやらさとりも、私達の狙いに気づいたようです。
読心術とロリコン殺しビームしか能のない女だと思っていましたが、なかなかの洞察力。
「よく考えたものです、賞賛に値しますよ。すごいすごい」
「ふん、そんな薄っぺらい褒め方しても、こっちからは本音しか出ませんよ。変に体裁を気にして社交辞令言って馬鹿みるのはもう御免なのですよ」
「いえいえ、私は本当に感心しているのですよ。今まで多くの人妖と逢ってきましたが、このように真正面から当たってきたのは貴方達が初めてなので」
さとりが妖しく笑う。
この手の輩が笑みを浮かべるのは何か悪い事をを企んでいる時、世界の常識です。こやつめ、一体何を……。
「素晴らしいです。貴女達にがぜん興味が湧いてきました。もっと貴女達とお近づきになりたいのですが……よろしいですか?」
「あー? なんだ気色悪ぃな。あんたレズビアンか? あたいにその趣味は少ししかないぞ」
「今回百合タグ付けてないんですから、そういう行為は困りますね。アレルギー持ちの方が発狂したらどう責任取ってくれるんです」
「そういう意味ではありませんよ。……本当に容赦なく本音をぶち撒けるんですね」
ではどういう意味なのか。どうせ碌なこっちゃないんでしょうけれども。
「深い意味などありませんよ。ただ、私と友達になって欲しいのです」
「今まで散々嫌がらせした奴の言う台詞か」
「ですから、貴女達は特別です」
「嫌です。私は貴女みたいな根性曲がりと仲良くなんかなりたくありません」
「こりゃまた手厳しい……」
もう明らかに怪しいです。
私達は頭の悪い少年漫画の主人公とは違いますから、絶対にさとりを信用したりしませんが、相手の狙いが分からないことにはどうにもこうにも。
出来ることといえば、読心に対抗する為に本音で言葉を返すぐらいなものです。
「友達なら、地上の人形遣いに頼んだらどうです? あの人は年中無休で友達募集中ですよ」
「ま、今は永遠亭で入院してるけどな」
「ふむ、それはまたどうして?」
「さあ? コケて頭でも打ったか、流れ弾幕に被弾したか……毎回理由考えるの大変なんですよね」
「……それは、誰の本音ですか?」
はて、言われてみれば。
急に頭に浮かんだから、とりあえず口に出してみましたが。入院の理由なんて私が考えるものじゃないですし……? うーむ?
「ともかく、私達は馴れ合う気なんてありませんから」
「……まあ、そう言わずに」
拒否する我々を気にもせず、さとりはにこやかな笑顔でコミュニケーションを試みる。
あまりのしつこさに、いい加減うんざりしてきたその時。
「……まずは、お名前を教えていただきますか?」
「は?」
「名前ですよ名前、フルネームで。仲良くなる為には、お互いの自己紹介が基本でしょ?」
名前なんて一年前から知っている筈なのに、何を言ってるんだこの女。
そんな疑問が頭を過ぎりましたが、すぐに振り払います。
頭の中だけで考えては駄目。考える前に口に出す、私達はずっとこの訓練をしてきたのです。
少しでも頭の中に残せば、その隙をさとりに突かれてしまいます。
「……四季映姫」
「小野塚小町だ」
「そうですか、まあ知ってましたけど」
怪しむ私達を無視して、さとりは言葉を続ける。
「では次。身長と体重をお願いします」
「……133cm、30kg」
「173の53だよ」
「あらあら四季さん、小学四年生の平均と一緒じゃないですか。もっと牛乳を飲んだほうがいいんじゃないですか?」
「牛乳は嫌いです」
身長・体重なんて特訓を始めて最初に公開したお互いのプロフィール。
いくら嘲笑されてた所で、今更少しも恥に思いませんね。
「胸のサイズは?」
「66のA」
「90のF。文句あっか。たまに四季様が揉まして、って言ってくるぞ」
「正直者なので」
「そこまで聞いてませんが」
次々と繰り出されるさとりの質問。私達はそれに竦むことなく堂々と答えていきます。
しかし、このこっちが口を挟む暇も無いほどのこの怒涛の質問責め。このままでは流れの主導権はさとりに移ってしまいます。
