「ゆかれいむ？ なにそれ食えんの？ 私は幽々子だ！ そして隣にいるのは妖夢！ うはははははは残念だったわねー！」
そもそも幽々子様の口癖は「最初にゆかれいむ考えたやつ死ね」である。「最後にゆかれいむ考えたやつも死ね」とおっしゃるので、もうとにかく全員に対して死ね死ね団なのだ。
故に甘い甘い紫×霊夢百合ファックＳＳが展開される予定だったところを強引に割り込んで、私とのコントＳＳを開始。恨み骨髄なのだろう。
「最近、私の人気が芳しくない。何故か分かるかしら？」
「食いしん坊ネタの賞味期限が切れたからと、巻き毛がうざいからですかね」
「違う！ 紫を霊夢に取られたからよ！」
へぇ。
紫様ありきの幽々子様人気だったのかー。意外と謙虚なものだ。
「私のシリアスな話は大体紫と絡んでの過去回想が多かったのに、肝心の紫が最近ハナクソ……じゃなかった、霊夢とばっかカップリングされるから、私が重い話に入るトリガーが無い。困る」
「ハナクソってなんですか、一文字も『霊夢』と共通点ないじゃないですか。言い間違いにすらなれてないただの暴言ですよ」
「あら、博麗霊夢って全文字入れ替えるだけでハナクソになるじゃない。ね、殆ど同じ単語でしょ」
「幾ら巻き毛の人でも、その主張はむちゃくちゃです」
巻き毛の風上にも置けないヒステリーっぷりだ。レティさんを見習って欲しいものだ。彼女は地震ネタを全部天子に取られたというのに、いつもニコニコしている。これはいい巻き毛。
単に体重ネタで弄られる機会も減ったことで喜んでるだけかもしれないけど。
「かつては最萌トーナメントでも一世を風靡した私が、今では中堅以上上位未満の微妙人気。ありえない」
「しょうがないんじゃないですか。大体、原作の雰囲気自体まったりしてきてるのに、自殺した過去とか人を死なせる能力とか、ちょっと浮いてると思いますよ」
「いや、それはない。皆本当は自殺大好きって知ってるから。自殺萌えーとか、そういう時代、もうすぐ来るから」
「来ませんよ」
「でも、死にたい。。。マジ病み。。。って喋ってるとちょっとモテるようになるよ？」
「それは『これなら俺でもいけるんじゃね』って思われてるだけですってば！ 訳あり物件ならライバルが少ないだろう的な感じで！」
「妖夢のお母さんもお婆ちゃんもそうやって結婚相手見つけてたのに、その手法を馬鹿にするのは良くないと思うな」
「私そんな家系だったんですか！？」
はっ。そういえばお爺ちゃんは私が手首に包帯巻いていた14歳の春、異様に優しかった……あいつメンヘラ萌えかよ！
でも残念、私のは中二病だからちょっとお爺ちゃんの嗜好とはズレてたのでした！
よかった健全だ！
「話を戻しましょう。まず、どうやって霊夢を合法的に殺害するかだけど、妖夢の斬撃で妖怪かまいたちの仕業に見せかけて」
「話戻ってません。暗殺計画を練ってた事実は一度もありません」
「じゃあどうやって紫を取り戻せっていうのよ！」
「そこはまあ……普通に……新作でもっと絡むとか……」
「でも紫、『黒髪の十代で巫女装束の似合う子しか興味ない』って言ってるのよ」
「霊夢に夢中じゃないですか。勝ち目ないかと」
「いや、ひょっとしたら私の事を言っているのかもしれない」
何言ってんだこの人。巻き毛過ぎて頭おかしくなったのかな。
「私に髪を黒く染めて巫女のコスプレをしろと。そう遠まわしに伝えたいのかもしれない」
「すっごいプラス思考ですね……」
「うん。『もう付け回すの、止めてください。訴えます』って手紙を紫から貰ったばかりだけど、がんばる」
「めっちゃ直接的にフラれてるじゃないですか」
大丈夫なのか幽々子様は。私も巻き添えで訴訟されたら嫌だなあ。かまいたちの仕業に見せかけて処分しといた方がいいのかな。
「うん。私、やってみるよ。もう一回、紫にアタックしてみる」
「はあ。どうぞ……」
「でさ」
「何か？」
「もしも紫と上手くいったら、妖夢ともいっぱい絡んでねってお願いしてくるね！」
「え……」
「そしたら貴方の人気も上方修正っしょ！ じゃあね！」
……まったく。
まったく……。
これだから、幽々子様は。
「妖夢？ どこ行くの？」
「いえ、ちょっと野暮用を」
私もまだまだ人が甘い。
紫様に幽々子様と仲良くするよう、頼みたくなるなんて。
◇ ◆ ◇
「私が幽々子をフッた？ なにそれ？ 今でも私、幽々子が本命だけど……あ、それ幽々子のエイプリルフールネタじゃないの。妖夢は単純ねぇ」
「畜生！」
あと出産おめでとうございます。
妖夢ちゃん単純すぎ