* * *
(前回のあらすじ)
今年に入ってから某TCGにハマってしまった上白沢慧音(U)。
彼女は某所で開催されたカードゲーム大会に参加する。
そこには同好の士である霍青娥(H)と姫海棠はたて(L)の姿もあった。
彼女たちは対戦を大いに楽しんだ……。
しかし、ここで青娥から「ボックス買いしてうちで夜通し遊ばね?」という爆弾提案が飛び出す!
おいおい、エキサイテキングな展開になってきやがったぜ。そして途中で落ち合った古明地こいし(S)と射命丸文(T)とともに、食事へ行くことになった。
最近ナマモノ同人誌を書かれちまった慧音の貞操は無事なのか?こいつぁ先が見逃せねぇ!
* * *
卯月二日 PM 18:30
「肉を食いたい」と誰かが言い出したので、折よく見つけたしゃぶしゃぶ食べ放題の店に入った。流石はヨド●シアキバだ。レストランフロアが充実している。
規定時間内なら肉も野菜も、デザートだって食べ放題だ。焼き肉じゃないところに年齢を感じる。
まずは野菜を、と大皿に盛って戻ってくると、こいしが全員分のアイスをごっそり大盛りで持ってきていた。
「開幕アイスがこういう店の嗜みなんだよ!」
力説するな。というか私のミントアイスにストロベリーソースかかってる……。絶妙に合わないんだけどコレ。
とりあえずまずは野菜を鍋に投入した。大量のネギたちを見て文が呟く。
「これってすき焼きだっけ……?」
肉と野菜を一緒に、ゴマだれに大量のラー油を混ぜて食べると旨いぞ(真顔)。
ひたすら食事を詰め込んでいると、三回目のアイスを頬張っていたこいしが突然口を開いた。
「ところで誰とは言わないけど、ナマモノBL同人誌を書かれるだなんてジャニーズレベルだと思うよ」
うん、そんな悲しい人は私の周りにはいないよ。いないったら。本当だって。あれ、涙出てきた。
ナマモノBL同人誌の存在もなかったことにしてやろうか!!!
卯月二日 PM 20:30
お肉とお野菜とご飯でお腹がいっぱいになった。
その足でヨドバシ●キバの玩具フロアへ移動。さっそく、あのカードゲームの箱を購入することに……!
「うーん……やっぱりボックス購入となると、結構な値段がするのだな……」
「1パックが330円くらいで、それが1箱に36パックだからね。単純計算で、1万数千円くらい」
「姫海棠は大丈夫なのか? やりくりとか」
「まあ、なんとか。こういうカードゲームの予算は毎月いくらって決めてるし」
意外や意外。
この天狗、そういう所はちゃんとしているらしい……。
そんな事を考えている最中、青娥はTCG売り場の傍らの食玩コーナーでモバ●スのキーチェーンプレートを前に真剣な瞳で「だりーなちゃん……だりーなちゃん出るかな……」と呟いていた。
「じゃ、レジ行くね」
「はーい」
はたての言葉に従って、私たちはカードを購入する為の見本札を手にレジへ……。
「ボックスで。1つください」
「こっちも1箱で」
お財布からお札を出して渡す。高い買い物だなあ。
一万円あれば、上物の歴史がいくらでも食べられ――……
「えーっと……とりあえず3ボックスでいいかな? あ、カードでっ」
……青娥よ。
お前、モ●マスのやりすぎで、金銭感覚がぶっ壊れていないか?
卯月二日 PM 21:00
文とこいしと別れ、早速青娥の家を目指す。
青娥の家の最寄駅周辺は、コンビニやスーパーやド●キやサ●ゼリヤがあって、素直に暮らしやすそうな環境だった。
その道中。
「キョンシーガールってS霊廟よりもキョンシーについての考察が深い作品だと思わない?」
「DTの聖水ネタとか流石にゲームに出せないと思うわよ……」
この二人往来の真ん中で何話してるんだろう。
「だからキョンシーガール最高傑作はK田一回だって!」
「いやいや、Nひろし回のあのクソオチにはかなわないって!」
「「いーあーるきょんしーいっすんーさきはきょんしー、\息を止めよう!!/」」
駄目だこの尸解仙と天狗。
早く何とかしないと……。
卯月二日 PM21:30
「さて、はたてさんは何度も来たことあるけれども慧音さんは初めてだったっけ」
「ああそうだな。青娥さん、お世話になりますね」
「じゃあまず儀式を始めないとね」
「儀式?」
邪仙の家に入る前にそんなものが必要だなんて知らなかった。また一つ知識が付いたな。
「ええ、部屋に人を入れる前に掃除をしないといけないの」
「えっ、それって汚部y」
「じゃあ私は玄関周りをやるから慧音は中をお願いね」
「アッハイ」
ああ、エロ本が床に!床に!