悪い予感がします。小町も私と同じ事を感じたのか、そっと耳打ちをしてくる。
「四季様……これって」
「ええ、向こうも気づいたようですね。この戦法の弱点を」
「先月の手取りは?」
「十一万八千円です」
「十二万二千円(寮費含む)だ。残業代で随分稼いだからな」
我々が編みだした、全てを正直に話す対さとり用の戦法。実はこれには弱点があるのです。
それは、質問されれば必ず答えなければならない、という点。
身長体重等の簡単な質問は、例え答えたくないという意思があっても、質問された時点で頭の中に答えが浮かんでしまっているのです。
浮かんでしまった以上は正直に口に出さなければならない。それを立て続けに行えば、まさにずっとさとりのターン! 私達は後手に回るしかなくなってしまうのです。
そう、私達の戦法は読心術をガードする為のもの、いわば盾。
いくら特訓により恥を捨てたとは言え、流石に限度があります。
度重なる攻撃に心はじわじわと傷ついていき、いずれは敗北に追いやられるでしょう。
この短時間でそれに気づくとは、大した奴だ。さとりェ……。
「初キスの年齢は?」
「物心付いた時からバンバンと!」
「……ぬいぐるみはカウントしませんよ」
「じゃあまだッ!」
立て続けに、しかも嫌らしい質問をぶつけてくるさとり。
その顔には、去年見た勝ち誇った笑いが浮かんでいます。既に勝利を確信しているのでしょうか。
確かに、この調子で行けばいずれは押し切られてしまいます。
ですが、ここで黙って負けを待つほど私達は愚かではありません。
この程度の展開、読めないとでも思いましたか? 私達は一年間も打倒さとりを掲げてきたのですよ。用意したのが盾だけだと思ったら大間違いです。見せてあげましょう、悪を打ち破る矛を!!
「えーと、それでは次は……」
質問のネタが尽きたのか、さとりが一瞬言葉を詰まらせる。
その一瞬を見計らい、小町に目配せをして合図を送る。今こそ、イニシアチブを奪取するチャァーンス!
「ちょっと待ちな! もう質問は充分だろう!」
客間に響く小町の大声。
それに驚いたのか、窓の外にいたカラスがギャ-ギャー喚きながら飛び去っていく。どんなホラーハウスだここは。
「むむっ?」
「質問なら後で好きなだけ答えてやるよ。でも、今日のメインはあくまで視察なもんでね、そっちを優先させてもらえるかい?」
「……分かりました」
流石は小町、江戸っ子気質の気持ちいい威圧っぷり。押されるさとりに私も更に続きます。
「では、雑談はここまでにして、仕事に入りましょうか。よろしいですね?」
「……はい」
主導権、再び取ったり!
ふん、あのまま構わず質問責めを続けていれば、あるいは私達を倒せたかもしれないというのに。
自ら勝利の二文字を手放したその愚かさ、後で泣きじゃくりながら後悔するがいいわ!
にやり、という効果音が出そうな笑みを浮かべ、私は懐に手を入れる。
「さて、実際に現場を見て回る前に、色々と古明地さんにお聞きしたい事があります」
「はあ……」
「なに、大したことではありませんよ。ちょっとしたアンケート感覚で答えていただければ」
「……構いませんが」
「ただし……」
懐に入れた手を思い切り引き抜き。さとりの方へまっすぐ向けた。
その手に握られるは最強の矛。綺麗に八角形に象られたデザイン。汚れ一つない磨かれた表面。『備品』と印の押された裏面。
これぞ私達の用意した対さとり用の究極兵器!
「この……浄玻璃の鏡の前でっ!」
浄玻璃の鏡。それは懺悔の棒、裁判官バッチ、タイムカードと並ぶ閻魔七つ道具の一つ。
死した魂を裁く際に使われるこの鏡の前では隠し事は一切できない。そこに映されるのは真実のみ。
ぶっちゃけ、この鏡一つあれば閻魔なんて誰でも出来るんじゃねえかと思ったりしますが、私が職を失うのは嫌なのでそれは黙っておきます。
「そ、その鏡は……!?」
さとりもその存在は知っていたっようで、鏡を見たとたん動揺し始め、死にそうだった顔色が死体みたいな色へ変化していく。なんだこの死体は、まだ生きてるじゃないか!
