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500字制限でお題消化というやつで書いたブツ

2013/04/01 23:52:37
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『夜道の描写』

 カランコロンと下駄の音を響かせて歩くのが、彼女は好きだった。
 提灯を片手に、背には羽織を引っ掛けて。

 人里から遠ざかれば遠ざかるほど、闇は深みを増し、一寸先も見渡せない。
 提灯の明かりだけを頼りに、一歩一歩を確かに歩む。

 頭上を見あげれば満天の星空。
 ほぅと息を吐けば、白い霧となって夜空へ溶けて消えた。

「慧音」
「ん?」
「寒いな」
「ああ、冬だからな」

 目的などない散歩だった。
 気の向くまま、心の赴くままに、ただ歩く。

 カランコロンと下駄の音を響かせて歩くのが、彼女は好きだった。
 傍らの友と歩むのが、おそらく一番好きだった。


(文字数282字 スペース込)


  ◆ ◆ ◆


『首絞め(エロティックに)』

 首筋に、ひんやりとした白い指が添えられた。
 初めは右手。
 五本の指がひとつひとつたおやかに折れ、細い首の形を記憶する。
 それらは鎖骨にまで落ち、首筋をなぞって這い上がり、顎をさらう。

 左手は、金の髪を漉きながら降りてきた。
 首の裏で右と左の指が組み合わされる。
 喉仏に親指が当たった。強く強く押し込まれてゆく。

 かふっと鳴った音は、喉から閉めだされた空気の音。


「ねぇ、幽々子」
「なあに?」
「………………何をしているの?」

 くすくすくす、と彼女は笑う。

「安心するの」

 答えはたった一言だけ。


(文字数265字 スペース込)

先生、エロティックってなんですか……。


  ◆ ◆ ◆


『空を飛ぶ描写』


「いい? 今日はこれまでの総仕上げよ。私がこれから団扇で旋風を起こすから、うまく風を掴んで飛び続けなさい。30分間耐えられたら合格よ」

 真剣な面持ちで聴いていたのは、体操座りの烏天狗の子供たち。
 彼らはいっせいに立ち上がり、翼を開いてスタンバイをした。

「よしっ! それいけ!」

 右腕で一閃。
 巻き起こる強風に吹き飛ばされて、子供たちが次々と空へ舞い上がった。



「文」

 川辺から声がした。

「あーや」
「? ああ、にとり」

 水面から顔だけ出した腐れ縁がそこにいた。

「ひとりだちの儀式?」
「いや、ただの飛行訓練だってば。どこの魔女よそれ」
「あはは。今年も教官やらされてるんだね。ご苦労様」
「まったくだわ」

 ふと、にとりが空を見上げたので、文も倣って空を仰いだ。


 風と戯れる子供たちが、笑い声を立てながら、空いっぱいに広がっていた。
 黒い翼を器用に操って。
 ともすれば身を切る風さえも我がものにして。


 にとりは目を細めてつぶやいた。

「いつ見てもいいものだねぇ」
「でしょ?」


(文字数467字 スペース込)


  ◆ ◆ ◆


『匍匐前進(シチュエーション不問)』

葡萄は葡萄であるが故に、戦わねばならぬ時がある。太陽の恵みを受けてすくすく育ち、真円の膨れ上がったこの肉体美。烏の濡羽色とも称するに値するこの身の輝き。これ程までに誇れる我が身ならば、この戦、勝たねばならぬ。同じ房で育った兄弟たちも今は敵。さあ、太陽が昇る。いざ決戦へ――
初手をしくじった。位置取りが悪かったのだ。我が領土は、房の中程。ちょうど房全体で考えると膨れ上がって頂点にくる位置であるからして、アドバンテージは十二分にあったと言える。が、向きが悪かった。日の当たる側ではなく、影となる裏手に来てしまっている。これでは「彼ら」に気付かれぬ。我は隣り合った兄弟たちに呼びかけて、房を揺らして位置取りを変えることにした。掛け声を合わせ、力を合わせ、つるを揺らす。反動で180度回転させるのだ。日の当たる場所へ。「彼ら」の目の届く場所へ! しかし、表面の奴らの妨害があり、上手くゆかぬ。口惜しい。
だがここで転機が訪れた。揺れる房を不審に思ったのだろう。「彼ら」がこちらに興味を示した。しかも有難い事に、我を目掛けて来るではないか! ああ、そして我はとうとう――「啄まれた」。我は戦に勝利したのだ。


(文字数500字 スペース込)

うっかり東方っぽさ入れこむの忘れちゃったんだぜ……。ごめんなさい。


  ◆ ◆ ◆


『SW』


 門番がホースの口を握り潰し、花々のためのシャワーで虹を作っていた頃、

「とつげきーーー!!」

 それは始まっていた。

 工作部隊が扉をこじ開け、白兵隊が執務室へ雪崩れ込む。
 後方支援の狙撃兵が息を潜めて見守るなか、制圧の足掛かりを求め危険な敵地へ踏み込んだ彼らは決死隊だ。

 日の出より開始された作戦の、これが最後の大詰め。

 敵の本拠地――執務室に鎮座していたのは、うずたかく聳え立つ机と椅子とで固めたバリケード。
 防柵の隙間からは嵐のように弾丸が襲いくる。

 兵士達はつぶさに身を隠し、激しく乱れる息を整え、目玉だけを動かしてアイコンタクトを飛ばしあった。
 ここが正念場だった。あれを制圧するには、十や二十の犠牲ではきくまい。
 突入のタイミングを測る。

 ……3。

 …2。

 1。

 今――



「ケーキが焼けたわよ」


「わーい!」「やったー。ケーキだー!」「さすがメイド長ー」

 妖精達は、銃を投げ出し速やかに解散をした。



「で、あれは何だったの。レミィ」
「春闘だって」
「……初夏よね。今」
「ええ。しかも雇用主の私は蚊帳の外よ」
「……はぁ」


(お題『SW』=さまーうぉーず。 文字数500字 スペース込)


  ◆ ◆ ◆


『美少女描写』/『初音ミク』


 その細い手に、私は何度救われただろう。
 ときに強く、ときに優しく
 病めるときも、健やかなるときも
 ……皺枯れたあとでさえも、お前はいつも導いてくれた。

 ひとつきりの息遣いが響く四畳半の臥所。
 静寂で気が狂いそうだ。

 白い布団と、白い衣装。
 白い障子のむこうでは、白い雪が降っているのだろう。

 眠るお前を前にして
 思い出すのは共に過ごした日々ばかり。

 春霞の桜の下や、
 月明かりの夏の夜。
 寝付けぬ秋は、語り明かした。
 見渡す限りの一面の雪に、はしゃいだこともあったよな。

 繰り返し、繰り返し……脳裏をよぎる。

 だからかな。
 お前を眺めていても、瞳が捉えるのは少女のそれで
 老婆の姿には映らないんだ。

 枕辺に散る銀髪は、青みを帯びてとても綺麗だ。
 すっと整った鼻筋と、長い睫毛は麗しくて、
 撫でつけた頬は瑞々しいよ。

 「慧音」とこぼすと、心がこぼれた。
 ぼたぼたと溢れ出る雫が止まらない。


 明日、お前を焼くのだという。
 こんなにも綺麗な少女を焼くのだという。

 ならば。
 ああ、いっそ
 今すぐに

 私の炎で焼いてしまいたい。


(文字数500字 スペース込)

 「皺枯れた」って造語なのかな。
なんか中には東方ってなんぞってやつもありますが、お気になさらずに……。
サバトラ
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