「あらあら、うちは秘宝館だからねぇ。ナニがあるかわからないわよ?」
お願いだから健全な青少年のナニかに悪い物は引き出しか何かに閉まっておいて欲しいのだが。
卯月二日 PM 21:30
「青娥さーん、シャワーとタオル借りていいー?」
「いいわよー。お湯のスイッチこっちで入れたからどうぞ」
「ありがとー」
流石に青娥亭に慣れているのか、はたてはエロ本やDVDに臆することも無いみたいだ。羨ましいやらそうでないやら。
「きゃぁぁぁ!?」
「どうしたはたて!?」
「ワームホール的な何かが風呂場に転がってるんだけどぉぉぉぉ!?」
「あっ、ごめーん。気にしないでおいてー」
「無理!無理!早く体洗って出る!」
ああ、寒くて汗かかなかったし私は別にシャワーいいかな……
「って、あれー? 青娥さーん。バスタオル! バスタオル無いんだけどーっ!」
「あらあら。ごめんなさーい。洗濯機の中で乾燥させたままだったわー」
洗濯機の乾燥機能を使って乾かしたタオルが、洗濯機の中で放置されている。
ダメだこの仙人。洗濯物を畳むとか収納するとかそういう発想が頭の中から抜け落ちている。
「えーっと、バスタオルは……あら。大変」
「どうした?」
「えーっとね。慧音先生、大変です。ここに洗濯機があるんですが……」
そういいながら青娥が指差した先には、観音開きのクローゼットの扉。
おそらくは、この中に洗濯機の設置スペースがあるのだろう。
「これ、見てください」
「おおっ……」
続いて青娥が指差したのは、彼女の足元――早い話が、廊下だ。
そこには、私たちの荷物やら鞄やら何やらが大量に積まれていて……。
そのせいで、クローゼットの扉が開かなくて……。
「ああ」
「バスタオルを取り出す為には、この廊下をどうにかしないとですね。参りましたわぁ」
「日頃から部屋を片付けていればこんな事にはならないんだけどな!?」
文句を垂れながら、廊下の荷物をどうにかこうにかどかす作業。
この邪仙、部屋を片付ける事が出来ない人種だったか……。
「青娥さーん。寒いんだけどー」
「もうちょっとよー。もうちょっとでバスタオルの封印が解かれるからねー」
姫海棠……。可愛そうに。
よりにもよって、他人の家で風呂を浴びたら強制的に脱衣所で全裸を強いられるとは。
「あ、ありましたわあ」
どうにかこうにか洗濯機の蓋を開けた青娥がバスタオルをズルズルと引きずり出す。
良かったな姫海棠。念願のタオルだぞ。しっかり乾燥もしている。
「はーい。タオルですよー」
青娥が脱衣所の扉を開き、タオルを隙間から差し出した。
「どうもありが――」
「あらあら。はたてちゃんの貝柱が」
「見ないでよ!」
青娥。お前、隙間から何を見た。
卯月二日 PM 22:30
「早速ボックスを開けましょう」
カードを大人買いとか、初めての経験だ。いいレア引けますように。
「ところで、この『すがりつくイソギンチャク』って獣姦モノの竿役として優秀だと思わない?」
やめろ青娥、やめろ。
卯月三日 AM 00:00
債務の騎士って何だろうな。
その名の通り強請るくらいがめついのかな。
債務の騎士って凄いな。
熾烈な戦闘の中でも小数点第六位までの金利計算ができるなんて。
「私のボックス滅茶苦茶しょっぱいんだけど」
頑張れはたて。
卯月三日 AM 02:00
「全員が一枚ずつオレリア当ててる……」
「慧音さん、ショックランド三枚目?」
「うん」
「よしシールドやるぞシールド」
「やろやろ……うおおおおゼガーナ来たぁぁぁぁぁ!! 掌返し来たぁぁぁぁ!!」
良かったなぁはたて。
「こういう振る舞いを、仙人のコミュニティでは『リバース掌オープン!』と言います」
嘘をつくなよ邪仙。
卯月三日 AM 03:00
青娥がカードをシャッフルしながらぼそりと呟く。
「す が り つ く イ ソ ギ ン チ ャ ク」
「ブッ」
まずい、このワードがツボにはまってしまった。徹夜テンションって怖い。
「す が り つ く イ ソ ギ ン チ ャ ク」
「ブフォッ! 止めろ、もうそれは止めろ!」
「はいじゃあキョンシーガール流しまーす」
青娥の頭の中は猥褻ネタとキョンシーガールしか無いのか?