「分かりますか? 嘘を見抜けるのは、貴女だけじゃないんですよ」
「くっ……!」
「何、そんなに怯える事はありませんよ。古明地さんが全て正直に答えてくれればそれで済む話ですから」
「んじゃ、早速行ってみるかい。まずはそうだな……あたい達も聞かれた事だし、あんたの身長、体重、胸のサイズを教えてくれ」
「なっ!? なんでそんな事!?」
お得意のクールフェイスはどこへやら。
さっき自分がしたのと同じ質問をされ、わたわたと慌てふためくさとり。
さとりが動揺するのも無理はありません。
浄玻璃の鏡は全てを見通す地獄・脅威のメカニズム。
質問に対し正直に話せばそれでよし、もし嘘を付いたなら直ちに鏡は察知し、フル液晶ハイビジョンで相手の過去を映し出し嘘を見破ってくるのです。
自ら告白するか、それともプライバシーを公開されるかの二択。個人情報保護法を余裕で無視するリーサルウェポンです。
「ちょ、ちょっと待ってください! こんなこと聞く必要あるんですか!?」
「仕事ですので」
「で、でも、胸のサイズなんか仕事に何の意味が……!?」
「お上から許可は取ってあるよ。散々酷い目に合わされてきたからかねぇ。みんな、あんたの個人情報に興味津々だったよ」
「そ、そんな……」
死刑宣告でもされたかのような絶望の表情。
鏡は全てお見通し。どう足掻こうが最後には真実が晒されてしまう。
もしかしたら、一年前の私達もこんな顔をしていたのかもしれませんね。なんというマヌケ面。
「さ、早く答えてください」
「うう……」
「黙秘の場合は、あたいが手動で鏡を動かすよ? そしたら、一番最近で胸のサイズを測った様子がここに映っちゃうんだが、それでもいいかね?」
「で、でも……」
「……何をそんなに困った顔してんだい。あんたが今までやってきたのと同じ事じゃないか」
いくらゴネてみた所で無駄だというのに。
浄玻璃の鏡を出した時点で、さとりは私達と同じフィールドに引き摺り下ろされたのですよ。
一切の隠し事が通用しない、『嘘のない世界』に。愛と勇気は言葉。
「……答えないつもりかい。んじゃ、仕方ないね。えー、鏡よ鏡よ鏡さん、古明地さとりの身長、体重を……」
「ちょ、ちょっと待って! 答えます、答えればいいんでしょう!」
「はい、ではどうぞ」
「身長は140cm、体重は34kgです!」
「……胸のサイズは?」
さとりは耳まで真っ赤になっています。はあ、そこまで恥ずかしいもんですかね。
「……じゅう」
「あ?」
「70の……Aカップです……」
「……小町、鏡はどう映ってます?」
「んー、どうやら嘘ではないみたいですね」
「ほう、小学五年生の平均と一緒ですね。あれですか、いわゆる小五ロリって奴ですか。もしかして狙ってます?」
「よ、四年生並みの貴女に言われたくありませんっ!」
「私は別に恥だと思ってませんし。なんなら二人でユニットでも組みますか? ひんぬーズって名前で」
「結構です!」
サトリである自分が内面を覗かれるなんて初めての体験なのでしょう。得意分野で逆に攻められるなんてかなりの屈辱の筈。
散々他人の心を読んでおいて、いざ自分がやられるとこれですか。はは、情けない。
ま、自分の武器が弱点なんてそう珍しい話でも無いですがね。メタルマンとか。
「そんじゃ次。初キスの思い出」
「ペットに顔を舐められたのは経験に入りますかっ!?」
「入りません。ラヴが含まれてる場合のみ適用とします」
「じゃ、まだですっ!!」
開き直ったのか、私達に匹敵する即答ぶりを発揮してきました。
ですが、所詮は付け焼刃。訓練を積んだ私達と比べて、無理をしているのが見え見えです。
「では、次の質問行ってみましょう」
「ま、まだやるのですか!?」
「お仕事ですので。次はそうですね。オウム返しの質問にも飽きましたし……」
「これまでセクハラ質問でしたし、もちっと爽やかな方向で行くってのはどうです? 創想話は全年齢ですし、エロスネタばっかってのも問題があるでしょう」
「それもそうですね。では古明地さん、爽やかに初恋の思い出を教えて貰えますか。イニシャルトークなしで」
「そ、それも充分セクハラに含まれますからねっ!」
さとりは額から脂汗を流し体を震えさせる。
すっかり精神的に追い詰められているようです。
……勝てる。私は確信しました。
敵の第三の目は私達に通用せず、逆に私達の質問攻撃は効果覿面。
そして相手は既にヘロヘロ状態。これで負けろなんて言う方が無理ってものです。
遂に遂に遂に! 私達はさとりに勝てるのです!
屈辱を受けたあの日、耐え忍んだ一年。全てはこの時の為! お偉いさん方、見てますか?
貴方達が恐れたあの古明地さとりは、幻想郷支部勤務の四季映姫と小野塚小町が討ち取ります! 給料上げろボケナスが。
さあ、どんな質問でトドメを刺してあげましょうか。
もはや相手はまな板上の鯉。勝利は揺るぎありません。
仮に私達に負ける要因があるとすれば、それこそこの場を滅茶苦茶にするような強大な力が乱入することぐらい……。
「おねぇーちゃあーーーんっ!!!」
そう思った直後、突如客間に誰のものでもない声が響いた。
見ると、今さっきまでは誰もいなかった筈のさとりの背後に一人の少女が立っていました。
「おねいちゃーん、あっそぼー!」
「こいし……?」
こいし、と呼ばれた少女は甘えるようにさとりに覆いかぶさる。
……客間の扉は閉まったまま。ここに入ってから開閉した記憶は無い。
この少女は一体どこから? 瞬間移動? それとも壁抜け?
「……古明地さん、そちらの方は?」
「あ、お客さん? えっとね、私は古明地こいし! おねえちゃんの妹!」
さとりの妹? むう、資料にないですね。
相変わらず糞の役にも立たない資料です。つーかFAX一枚で済ませようとしてんじゃねえよ。仕事しろ本庁。
「こいし、お姉ちゃんはお仕事中だから……」
「知ってるよー。でも、ずーっと待ってても全然終わらないんだもん! それに、だんだんお姉ちゃん辛そうな顔になってくるしさ! だからさ、遊んで気分転換しよーよ!」
「……ずっと待ってた? こいしさん、どこかでこの部屋を見ていたのですか?」
「ん? 見ていたっていうか、ずっとここに居たよ?」
ずっと居た? そんなバカな。全く気が付きませんでしたよ!?
いや、そんなことより、折角ここまでさとりを追い詰めたのに、こいしの登場で空気が変わってしまったではないですか。せっかくの質問がうやむやにされてしまいました。
困りましたね。とりあえず、彼女にはここから出て行ってもらわなくては。
「こいしさん、お姉さんの言うとおり、私達はお仕事中なのです。すみませんが席を外して貰えますか?」
「やーだー! 遊ぶー!」
「我侭言ってんじゃないよ。ほら、あっち行って」
「何よ、触らないでよ! このオワタ四天王!」
「オ、オワタ……! あ、あれは過去の話だ! 今はちゃんとパッチで改善されてるっつの! J8Aも使えるようになったし、えっと、あとは……ええい、他人と対戦したことないから分かんねえ!」
……姉に似て性格の悪いことで。
仕方がありません。ちょっと力技を使うとしますか。
「……こいしさん」
「ん、なーに?」
「貴女は、何か嫌いなものや怖いものはありますか?」
直球ストライク過ぎる質問。
ですが、こちらには浄玻璃の鏡があります。相手がどう答えようが真実は我々の手にあるのです。
見た感じ、精神的には幼そうですし、ちょっと苦手なものの話をすれば逃げていくでしょう。
幼い子供に「早く寝ないとオバケが来る」、「夜、笛を吹くと人攫いが来る」、「宇宙人と天変地異とプリオンと300人委員会で人類は滅亡する」と脅すのと同じノリで。
「嫌いなもの?」
「ええ、食べ物でもなんでもいいですよ」
「んー……」
こいしは考えてるのか考えてないのか区別のつかない、ぽや~んとした顔をしています。
「お空のチップスターは嫌いかなー、火曜日は風水的に縁起が悪いし。ヘルマン・ロールシャッハ先生もそう言ってる」
「……は?」
短い台詞ですが九割以上理解できませんでした。
地底の者なら分かる言葉なのでしょうか? カルチャーショックです。
「……まあいいです。小町、鏡を」
「はい!」
たとえ意味の分からない単語でも、鏡は全てを見通します。
あとは、こいしの嫌いなもので脅して客間から出て行ってもらうだけ。楽勝。
「……あれ? おかしいな」
小町が鏡を覗き込みながら首を傾げる。
「どうしました?」
「鏡が反応しないんですよ。あっれ、こんなこと今までなかったのになあ」
「スイッチ入れてないんじゃないですか? もう、ちょっと貸しなさい」
小町の手から鏡を奪い取る。全く、死神でも使い方ぐらいちゃんと覚えておきなさい!