「おっ。どれにするの?」
「そうねー。深夜の眠気を吹っ飛ばすようなクソオチ話がいいかなーって。
となると……金田一パロ回かしら?」
「うーん。青娥さんとしてはソレがオススメだとは思うんだけど、私としては最終回一話手前の方がオススメかなあ」
「えーっ? 眠い時こそ、金田一回のあのフルスロットルな――ズー●ルズにも匹敵する勢いのクソっぷりが必要なのに!?」
「いーや違うね、最終回直前のくっそ真面目でシリアスな雰囲気なのに、そこでDTの小便ネタとか出会い系サイトネタとかを絡めてるあの最低な下ネタの瞬間最大風速のクソっぷりがいいんでしょうが!」
「とはいえ、金田一回の理不尽な推理や流れを無視して死亡したばあや、傘地蔵のおじいさんも捨てがたいわ!」
「DTの小便を奪取するシーンでカッコイイ処刑用BGMを無駄遣いする話の方がいいんじゃなくって!?」
フリーダム過ぎる。
卯月三日 AM04:00
「撮影セットやっすwwwww」
「屋内とこの玄関前しか無いよねwwwww」
「真犯人……一体何キョンシーなんだ……(棒」
「あれ、あいつさっきまでいたっけ?なんか物語の冒頭で主人公が逃がしちゃったキョンシーっぽいんだけど(棒」
「「いーあるきょんしーくさってーもーきょんしー!!\お札を張ろう!/」」
(これもう三週目なのにこの二人なんでまだテンション高いんだろう……あとどうでもいいけど眠い)
卯月三日 AM05:00
「そろそろ寝るかー」
寝るのはいいんだが、この部屋散らかり過ぎてて今座ってるスペースだけで精一杯である。
「適当に物どかせば横になるスペースくらいできるわ。頑張って」
おい家主、あんたがもっと日常的に頑張ってればこんなことには。
とりあえず私が床で、青娥とはたてがベッドで横になることになった。
はたせーがって新しいと思いませんか?
ところがベッドの上も本やらDVDやらが散乱している。肌色の比率がとても高い。普段どうやって寝てるんだろうか。
「とにかく物を退かさないと…………いやああああああ!!」
「どうしたはたて! Gか、黒い悪魔が出たのか!?」
はたてがベッドの上から発見したものは、ある意味でそれよりおぞましいものだった。
「ま、ま、ま、丸めたティッシュがどうしてこんなところにぃぃぃぃぃ!!」
「ちゃんと捨てろよ丸めたティッシュくらいは!!」
スケベコンテンツの中に埋もれていた丸めたティッシュ。
状況証拠から見て、私とはたてが想像したその正体は使用済の……。
「違う、違いますって。KindleFire HDの画面拭いたやつですって。寝る前の読書用の!」
説得力は皆無であった。
卯月三日 AM09:00
まんじりともしないまま夜が明けた。寒い……。まだ冬だというのに、身体を覆うものが薄い上着一枚だけだったし。
キョンシーガールを流しっぱなしだったディスプレイからは、いつの間にかプリキュアが映っていた。
あぁ、私は詳しくないけど、今日から新シリーズなんだっけ。
ちなみに、青娥とはたては同じベッドで仲良く夢のなかである。
さくばんは おたのしみ でしたね!
……。
…………。
………………。
……………………。
このジコチューって敵、番組の展開を考えてプリキュアの胴体切断するのを待ってくれてるんだから、ぜんぜん自己中じゃないよな。