「こいしさん、すいません。もう一度、嫌いなものを教えてくれますか?」
「おりんりんの右三番目の複乳。あれは不吉よ。星の動きを見れば分かる」
「……」
さっきと内容が違う気がしますが、そんな些細な事はどうでもいいです。さあ鏡よ。こいしの弱点を映し出せ!
「……うん?」
ところが、浄玻璃の鏡はうんともすんともしません。
おかしいですね。普通なら、今の発言の真偽を映し出してくれる筈なんですが。
不思議に思い、手に持った鏡を色々な角度から見回してみる。すると……。
「四季様! ここ、ここ見て下さい!」
鏡の裏面。そこに設置された異常を表すランプが赤々と輝いているではありませんか!
「レ、レッドリング!? 故障!? なんで、こないだメンテに出したばっかなのに!」
「分かりません、さっきまでは正常に使えてたんですが……」
「ええい、これだからゲイツ社製はっ!」
突然のアクシデント。浄玻璃の鏡が壊れて動かなくなってしまいました。
色々手を尽くしてみるも効果なし、完全にフリーズしています。
仕方なく古来より伝わる修理法、斜め45℃チョップを試してみるも、結果は鏡にヒビが入っただけでした。おおぃ、どうすんだこれ!
シット! なんでわざわざこんな時に! まさか内部になんとかタイマーでも仕込まれてるんじゃないでしょうね!
「……こいし、ありがとう。お姉ちゃん助かったわ」
慌てる私達を前にさとりが呟く。
見るとさとりは落ち着きを取り戻し、薔薇柄のハンカチで額の汗をふき取っている。
……今の言葉、まるでこいしが鏡の故障に関係しているかのような言い方でした。怪しいですね。
「……まさか、こいしさんが、鏡に何かしたんですか?」
「いいえ、こいしは普段通りに振舞っていただけ。鏡に触れてもいませんよ。まあ、関係があるのは確かですが」
「思わせぶりな台詞は嫌いでね。良ければ、種明かしをしてもらえるかい?」
「あらまあ。普通、そんなこと相手に聞かないでしょうに。本当に正直者なんですね。……いいですよ、もう終わった事ですし、教えて差し上げます」
テーブルの上の麦茶を飲み一息入れたところで、さとりは静かに話し出す。
「あの子、こいしは私のように考えを読むことができません。ですが、あの子には無意識の力があるのです」
「無意識?」
「そう。あの子の行動も発言も全ては無意識の内のもの。貴方達がこの部屋にこいしが居るのに気づかなかったのもその為です」
「……その無意識が、どうして鏡の故障に繋がるんだ?」
「分かりませんか? 言葉に意識を込めてないのです。全くの無意識……」
ここで私は気づきました。なぜ鏡が壊れたのか。
浄玻璃の鏡は、こいしの言葉の真実を映し出そうとしました。
しかし、こいしの言葉は無意識。そこに嘘も真もありません。
たとえどんな悪人だろうと、嘘をつけば心に罪の意識が生まれる。こいしには、その僅かな罪の意識さえも無かったのです。
善でも悪でもない、無。
裁くことのできない者を処理できずに、鏡は障害をきたし壊れてしまったのでしょう。
俗に言う予期せぬエラーってヤツです。酷い脆弱性があったもんです。
「狂人に、罪はあるのか……?」
全身から嫌な汗が吹き出る。
えらい事態です。
頼みの綱である最強の矛。浄玻璃の鏡が使い物にならなくなってしまいました。
攻撃手段はそれだけあれば充分だと思っていた為、それ以外の策なんてある訳なく……。
「……どうしましたお二方。顔色が優れませんよ?」
さとりも当然それに気づいています。
もうすっかり元の調子を取り戻し、にこやかな笑みを私達に向けます。こいしはいつの間にか姿を消していました。
「そういえば、質問はもういいのですか?」
「くぅ……!」
「いいんですよ? もっと続けても。貴女達に答えの真偽が見極められるのならね」
矛を失った私達に残されたのは、さとりの攻撃に耐える盾のみ。
ですが、盾だけでは戦いには勝てません。ジリ貧で負けてしまうのは目に見えています。
どうにかしなくては、何か勝てるような策を考えなくては!
「では、またこちらから質問させて貰ってよろしいですか?」
「……」
「……今の貴女の、正直な気持ちを聞かせてください。心を読んだりしませんから、どうぞ貴女の口から直接お願いします。本音を話す特訓をしたんですよね?」
正直な気持ち……。そうだ、全てを正直に話さなければ、さとりに心を抉られる。
頭の中の言葉を全て出してしまわねば。だけど、まだ何も対抗策を思いついていない。
話さなければさとりの攻撃は防げない。でも、今の私の心を話してしまっては……。
様々な思いが錯綜した後、自然と私の口から言葉が出る。
「……わ」
「わ?」
その言葉はまるで蚊の鳴くような小さな声。
喉から無理やり絞り出したような、とても弱弱しい声でした。
「……私の、負けです」
私の心は、さとりへの敗北を認めていました。
鏡を失った私達に勝ち目はありません。
もし、こいしがこの場に現れなければ、鏡が壊れさえしなければ。考えた所で、全ては後の祭り。
お手上げです。一年間の努力も全部水の泡。失望で体から力が抜け、ぐったりとソファーに身を任せます。
「……」
そんな私達を、さとりは静かに見つめます。
敗者をあざ笑うような視線ではない、虫を見るような目でもない、ただ哀れむような目で。
……こんな下らない事に、たかが視察の為に一年を費やし、そして無駄にした私達を愚かに思っているのでしょうか。
何も言われない分、心を読まれるよりも精神的に来るものがあります。
「……どうしました? トドメを刺さないのですか?」
一年前、私はさとりに意識を失う程の精神攻撃を受けました。
当然、今年も負ければ同じ仕打ちが待っているものと思っていました。
ですが、さとりは何もしてきません、読心どころか、声すらかけようとしないのです。
「……トドメを刺す価値すらありませんか?」
「……」
「哀れむつもりなら止めてください。勝負はしっかり白黒付けないと嫌なタイプなので」
「……哀れむつもりなんてありません。始めの方に言いましたよね。私は、貴女達と友達になりたい、と」
「……ええ」
「今まで視察に来た方達は、普段は偉そうな態度を取ってるくせに、私の能力を知った途端、怯えて逃げ回るかご機嫌取りしかしなくなるような薄っぺらい人ばかりでした」
「……」
「ですが、貴女達は違いました。私を恐れるどころか、自ら心を晒け出し真正面から戦いを挑んできたのです。とても驚きました。あんなの初めてでしたから」
さとりの顔はどこか嬉しそうに見えました。
「私はもっと貴女達の事を知りたい。ここで終わらせてしまうには、あまりに勿体無い。だってそうでしょう? あの時こいしが現れなければ、私はきっと負けていました。今日の結果は、ほんの小さな偶然が影響しただけのことなのですから」
浄玻璃の鏡を失った私達には、さとりが本当の事を言っているのか分かりません。
ですが、不思議と私は彼女が心のままに本音で語っているように感じました。
「また来年、こちらにいらしてください。その時にもう一度勝負しましょう。今日は、久しぶりに楽しかったですよ」
さとりに手を取られ、私達はソファーから立ち上がる。
「……いいんですか、それで?」
「ええ。来年までには、私も貴女達の戦法を打ち破る策を考えておきますよ」
「……」
三人はしばらく何も言いませんでした。その沈黙を破るため、私は小町の袖を引っ張りながら言う。
「……小町、帰りますよ」
「え? あ、はい!」
「覚えていなさい、古明地さとりっ! 次こそは、貴女をギャフンと言わせて見せますから!」
「はい、お待ちしてます」
一年前に続き、再び私達はさとりに敗北しました。
客間から出る前に、最後に私の目に映ったもの。それはあの時と同じく、私達に向けられたさとりの笑み。
ですが、その顔は去年のような勝ち誇った歪んだ笑みではなく、まるで友達を送り出すかのような穏やかな微笑みへと変わっていました。
私達は、その笑顔に不思議な気持ちにさせられながらも、一度も振り返らずに地霊殿を後にしたのでした……。
「四季様、結局視察とか全然してないんですけど、どうしましょっか?」
「あ……」
◇◆◇
あの地底での激闘から一週間が経った。
一年続けてきた正直者の生活はあの日以来もうやってない。
四季様が言うには、もうあの作戦はきっと通用しない。
また新たな策を考えておくから、それまでは普通に過ごしても構わない、だそうな。
つまりは元の平和な生活が戻ってきたって事だ。
「おし、着いたよ。んじゃ、張り切って裁かれてきな!」
今日最後の魂を届け終わり、舟の上で大きく伸びをしてそのままゴロンと寝転がる。
んー、久しぶりに真面目に仕事をするのもいいもんだね。
昼寝せずに一日を過ごしたのは何年ぶりぐらいだろう。こりゃ特別ボーナスものだね。
「小町っ!」
「きゃんっ!?」
リラックスした所で、急に背後から声をかけられる。
振り向くと、いつの間にやら四季様が船上に座るあたいを見下ろす形で立っていた。
やっべ、また説教か? 何かやったっけ!?
「な、なんすか四季さまぁ。あたい、今日はボーナスが出るぐらい真面目に仕事しましたし、説教される理由は無いですよ? ボーナスください」
「そんなんでボーナス貰えるなら私は今ごろ億万長者です。……別に、説教しに来たわけではありませんよ」
んあ? なんだ違うのか。
てっきりいつもの変わりばえしない説教かと思いましたよ。口には出しませんがね。
「実はですね、さとりへの新たな対抗手段を思いついたんですよ!」
「え、、マジすか! つか早いっすね、まだ一週間ですよ!?」
「家帰ってもやることないんで、ずっと考えてたんですよ。ほら小町、これを」
四季様は手にぶら下げた黄色いビニール袋から何かを取り出す。
「昨晩ドンキで買ってきました。あそこ、客層怖いですね。カツアゲされるかと思いました」
そう言ってあたいの手に渡してきたのは、何やらカチューシャのようなもの。
普通のカチューシャと違って、上部に毛皮のような二つの突起がある。
「……四季様? これは?」
「分かりませんか? イヌミミです」
「い、イヌミミ……?」
「ちなみに私のはネコミミです。ほら」
見ると、いつの間にか四季様の頭には、あの首が折れそうな閻魔キャップの代わりに可愛らしいネコミミがぴょこんと生えていた。
「……あの、すいません、意味が分からないんですが」
「小町はよくきゃんきゃん鳴いているので犬にしました」
「いえ、そうではなくてですね。なぜにケモノ耳なのかを聞きたいのですが……」
話の流れからいって、これがさとりへの対抗手段なんだとは思うが……。
この質の悪いメイドカフェで用いられるような安っぽい萌えアイテムがそれととどう結びつくのか、あたいの頭では理解できそうもなかった。
「思うにですね小町。あの正直者戦法は方向性としては間違ってないと思うんですよ」
「ん、まあ。こいしの登場というアクシデントがなけりゃ、確実に勝ってましたもんね」
「しかし、あのさとりの事。既に正直者戦法を打ち破る策を編み出してるに違いありません。二度目は無いでしょう」
「同じ柳の下にどぜうはなんとやら、ですね」
「従来の戦法は通用しない。なので、更にそれを発展させた戦法で挑もうという話です!」
四季様はあたいの手からイヌミミを取り、そっとあたいの頭に乗せる。
「それがこれ! 動物の野生パワーですっ!」
「……?」
「野生の力を得て、従来の『正直』を上回る『本能』を身に付けるのです! 動物には恥なんてものありませんからね、今まで以上に読心術封じに役立つに違いありません!」
「そ、そんなもんですか? 発展ていうより退化じゃ……」
「さとりは動物好きですから、この姿なら彼女の油断を誘えますよ。こいしの無軌道無意識だって、大自然と一体化した動物の勘ならきっと捕らえられるに違いありません。どうです、完璧なプランでしょう! 来年こそ、私達の勝ちですよ!」
「で、でもですよ、そんなこと、ヤマザナドゥたる四季様がやったら……」
「ヤマザナドゥではなぁーい!」
人差し指をビシッとあたいに向け叫ぶ四季様。
「今の私は、『四季映姫・ニャニャニャニャドゥ』だニャン!」
「言い辛れえっ! ……いや、そんなことよりまずいですよ、閻魔がそんな事をやっちゃあ!」
「小町ぃ! ちゃんと語尾に『ワン』を付けるニャン!」
「語尾とか言ってる時点で野生とは程遠いっスよ!?」
……色々と考えすぎて、脳がオーバーヒートしちゃったのかな?
やっべぇな。ちょっと温泉とかに連れて行って休ませてやった方がいいかなあ?
「では小町! 早速特訓開始ニャン!」
「え!? 特訓って何を……」
「次の視察まで動物になりきって正直に、そして本能のままに生活するニャン! 私は猫だから自由気ままに帰路に着くけど、小町は犬だからその辺にマーキングしながら帰るといいニャン!」
「え!? ちょ、ちょっとそれ洒落になりませんて! 完全にただの変態じゃないですか! あ、四季様待って、いやお疲れ様だニャンじゃなくって! 四季さまーっ!!!」
……数日後、あたい達の姿を見た近隣住民が本庁に連絡を入れたらしく、あたい達は上層部のお偉いさんから呼び出され『閻魔の身でありながら畜生道に堕ちるとは何事か!』と大目玉を喰らうハメとなった。
その際、どうにかして減給処分を逃れるため、『正直』とは程遠い、もっともらしい言い訳と嘘八百の限りを尽くした反省文を四季様と二人で書き上げる事になるんだけど、そりゃあまた別の話で。
今思えば、かなり投げやりなストーリーだったよねあれ
VSさとりネタは数あれど、このアイディアは面白いと思った
あなたの手の内は読めている。
貧乏公務員の映姫様。相変わらず不憫なアリス。
メタネタを織り交ぜたシュールなギャグ。
と思ったのに「大自然と一体化」で限界でした!
あなたの前で、笑いを隠すことは不可能だと言うのか……。
私の負けです。100点をどうぞ。
自分がやられると困るのならサトリ同士の社会というものは存在しようがないんだな。
貧乏映姫様と文章の端々ににじみ出るブラックユーモアが大好きです。
相変わらずの時事ネタの雨あられ、そして何故かイイハナシダナーとなる展開と、それをぶち壊すオチ、お見事です。
とりあえず映姫様とさとりんは早めにユニットを組むべき。
とても面白かったです。
さとり対策に挑む二人に交じる、ところどころのブラックさ。さすがですね。
ところで本庁はけもみみの件より、昨年に続き視察をまともにやっとらんことを先に怒るべきじゃ?
流石です。感服致しました。
所々に挟まれる小ネタやアリスの不遇も相変わらずで面白かったです。
ただ今作は物語が一本道すぎてるかなと思いました。
「レイラ、心のむこうに」や「私は人間をやめるぞ!」とかあるような寄り道的な展開が少なく、
こっからどうなるんだろうっていう次の展開、オチに対するわくわく感が、今回は妙に薄く感じました。
それでも十分楽しめました。
次回作も待ってます。
あなたの書く映姫様はいろんな意味で小さくて大好きです。
今回も本編、小ネタ共に腹筋がヤバイ、マジヤバイ。
安心のらクオリティをありがとうございました。
最初から最後までずぅっと腹筋が崩壊しかけたさ。
お茶目すぎるえいきっきにときめきを感じた!
最後いい話だと思ったのに見事にぶち壊す豪胆っぷりに感動すら覚えたさぁ!!
ホントニアリガトー、ワタシノ睡眠時間ヲドウシテクレルw
イイハナシダナーと思ったけど所々の毒でトントン。
相変わらずハラハラさせられるメタネタ満載で面白かったです。
所々の小ネタも良かったですが、心を読むさとりとの対決ということで英姫様の一人称の思考がよかった。
これがさとりに読まれてると意識するとまた笑えてくる。
というかネタの置き場所が的確すぐるでしょう
さすが汚いこいつ絶対さとりだろ…
あとこいしちゃんさいきょー過ぎて可愛いよ。
余談ですがいまも小町はあまりぱっとしてませんね、オワタ神のうどんげは立派な強キャラですが。
久しぶりに、らさんの映姫様を読めて嬉しかったです。
(そして相変わらず不憫なアリス……)
とてもとても面白かったです。
事実だとしても、特定の場所とか企業のマイナス部分突いてネタにするギャグは正直見てて不愉快でした。
そのおかげで、最後まで読んでも全く楽しめなかったのが非常に残念です。
応援してます。
とても笑わしてもらいました。ありがとうございます。
秋田県民としては、笑えばいいのか嘆けばいいのか複雑な気持ちでした。
サトリンに対してやりたいことや思ったことを全て言えば
お互いが幸せなんですね。
次も期待してます!
笑いあり、感動ありで飽きることなく作品世界に没頭してしまいました
面白かったです
ここ最近で一番満足しました。
ストーリーもスッキリまとまってて良かったです。
そこを差し引いて80点。
ネタの引出しが多い作品ですね、とても楽しめました。